個人的に大注目だった一戦、日本・OPBF東洋太平洋・WBOアジアパシフィック・スーパーフライ級統一タイトルマッチ、福永亮次vs梶颯の一戦は、議論を呼ぶ判定の末、福永が僅差の判定勝利。
試合後、私も梶の勝利か、と思いましたが、ケチをつけるほどのジャッジではないような気がします。僅差のラウンドが王者、福永に流れたとすれば十分に納得出来る結果のように思います。
その中で、梶の勝利に見えたのは、やっぱり梶がとったラウンドは非常に明確で、福永のとったラウンドは僅差だったからでしょう。
↓観戦記
厳しい言い方をすれば、梶がチャレンジャーとしては「見る」時間が長く、自分から攻めてタイトルを奪い取ろうという気持ちがやや足りなかったのかもしれません。しかしてそれが、「王者」とそうでないものの差、なのかもしれません。
とはいいつつも、この福永vs梶戦、株を上げたのはもしかすると梶颯の方、だと思っています。
不運に泣いた、とも言えるこの梶颯、次世代のスーパーフライ級を担うボクサーのひとりであることは間違いありません。
本日のブログでは、「世界」だけが激戦区ではないスーパーフライ級、「日本」のスーパーフライ級期待のボクサーたちをピックアップしていきたいと思います。
↓こちらは世界のフライ級。井岡vsロドリゲス前の記事です。
ちなみに今回ピックアップしたボクサーは全員20代です。この階級にとどまるボクサーもいれば、階級を変更するボクサーもいると思いますが、あと数年のうちにはここにあげたボクサーたちがタイトル争いをし、世界に挑んでいく姿を見せてくれることでしょう。
田中恒成(畑中)と石田匠(井岡)
「国内のスーパーフライ」を語る上で、確実に外せないのがこの試合です。3冠王者、福永がいたとしても、12/11(土)に予定されるこの一戦こそ、国内スーパーフライ級最強決定戦で間違いはないでしょう。
世界3階級制覇王者の田中恒成(26)が、井岡一翔戦での敗戦からの復帰戦で選んだのは石田匠(29)。
スーパーフライ級ではかなり大きい石田、前戦はバンタム級で戦っているので、もしかすると転級を考えていたのかもしれません。しかし石田にとってもビッグチャンス、これを受けない手はない、というところかもしれません。
石田は井岡とも交流があるはずなので、田中対策を教えてもらえる可能性もありますね。
これは本当に難しい試合。ここで勝った者が、この次の試合で世界タイトルに挑んでも何ら驚きはありませんね。
梶颯(帝拳)
デビュー15連勝中の梶颯「勝ってベルト3つ巻く」3冠王者福永亮次に挑戦 - ボクシング写真ニュース : 日刊スポーツ
福永戦でもともすれば勝ち、という大善戦を見せた梶。弱冠24歳にしてあの完成度の高いボクシングは、流石帝拳ホープ。
見事にビルドアップされた肉体の通りに強いフィジカル、固いブロッキングを持ち、ステップも非常に多彩、多角的な攻撃ができていましたね。
負けて尚強し、負けて尚、評価を高めた梶颯。
きっと近いうちに何かしらのタイトルを手に入れることになるのでしょうが、今後のキャリアが非常に楽しみなボクサーです。
川浦龍生(川島)
成長著しい川浦は、前戦で田之岡条(小熊)を3R、左カウンターでワンパンチKO勝利。これまで9戦全勝(6KO)、日本ランキングも現在(9/30発表)で2位につけ、タイトルはもう目の前です。
「アンタッチャブル」川島郭志会長と同じく徳島県出身のボクサーで、四国出身の私としても絶対応援しているボクサーでもあります。
1位、久高寛之(仲里)との挑戦者決定戦となるか、もし福永が世界を見据えて返上したとすればともすればすぐに決定戦のチャンスが巡ってくるのかもしれません。
古谷昭男(六島)
9勝(3KO)4敗の23歳、このボクサーは前戦で元日本王者、奥本貴之(グリーンツダ)を敵地大阪に乗り込んで降して、一気に評価を高めたボクサーです。
その前戦で中山佳祐(ワタナベ)を僅差の判定で降してランキングを獲得してからの元王者撃破、そもそも西日本新人王決勝で湊義生(JM加古川)に敗れてから5連勝。
六島ジムの名匠、武市トレーナーのもと勢いに乗る西のダークホースです。
峯佑輔(六島)
同じく六島ジム、武市トレーナーの愛弟子、峯。まだ日本ランキングは下位(日本王座への挑戦権を有しない17位)ではありますが、こちらも侮れません。
何しろ同階級のライバル、古谷ともしのぎを削る仲でもあるでしょうし、大森将平、比嘉大吾を破った現WBOアジアパシフィック・バンタム級王者である西田凌佑とは同期。
これは感化されるでしょう。虎視眈々と大物食いを狙い、一気に飛躍する可能性のあるボクサーだと思います。
そう考えると六島ジムのアップセット率、おそるべし。
廣本彩刀(角海老宝石)
たった4戦で日本ランク8位につける廣本も、24歳と若く、注目のボクサーです。
一時期、元日本王者の世界ランカー、黒田雅之(川崎新田)の復帰戦の相手を務めることが話題になっていましたが、これは黒田の怪我で中止に。
この試合を受ける、ということは自信があった、ということなので、当時プロで2戦しかしていないボクサーに話がくる事自体がありえない話だと思います。
現在は4勝(2KO)無敗、まだキャリアを積む時期かとは思いますが、アマ経験豊富で既に日本ランクにいるようなボクサーは、試合が組まれづらいかもしれませんね。
高山涼深(ワタナベ)
こちらも同じく24歳(10/17で25歳)、伯父は90年代、豪腕を振るった渡辺雄二氏。
伯父譲りのパワフルなノックアウト勝利を積み重ね、現在は4戦して全KO勝利と、その強さを遺憾なく発揮しています。
伯父と同様、誰がみても「おもしろい」と思うよなボクシングを展開します。その姿を渡辺雄二氏に重ね合わせ、見ている私と同年代のファンも多いのではないでしょうか。
このボクサーには、世界まで駆け上がっていってほしいものです。
次戦は10/30、横浜光ジムの千葉開との一戦。これもまた超興味深いマッチアップですね。
千葉は前戦、中嶋一輝(大橋)とOPBF東洋太平洋バンタム級王座決定戦を争い判定負けを喫したものの、実力者であることに疑いはありません。13勝(8KO)2敗というキャリアの相手に挑む高山にとっては、かなり(敗北の)リスクの高い相手とも言えます。
非常に楽しみです。
やっぱり激戦区、国内スーパーフライ級。
日本ランキングには、この若きボクサーたちの間隙を縫うようにして、久高寛之、中川健太、奥本貴之といった元王者たちがランクインしています。
こういったキャリアのあるベテランとの対決も、若いボクサーにとっては大きな壁となるでしょう。
ランキング下位を見渡せば、角海老宝石ジムに移籍し、先日ようやく初戦を飾った橋詰将義(27)もホープと言っていいでしょう。
その橋詰に敗れはしたものの、いつも感動的な試合を届けてくれる湊義生(JM加古川)もおもしろい存在です(ランクインはしておらず、階級はフライ〜バンタムで戦っています)。
ランクイン(9位)していはいるものの、このままスーパーフライ級で戦うのかが微妙なのは中村祐斗(市野)。前戦ではバンタム級で素晴らしい試合を見せ、静岡のホープ・村地翼(駿河男児)とドロー。しかしその前の試合では、スーパーフライ級リミットをつくれなかったのだと思います(計量の日に体調不良とのことなので、おそらく)。
ともあれ、スーパーフライ級は、国内においても屈指の激戦区。
世界のトップは煮詰まった状態であり、井岡一翔も統一戦を熱望しながらもまだその兆しは見えません。
世界王座はなかなか巡って来ませんが、それでもこの国内の層の厚さを考えると、非常にワクワクする階級ですね。
このうちの誰かが、3冠王者、福永に挑むとすればどの試合もアツい。
そしてもし、福永が王座を返上したならば、日本タイトルは勿論、OPBF東洋太平洋のタイトル、そしてWBOアジアパシフィックのタイトルも、日本人同士で争われるかもしれません。
そうなると、今回紹介した若いボクサーたちの出番であり、お互いにライバル心のあるであろうボクサーたちがガンガンやりあう姿が見れそうです。
今後の国内スーパーフライ級、必見ですね。