いよいよ、間もなく。
今週末からはじまる、3連続の大注目トップランク興行。
井上尚弥vsマイケル・ダスマリナス、ワシル・ロマチェンコvs中谷正義の試合は日本国民(のボクシングに少しでも興味のある人)全員が注目しているわけでありますが、忘れてはならない、シャクール・スティーブンソン。
このシャクールvsジェレミア・ナカティラという一戦は、WBO世界スーパーフェザー級暫定王座決定戦となる模様で、セミファイナルにはあのホセ・ペドラサが登場します。
なかなかの注目興行であるはずが、なんと日本での中継先はなし。
トップランク興行は、WOWOWが中継してくれなければFITE.TVのPPVで見れることが多かったですが、今回はそれもなし。FITEがトリラー社の傘下に入ったことが原因でしょうか。
このシャクール、アメリカ国民だけが見れれば良いボクサーなのか、と言ったらそうではないはず。未来のPFP候補、是非とも全世界で見れる状態を整えてもらいたいものですね。
ということで、今回は注目株、シャクール・スティーブンソンの暫定王座決定戦と、そして密かに(でもない)個人的に大好きなホセ・ペドラサが登場する、トップランク興行のプレビュー記事です。
6/12(日本時間6/13)
WBO世界スーパーフェザー級暫定王座決定戦
シャクール・スティーブンソン(アメリカ)15勝(8KO)無敗
vs
ジェレミア・ナカティラ(ナミビア)21勝(17KO)1敗
元WBO世界フェザー級王者、シャクール・スティーブンソン。リオ五輪の銀メダリスト(決勝でロベイシー・ラミレスに敗北)で、その実績を引っさげてプロ転向。
フロイド・メイウェザーもその才能を評価され、メイウェザープロモーションも獲得に名乗りを挙げたとのことですが、本人の目指すところはアンドレ・ウォード。
なかなか慎重な闘いぶりで、はっきり言ってエキサイティングとは程遠いですが、その分負けづらいボクシングをします。
試合の前半で相手の動きを見切り、決して冒険することなくポイントをピックアップし、結果シャクールの手があがる、そんなボクシングです。
2017年にプロデビューしたシャクールは、2019年1月に地域タイトルを獲得、その年のうち(10月)に空位のWBO世界フェザー級王座を獲得。当時無敗のジョエト・ゴンサレス(アメリカ)を一方的に破り、初戴冠しました。
ディフェンス技術、身体全体のスピード、踏み込みの鋭さ、高速コンビネーションと現代ボクシングの粋を集めたようなボクシングのシャクールは、世界初戴冠後、2020年は調整試合を2試合挟み、今回の一戦を迎えます。
WBOは世界王座を返上して階級を上げると、自動的に世界ランク1位となり、指名挑戦権を得ます。WBO正規王者であるジャメル・ヘリング(アメリカ)に対し、このシャクールとの指名戦をオーダーする予定でしたが、コロナでうやむやになり、ヘリングは前戦、カール・フランプトン(イギリス)との防衛戦を選択、これに見事勝利しています。
元々この勝者にシャクールが挑戦、で良かったのだと思いますが、今回この試合が組まれ、後日、暫定王座がくっついてきた流れです。
この後、ヘリングはこの勝者との対戦を義務付けられています。ここでシャクールが勝てば、今度こそヘリング挑戦が叶うわけですが、ヘリングがもし返上すればこの暫定王座戦の勝者が正規王者へと格上げのようです。それを見越しての暫定王座戦なのでは。。。と勘ぐりたくなるような流れ。もしかすると、WBO内ではヘリングの返上というのはもう話が通っているのかもしれません。でなければ「暫定王座」なんて必要ないわけですからね。。。
さて、そんな「おもしろくない」ボクシングをするシャクールですが、今のところまだ穴が見つかっていない、サイエンス・ファクターの高いボクサーです。
さて、ジェレミア・ナカティラ。発表されたとき、この名前を知っている人は少なかったと思います。私も知りませんでしたが。
ハイライトで確認すると、そのKO率の通り、かなりパワーのありそうなパンチャーです。距離もなかなか長そうですが、とにかく強振するタイプのオーソドックスのボクサー。
思い切り打つ右は明らかに威力がありそうで、前後のステップは良く、外してすぐ打てるフィジカルも持っていますが、いかんせんこのパンチがシャクールに当たるのか、というとちょっと難しいかもしれません。
シャクールは右利きのサウスポーで、利き手のジャブが非常によく、サウスポースタンスからのこの右ジャブで、対戦相手はなかなか中に入れません。このナカティラの自慢の強打は、おそらくシャクールのそのジャブと距離感によって、無効化されてしまうのではないでしょうか。
シャクールは、倒すタイプのボクサーではありませんが、前戦ではノックアウトを試みる素振りも見せていました。やや攻撃的なボクシングにシフトしようとしているのか、ただ単に実力差があったので倒せるかと思ってプレスをかけたのか、は謎ですが、今回こそ、シャクールは相手を打ちのめすべきでしょう。
完璧に見えて、まだまだきっと成長途中であるシャクール。新たな一面を見れることを願ってやみません。
スーパーライト級10回戦
ホセ・ペドラサ(プエルトリコ)28勝(13KO)3敗
vs
ジュリアン・ロドリゲス(アメリカ)21勝(14KO)無敗
さて、私はペドラサの美しいボクシングが大好きです。とりわけ、そのジャブが。
上の記事でシャクールに対しては若干辛辣に綴ってしまいましたが、「ノックアウトを目指さない」ボクシングが、「エキサイティングでない」ボクシングが、悪だといっているわけではありません。
このペドラサも、どちらかというと「エキサイティングではない」(強引に倒しに行く、というボクシングではない、という意味です)ボクサーだとは思いますが、ペドラサのテクニックはずっと見ていられます。不思議なものです。
ペドラサはここまでスーパーフェザー、ライトと2階級を制覇、スーパーライト級での世界タイトル獲得を目指しています。スイッチをしながらのボクシングですが、どっちが前手になってもこのジャブは素晴らしい。
対するジュリアン・ロドリゲスは無敗のプロスペクト。もっと絞れるんではないか、という体つきな分、非常に頑丈そうで、またパワーもありそうです。
パワーパンチを連打ではなってくるタイプの怖いボクサーで、連打の回転力、そしてそのスピードもなかなかのもの。
まだ強豪との対戦がなく、なんとも言えない部分もありますが、今回のペドラサ戦は試金石となり、もしここに勝つようであればあっという間に駆け上がっていくでしょう。
ただ、きっとそうはならない。
ペドラサが、このロドリゲスにボクシングレッスンを施し、世界の壁を見せつけてくれると思います。
そしてこの無敗のプロスペクトを一蹴したあと、目指すはそのうちにテイラーが返上し、個々にばらけるいずれかのスーパーライト級タイトル。スーパーライト級のベルトは、トップランクにすべてあります。
もう少し、ガマンすればきっとペドラサにチャンスが来るはずです。ペドラサには、良い勝ち方をしてもらいたいものです。
ということで、6/12(日本時間6/13)のこの興行は、メイン、セミファイナルともに「スウィート・サイエンス」を堪能できる興行となると思います。そして、更に!この興行には、プエルトリコの期待の星、ザンダー・ザヤス(8戦全勝6KO)も登場です。ペドラサと違って、プエルトリカンらしいプエルトリカン、このザヤスにはミゲール・コットやフェリックス・トリニダード等のレジェンドクラスの期待値があるようですね。今回の試合はまだまだ経験を積むための試合ですが、まだ18歳、非常に楽しみなボクサーです。
そんなトップランク興行ですが、今回、日本での放映はありません。色々と調べてみると、今のところ、イギリス等でも放映がないようですね。。。と、思っていたらこの記事アップ後間もなく、トップランクが英国スカイスポーツと契約したと。
イギリスでは、スカイスポーツで見られるようです。
そんなわけで、あくまでもこっそりと、ESPN+に登録してみました。しっかり観戦記は書きますね。
↓ESPN+に登録するには、VPNが必要です。(参考記事)