3/21(日)はボクシングファンにとって、忙しい一日になりましたね。私はというと仕事だったので、ちょこちょこと時間を見つけてはメインだけ観戦。
とはいえ、イギリスでの興行は日本時間では朝早くからなので、始業前に視聴。
いつもそうですが、だいたいメインが終わった頃に始業時間となるので、いつも早めに出勤して会社で見ています。
ということで、今回のブログはイギリスでのマッチルーム興行、WBO世界クルーザー級王座決定戦、大注目のプロスペクト、ローレンス・オコリーvsクリストフ・グロワキの一戦です。
↓プレビュー記事
3/20(日本時間3/21)イギリス
WBO世界クルーザー級王座決定戦
ローレンス・オコリー(イギリス)15戦全勝(12KO)
vs
クリストフ・グロワキ(ポーランド)33戦31勝(19KO)2敗
圧倒的なパワーでここまで勝ち上がってきたプロスペクト、オコリー。そして対するグロワキは、のちの4団体統一王者、オレクサンデル・ウシク(ウクライナ)に判定負けを喫して初黒星を受けたものの、もう1敗は非常に議論を呼ぶTKO負け。
まだまだトップクラスの実力のあるグロワキに対して、オコリーがどのようにそのスター性を開花させてくれるのか。それとも、グロワキが古豪のプライドを賭けてオコリーに好きなようにさせないのか。
非常に興味深い一戦です。
ゴング前、オコリーは遠目に見てもやはりでかい。このサイズは、大きなアドバンテージとなりますね。
初回、開始早々にオコリーが鋭いジャブを飛ばします。グロワキは後ろ荷重でいながらもサウスポースタンスの右足(前足)をジリジリと前に出しつつ、上体を前に出して一気に間合いを詰めるつもりでしょう。ある種の常套手段です。
それでも尚、オコリーの距離は遠く、グロワキはなかなか距離を詰められません。というよりも、パンチもほとんど出させてもらえません。
オコーリーの右は、決して美しくはないものの、下からすくい上げる系のパンチで、フックとストレートの中間のようなブロー。身体全体を使って振っていくので、非常に威力はありそうです。
2R、プレスを強めるグロワキに対し、ステップを大きくするオコリー。ともにエンジンがかかってきました。
自分を起点として右へ右へまわるオコリーは、対サウスポーへの闘い方のセオリーではありません。左を遊ばせつつ、鋭いジャブを飛ばし、とにかくグロワキはなかなか攻め込む事ができません。
どうでも良い事ですが、このオコリーのシューズはアシックスのレスリングシューズ。多分これ。
3R、左手を下げ、速いジャブを打ち、そのあと素早い前後の動きでグロワキの反撃を外すオコリー。左手一本で歴戦の雄、グロワキをコントロールしてみせます。
このようにして完全に距離を支配するオコリーは、もしかするとサウスポーが得意な部類のボクサーかもしれません。
そしてグロワキが近づけた暁には、クリンチで追撃を阻止。完全にオコリーの術中にはまり、何もできずにいるグロワキ。もうどちらがベテランなのかわかりません。
4R、オコリーの左パンチについては、様々な角度から、様々な速さを使い分け、使い方が非常に上手い印象を受けます。左を打つ時には右はしっかり顎をガードし、少しも動かないのでもしも相手が同時に打ってきても対応はできるでしょう。
ただ、オコリーの右パンチはどちらかというと振り回すだけであり、右を打つ時にはガードがなくなってしまうこともあり、大きな隙が生まれます。
グロワキとしてはここを突きたいところですが、オコリーの迫力に押され、カウンターを狙うどころではありません。
5R、ここまで、展開は全く変わりません。グロワキは為す術なし。
グロワキは後ろ荷重にかまえているがために、オコリーのパンチもある程度殺せていますし、オコリーも右を出しづらい状況にはなっているものの、如何せんこの状況を打開できません。
特攻精神が必要だと思いますし、これはお客さんが入っていればグロワキへのブーイングは免れないところでしょう。
オコリーも右はあまり使えないものの、左一本でグロワキを痛めつけているがために、グロワキの顔面右側は内出血で真っ赤。
6R、グロワキの消極的すぎる戦法に対する私の不満を察してくれたのか、このラウンドは序盤からグロワキがプレスを強めて前進。パンチはまだまだ出ないものの、身体を振って歩くように出ていきます。
と、思ったら開始30秒のところでオコリーのジャブをダッキングしたグロワキに、オコリーの右ストレートがドンピシャ。
ここで倒れたグロワキに対して、レフェリーはストップを宣言。
ローレンス・オコリーの6RTKO勝利。
結局ワンパンチノックアウトをかましてみせたローレンス・オコリー。このイギリスのプロスペクトは、やはり素晴らしいパワーを秘めています。
それまでの組み立ても、前に出て攻勢をアピールしつつもディフェンシブなグロワキに対してほとんど左一本とステップのみで試合をコントロール、まさに何もさせない横綱相撲。
強豪を相手に素晴らしいノックアウトパフォーマンスを披露して、世界初戴冠を果たしました。
観客がいれば、もっともっと歓喜に包まれた事でしょうね。
一発のパンチングパワーがありつつも、ガード面においてはやや危うさを隠せないオコリーは、さながらデオンテイ・ワイルダーのようなパワーパンチャー。
その割には、ボクシングもでき、きっとあのような感じで出てこない相手に対して塩試合をも厭わず、非常に負けにくいボクシングに徹する事もできる技術を持っているようです。
左一本でポイントをピックアップし、劣勢を意識して出てきたが最後、一発でノックアウト。省エネボクシングの理想のような闘い方でしたね。
WBAスーパー王者のアルセン・グラミリアン(フランス)、WBC王者のイルンガ・マカブ(南アフリカ)、IBF王者にしてWBSSの優勝者であるマイリス・ブリエディス(ラトビア)。統一戦が実現するかどうかはわかりませんが、もしかするとこの王座統一に最も近いのは、この中では一番若いこのローレンス・オコリーかもしれません。
かつて、オレクサンデル・ウシクが盛り上げたこのクルーザー級。ここから王者同士が自然とぶつかり合い、統一に向かっていけばおもしろい。
↓WBSSシーズン2決勝の前の記事ですが、未だに意外とアクセスが多い。
この「不人気」と言われる階級で、どのようなドラマが待っているのかは非常に楽しみです。
時に、このクルーザー級を制して、WBCのみが制定するブリッジャー級でタイトルを獲ったら、2階級制覇になるのでしょうか。まあ、どうでもいいか。
ともあれ、今回のオコリーの出来は、これまでの評価を一層高めるものだったと思います。反して、グロワキは既に終わりを迎えているようにも感じます。
見事な新旧交代劇、これもまた、ボクシングの醍醐味だと感じるのです。
↓3/21の再注目の一戦は、こちら。