先週末は、日本、イギリスで連日世界タイトルマッチ。
仕事もあって練習もあるので忙しかったですが、大いに楽しい週末でした。
↓観戦記
そしてもう4月も最終週、週末最も注目はやはり、スーパーフェザー級の覇権を争う、オスカル・バルデスvsシャクール・スティーブンソンではないでしょうか。
ベルチェルト戦では出色のパフォーマンスを見せたバルデスは、コンセイサン戦ではドーピング疑惑+疑惑の判定というダブルパンチ。対してシャクールは、塩だ塩だと言われつつも、ヘリング戦では素晴らしいパフォーマンス。
前戦を見る限りでは、シャクールが圧倒的優位にたってもおかしくないこのマッチアップですが、このバルデスvsシャクールこそが、実績、勢いから言って現時点でのスーパーフェザー級最強決定戦、ということで間違いはないでしょう。
ということで今回は、IBF王者である尾川堅一(帝拳)の対抗王者でもあるWBC王者バルデスとWBO王者シャクールの王座統一戦、そのビッグマッチのプレビュー記事です。
WBC・WBO世界スーパーフェザー級タイトルマッチ
オスカル・バルデス(メキシコ)30勝(23KO)無敗
vs
シャクール・スティーブンソン(アメリカ)17勝(9KO)無敗
どこを見ても表記はバルデスvsスティーブンソンです。これはちょっと不思議な感じがするのは、私だけでしょうか?
この試合のAサイドはスティーブンソンだと思っているのですが、そうでもないのかもしれません。ただ、当然ながらオッズはスティーブンソン優位。
オスカル・バルデスは日本人にとっても馴染みの深い、2階級制覇王者です。
プロデビューは2012年なので、ちょうど10年目を迎えていますね。
メキシカンプロスペクトにありがちな、育てるためのマッチメイクを経て、2016年4月、19戦目でNABO北米フェザー級王座決定戦に出場、エフゲニー・グラドビッチ(ロシア)を4RTKOで退けて地域王座を戴冠。
その少し前から対戦相手の質を少しずつ上げていたバルデスは、この元IBF世界フェザー級王者を破ることで、大きく実力を証明した形となりました。
その3ヶ月後、WBO世界フェザー級王座決定戦に出場したバルデスは、マシアス・ルエダ(アルゼンチン)を2RTKOで降し、世界王座初戴冠。
ネクスト・スター候補だったバルデスに、初防衛戦で挑戦したのは当時ロマンサ雅に所属していた、大沢宏晋。やや強引さの見られるバルデスでしたが、大沢は歯が立たず。タフさ、ハートの強さこそ示したものの、完敗でした。
しかし、大沢戦前に20勝(18KO)無敗という戦績だったバルデスに、そこまでの怪物性を感じなかったのもまた事実。フェザー級という階級だったがために、次なる日本人挑戦者の登場が待たれました。
その後バルデスはミゲル・マリアガ(コロンビア)を退けたあと、ゼネシス・カシミ・セルバニア(カシミ)の挑戦を受けます。
この頃のセルバニアは、井上尚弥(大橋)のスパーリングパートナーとして大いに名を挙げている頃で、個人的には実は結構期待が高かったです。
セルバニアは4Rにダウンを奪取するものの、5Rにダウンを奪い返され、その後はバルデスの手数が上回った印象です。ボクシングの技術、ともいうべきコンビネーション、それをセルバニアにとっては嫌なタイミングで出し、「倒す」というよりも「勝ちを手にする」ボクシングを展開したバルデス。
その後は1階級下の元世界王者、スコット・クイッグの他、二人の挑戦者を退け、合計6度の防衛(2KO)でタイトルを返上、スーパーフェザー級へ参戦することになります。
2019年11月、スーパーフェザー級初戦として行われたアダム・ロペス(アメリカ)戦では7RTKO勝利を上げたものの、2Rにダウンを奪われ、その後もロペスペースで試合が進む等大苦戦と言って良い内容。
辛くも逆転KO勝利を挙げたバルガスでしたが、スーパーフェザー級への適正には疑問符がついた試合となりました。敗れたロペスは逆に名を上げ、その後もチャンスに恵まれている印象です。
結果的に「強豪だった」ロペス戦の次は、ジェイソン・ペレス(プエルトリコ)戦。この試合ではダウンを奪って、過去KO負けのなかったペレスを最終10Rで倒し切り、実力をアピールしたバルデス。次に控える「メキシカン・スーパー・ファイト」ミゲル・ベルチェルト(メキシコ)戦へと弾みをつける勝利でした。
この試合は大変に素晴らしいパフォーマンスを見せて、とてつもないノックアウト劇を見せたバルデス。ライバル対決を制すると共に、WBC世界スーパーフェザー級のタイトルを獲得、当時スーパーフェザー級最強とも目されていたべルチェルトに対してあの倒し方は、本当に衝撃的でした。
↓観戦記
チーム・レイノソに入ったのは、この試合の少し前からだったと思いますが、この試合ではレイノソ仕込みのカネロ・ディフェンスが非常に上手くハマり、攻撃的ながら調子の良くなさそうなベルチェルトを圧倒していました。この試合はベルチェルトを応援していましたが、ウェイト面での限界を感じるとともに、バルデスの明るい未来が見えてしまったものです。
しかし!!
その感動的なパフォーマンスから一転、その王座の初防衛戦として迎えたロブソン・コンセイサン(ブラジル)戦ではまさかの連発。
試合前にはVADAテストでドーピング陽性反応が出たにも関わらず、「ハーブティーに入っていた」という弁明。しかもこれをWBCが容認し、バルデスはお咎めなし。
ハーブティー・ドーピングのバルデスは、試合前のそんなゴタゴタに心を乱されたのか、コンセイサンに大苦戦、というかほぼ負けていました。
前半、これまでで一番の出来を見せるコンセイサンに明らかにペースを奪われ、失点していったバルガス。後半に入るとやや失速気味のコンセイサンに対して、少々は挽回したとは思います。さらには、突然のコンセイサンに対しての減点もあり、バルガスのホームということも相まって、結果は3−0のバルデスの勝利。最もひどい117−110でバルガス、という判定結果においては、到底容認することはできません。
私の感覚的には、(本来あってはいけないことですが)「ホームタウン・デシジョン込み」での115−112バルデスは、ギリギリ何とか、苦渋の選択をしたとして容認できるもの、だったように思います。この試合が最悪の判定、と呼ばれているのは、試合前のバルデスのドーピング疑惑により、バルデスのことを認めたくないという人が多いのではないか、と思います。
ということで、ハーブティとそのパフォーマンスにより、ここで大きく評価を落としたと思われるバルデスは、完全に正念場を迎えます。
↓疑惑の判定の一戦、観戦記
そのキャリアで山あり谷あり、試合によって評価を上げ下げしているイメージのオスカル・バルデスとは違い、シャクール・スティーブンソンというボクサーは良くも悪くも非常に安定しているボクサーです。
バルデスもかなりしっかりとしたアマキャリアがあり、ロンドン五輪を含めた多くの国際大会に出場していますが、こちらのシャクールの方が実績においては上、といって良いでしょう。
2014年のユース五輪で金メダル、2016年のリオ五輪では決勝でロベイシー・ラミレスに惜敗しますが、銀メダルを獲得したシャクール。
フロイド・メイウェザーからも「ネクスト・メイ」と称賛され、プロ入りの際はメイウェザープロモーションも獲得に動きますが、結果トップランクと契約し、プロデビュー以後はトップランクの育成プログラムに沿って、慎重なマッチメイク。
2017年、2018年とハイペースで試合をこなしたシャクールは、2019年初頭に地域王座を獲得、その後は世界戦も経験しているクリストファー・ディアス(プエルトリコ)、アルベルト・ゲバラ(メキシコ)を立て続けに撃破。
この頃、オスカル・バルデスが返上したWBO王座を巡って、ジョエト・ゴンザレス(アメリカ)と決定戦を行い3−0の判定で勝利、見事世界王者となりました。
この王座は通過点、とばかりにすぐに返上、フェリックス・カラバロ、トカ・カーン・クラリーとのスーパーフェザー級テストマッチを行い、WBO世界スーパーフェザー級暫定王座決定戦に臨みます。
この時の正規王者は、ジャメル・ヘリング(アメリカ)でしたが、ヘリングが挑戦者として迎える予定だったカール・フランプトン(イギリス)戦の日程がずれ込んだことから、指名挑戦権を持っていたシャクールへの救済措置のような暫定王座戦でした。
確か、この試合直前に「暫定王座戦になる」と発表された覚えがありますね。
この暫定王座戦におけるシャクールの相手、ジェレミア・ナカティラ(ナミビア)は、当時はほぼ無名のボクサーでしたが、ハードパンチの持ち主。のちにミゲル・ベルチェルトを降すことになるこの未知のボクサー相手に、ヘリングは安全運転に徹してナカティラの強打を封印、フルマークの判定勝利でWBO世界スーパーフェザー級暫定王者となりました。
この一戦は、シャクールがシャクールらしさを発揮した一戦となったわけですが、その次、ジャメル・ヘリングとのWBO王座統一戦のシャクールは、一味違いました。
↓観戦記
その優れたボクシング・テクニック、抜群の距離感、そしてスピードをもつシャクールは、これまで苦戦らしい苦戦はしていないし、困った経験もしていないと思われます。
自分のペースを崩さず戦うスタイルは、ややもすると退屈にも映る。
しかし、このヘリング戦でのシャクールは、非常に攻撃性に溢れ、早々に距離を支配した後、ジャブ、コンビネーションでヘリングを攻め立て、削って削って10RTKO勝利。
プレスをかけたり、カウンターを狙ったりとやりたい放題のシャクールは、「戦い方」こそ大きくは変わらなかったものの、非常にパワフルで、この階級にビッタリと合ってきた、と感じました。
ヘリングが、ナカティラほど一発のパンチングパワーに優れたボクサーでなかった、ということも、シャクールの警戒力を弱まらせ、シャクールからプレスをかける展開となった一つの要因なのかもしれません。
さて、充実のシャクールに、アップダウンの激しいバルデスはどのように戦うか。
バルデスも、自分から攻めて一発で相手を倒す、というイメージはありません。どちらかというと、一発で倒す場合は下がりながらのカウンターでしょう。
カウンター合戦となると、シャクールに分がありそうですし、もしバルデスがアグレッシブに攻めても、シャクールには通じなさそうな気がします。
これは王座統一戦で、ビッグマッチではあるものの、正直、バルデスの勝ち目は薄いような気がします。後は、バルデスがどこまでシャクールをトラブルに持っていけるか。シャクールはこれまで、トラブルに陥ったことがなく、この辺りが唯一、未知数な部分。これはあまり考えられませんが、バルデスが全てをかなぐり捨てて、消耗戦を挑めば、シャクールにとって嫌な展開になる、ということも考えられます。
ともあれ、ベルチェルトを屠った時のように、大一番でこそ力を発揮するかもしれないオスカル・バルデス。シャクール優位予想ながらも、シャクールも油断はできません。
バルデスはハーブティを飲まないように、またメキシカンビーフを食べないように、細心の注意を払ってもらいたいですね。
ということで、またまた長くなってしまったので、後は簡潔に。
アンダーカード!
この興行のアンダーカードはなかなか発表されませんでしたが、キーショーン・デービス(アメリカ/4勝3KO)がエステバン・サンチェス(メキシコ/18勝8KO1敗)とライト級8回戦。キーショーンはなかなかキャリアのある相手ですね。
そしてニコ・アリ・ウォルシュ(アメリカ/4勝3KO無敗)も登場する予定です。
このニコ・アリ、キーショーンの試合はWOWOWで放送されるかもしれませんね。
その他、おそらくWOWOWの放送には乗ってきませんが、ESPN+のプレリムス(前座試合)として放送されそうなのが以下のカード。
13勝(11KO)無敗のライト級のプロスペクト、レイモンド・ムラタヤ(アメリカ)が登場のようです。対戦相手は、16勝(11KO)2敗のジェレミー・ヒル(アメリカ)。
その他にもスーパーフェザー級プロスペクトのアンドレス・コルテス(16勝9KO無敗)、18歳のライト級プロスペクト、アブドゥラ・メイソン(1勝1KO無敗)、東京五輪に出場したミドル級、トロイ・アイズリー(4勝2KO無敗)、ライト級のチャーリー・シーヒー(2勝2KO)と目白押し。全部気になりますが、これを見ている時間はないかもしれません。
放送・配信
トップランク内のプロスペクトからトップボクサーがこぞって登場するこの興行は、アメリカではESPNが生中継。次代のスター候補であるシャクール・スティーブンソン、オスカル・バルデスというビッグネームへの勝ち方によっては、かなり目立つ存在になりそうです。
そして日本では、WOWOWがオンデマンドで生配信をしてくれます。
放送時間は、5/1(日)AM11:00頃からのようで、翌日の5/2(月)の21:00からの本放送でもタイムリーオンエア。
WOWOWはフューリーvsホワイトに続き、生中継や生配信が続きます。
WOWOWの今後の生配信予定としては、
5/15(日)11:00〜世界スーパーウェルター級4団体統一戦
ジャーメル・チャーロvsブライアン・カスターノ
5/30(日)11:00〜WBAレギュラー世界ライト級タイトルマッチ
ジャーボンタ・デービスvsロランド・ロメロ
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