「日本での生放送はない」という正式決定を、ワールドスポーツジムさんがツイートしてくれていました。
これはどこかないか、と探していた私にとって非常にありがたい情報でした。
ということで、どうしても見たかったので色々な面倒くささを振り切り、いつもの方法(下記)から視聴。
ちょっとグレーなサイトからも見れたようで、見れた皆さんは良かったです。
今回、個人的に問題だったのは、アメリカでの放送もなかったことです。アメリカの放送だけは対策バッチリなので、日本でないなら、とアメリカの情報を探していました。いつもチューの試合はアメリカのESPNが放送してくれていましたが、今回はラテンアメリカのESPNのみで、アメリカ本土での放送はなし。
なので、今回はメキシコからスタープラスというサブスクに加入し、視聴。現地電話番号の取得からiphoneの設定からpaypalの設定等々を何とか乗り切りました。はっきり言って全くおすすめはできない、海外ボクシングの視聴方法はこちら。
↓色々大変です。やるとすればご覚悟を。
ちなみにオーストラリアからKayoのPPVを購入することも試みましたが、オーストラリアの電話番号は取得できず。身分証がいるみたいです。
それはさておき、今回のブログはティム・チューvs井上岳志をメインとした、オーストラリアはシドニー興行の観戦記です。
↓プレビュー記事
11/17(水)オーストラリア
満員ですね。会場の演出も非常に派手。うらやましい限りです。
デニス・ホーガン(アイルランド)vsトミー・ブラウン(オーストラリア)
3度世界に挑戦したホーガンが登場。6回戦のようですね。電波状況がよくなく、すぐ止まる。。。
28勝(7KO)4敗1分のホーガンと、42勝(18KO)7敗2分のブラウン。ホーガンはチュー戦での敗戦からの復帰戦であり、現在3連敗中。
ブラウンはプレスをかけますが、ホーガンがサークリングしつつパンチを当て、近づいてはダッキング、ウィービングでブラウンのパンチを外し、反撃します。
ホーガンはジャブが上手いですね。相手のブラウンはリーチが190cmもあるようですが(BoxRecより)、届くのは躱して打ってを繰り返すホーガンのジャブ。あと印象的なのはホーガンのぶん回す左フック。これが素早く、カウンターとなって入ります。
5Rになるとホーガンはプレスをかけ始め、ブラウンはかなり手数が少ない。最終ラウンドはまたブラウンがプレスをかける展開で、クリンチも多い。
まあ、次に控えるセミとメインが気がかりで、見ている私も気がそぞろ。
判定は、3者ともに60-54の3-0の判定で、デニス・ホーガン。ムンギア→チャーロ→チューとかなりハードな路線を歩むホーガン、2018年12月以来の勝利、よかったですね。
IBOインターナショナル・スーパーウェルター級タイトルマッチ
ウェイド・ライアン(オーストラリア)19勝(7KO)9敗
vs
ワチュク・ナァツ(マーベラス)7勝(3KO)2分1敗
個人的には、大いに勝機があると思っている一戦。ナァツには勝って井上につなげてもらいたい。ただ、ライアンは映像を見る限りかなりタフ、あくなき闘争心を持っているボクサーです。そして当然、ナァツの約3倍ともなるそのキャリア。
選手紹介、ちゃんとナァツにも拍手と歓声が。当然、ライアンへの歓声はでかい。
オーストラリアは外国人に厳しくない。それはそうですよね、日本でも。ブーイングするのはアメリカくらいかも。
初回、ナァツは上体を振りながらプレス。やはりハンドスピードはナァツのほうが速い。サウスポー、ライアンは右ジャブをついて距離をとります。あまりパワーは感じませんが、右ジャブと左ストレートは少しうるさい。ただ、体全体のパワーもナァツが上回っているように思います。
2R、ライアンが左のオーバーハンド、前手の大きなフック、力強いパンチを振るってきました。回転力があります。軽いパンチをポンポンとだすライアンに、ナァツはやや攻め手を欠くか。低く入るオーソドックスのナァツと、サウスポーのライアンではバッティングも起こりやすい。
3R、手数の少なさをすぐに修正したナァツ!ジャブからボディストレートは非常に効果的なコンビネーションに見えます。ナァツは上体の動きが良く、手数の多いライアンのパンチをよく外しています。
後半になぁつが右ストレートをコネクトすると、ライアンも左のストレートをヒット。ナァツは両手を上げて叫び、アピール!リングを楽しんでいます。
4R、距離が近くなり、打撃戦の様相を呈してきました。ライアンの回転力は侮れないものの、パワーはナァツのほうが上。ともにクリーンヒットを奪いますが、どちらかというと下がるのはライアン。ナァツ、こんなにディフェンス上手かったか。
でもやはり、手数はライアン。
5R、ナァツがプレス。ライアンにスピードは感じませんが、このあたりのボクシングが映像で見たライアンのボクシング。ナァツはクリーンヒットをあまり奪えませんが、よく攻めています。
力強い一発を狙いますが、ここはボディから攻めてほしい。
6R、序盤、ライアンの左をかわしてナァツの右がヒット!やっぱりライアンはタフ。ダメージについては平然としています。
しかしその後、ナァツは左フックをヒット、これでぐらついたように見えたライアン。ただバランスを崩しただけかもしれませんが。
ライアンはコンビネーションが速く、これがラウンド間にスロー再生。しっかり当たっています。
7R、ナァツはどこかでダウンシーンをつくりたい。ガードを固めてライアンの攻撃をブロック、打ち終わりを狙います。リングが非常に滑るようで、ナァツはかなり気にしています。
中断もあり、再開したあとは左フックをヒット。効いたように見えましたが、ライアンはそのあとすぐに軽いコンビネーションで反撃、このあたりが非常に上手い。
8R、ゴングと同時にナァツはチャージ。しかし左目に異変か、ややペースダウン。後半にドクターチェックも入りました。ものすごく腫れているわけではないですが、ちょっと見えづらいのかもしれません。
このラウンドはナァツが押し込まれる場面がありました。
9R、ライアンの手数は全然衰えません。ナァツは力強いパンチを振るいますが、展開的にはやや苦しい。リングも相変わらず滑るようですが、ここが踏ん張りどころ。
10R、視界の不良か、滑るリングのせいなのか、序盤ほどの上体の動きがみられないナァツ。ここでまた滑って膝をつきますが、これがダウン判定。パンチをもらってバランスを崩した、ということになってしまいました。
タイミング的には仕方のないところかもしれません。
滑るリングにかなりイラついて見えるナァツ、しかし状況はライアンも同じなのでここは冷静に。
勝利を確信したライアンが手を掲げてステップを踏んで試合終了。
判定は、99-90、100-89、98-91というもの。思いの外、ポイントは取れていません。というかウェイド・ライアンの手数がポイントにつながったのでしょうか。
序盤、動きがよかったナァツですが、後半に集中力を切らしたイメージがありますね。視界の不良や、リングが滑る事でちょっとイライラしてしまったかもしれません。
ナァツは終始アグレッシブに押していきましたが、クリーンヒットは軽くパンチを放っていったライアンかとも思います。
それにしてもポイント差は開きましたね。残念。
WBOグローバル・WBOアジアパシフィック・スーパーウェルター級タイトルマッチ
ティム・チュー(オーストラリア)19勝(15KO)無敗
vs
井上岳志(ワールドスポーツ)17勝(10KO)1敗1分
セミのウェイド・ライアンvsワチュク・ナァツを見る限り、公平な判定には期待できそうにありません。スター、ティム・チューの相手としてリスペクトされ、歓迎されていたとしても、やはりここは敵地。
井上としては、判定まで行きたくないところですね。
井上の入場。和太鼓。ラーメンバチの模様。微妙に勘違いされていますが、ともかく入場です。
チューの入場の前には、チューのKOハイライト。そして炎の演出、やっぱりスターは違う。
いよいよゴング!
井上、まずは慎重な立ち上がり。チューのジャブ、ワンツーをしっかりとガードしてサークリング。中に入るスキを探しているのか、いつになく慎重です。
対してチューもそれほど来ません。ただ、チューのパンチには大きな歓声が湧く分、やはりポイントはチューに流れるでしょう。井上はやや固く見えます。
2R、チューのジャブをガード、その後に踏み込む井上。やはりチューのプレスは強いのか、井上をしても下がり気味。チューは戦いやすそうな感じがしますが。。。
井上はどうやらチューのパンチの出し際、そして打ち終わりのステップインを狙っていそう。井上の左フックもヒット、ただチューの右ストレートもヒット。ただ、陣営としては後半勝負、これで良いのかもしれません。
3R、井上はガードの時間が長く、端から判定は考えていないかもしれません。しかしそのガードの間隙を縫ってチューの右ストレートがヒット、井上は顔を跳ね上げられます。
しかしチューの右は怖い。真っすぐにも出てくるし、やや弧を描いて飛んできたりもする。しかもそのパワーが半端ない。
4R、中間距離はチューの距離。井上がストレートに自信があっても、やはりチューの右ストレートは素晴らしい。このラウンド中盤には右ボディの交換、その後もガードの上からのパンチの交換ですが、チューは井上のパンチをブロッキングしながらも前進。
井上はチューのパンチで押されてしまいます。未だ劣勢。
5R、押し込むようなジャブ、左右のボディをたたく井上。チューは相変わらずバランスよくプレス、井上はサークリング。
井上が攻めれば躱してアッパー、このラウンド終盤は何度も顔を跳ね上げられ、井上はピンチ。ガードの上からでも十分なパワーパンチです。
6R、このままではジリ貧の井上。井上のガードはかなり固いですが、体ごと吹き飛ばしてしまうチューの力強さは圧巻です。
このラウンド、井上は序盤にワンツー、中盤には左右のアッパーをヒット、その後もいくつかのクリーンヒットを奪いますが、パワーパンチの見栄えはチューに及びません。そしてここまで多くがガードの上からとはいえ、かなりのダメージを感じます。
もしかすると、ボディにもダメージがあるかもしれません。
7R、接近戦をしかける井上!それを受けて立つチュー!しかし近い距離での戦いですら、チューはカウンター、そして積み重ねてきたボディブローで優勢!
井上はおそらくボディが効いています。その井上に、執拗にボディショットを打つチュー。
残り時間30秒を切ったところで、チューは右フックをヒット!これも滑ったように見えましたが、その後のチャージで井上に明らかなダメージを与えます。
8R、チューはただのハードヒッターではなく、パンチのアングル、そして冷静さを兼ね備えており、まったくもって崩れません。
サウスポーにスイッチしたり、軽いパンチを打ってから強いアッパーを放ったりとやりたい放題。こんなコンビネーションまで打ててしまうんですね。。
井上でなければ、まず間違いなくここまで持ってすらいないでしょう。
9R、もう井上は勝負をかけるしかありません。チューはこのラウンドやや手数が控えめ、それでもプレスはかけ続けます。休んでいる可能性のあるこのラウンドに、井上は行きたい。
井上のパンチも当たっていますが、チューは耐久力すらも持ち合わせています。
10R、開始早々ワンツーを繰り出したチュー。軽いパンチと強いパンチを織り交ぜながら、井上を追い詰めていく展開です。
井上もチューのパワーパンチはかろうじて外し、パンチをコネクト。
11R、中間距離からのワンツーで攻め込むチューですが、井上のタフネスも半端ではありません。井上の反撃にも前進を止めないチューですが、かといって詰め切れはしません。
12R、チューは紛れもなく、怪物の類。ここにきてもパンチの衰えはなく、クレバーで、集中力も保持しています。
2分頃、またもこの滑るリングのせいでバランスを崩し、倒れてしまった井上にダウン宣告。効いて倒れたダウンではありません。
再開後、チューは倒しにくるものの井上もまだ耐え忍ぶ力はあり、近い距離での戦闘で試合は終了。
判定は120-107がふたり、119-108がひとりのほぼフルマークの判定でティム・チューの勝利。
わかってはいたけれども、やっぱり怪物だったティム・チュー。
前戦のスティーブ・スパーク戦では、やや荒っぽい印象も受けましたが、今回のチューは非常に丁寧、隙が本当に少なかった感じがします。
一発で相手を戦意喪失させるパンチングパワーを持ちながらも、軽いパンチと組み合わせてコンビネーションも打てる。プレスをかけつつ休む事ができて、ディフェンスだってどんどん良くなっています。
こんな怪物をクリアしないと、世界タイトルに挑む事すらできないなんて、本当にとんでもない階級だと思います。
井上はよく最後まで立っていた、勝利を本気で目指した本人としては嬉しい事ではないのでしょうが、善戦したと言える内容だと思います。今日のチューを相手に「最後まで立っていられる」ボクサーがこの階級にいったい何人いるのかは疑わしい。
しかし、結果を残したかった井上は、敗北。
この試合を受け、オーストラリアのスターを相手に敵地で敢闘した姿は、きっと忘れません。
番狂わせならず、ではありましたが、侍魂は見せてくれました。今日はっきりしたことは、井上のタフネスを持ってすれば、この階級では誰も彼を倒す事はできない、ということ。素晴らしいタフネスぶりでした。
あ、チュー自身はヘビー級ボクサーでも井上を倒す事はできない、みたいなコメントをしているんですね。お世辞もあるでしょうが、とにかくチューも驚くタフネス。
かなりのダメージがあると思うので、まずはゆっくり休んでもらいたい。
とにかくこの階級の壁は高く、そして分厚い。
さて、ティム・チュー。
スーパーウェルター級タイトルは停滞していますが、チャーロvsカスターノに割って入れるのか、それとも4団体統一王者に挑戦する形になるのか。
興味が絶えません。