なんだかんだと時間がなく(仕事だから当たり前なんですが)、ララvsウォーリントンにしても、この駿河男児興行にしてもリアルタイム視聴はできませんでした。
SNSやサイトを見ないようにして、帰宅後すぐに開いたのはこちらの興行。
今回のブログでは、駿河男児ジムのオールメインイベントの観戦記です。
↓プレビュー記事
9/5(日)静岡(13:00開始)
駿河男児Desafio9〜オールメインイベント〜
スーパーバンタム級8回戦
木村天汰郎(駿河男児)6勝無敗2分
vs
干場悟(蟹江)7勝(2KO)5敗
初回から木村はしっかりと距離を見切り、ジャブというか左を突き出して距離を測っての右ロングフック、左フック、右アッパーをヒット。
丁寧にナックルを当てているので、もらいすぎると干場もダメージを負ってしまいそうです。干場は低い姿勢から中に入ろうともがき、木村を追いかけていきます。
2R、木村のアウトボクシングに対して、ガードを固めてしつこく追い下がる干場。干場のガードも良いいですが、木村がフックを打ってはサイドに回るのでなかなか良いポジショニングまで行けません。
無観客、声出し禁止、レフェリーの声はよく通りますね。
3R、よりプレスを強めた干場、クリンチの距離でも決して手を抜きません。近づいて腕を絡めて強引に打っていきます。このラウンド前半は木村はなかなかサイドに回れませんが、後半に入るとこれまで以上に脚を使い始めます。4Rも展開は変わらず、木村の左右のアッパーのいくつかがヒット。ともに豊富な運動量、ハイペースなまま試合は進んでいきます。
5R、顔面をガッチリとガードで固める干場に対して、木村はボディへの連打。様々なアングルからパンチを打ち込みますが、干場の心は折れません。6R開始早々に距離を詰める干場としては、やはりコーナーに詰めてのラッシュをしたいところ。干場が攻めたところで木村が押し返し、もみ合いの展開になれば干場の土俵かもしれません。
7R、干場は接近戦でよく手が出ます。距離をつくれば木村の左右が飛んでくるので、なんとしてもくっつきたい干場と中間距離で戦いたい木村、お互いの距離は明白です。最終ラウンドも展開は変わらず、干場の接近を完全には阻む事はできない木村と、捕まえきれない干場。ただ中間距離での手数、打ち終わった後のポジショニング等々、随所で華麗なボクシングを魅せた木村天汰郎が、3-0で判定勝利。
クリーンヒットでも大きく上回った木村でしたが、干場のラフな攻撃の前に思うようなボクシングはできなかったのかもしれません。勝利者コールのときは、首をかしげるような仕草。
干場は健闘と言える内容だったように思いますし、木村も最終盤までしっかりと手を出す、気持ちのは入ったボクシング。
60.0kg契約8回戦
湯川成美(駿河男児)2勝(1KO)無敗
vs
粟田祐之(KG大和)12勝(5KO)8敗1分
実は一番楽しみにしていた一戦。前日計量のあとの記者会見で、自ら「ノーモーションの右が得意」と注意すべき点を対戦相手の湯川に教えて上げた粟田(笑)。注目の一戦です。
初回、サウスポー粟田が細かいジャブ、力強いパンチを振るう湯川。早々に粟田の左ストレートがヒット。これがあわちゃん必殺、ノーモーションの左ストレート。。。
その後もジリジリと下がりながらジャブを飛ばし、コンビネーションをヒットする粟田。湯川はなかなかパンチを打ち込めない時間が続きます。
終盤、今度は湯川の右がヒット!したかと思えば、その後粟田の左ストレートカウンター湯川にクリーンヒット、湯川は膝を折るダウン!再開後、終了のゴング!
2R序盤、ダウンを奪った左と同じカウンターをヒットした粟田、ここまで思い通りに試合を進められています。湯川からすると粟田は遠く、なかなか手が出せない状況が続きます。
「体振って」のセコンドの指示を聴き、体を振りつつ前進、手が届く距離になればパワフルなパンチを振るっていく湯川。このパンチは怖いが、空振りすると粟田の左ストレートが飛んでくる、プレスをかけつつも厳しい展開の湯川。
3R、距離が詰まるとスッとクリンチに行く、または細かいコンビネーションを出して湯川を止める粟田は、さすがキャリアがあります。
湯川は右ストレートから入るパターンが良い感じに機能し始めますが、ここでも粟田のカウンターは怖い。しかし終盤、粟田はダメージを負ったか、ロープに詰まった粟田に湯川は猛攻、力強いパンチを連続で打ち込みます。
それでも随所で左カウンターをヒット、勝負の行方はまだまだわかりません。
4R、粟田のジャブはよく出ますが、前ラウンドからの湯川の右から入るパターンに反応が遅れています。ロープに詰まった粟田にパンチを浴びせかけ、今度は粟田がダウン!
ダメージが残る粟田に、湯川はパンチをまとめます。防戦一方になろうか、というところで粟田はなんと打ち返し、このピンチを脱出。しかし湯川の猛攻は止まらず、今度は右ボディでダウンを演出。
残り時間は 30秒、ダメージを抱えながらも懸命にパンチを繰り出す粟田。しかし、ここで湯川の左フックがカウンターでヒット!ゆっくりとリングに崩れ落ちる粟田を見て、レフェリーはストップを宣告。
湯川成美、4RTKO勝利。
攻守の展開が目まぐるしく変わる、とんでもない好試合でした。粟田は非常に残念でしたが、初回にダウンを奪い、その後も含めて見せ場を大きくつくりましたね。
必殺の左ストレートは幾度と無く湯川を捉え、それでもセコンドの指示をしっかりと聞いた湯川、粟田のお株を奪うようなノーモーションの右を起点として攻め込み、会心の勝利を上げました。
湯川成美、今後も要注目ですね。
バンタム級8回戦
村地翼(駿河男児)7勝(3KO)1敗
vs
中村祐斗(市野)11勝(8KO)6敗1分
成長著しい村地は、市野ジムの中村を迎えます。中村はこれを喰えば一気にランキングを手に入れる事ができ、おそらく高いモチベーションを持って臨むと思われます。
初回、ともに安全な距離から、踏み込んでコンタクトの瞬間での攻防が冴えます。スピード豊かな両者のこの居合の切り合いのような攻防は、一瞬たりとも目が離せません。
そんな中で、村地のクリーンヒットが上回っている印象、村地はパンチの返しが非常に速く、1、2発が当たらなくてもその後のパンチを当てられている、という印象です。
2R、序盤は中村が2度3度と踏み込み、村地はやや守勢。しかし随所ではカウンターをヒットします。3Rもアグレッシブなのは中村、しかしクリーンヒットの印象はカウンターを痛打する村地。
4R、ノーガードで誘う村地、脚は非常によく動いています。ここも単発ながらカウンターを決め、ポイントをピックアップしています。5Rも展開として同様、ここに来てガードを下げたスタイルからの村地のジャブが幾度も中村の顔を跳ね上げます。
6R、展開は変わらないのですが、中村のしつこいアタックが奏功し始めます。村地の左眼はこれまでの攻防で腫れており、視界が悪くなったのかもしれません。この回、中村の右ストレートが村地にヒット、息を吹き返してきました。
ラウンド終了後のアナウンス、村地の左眼下の腫れはバッティング、とのこと。
7R、ガードを上げて迎え撃つ姿勢の村地。かわされてもいなされてもしつこく攻める中村。その手数に村地はなかなか攻めに転じる事ができません。
ラストラウンド、ポイントではやや劣勢と思われる中村は、最後の最後までしつこく、気持ちのこもったファイトをみせます。村地はこのラウンドもジャブ、カウンターをヒット、印象的な場面をつくりあげていきます。ただ、顔の腫れ、鼻血、ダメージはかなり負っています。
最終ラウンド終了のゴング、両者にとって非常にタフな一戦が終了。
判定は、1-1、3者3様のドロー!
個人的には村地の勝利かと思いましたが、割れましたね。中村の攻勢点、ボディにポイントが流れたジャッジもいた、ということですね。村地は印象的なクリーンヒットを奪いましたが、やや手数が少なすぎたかもしれません。
村地の左眼の腫れは心配ですね。試合終了後の勝利者インタビューを見た感じ、かなり腫れています。早くインタビューを切り上げて、早く医務室なり病院なりに行った方が良いのではないでしょうか。眼窩底とかやっていそうです。。。
フライ級8回戦
畑中建人(畑中)11勝(9KO)無敗
vs
須藤大介(三迫)7勝7敗3分
世界ランカー、畑中建人、プロ12戦目は三迫ジムの須藤。ここは力の差を見せつけて勝ちたいところです。
初回、小柄なファイター須藤がガンガン攻めます。畑中はそれを迎え撃ち、いきなりの打撃戦。かなり低く入ってくる須藤にジャブ、アッパーやショートフックを上手くコネクトする畑中。
2R、須藤は技術では劣るものの、体に当てれば止まらない連打が出るエネルギッシュなファイター。このしつこい連打、これを一つの型として練習しているであろうウィービングからの踏み込みは、畑中も手を焼いているように見えます。
3R、変わらず打撃戦、畑中の多彩なボディが良い。しかしこの須藤も心身ともにタフ、全く退きません。4R、セコンドからの指示か、近づいてはコンパクトなアッパー、中間距離では左ストレートともいえる強いジャブを使い始める畑中。ストレートは当たりづらいですが、須藤に対してアッパーは有効です。
5R、そうすると今度は須藤がアッパーを警戒して前に腕を持ってきて前進、止まらない連打で畑中を苦しめます。終盤にも須藤が攻め込み、ここは須藤優勢のラウンドです。
6R、変わらずしつこく手数で攻める須藤。畑中は上体の動き、リズムを意識しているように見えます。7R、接近戦での打撃戦。畑中は近い距離でもカウンターを取れますが、とにかく須藤の手数は多い。効果的なパンチは畑中の方が多いですが、この須藤という不器用に見えるボクサーは愚直に前進を続け、そのハートに驚かされます。終盤、いくつもカウンターを取られても手を休めることのない須藤、胸を打たれます。
ラストラウンド、顔面もボディも、これだけ打たれてもその前進を止めない。すでに畑中を倒せる力は残っていないものの、とにかく愚直に前に出て左右のパン地を繰り出すこのボクシング。身体だけでなく、魂そのものを燃やして真っ向からファイトする、そんな美しさに感動を覚えた8R。
須藤大介、戦績だけを見ると、噛ませ犬にすぎません。しかし、世界王者を嘱望される畑中建人というボクサーに、大きな大きな試練を与えたこのボクサーを、覚えていようと思います。
判定は、3-0で畑中。
打てども打てども前進をやめず、手を出し続けてくるこの意地の塊のようなボクサーと真っ向から打ち合い、退けた事は彼の中に大きな財産を残したと思います。
人生もボクシング人生も、順風満帆とはいかない。時には逆風も吹き荒れるものです。この、まだまだ下積みといえる段階で、逆風に競り勝ったということは、きっと、今後の畑中にとって良い事だと思います。
スーパーフェザー級8回戦
木村蓮太朗(駿河男児)4勝(3KO)無敗
vs
齊藤陽二(角海老宝石)3勝(3KO)1敗2分
世界を期待されるホープ、木村蓮太朗のプロ5戦目!勝ち星がすべてKOというハードパンチャー、齊藤は早い回でのKOも多く、序盤から集中していかなければいけません。齊藤は、田中亮明Tシャツで入場。アグレッシブに攻めに攻めて、幾度も番狂わせを起こした田中亮明にあやかっているのでしょうか。
初回から木村の速いジャブが飛び、齊藤はグイグイと強引なプレス。と、開始30秒で齊藤のショートの右フックがヒット!木村がダウン!!波乱の幕開けです。
その後、木村はリズムに乗ってきましたが、齊藤の渾身のパンチ、鋭い踏み込みは非常に怖い。
2R、木村は引き続きジャブがよく出ます。利き手の左手もジャブのように使い、やはりボクシングが巧い。齊藤はアマエリートが嫌がるような、力強く振っていくスタイルを堅持。齊藤は木村の逃げ先を塞ぐような足運び、こちらも追い方が巧い。
齊藤は右から入るパターンが良いですが、後半は木村のコンビネーションが多彩で手数が少なくなってしまいます。
3R、ガードをしっかりと固めてチャンスを待つ齊藤、手数は少なくても良い、という感じでしょうか。それとは真逆に、軽いパンチをコツコツと当てる木村。
木村の左ボディは素晴らしく、齊藤にダメージを与えていきます。
KO勝利に全振りか、と思うような齊藤の攻撃は、なかなかヒットを奪えませんが迫力は十二分、齊藤はやるべきことがわかっている感じ。
4R、とにかく木村のジャブはよく当たります。これはすごい。打ち終わったあとのヘッドムーブも素晴らしいですね。
齊藤は一切退かず、打たれても前に出るボクシングを敢行。その中で一発当たれば試合をひっくり返せる、という目算なのかもしれません。
などと思っていたら、ここでまたも齊藤の右で木村がダウン!!立ち上がってラウンド終了!これは。。。ひょっとしてしまうんでしょうか!?
5R、木村はもう1ポイントも落とせません。木村のコンビネーションが齊藤を襲い、齊藤は強く返す、という接近戦での攻防。
齊藤の右ストレートを被弾した木村は、しっかりと打ち返して打撃戦に突入します。齊藤は身体も強く、打たれた時の見栄えが悪くありません。
6R、後がない木村は、打撃戦へと身を投じます。回転力、的確性で木村が上回ります。しかし、齊藤は非常にパワフル。
このラウンド、ダメージを負ったかはじめて後退した齊藤。しかしまだまだ心は折れません。
木村も鼻血を流す等、両者にダメージが見える大激戦です。
7R、木村のジャブは相変わらず良い。ダメージ、疲労が蓄積しているのは齊藤でしょうか。
ガードを固めて前進、一瞬のチャンスを狙う齊藤の右は怖く、木村も思い切った攻撃に移れません。しかし、手数とクリーンヒットでは、このラウンドも木村でしょう。
ラストラウンド、まだ右を狙って出る齊藤。ここで木村のボディが効いて後退。齊藤は打ち返すも疲労、ダメージ両面でしょうがいよいよ力が入りません。
絶好のチャンス到来の木村ですが、木村も同じく疲労、ダメージからこのチャンスを活かし切る事はできず。
しかし、取れるべき時にしっかりとポイントを獲った木村、2-0の判定勝利。
個人的な採点は、5Rが齊藤かな、と思っていたので(微妙なラウンドでしたが)ドローかな、とも思いました。多分勝負が分かれたのはあの5R、木村蓮太朗が2度目のダウンを喫した時。
あのラウンド以降、盛り返した木村はすごいのひとこと。立て直し方が普通じゃない。あのダウンで肉体的にも、精神的にも、ダメージが(あったのでしょうが)感じられなかったのは脅威のひとことです。
想定以上にグイグイとくる齊藤を捌ききれないと悟ると、打撃戦に身を投じ、結果的に打ち勝って見せれた、というのは収穫以外なにものでもありません。
しかも勝利者インタビューの際、落ち込むかと思っていましたがすでに前向き。なんというポジティブシンキング。彼のメンタルもまた、怪物の一人かもしれません。
さて、敗れた齊藤陽二。これで3勝2敗2分という戦績ながら、デビューから強豪と戦い続けてきたボクサーは、「敗れて尚強し」というところを見せてくれました。
たとえ劣勢にいながらも、一発で試合をひっくり返せる破壊力、決して諦めない強いハートは、きっと今後も数々の名勝負を生んでくれる事でしょう。今後にも超注目ですね。
「オールメインイベント」の「メインイベント」に相応しい、本当に素晴らしい大激闘でした。会場の声援はちょっと気になりましたが。。。常に声がけしていなければいけないリングアナが不憫でなりません。
ただ、やっぱり声援あっての盛り上がり、というのもあると思うので、一日も早くボクシング興行に歓声が戻ることを願ってやみません。
ということで、今回は駿河男児ジム興行、Desafino9オールメインイベントの観戦記でした。
地方ジムこそ、稀にしか現れないホープたちを大事に大事に育てすぎる傾向にある、と思います。
しかし、地方にありながら、ホープたちを次々と揃え、自主興行でそのホープたちを競演させる。そのすべての試合が素晴らしい真剣勝負であり、ホープたちに厳しい道を歩ませるその姿は本当に素晴らしいです。
今後も駿河男児ジムの活躍を期待しています。そしてこのテレしずさんの配信は続けてもらいたい。この数日前に見た配信は、失礼ながら画質もアングルも相当ひどかった。。。この興行は、この辺りも本当に素晴らしかったです。
いや〜、本当に全試合、楽しめました!