至高の4団体統一戦が過ぎ、心にぽっかりと穴が。。。空かない!
ボクシング界は、まだまだ毎週のようにビッグマッチ、注目試合が目白押しです。
週末はふたつの大注目興行がありますが、時間的にはメインイベントがバッチリ被りそう。PBCではウバーリvsドネア、マッチルームではヘイニーvsリナレスと、特に日本人にとっては非常に大切な興行だと思います。
プロモーターたちは、ファンのことをもっと考えてもらいたいですね。
これはこの先の興行にも言えることですが。
先日、ウバーリvsドネアについてはプレビュー記事を書きました。
今回のブログでは、個人的にはウバーリvsドネアよりも注目している、WBC世界ライト級タイトルマッチ、デビン・ヘイニー(アメリカ)vsホルヘ・リナレス(ベネズエラ/帝拳)のプレビュー記事です。
↓ウバーリvsドネアについて
ヘイニーvsリナレスはアメリカの東部時間で23:00開始とありますが、ウバーリvsドネアのShowtimeでの放映開始が同じく東部時間で22:00開始。このShowtime興行はセミファイナルからの放映のようなので、メインはもろ被りの匂いがプンプンしますね。。。
5/29(日本時間5/30)
WBC世界ライト級タイトルマッチ
デビン・ヘイニー(アメリカ)25勝(15KO)無敗
vs
ホルヘ・リナレス(ベネズエラ/帝拳)47勝(29KO)5敗
22歳の若きプロスペクト、ヘイニーに、35歳、プロ52戦の3階級制覇王者、リナレスが挑むという絵にかいたような新旧対決の一戦。
日本人ならば、ここはリナレス応援一択。下手な日本人挑戦者よりも応援したくなる、ホルヘにとっても試練の大一番です。
ザ・ドリーム
デビン・ヘイニーは輝かしい経歴を持っています。アマ時代から名を馳せ、全米ジュニア、全米ユースを制しており、その大会で同じく米国期待のプロスペクト、ライアン・ガルシア(アメリカ)に2度の勝利を得ています。
16歳でプロ転向するまでに138戦(130勝8敗!!)という戦績を残し、プロデビュー。アメリカではプロは18歳から、ということらしく、わざわざメキシコにわたってプロデビューをしているようですね。アマを続けていれば東京オリンピックで金メダル候補と騒がれたはずですが、本人はプロ志向だったんですね。今となっては良い判断だったといえますが。
ただ、そのボクシングはプロ向きというよりはアマ向き。
後期メイウェザーを彷彿をさせるボクシングで、メイウェザー2世ともいわれるディフェンシブなスタイル。
体全体のスピードは大層なもので、そのスピードを持続させる持久力、そして集中力も兼ね備えています。
ただ、大切に大切に育てられたヘイニーの評価は、同世代同階級の米国期待のプロスペクト、「テイクオーバー」テオフィモ・ロペスや「キングライ」ライアン・ガルシア、そして「タンク」ジャーボンタ・デービスよりもやや劣っているような気がします。
テオフィモはリチャード・コミーを完璧にノックアウト、そして当時のPFPキング、ワシル・ロマチェンコにも勝利して4団体王者。
ライアンはSNSで人気沸騰、そして前戦でルーク・キャンベルにダウンを奪われながらも逆転KO勝利、穴はありつつも非常にエキサイティングな戦いを魅せています。
そしてタンクは。。。ひき逃げ等々で最高7年の収監という話ながらも、なぜだか次戦でスーパーライト級の王座に挑戦する予定。前戦ではレオ・サンタ・クルスを衝撃的なノックアウトで破っています。
2015年にデビューした「ザ・ドリーム」ヘイニーは、2019年9月にWBC世界ライト級暫定王座決定戦に勝利し、初戴冠。その後、正規王者へと格上げされます。
ちなみにこの試合の2週間ほど前、ロマチェンコvsルーク・キャンベルの試合が行われ、そこにWBC正規のタイトルがかけられていた上での暫定王座決定戦。ヘイニーへの忖度が働いたような決定戦でした。
その試合で勝利したロマチェンコは謎のフランチャイズ王者へと格上げ(格下げ?)、正規王者のお鉢がヘイニーにめぐってきたわけです。
この王座を現在まで2度防衛していますが、王者クラスとの対戦は前戦のユリオルキス・ガンボア(キューバ)戦のみ。
そのガンボアも試合時(2020年11月)38歳(翌月に39歳)という古豪、仕留めきれなかったこともありヘイニーの評価を上げるような試合ではありませんでした。
もしそんな流れで、ヘイニー陣営がホルヘのことを「実績のある、おいしいロートルボクサー」と思って対戦するのであれば、手痛いしっぺ返しを食うのではないでしょうか。というか、食わしてほしい。
エル・ニーニョ・デ・オーロ
そして我らがホルヘ・リナレス。
私は現役の日本人ボクサーの中で、ホルヘが一番好きです。
あの美しいボクシング、タフネスの部分等完璧ではないからこそ持ち得るあのドキドキ感、あとむちゃくちゃかっこいい。
エル・ニーニョ・デ・オーロ(=ゴールデンボーイ)、ホルヘ・リナレス。
35歳、もうニーニョとか言ってる歳ではないベテランは、17歳のころ、日本でプロデビュー。
かつて「輸入ボクサー」と呼ばれたたくさんのボクサーが、ここまで「日本人ボクサー」として市民権を獲得した例があったでしょうか。
成功例としては、勇利アルバチャコフ、イーグル京和など、世界王者になったボクサーはいるものの、ここまで日本人に愛されたボクサーはきっといません。
2007年に初タイトルとなるWBC世界フェザー級王座をオスカル・ラリオス(メキシコ)を相手に7RTKOで獲得。
2008年には2階級制覇をかけてWBA世界スーパーフェザー級王座をかけてウイーベル・ガルシア(パナマ)と戦い、5RTKOでこれを獲得。
順風満帆に見えたボクシングキャリアでしたが、このタイトルの初防衛戦でファン・カルロス・サルガド(メキシコ)を相手にまさかの1RTKO負け、意外な脆さが露呈した瞬間でもありました。
その後、2011年にアントニオ・デマルコ(メキシコ)とWBA世界ライト級王座を争うも敗退、次戦でもWBCライト級挑戦者決定戦で敗れ、連敗を喫してしまいます。
ここで諦めても偉大な世界2階級制覇王者として名を残したであろうリナレスでしたが、再起。
2014年にはWBC世界ライト級挑戦者決定戦で荒川仁人(ワタナベ)を降し、2014年12月、ハビエル・プリエト( メキシコ)を4RKOで降してWBC世界ライト級王座を獲得、見事3階級制覇!
その後この王座を3度防衛、3度目の防衛戦でアンソニー・クローラ(イギリス)を降してWBA王座を吸収、WBC王座は謎のダイヤモンド王者に。これはリナレスが負傷によりWBCの指名戦ができず、休養王者となりましたがクローラ戦を優先して。。。みたいな流れだったと思います。
まあとにかく、WBC王座は無視してWBA王者となったリナレスは、この王座を3度防衛のあと、スーパーフェザー級で無双していたワシル・ロマチェンコを挑戦者として迎えます。漢です。
スーパーフェザー級でのロマチェンコは、対戦相手が次々に音を上げ「ノー・マス・チェンコ」とまで呼ばれていたまさに無双、名実ともにPFPキングの王者でした。
そのロマチェンコからダウンを奪う健闘を見せますが、10Rにボディで倒されてTKO負け。
その後、スーパーライト級へ進出を試みますが、パブロ・セサール・カノ(メキシコ)にショッキングな1RTKO負け。これはショックだった。。。
それでも尚、リングに戻ってきたリナレスはそこから2連勝、ライアン・ガルシアやハビエル・フォルトゥナとの一戦が浮かんでは消え、とうとう決まったのがこのヘイニー戦。
リナレスのYoutubeチャンネルでは、カノ戦での敗北を期に日本に「戻ってきて」、今は「これまでで一番調子が良い」と語っています。
若く、勢いのある王者をリスペクトしつつも、モチベーションはすこぶる高そうです。
全米が注目するデビン・ヘイニーを倒し、WBC王座を戴冠することができれば、さらなるビッグマッチへ加速することもできるでしょう。
35歳、8月には36歳となるリナレスに、残された時間は多くはありません。
ヘイニーは速く、巧く、なかなか捕まえきれないボクサーであり、誰がやっても戦いにくいボクサーだと思います。
リナレスは、今戦で「プレス、プレス」と繰り返し語っています。ここまで作戦を明かしていいのか、というほど開けっぴろげに「プレッシャーが大事」と語り、運動量の多いヘイニーに対してなるべく少ない運動量でプレスをかけ、コンビネーションを当てるという作戦だそうです。
場所は、ラスベガス。
リナレスにとってもホームみたいなものですが、純粋なアメリカ人であるヘイニーにとってはより、ホーム。判定はおそらくヘイニー寄りになってしまうでしょう。
互角のラウンドはすべてヘイニーに流れるかもしれないので、リナレスには12Rのうちのどこかでヘイニーを捕らえ、倒し切ってもらいたいと思います。
リナレス52戦のキャリアの中で、実は世界タイトルへ挑戦するのは初めてのこと。これまではすべて決定戦での戴冠でした。(厳密に言うと、WBA世界ライト級王座だけは、アンソニー・クローラの王座へ「挑戦」といえますが、これは統一戦。)
ホルヘ・リナレスのここまでのキャリアの集大成の一つとして、王座返り咲きに大いに期待したいと思います。
ちなみに、この興行はDAZNで生配信。当日、ウバーリvsドネアと時間が被るのでしょうが、私はリアルタイムはこちらを見ます。
ちなみに、リナレスはホールで会った時、気さくに写真とってくれましたし、「僕の方が手が長いから」と言って私の携帯でシャッター押してくれました。こんなファンサービス、世界のトップボクサーでいないですよね。
最後に、もう勝った体で先に言っておきます。「ヤッターーーー!!!!」と、期待を込めて。