ボクシングを見る時間が、実はちゃっかりできています。
見るのはいつも見ているのですが、観戦記を書くにはPCの前でしっかりと見なければならず、その時間を作る事ができています。
理由としては、実は12月末で今の会社を退職することになっていまして、その有給消化をしているからです。
このあと、幾度かの出社ののちにさっさとさよなら、1月からは違う会社、これまでと全く違う業種に勤める事が決まっています。43歳、未経験での入社になるので、ちょっとブログは控えめになるかもしれません。
これまで、非常に暇な仕事をしていたので、ボクシングの指導もしっかりできていたし、ブログの開設やらもしてきたわけなので、今の会社にはそれなりに感謝しています。が、愛着は全くないので、スパッと辞めさせてもらいます。
まあ、そんなどうでも良い近況報告は置いておいて、今回のブログはモンタナ・ラブvsスティーブ・スパーク、一体誰が注目しているのか、というDAZN配信興行の観戦記。
フェザー級10回戦
レイモンド・フォード(アメリカ)12勝(6KO)無敗1分
vs
サカリア・ルーカス(ナミビア)25勝(17KO)1敗1分
プロスペクト、レイモンド・フォードの14戦目は、サカリア・ルーカスというナミビアのボクサーです。好戦績を誇り、前戦で世界挑戦経験のあるツグスソグ・ニャンバヤル(モンゴル)とスプリットドローというのは甘く見てはいけないボクサー。
フォードはサウスポー、ルーカスはオーソドックスです。
初回、まずワンツーを出して攻め込むのはルーカス。30秒が過ぎた頃、バランスを崩したルーカスにフォードが右ボディ、押し倒されるようにダウンしたルーカス。
立ち上がったルーカスに、猛烈に攻め入るフォードですが、ここはまだルーカスも冷静でサバイブ。ともに打ち気に逸っているイメージで、ちょっとバッティングが怖い試合展開ですが、このままエキサイティングな試合になりそうですね。
2R、やや後ろ荷重、フィリーシェルのフォードは、ルーカスが打ってくると巧くスウェー。そこでカウンター、ですがルーカスはそれを恐れずに踏み込んで打ちます。フォードも距離が空いた時の踏み込みは非常に鋭いですが、ルーカスは手を止める事がないので、フォードはやや攻めあぐねる印象。ルーカスはクリーンヒットこそ少ないものの攻勢で、フォードは数こそ少ないものの印象的なカウンターをヒット。
3R、フォードが攻めるとまっすぐ右ストレートを伸ばしてくるルーカスも良いボクサー。しっかり反応できており、バックステップも良い。ジャブはフォードに随分と分がありそうで、手数こそ少ないもののフォードの右カウンターもルーカスにとって脅威。
4R、決定的な場面こそないものの、フォードの速いジャブ、右カウンターが印象的。ルーカスは力強いパンチで攻め入りますが、フォードはさすがのディフェンス力で近い距離でもクリーンヒットを許しません。
5R、序盤から今度はフォードが攻めます。鋭い踏み込みから多彩なコンビネーション、ルーカスは防戦に回る時間が増えます。攻守が交代しながら進んでいく感じですが、フォードが攻勢を取る場面が多い。
6R、ルーカスのダイナミックなパンチを躱してリターンを返すフォード。このフォードはディフェンスから組み立てた時、最高のボクシングができそうですね。
後半に入ると、ルーカスのパワーが目減りしたのか、ブロッキングでルーカスを押し返し、強いリターンを返すようになったフォード。もしかすると、フィニッシュは近いかもしれません。
7R、やはりルーカスの衰えを悟ったか、フォードはチャージ。鋭くダイナミックなパンチでルーカスを攻め立て、ルーカスには勢いがなくなっていきます。
フォードに攻められ、クリンチに逃げるルーカス、ここでホールドでルーカスに減点。
攻め入るフォード、ルーカスは力を振り絞って打ち返し、終盤には右をヒット!そこで少しの元気を取り戻したルーカスは、最終盤まで攻勢に出ます!
8R、序盤からコンビネーションで攻め入るフォード、30秒ほどのところでルーカスの顎を跳ね上げる左ストレートをヒット。限界が近そうなルーカス、ガードを固めて接近戦を挑むもフォードのパワーパンチでバランスを崩し、最後は右フックカウンターをまともに浴びてリングに大の字!
レイモンド・フォード、8RTKO勝利!
強い強い、レイモンド・フォード。群雄割拠のフェザー級において、今後上がってくるボクサーかもしれませんね。身体能力も高いですが、例えば右フックを打つ時の左ガードがしっかりしているハイガードスタイル。もらわないボクシングをしつつも、アグレッシブでもあり、個人的には非常に好感の持てるボクサーです。
今後の戦いも楽しみですね。
スーパーライト級10回戦
リチャード・ヒッチンズ(アメリカ)14勝(6KO)無敗
vs
ヨマール・アラモ(プエルトリコ)20勝(12KO)1敗1分
まだ強豪との対戦のないヒッチンズはテストマッチ的な意味合いがあるかもしれません。アラモは前戦でリアム・パロ(オーストラリア)との無敗対決をスプリットの判定で落としていますが、2020年2月には当時無敗のプロスペクトだったケンドー・カスタネダ(アメリカ)との無敗対決を制しているボクサー。
初回、プレスをかけるアラモ。ヒッチンズは非常に鋭いジャブでアラモの顔を弾きます。アラモはヘッドムーブもこのジャブになかなか対応できず、このジャブを受けて早々に顔が紅潮。ヒッチンズのジャブ、めちゃくちゃ伸びます。このジャブは黒人ボクサーの特権のようなジャブですね。
2R、まずアラモはこのジャブに対応しなければならないためか、手数が非常に落ちます。ヒッチンズはこのジャブを起点にストレート、フックへと繋げていくボクシング。
このジャブをもってリング中央を陣取り、いつの間にかプレスをかけられなくなっているアラモはサークリングしてなかなか手が出ず、この展開はまずいでしょう。アラモのディフェンシブな戦いに会場もブーイング。
3R、ヒッチンズのジャブを何とか外してインサイドに入ろうとするアラモですが、強引に行ってもなかなか入れません。ヒッチンズはこのジャブだけで試合を支配しています。
後半にはプレッシャーをかけてアラモをロープ際へ追い込み、右ストレートをヒットした筆致ンズ、その後も的確なジャブをしっかりと当てています。
4R、このままでは何もできないアラモ。アラモは体ごと強引に詰め寄り、接近して左右のフックを放つもヒッチンズのガードの上。それでも近づかなければ勝負にもならないアラモですが、接近戦をしかけて「くれる」ヒッチンズに対してもブロッキングという対応をしてしまい、打つ手がありません。
5R、ヒッチンズはもうフィニッシュを狙っているのか、コンビネーションでアラモに詰め寄ります。ここでようやくアラモは手数を出して応戦、ただ力み、身体が流れてしまい、お世辞にも回転力があるとは言えません。
この接近戦でもヒッチンズのキレ、スピードに下がってしまうアラモ、ここからどのように勝ち筋を見つけるつもりなのか。
6R、序盤は近接戦闘でがむしゃらさを見せるも、それが一瞬で下がってしまうアラモ。ここでしか勝ち目がないでしょうから、ここで頑張らなければいけません。対してヒッチンズはジャブを突いていれば勝てるものの、しっかりと倒しに行ってはいて(ややパワーレスな印象は受ける)、良いと思う。
7R、両拳を前に出して「降参」ポーズとも取れるアラモは、すでにサバイバルモードか。サークリングを主として、ヒッチンズが打ち込んでくれば多少の応戦を見せる程度。
ロープに詰まり、ブロッキングで固まる場面も多くなってきたアラモですが、まだまだ足は軽やかに動きます。もしかすると、このボクサーはアウトボクサーに近いボクサーファイターで、すでにジャブの差し合いで圧倒的に負けていたところで、勝負はついていたのかもしれません。
8R、アラモは大きくサークリング、ヒッチンズのプレッシャーをかなり感じているのでしょう。時折頭から突っ込んでヒッチンズを下がらせますが、効果的なパンチはほとんど出せません。
ヒッチンズはガードで固まるアラモを上下に打ち分けるコンビネーションで攻め立て、回り続けるアラモをゆっくりと追いかけていきますが、もう呆れた雰囲気。ここまでディフェンシブだと、仕留めるのもなかなか大変です。
そしてこのラウンド終了後のインターバル、アラモ陣営が棄権の意思表示。色々試した上での棄権なら致し方ありませんが、もっとできることはあったように思います。これは残念な部類のプエルトリカン。
ということで勝利したヒッチンズ、極めて鋭い、素晴らしいジャブをお持ちです。
このジャブだけでは厳しいのだとは思いますが、今後武器を増やせば素晴らしいボクサーになりそうですね。ちなみに、まだ25歳と全然若い。期待ができます。
スーパーライト級12回戦
モンタナ・ラブ(アメリカ)18勝(9KO)無敗1分
vs
スティーブ・スパーク(オーストラリア)15勝(13KO)2敗
WBAインターコンチネンタル・スーパーライト級タイトルマッチ。
スーパーライト級プロスペクト、モンタナ・ラブが登場です。過去には元王者、イバン・バランチェク(ベラルーシ)にも勝利しています。
↓ラブの出世試合、バランチェク戦!
対戦相手のスティーブ・スパークは、ティム・チューに為すすべなくやられたボクサーですが、この2021年7月の試合はスーパーウェルター級でした。しかもチューの相手として急遽抜擢された代役ボクサーでしたね。(当時、チューはゼルファ・バレットと戦う予定が、直前で折り合いがあわず、スパークがリングに上がった)
↓そんな中、気持ちの強さだけは見せたスパークのvsチューはこちら
ちなみにこのスパーク、右側鎖骨付近に「志」、左側鎖骨付近に「神」という漢字のタトゥー。意味がわかっているかどうかはわかりませんが、比較的マシなKANJIのタトゥーとも言えます。
さて、ゴング。
まずはリング中央、向かい合うサウスポーのラブとオーソドックスのスパーク。
ともに距離を測りながら、緊張感のある立ち上がりから、スパークが右から入る鋭い踏み込み。こちらも速いバックステップでかわすラブ。このスティーブ・スパークというボクサーは、チュー戦でもそうでしたが物怖じをしないボクサーで、しっかりとアップセットを狙ってきています。
ともに有効打すら欠く間に時間が経過していますが、モンタナ・ラブのリターンが速く、鋭い。
そんな中で訪れた2分すぎ、スパークは強引に詰め寄ってフックを振るう場面を作ります。中間距離ではラブの方が空間把握能力に優れ、触覚のように右手を使っているところ、スパークの勝機はこの距離かもしれません。
2R、ハイガードでコンパクトに構えたスパークは身体をゆすり、プレッシャーをかけます。そこにラブの左がヒット。やはりこの距離ではラブの方が優れます。
インサイドに入っていきたいスパーク、突然の右をヒットすると一気に詰め寄る!強引に体ごといって、最後は右を当てるとラブはなんとダウン!ちょっと勢いに押されたようなダウンでしたが、その後もスパークは猛然とラッシュを仕掛けます。
ラブにはダメージはなさそうですが、この勢いは大事にしたいスパーク、ジリジリとプレス。やはり勝機は近い距離と、強引なまでに突進すること。中間距離ではラブの左ストレートを外す事はできませんが、もらいながらでも前進することが肝要です。
これは面白い試合です。
3R、スパークは自信を持って攻めていきます。ラフ目な攻めですが、これこそがエリート、ラブに対して非常に効果的で、ラブはクリンチ。しかしそのクリンチも気にせず、左右を振るうスパークは、闘志の塊のようなボクサーです。
2階級上の、ティム・チューに対しても恐れを持たなかったスティーブ・スパーク、フィジカルエリートとはいえないラブに対しての怖さは全く感じていません。
スパークはラブを追いかけますが、一度攻めれば「走って追いかける」が適切な表現なほど猛烈に追い立てます。
4Rもスパークはボディムーブから一気に詰め寄ります。しかしラブもここは待ち構え、カウンター狙い。頭を低くして攻め入るスパークの上に乗っかる形にしてその突進を阻み、試合巧者ぶりを発揮していきます。
そしてもちろん、中間距離ではモンタナ・ラブ。下がりながら適切なジャブ、左ストレートをヒットして、右フックで回ります。
会場にザブ・ジュダー!!
5R、更にプレスを強めようというスパーク。大きな飛び込みの左フック、サイドに回っての攻撃も試そうとしていますが、ちょっと遅い。
しかしその強引な攻めで、中盤、ラブをコーナーに追い詰めたスパーク、ここから逃さないとばかりに左右のフックを振るってまさにスパーク!
一発当たった後の詰め方、この勢い、非常に獰猛な野獣の雰囲気を感じるボクサーです。
6R、早々にヘッドバットで試合が中断。まあ、これはオーソドックスとサウスポーで起こりやすい事ですね。スパークは基本的に行く気満々で頭が低め、ラブも左を打つ際、右に頭をずらして打っていますから。
これでラブは左目上付近をカット。再開。
再開後、これでもかというほどエネルギッシュに攻め入るスパーク!ラブはクリンチ、そこからスパークをロープまで押し込み、そのままなんとトップロープからスパークを落としてしまいました!!!
猫のようにくるりと一回転して、何事もなかったように足から地面へ落ちたスパーク。
そこからスパークがリングに帰還したところで、ゴングが3度打ち鳴らされています。これは、試合終了のゴングでしょうか。
すぐさまスパークはロープに上って両手を挙げてアピール。
その後、長い時間、レフェリーがジャッジに説明をしたり、陣営がレフェリーに何事かを説明する時間が過ぎ、ふたりはグローブを外します。
これは、好試合が期待されただけに、残念な結果。
会場もブーイング、落胆。
結果はモンタナ・ラブの反則負け、スティーブ・スパークの勝利ということでしょう。
頭から落ちていたら大惨事になっていたでしょうから、この評定は納得のいくものです。が、後味が悪いのも確か。
あのままいけば、スパークが勝利していた、という可能性は高いですが、後半にラブが持ち直すという未来もあったと思います。あの時点ではややスパーク優位という内容だっただけに、この結果は残念です。
まあ、これは再戦という案件かもしれません。
ということで、スティーブ・スパーク、このスーパーライト級が本来の階級かもしれませんが、素晴らしいエネルギッシュ・ファイター。オセアニア圏は、世界に出てみれば仲間のようなものなので、是非とも応援していきたい。
チュー戦で見せた、あのハートの強さはフロックではありませんでした。もし再戦が組まれるのであれば、今度こそ、しっかりとした勝利を掴み取ってもらいたいものです。
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