日本人世界王者は、現在8名。
2020年末には7名でしたので、年末ベースでいうと人数は増えました。
動きとしては、絶対王者だった寺地拳四朗(BMB)が陥落、矢吹正道(緑)に取って代わられたこととと、IBF世界スーパーバンタム級暫定王者だった岩佐亮佑(セレス)がムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)との統一戦に敗れて無冠に。
そして11月の終わり、尾川堅一(帝拳)がアメリカ・ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンでアジンガ・フジレ(南アフリカ)を破って戴冠、見事世界王者となって人数的には帳尻合わせ。
そして12月には谷口将隆(ワタナベ)がウィルフレド・メンデス(プエルトリコ)を破って8人目の世界王者となりました。
ボクシング界だけではないですが、2021年を通してコロナに翻弄され続けました。2022年1月現在、日本は外国人が入れない、いわゆる「鎖国」状態。2021年12月に予定されていたビッグマッチは流れ、2022年春に延期されているものの、これはまたコロナの状態によりさらなる延期となる可能性もあります。
とはいえ、先の見えない事に対して必要以上に悲観的にもなってはいけないので、今回のブログでは、この日本の誇る8名の世界王者の、2022年の展望を、あくまでも期待とともに書いていきたいと思います。
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WBO世界ミニマム級王者 谷口将隆(ワタナベ)
2021年、2020年に獲得した日本王座の防衛戦と、世界王座の初戴冠。ここ数戦の谷口のパフォーマンスは目をみはるものがありますね。
とりわけこの世界戴冠戦は、本当に見事な11RTKO勝利。その理知的で、広い幅のあるボクシングは素晴らしかったし、何より気持ちでメンデスを攻略してみせました。
2度目の戴冠で見事世界王者になった谷口、もともと巧いボクサーではありましたが、一気に強くなった、そんな感じがします。
次戦は防衛戦となりそうです。ミニマム級はそこそこに、ライトフライ級に転級も、との話もありましたが、今年いっぱいはミニマム級でも良いのではないか、とも思います。
なかなか海外から挑戦者を呼びづらい状況ではありますが、折角王者となったのなら、2022年は2〜3戦してもらいたいですね。
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WBAスーパー世界ライトフライ級王者 京口紘人(ワタナベ)
2021年はアクセル・アラゴン・ベガ(メキシコ)との防衛戦のみで終えた京口。2020年は1試合も行えなかったので、17ヶ月ぶりの復帰戦ともなったのがアメリカのリング、そこで5RTKO勝利といえば結果的には良かったでしょう。
試合内容は、というと「これから」と思われた矢先、ベガが京口の額を打った事で拳を痛め、続行不可能となった上でのTKO勝利ということで、スッキリとはいきませんでした。
次戦ではWBAの王者削減政策により、レギュラー王者であるエステバン・ベルムデス(メキシコ)との一戦がクローズアップされています。
2022年1月15日、ということで日程が出ているメディアもあるようですが、この件に関しては京口陣営は明確に否定。おそらく交渉には入っていると思うので、早ければ2〜3月頃、現在の状況を鑑みれば海外での一戦となりそうですね。ただ、メキシコは止めてもらいたい。せめてアメリカ。
2022年の早い時期にこのベルムデス戦ができれば、もう一戦はできそうですね。
そうすれば、本当に私はしつこく思っているのですが、タノンサック・シムシー(タイ)にチャンスを与えてあげてもらいたい。2019年11月に対戦予定で、京口のコロナ罹患により来日したにも関わらず、チャンスを逸してしまったボクサーです。
ベルムデス戦をクリアした暁には、是非シムシー戦に進んでもらいたい。
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WBC世界ライトフライ級王者 矢吹正道(緑)
あっと言う間に8度の防衛を果たし、安定王者として君臨していた寺地拳四朗(BMB)をアップセットで破り、見事な戴冠を果たした矢吹正道。
パンチ力、スピード、テクニック、スタミナ、そういったものをすべて超越した、「ハート」とか「意地」という魂の戦いは、本当に素晴らしかったです。
その後、ひと悶着あったこの一戦はダイレクトリマッチが決定、予定は2022年春。これは「3月」という時期が矢吹の口から出ています。
この3月の再戦に矢吹が勝てば、おそらくマッチルームとの契約が成立、矢吹は海外への足がかりを得る事になります。そうすればファイトマネーも倍増、同じくマッチルームと契約する京口紘人(ワタナベ)との統一戦もクローズアップされることになるかもしれません。
ファイトマネーの安い軽量級において、マッチルームの力は大きいと思うので、IBF王者のフェリックス・アルバラード(ニカラグア)、WBO王者のジョナサン・ゴンザレス(プエルトリコ)戦の実現もさほど難しいことではないかもしれません。
いずれにしろ、拳四朗戦に勝ちさえすれば、大きく夢が広がる形になりそうです。
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WBO世界フライ級王者 中谷潤人(M.T)
2020年11月に世界初戴冠を成し遂げた中谷潤人は、2021年9月に初防衛戦。その初防衛戦で強敵、アンヘル・アコスタ(プエルトリコ)に4RTKO勝利。
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2021年末にクリスチャン・ゴンザレス(メキシコ)との防衛戦に臨む予定でしたが、GGGvs村田とともに延期となってしまいました。同じくアンダーカードの吉野修一郎(三迫)vs伊藤雅雪(横浜光)に関しては、延期の価値がありますが、この中谷vsゴンザレスについては延期ではなく、中止でも良い位に思っています。
「世界王者になった」だけではファンとしても満足しきれない、それが中谷潤人。もっともっと多くの人に知ってほしいですが、戴冠戦は無観客試合、初防衛戦は海外と国内にはアピール不足。次戦はゴンザレスではなく、できれば統一戦に進んでもらいたい、というのが希望です。
2022年、2戦〜3戦するとすれば、本当は全部統一戦が良い。フライ級での残された時間はそう多くない分、世界的に揺るぎない評価を獲得してもらいたいものです。
そして非常に興味深いことに、WBOという団体は、王者が返上して階級を上げた場合、自動的にその階級のトップコンテンダーになれる、という決まりがあります。
田中恒成はそのようにして、フライ級王座返上後、すぐにスーパーフライ級の王座へ挑めたのです。(田中自身は調整試合を挟みたかったようですが、コロナのため外国人選手を招致できず、スーパーフライ級初戦で挑戦、という形になってしまいましたが。)
中谷潤人がフライ級に見切りをつけ、スーパーフライ級に転級するならば、コアなボクシングファンにとって非常に面白い展開になります。なぜならWBOのスーパーフライ級王者は。↓
WBO世界スーパーフライ級王者 井岡一翔(志成)
2021年はフランシスコ・ロドリゲスJr(メキシコ)、福永亮次(角海老宝石)を撃破し、抜群の安定感を見せる4階級制覇王者。
ノニト・ドネアが達人級だと言われるのと同様に、この井岡も達人級。スーパーフライ級に上げてからは、被弾こそ多くなっていると思いますが、安定感は更に増しているようにも思います。
福永戦後のSNSを見ると、井岡が「福永を倒せなかった」と見る向きもあるようですが、井岡のボクシングは倒すボクシングではないでしょうし、相手をノックアウトしようと思ってリングに上がっているわけではないはずです。ノックアウトというのは、12Rまでの途中の過程で起こりうる出来事なのだと思います。
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井岡には、とにかくジェルウィン・アンカハス戦を実現してもらいたい。これは井岡陣営、アンカハス陣営はともに何の障壁もないはずなので、結局一番の心配事はコロナと、それに対する日本政府の対応。
アンカハスは、井岡戦後にバンタム級への転級を示唆しており、もし5月にこの試合が実現しなければ、もうなくなってしまうかもしれません。アンカハスも、そこまで待てる身体ではないということです。
井岡がアンカハスに勝てば、その後はエストラーダvsロマゴンの勝者、シーサケット、クアドラス。そしてもしかするとスーパーフライに上がってくる中谷。スーパーフライ級の固定のトップの争いに食い込むためには、井岡自身の世界的知名度がもっと必要。そう考えると、アンカハスに勝ち、統一するのはかなり大きい。その後、4団体統一戦とはいかなかったとしても、シーサケットやクアドラスといった強豪を排除することで、自ずと4団体統一戦は持ち上がってくるでしょう。
それが叶わなければ、アンドリュー・マロニー(オーストラリア)が井岡への対戦をアピールしているので、これも非常に興味深い一戦。マロニー・ブラザーズの人気は、おそらくオーストラリアに次いで日本では高い。総合力vs総合力の一戦は、より老獪に戦える井岡の方がオッズは有利と出ると思いますが、マロニーのアグレッシブネスは侮れません。好試合は必至。
WBAスーパー/IBF世界バンタム級統一王者 井上尚弥(大橋)
2021年は、2試合。指名挑戦者であるマイケル・ダスマリナス(フィリピン)と、調整試合の相手であるアラン・ディパエン(タイ)。
ダスマリナスにもディパエンにも何もさせず、おそらく1ポイントすら失わない圧勝劇。
「ドネア戦のときと比べるとモチベーションが。。。」との報道もみましたが、たとえモチベーションが上がらなかろうとも格の違う強さを発揮するのがこの井上尚弥。
井岡にも言える事ですが、これ位成熟しきったボクサーにとっては、モチベーションが低かろうとも格下相手に負けそうな雰囲気は一切ありません。これこそが「負ける姿が想像できない」ということの要因の一つである気がします。
日本の誇るPFPキングの一角、モンスターは、2022年、「4団体制覇へ進む」ことこそが期待されています。
来年春にWBC王者のドネアか、WBO王者のカシメロ。夏に最後の一つを獲って、4団体制覇。冬にスーパーバンタム級への転級。これが陣営の思い描いている道程であり、我々ファンの望む道筋です。
本来、2022年4月と言われていた井上の次戦は、カシメロが濃厚だったとの噂。ただ、今となってはこの日程でカシメロと戦う事は難しそうです。(カシメロはWBOからvsポール・バトラーを指示されています。)
なので4月にドネア戦となり、それに勝てばカシメロvsバトラーの勝者、そして12月にスーパーバンタム。カシメロvsバトラーがこじれたり、その勝者と井上との対戦がこじれたりした場合は、4団体統一なしにしてスーパーバンタムへの転級も考えられます。
井上は、ここまでのキャリア、そのパフォーマンスにおいて、その強さは十分過ぎるほど証明されているので、今年こそはスムーズなマッチメイクを望むのみです。
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IBF世界スーパーフェザー級王者 尾川堅一(帝拳)
2021年は11月終盤、アジンガ・フジレ(南アフリカ)との1戦のみ。待ち続けたコンテンダーが夢を叶えた瞬間は、かつて幻の王座獲得激となったテビン・ファーマー(アメリカ)戦よりも劇的で、それよりも文句のつけようのないものでした。
あれから4年、耐えて忍んで、本当に素晴らしい戴冠劇でした。
初防衛戦は2022年3月、日本で行われる予定とのことで、タイミング的にはもしかするとGGGvs村田のアンダーカードに組み込まれることもあり得るか。ただ、基本的には帝拳ジムはメインの世界タイトルマッチに帝拳ボクサーが出場する場合、アンダーに帝拳ボクサーを持ってくる事はないので、別開催の可能性の方が高そうです。
ともあれ、この凱旋試合については、下位ランカーでも実力差のある相手でも何でも良いので、顔見世程度にクリアしてもらいたい。
そして2022年内はもう一戦、と考えれば、避けて通れないのがシャフカッツ・ラヒモフ(タジキスタン)戦。もともとラヒモフvs尾川の王座決定戦でしたが、ラヒモフが負傷、それが長引く事によってフジレに代わっています。
IBFはもともとフジレvs尾川の勝者にラヒモフとの一戦をオーダーする心づもりだったと思うので、ここはIBFが再度指令を出すでしょう。
尾川にとっては過去最大の強敵。ここをクリアすれば、ともすればシャクール・スティーブンソン(アメリカ)との統一戦すら見えてきます。間違いなく、2022年は尾川にとって勝負の年。
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WBA世界ミドル級王者 村田諒太(帝拳)
2019年12月から試合枯れが続く、我らが村田諒太。
順当に試合をこなしていけば、間違いなく日本人ボクサー史上最高に稼ぐボクサーとなり得ますが、いかんせん試合数が少なすぎるのが残念なところ。重量級であれば夢のようなファイトマネーを稼げる、というのをもっともっと世間に知らしめてほしいですね。そうすれば、身体の大きな人たちもこっちの世界に来てくれるかもしれません。
まあ、そんなことは置いておいて、村田に望む事は唯一つ、GGG戦。
これも春、と言われていますが、コロナと日本政府次第。
当初、早ければ2月、と言われていた日程は、3月、4月、5月と報じられる度にずれてきています。村田、GGG、両陣営も両ボクサーも、早期の実現に骨を折ってくれているところでしょう。我々ファンは、歯がゆいですが待つのみ。
このGGG戦の後のことは全く考えられませんね。
勝っても負けても引退、ということでも良し、ただ勝てばもっともっと夢が広がるのも事実。負けて引退、というのはしなくても良い事でしょうが、GGGと同じリングに立てば、村田がボクシングを通してやりたかったことはすべて実現できた、となるのではないかと思います。
2022年のボクシング界
8人の世界王者たちを追いかけるだけで、こんなにも楽しい1年を送れそうだということがボクシングの素晴らしさ、ですね。
2021年は、YoutubeやPPV等で国内ボクシングを見れるプラットフォームが大きく増えた1年であり、WOWOWは異常なまでに(褒めてます)生中継、生配信が充実。かたや2021年に地上波で放送されたボクシングの生放送は、全国放送では井岡一翔が登場した2戦のみ。
地上波での放送がなくなれば、お茶の間の人たちがボクシングを見る機会が減る、というのは充分よくわかります。
ただ、今や既に地上波を見る人も減り、私自身もおそらくテレビの地上波をつけたのはこの2回のみで、CSの日テレG+をつけるのもダイナミック・グローブのみだし、WOWOWもエキサイトマッチ以外には殆ど見ません。
ネットフリックス、アマゾンプライム、そういったVODサービスは隆盛、これは「自分が見たい番組を自ら見に行く」というスタイルだと思います。ボクシングはこの枠で良く、その枠に導く導線というものを充実させれば良いというだけだと思いますが。
個人的には地上波からボクシングがなくなっても痛くも痒くもありません。むしろケーブルテレビを解約できるので、金銭的には非常に助かります。
2022年も、ボクシング界には本当の戦いを追い求めてもらいたい。海外ではYoutuberとの一戦が儲けとなるようで、盛んに取り上げられてはいるものの、そういう流れにはなってもらいたくはないものです。
個人的な意見としては、真剣勝負の中に、「そういうエキシビジョン」が入るだけで一気に興ざめします。お笑い芸人とプロレスラーのボクシングの真似事マッチなんてリングでされようものなら、たとえその興行に元世界王者や有望なランカーが出たとしても、見る気にはなれません。
頭が固い、古いと言われようとも、ボクシングはその他の格闘技の真似をする必要はなく、地味でも派手でも良いので、とかく真剣勝負そのものを楽しめるようにしてもらえればそれで良い。今更国民的人気スポーツになる必要だってなく、4回戦の選手はアルバイトをしなければならない、2足の草鞋、サラリーマンボクサー、そんなの当然。王者になって、年間3〜4試合できれば喰っていける、それくらいで良いのだと思います。
なかなか上手くいかないことだらけ、それがまたボクシングの良いところで、ぽっと出の芸能人やらYoutuberやらがリングに上がれない事は誇りだと思います。出たいと言われても、プロテスト受かってから、と言えるところ。だからこそ、JBCにはもっとしっかりしてほしいし、自らの力で権威を取り戻して欲しい。
ルールでがんじがらめ、マッチメイクも上手く決まらない、ボクサーは大変なことだらけ。だからこそ、王者を目指すし、生半可ではなれない、そういう本物志向のボクシングだからこそ、これまでも脈々と受け継がれてきたはずですから。
まあでもタトゥーはもう時勢的に不問にしてもらいたいですけどね。タトゥー消しの方が何倍もカッコ悪いので。