先週末のエストラーダvsロマゴンの興奮がまだ冷めやらない中、今週末も注目試合が目白押しなボクシング界。
まずはバージル・オルティスJrが世界初戴冠を目指す、WBO世界ウェルター級王座決定戦。
16戦全勝全KOという大注目のプロスペクト、バージル・オルティスJrと、元王者モーリス・フッカーの一戦はDAZNで生配信です。おそらくメインはお昼頃。
そして、それだけではありません。
週末は、オルティスJrの他にもパーフェクトレコードの持ち主が登場します!
3/20(土)ロシア
WBC・IBF世界ライトヘビー級統一タイトルマッチ
アルツール・ベテルビエフ(ロシア)15戦全勝(全KO)
vs
アダム・デインズ(ドイツ)21戦19勝(10KO)1敗1分
スーパーミドル級の一つ上、クルーザー級の一つ下というこの階級は、いつも非常に素晴らしいボクサーが揃う印象があります。
そして現在は、このベテルビエフと、WBAスーパー王者のドミトリー・ビボル(キルギスタン)のふたりが頭ひとつ抜け出ている印象です。
特にこのベテルビエフは、その戦績が示す通り破格のハードパンチャー。しかも、ただのハードパンチャーではなく、基本的なテクニックを兼ね備えています。というか、基本テクニックを基礎として、とても頑丈で、骨太な躯体が上に建っている、というイメージです。
アマチュア時代から強打を誇り、世界選手権で幾度となく優勝、北京オリンピック、ロンドンオリンピックに連続出場しましたがメダルの獲得はできず、プロ転向。
プロ転向後は破竹の勢い、IBF王座への挑戦者決定戦が決まったところで、当時の3冠統一王者、アンドレ・ウォード(アメリカ)が王座を返上して引退、その挑戦者決定戦が王座決定戦となりました。ウォードvsベテルビエフこそ見たかったですね。
そのタイトルを2度防衛後、WBC同級王者であるオレクサンデル・グヴォジク(ウクライナ)との統一戦を制して2冠王者に。
そして2020年、3月にIBFの指名戦でメン・ファンロン(中国)との対戦が決まりますが、コロナ禍とメン・ファンロンのビザの問題で消滅。代わりにそのメンと対戦経験があるアダム・デインズが挑戦することとなりました。
しかしその後もベテルビエフがトレーニング中に負傷、更にはコロナに感染と様々繰り返し、2021年の3月まで日延を繰り返してきました。
対戦相手のデインズについては、あまり詳しく試合を見ていませんが、ハイライト、数年前の試合を見る限りはテクニシャンタイプのボクサー。コンビネーションの幅はあまりないように見えますが、相手の踏み込みに対してはステップワークでかわしつつ、すぐにコンビネーションを返しています。ただ、少し大振りなところはありますね。
私が見たのは3年ほど前の映像だったので、今はどの程度かは分かりませんが、それなりにパワーもスピードもあるボクサー。ただ、ベテルビエフから12Rに渡り逃げられるか、というと、そういう域のボクサーではないと思われます。
思い切って前に出て、乱打戦に持ち込んで当たった者勝ち勝負、それがデインズにとっては最良の策なのかもしれません。
とはいえ、ベテルビエフは長いブランク、怪我、コロナ感染と色々あった1年半を過ごしています。グヴォジク戦から衰えていないとも限りません。
ベテルビエフがコンディショニングさえ間違わなければ、圧勝。どこかに付け入る隙が出ているようであれば、デインズにも番狂わせの可能性が少し、出てきます。(と言っても、デインズもブランクは同じく1年半ほど)
個人的には、勿論ベテルビエフが圧倒的に倒してくれる事を期待しています。そして、ビボルとの統一戦に進んでもらいたい、と思っています。
尚、この興行には元WBA世界ウェルター級王者(と言って良いかどうかは微妙ですが)、アレクサンデル・ベスプーチン(ロシア)も登場。ベスプーチンは前戦、ラジャバ・ブタエフ(ロシア)を破って世界初戴冠をしたものの、後日薬物陽性反応により王座剥奪。今回が復帰戦となります。
BoxRecを見ると、全16試合(!!!)という長丁場のこの興行では、ロシア系のボクサーたちがこぞって登場するようです。もし通して見る方法があれば非常に見応えのある興行となりそうで、どこかにダイヤの原石が転がっている可能性もありますね。
アメリカではESPNが放映。
3/20(日本時間3/21)イギリス
WBO世界クルーザー級王座決定戦
ローレンス・オコリー(イギリス)15戦全勝(12KO)
vs
クリストフ・グロワキ(ポーランド)33戦31勝(19KO)2敗
こちらはみんなが見れるマッチルーム興行。日本でもDAZNで視聴可能です。
プロスペクト、ローレンス・オコリーが初の世界タイトルに臨む一戦。
オコリーはダイエットのためにボクシングを始め、さほど身を入れて練習しなかった時期もあったそうですが、アマキャリアたった23戦でオリンピックの出場権を獲得、リオオリンピックに出場した元オリンピアンです。
翌年の2017年にプロデビューしたオコリーは、ここまで数々の地域タイトルを獲得し、本来であれば昨年12月にグロワキと対戦予定でしたが、グロワキのコロナ陽性反応を受け、この試合は一旦延期に。
しかしその日は代役を立ててこの試合を行い、圧勝で2RTKO勝利を挙げています。
↓観戦記
このオコーリー、とにかくパワーパンチがものすごい。長身から繰り出される右ストレートは驚異的で、相手の体のどこかに当たれば倒れてしまう、そんなイメージです。
オコーリーにとっては、グロワキは過去一番の対戦相手、ということで間違いはないでしょう。ただ、オレクサンデル・ウシク(ウクライナ)が去ったあとのこのクルーザー級を盛り上げてくれるのは、このオコーリーしかいないと思っています。
今回も難敵相手に圧倒的な勝ち方で、力を示してほしいと思います。
対して、クリストフ・グロワキ。2008年プロデビュー、プロキャリアは13年にのぼるベテランです。
2015年にマルコ・フック(ドイツ)を破ってWBO世界クルーザー級タイトルを初戴冠、その翌年に後の4団体統一王者、オレクサンデル・ウシクの挑戦を受け判定負け、無冠に追われます。
再起したグロワキは、WBSSクルーザー級のシーズン2に出場、初戦でマキシム・ウラソフ(ロシア)と戦いWBOの暫定王座を獲得。(のちに正規王者に昇格)
しかし次戦で、このシーズン2優勝者となるマイリス・ブリエディス(ラトビア)に敗退。
ただ、この一戦については非常に物議を醸す内容なので、ノーコンテストとなってもおかしくない内容でした。
この一戦は、距離が近くなったところでグロワキがブリエディスの後頭部にパンチを打ってしまい、それに激昂したのかブリエディスは肘打ちをグロワキの顎にクリーンヒット、ダウンを奪ってしまいます。ちなみにブリエディスは元キックボクサー、肘はお手の物でしょう。
休憩をとっての再開後、まだダメージがあったのかグロワキはブリエディスの右フックを浴びてダウン、さらにラウンド終了のゴングが鳴らされているにもかかわらず、レフェリーがそれに気づかずにブリエディスは猛攻、またもダウンを奪います。
3分を過ぎたところで攻撃を浴び、ダウンを喫してしまったグロワキ、次のラウンドはまた早々に倒され、正式な記録としては3RTKO負け。
なかなか不運ではありましたが、発端は自身の後頭部打ち。もみ合った展開ではままある事ですが、相手が悪かった面もありますね。ただ、肘打ちはやりすぎで、レフェリーもレフェリーだったので、これはノーコンテストで良いような気もします。
ちなみに、再戦を命じられたブリエディスはこれを拒否(してWBSSの決勝に臨んだ)、WBO王座は剥奪され空位となり、今回の王座決定戦に至ります。
グロワキは不運な負け方をしたものの、その長いキャリアの中でまだ2敗、まともに戦って負けたのはウシクのみ。まだまだクルーザー級のトップ級の実力はあると見えますが、いかんせん前戦はそのブリエディス戦、つまりは2019年の6月です。
グロワキにとってはアウェーでの戦いともなり、厳しい条件となりますが、ここはクルーザー級のニュースター、オコーリーの豪快な倒しっぷりに期待です。
この興行は、DAZNで生配信!イギリスの興行なので、日本では早朝です。