1/8(土)、あまり(いや、全く?)話題になっていないShowtime興行。
それもそのはず、世界タイトル戦はおろか世界ランカー対決でもなければ地域タイトルすらもかかっていないボクシングマッチ。
幸運なことにShowtimeを観れる環境にある私でも、例えば週末にボクシング興行があればこの興行は見なかったかもしれません。
ただ、特段今週末には何もなく、ボクシングに飢えているがために視聴。
「ニュージェネレーション」と銘打たれたこのShotimeの放送は、放送に登場する6名のボクサー全員が無敗というプロスペクト。そして当然、全員が20代という若いボクサー。
出身国もドミニカ共和国が3人、アメリカ人1人、ジョージア人1人、プエルトリコ人1人とバラエティに富み、これらのボクサーが今後また放送枠に登場する可能性は、高くはないかもしれません。
ともあれ、結構ちゃんと見たので観戦記。
↓プレビュー記事
【プレビュー】ジョー・スミスJr.vsカラム・ジョンソンは大激戦必至!無敗プロスペクト6名登場のTR興行も。 - 信太のボクシングカフェ
1/7(日本時間1/8)フロリダ
スーパーフェザー級8回戦
エドウィン・デ・ロス・サントス(ドミニカ共和国)13勝(12KO)無敗
vs
ウィリアム・フォスター(アメリカ)13勝(9KO)無敗
サントスのKO率はすごいですね。明らかにパワーのありそうなサントス、比べるとフォスターは線が細い感じがしますね。
初回から結構距離が近い。様子見もそこそこに、ともに強いパンチを打ち込みます。
パワー、回転力、ともにサウスポー、サントスが明らかに上。非常にアグレッシブです。フォスターは早々と押されてしまいます。
2分が過ぎる頃には既に圧倒、フォスターはかなりディフェンスに重点を置いての戦いを強いられています。
2R、前ラウンドよりもフォスターが落ち着いたか、スピードが出てきました。このボクサーの真骨頂はヒットアンドアウェイでしょうか。
そのフォスターに対してカウンターを狙うサントス、近い距離では危険なタイミングで両者のフックが交錯します。このラウンド後半はプレスをかけたのがフォスターの方。
3R、フォレスターはコンビネーションが調子良く、引き続きプレス。サントスは単発、カウンター。
アグレッシブに攻めるのはフォスターの方、サントスはアッパーともスリークォーターブローともつかないパンチをよく放ちますが、やや手数不足か。フォスターの前進には嫌がっているようにも見えます。
4R、サントスが前に出てくると嫌がって抱えてしまうサントス。ここでサントスに減点。ホールド、ですかね。そのほかにもバッティングをアピール、すぐにスリップする等集中力を欠いているように見えるサントス。
5R、下がりながら戦うサントスに、あまり怖さを感じていないフォスターはガンガン前に出ます。
対してフォスターが前に出てくるのを嫌がり、単発のカウンターと横着のクリンチに終始するサントス。
6Rも同じく、プレスをかけるのはフォスター。サントスのパンチにも怯まず、前に出る痩身のフォスターには声援を送りたくなります。
サントスはステップを刻み、上手くボクシングをしている風ですが実際はフォスターのパンチが届いており、ポイントも厳しいのではないか。
7R、サントスのカウンターはまだ生きていますが、いかんせん手数が少ない。
ただ、一発の迫力はサントスの方が大きく勝り、フォスターはもらい方もよくありません。
ラウトラウンドも同様、ちょっとサントスが元気になっているように感じます。速いステップワーク、カウンターを決めてこのラウンドはサントスか。
規定の8ラウンズを終了し、勝負は判定へ。
判定は、77−74フォスター、77−74サントス、77−74でフォスター。
2−1の判定でウィリアム・フォスターが勝利。身体能力、ボクサーとして必要な能力はサントスの方が上のように感じました。初回を見た感じ、早い決着もあり得るのではないかと。
しかし、サントスは集中力を欠き、一発頼み、中盤にポイントを失ってしまったことで勝利を得ることはできませんでしたね。逆にフォスターは、2R以降は戦い方を変え、サントスが嫌がる事を率先してやっていきました。こういうボクサーは強い。
フォスターは本来、スピードを武器に中間距離からの出入りで戦うボクサーに見えましたが、今回は常にプレス。相手によって戦い方を変えられる器用さと、気持ちの強さを持つボクサーでした。
ライト級8回戦
スターリング・カスティーリョ(ドミニカ共和国)16勝(12KO)無敗
vs
オタール・エラノシャン(ジョージア)10勝(6KO)無敗
身長差がかなりあります。サウスポーカスティーリョが大きいですね。
初回からプレスをかけるのはエラノシャン。アマ400戦のカスティーリョ、アマ250戦のエラのシャンというデータが出ています。
カスティーリョはエラノシャンの突進を下がりながらもガチッと受け止め、リターン。初回から打撃戦が展開されます。
中盤、エラノシャンの大きな左フックがヒット、カスティーリョはダウン!立ち上がったがダメージのあるカスティーリョにエラノシャンは猛然とラッシュ、そこに耐えたカスティーリョは前に出て反撃!しかしそこに待っていたのはエラノシャンのカウンター!初回終了ゴングと同時にカスティーリョは2度目のダウン!
いきなりとんでもない初回、早期決着はあるか?
2R、当然グイグイ攻めるエラノシャンですが、カスティーリョも強いパンチを繰り出して反撃。エラノシャンは上体をローリングしながらプレス、強いパンチと軽いコンビネーションを織り交ぜていきます。
3Rも同様にエラノシャンの攻勢が目立ちます。エラノシャンは引き続き上体の動きが非常によく、カスティーリョのパンチはそのほとんどが空を切ります。
4R、エラノシャンは倒しに行ったか、足をほとんどつかわずにカスティーリョに攻め入ります。しかしこのラウンドはやや直線的すぎたか、カスティーリョの反撃も目立ちます。カスティーリョはエラノシャンの攻撃に慣れてきたか、ブロッキングが機能しています。
このラウンドは初めてカスティーリョのラウンドかもしれません。
5R、先程のラウンドよりもサイドからの攻撃を気をつけているエラノシャン。後半にエラノシャンはカスティーリョをコーナーに釘付けにしますが、そのラッシュがやや単調、カスティーリョもしっかりとディフェンス。ただ、防戦の時間が長いカスティーリョはポイント的には厳しい。
6R、やはりロープ、コーナーに詰めてラッシュをかけるエラノシャンですが、カスティーリョにもカウンターがあるので無策では攻められません。
全体的には互角のラウンドに見えましたが、終盤、エラノシャンの右がクリーンヒット。
7R、カスティーリョのガードが固く、やや攻めあぐねたエラノシャンはノーガードで誘います。
ラウンド終了後、何かしらをエラノシャンが叫んでいます。もっとこい、ということでしょうか。カスティーリョは決してディフェンシブに戦っているわけではありませんが、もう一工夫しないと勝利はえられません。
ラストラウンド、エラノシャンは上体をローリングさせ、めちゃくしゃしゃべっています。挙句の果てにはセコンド ともしゃべっています。というか叫んでいます。
結果的に接近戦でカスティーリョの固いガードを崩すことはできず、ラウンドが終了。最最後はパワーパンチをぶん回していましたが、的中率は悪かったです。
試合終了直後も何事かを叫んでいるエラノシャン。
判定は、79−71、80−70×2でオタール・エラノシャン!
カスティーリョも良いボクサーでしたが、ほぼフルマーク。エラノシャンはパワーもあり、とにかくボディムーブとサイドへのステップワークがよく、素晴らしいボクサーでした。
あと、何かめっちゃしゃべる。
ステップはきっとロマチェンコを参考にしているのだと思いますが、パンチはやや荒い。ロマがよくやる、片手で相手のガードを外してパンチを打ち込む、という技術をやろうとしていましたが上手くはいっていませんでしたね。あれでカスティーリョのガードを外すことができていれば、ストップ勝ちできたかもしれません。
スーパーフェザー級10回戦
ルイス・レイナルド・ヌネス(ドミニカ共和国)15勝(11KO)無敗
vs
カルロス・アリエタ(プエルトリコ)14勝(8KO)無敗
ヌネス、ではなくアメリカの発音ではたぶんヌニェス。ピンク色のチームカラー、トランクスが映えるアリエタ。
初回、鋭いジャブを付き合うやや静かな立ち上がりから、アリエタがボディを交えて攻めいります。
アリエタは次から次へとテンポよくパンチを放ち、ヌネスはやや守勢。後半にはヌネスも右をヒットして反撃しますが、ここはアリエタの攻勢点をとるべきでしょう。
2R、アリエタはやや待ちの時間をつくり、攻める時にはパンチをまとめて攻める、というスタイル。ヌネスは左を起点に力いっぱいパンチを振います。ただ、アリエタはかなり身体が強そうで、押されません。
回転力とパンチの見栄えはアリエタにありそうです。が、インターバル中、既に肩で息をしているようにみえるアリエタ。オーバーペースか?
3R、ちょっと待ちの時間を増やしたアリエタですが、そのガードは非常に固い。自分の攻撃ターンと見るやしつこくボディを叩き、くっついては休みます。ファイタータイプですが、戦い方もなかなか上手い。
それに対しヌネスはフック、アッパー等さまざまなアングルで対抗。下がりながらのカウンターもヒット。
ヌネスにリズムが出てきた感じがします。
4R、ヌネスが徐々に距離を支配してきたか、アリエタの的中率は下がります。ヌネスに自由な動きが出てきましたし、ディフェンスも上体を動かしてクリーンヒットをもらいません。
5Rに入るとアリエタがサークリング 、少し戦い方を変えてきました。ただ、中間距離ではやはりヌネスが上、と感じるややはり接近戦を仕掛けます。ヌネスの攻撃をガードしたあとに見せる攻撃はまだまだ迫力があります。
6R、相変わらず攻防がはっきりしているアリエタ。ここまでショータイムの採点はヌネスのフルマーク。初回もかぁ。。。アリエタに厳しい。
ヌネスはかなり余裕を持ってボクシングをしているように見えます。
7R、アリエタは待ちの時間が長くなりすぎ、返すパンチは単発になってしまっています。序盤のように自分から攻められれば良いと思いますが、このラウンドもヌネスのクリーンヒットが目立ちますね。
連打の途中でカウンターを取られることもしばしば、アリエタには苦しい展開。
8R、意を決したか、アリエタは接近戦での打撃戦を仕掛けます。それを受けてたったヌネス、身体は押されつつもクリーンヒットで上回っているように見えます。
9Rは静かな序盤を過ごし、中盤以降に打撃戦。クリンチ際の攻防も多いですが、ここはアリエタの手数が多い。
ラストラウンド、かなり余裕を持ってエスケープ体制のヌネスと、最後まで諦めずに攻めるアリエタ。1分すぎ、攻め込んだアリエタにヌネスの強い右カウンターがヒット!!
時が止まったようなアリエタに対してヌネスは攻め込み、ラッシュ!
ずるずると後退、ロープにつまったアリエタをレフェリーが救い出し、試合はストップ!
ルイス・ヌネス、最終ラウンドTKO勝利!
劇的な幕切でした、ヌネスvsアリエタ。絶対判定まで行くと思いましたが、最終ラウンドにドラマが待っていましたね。
アリエタはよく頑張ったと思いますが、ヌネスの対応力はさすが。最終的なパンチスタッツは互角でしたが、ヌネスがポイントを失ったラウンドは少なかったと思います。
(公式ジャッジは9Rまでで88-83、87-84、84-87の2-1でヌネス。いつも1人はおかしいのです。。。)
個人的に、このルイス・ヌネスというボクサーの目を引いたところは、そのディフェンス力。アリエタは非常にパワーのありそうなボクサーでしたが、そのパンチのほとんどを無効化しているようにも見えました。
攻撃面では左はダブル、トリプルと多彩で、アッパーを効果的に使う等アングルも良かった。
今回のアリエタのように、突進力のある相手は戦いづらそうに見えましたが、アリエタが出てきたからこそのストップ勝ちだとも思いますね。
ニュージェネレーション
興行のサブタイトルに、「ニュージェネレーション」と入っていた今回のShowtime。
この3戦の個人的お気に入りボクサーは、オタール・エラノシャンです。本当はエラノシアンという表記かもしれません。
出身国はジョージア。旧名はグルジア、旧ソ連の中の一国。やっぱり中央アジア、この辺りのボクサーのフィジカルの強さとスムーズなサイドステップは特異ですね。
パンチはめちゃくちゃ強い、という訳でも無さそうですが、あの強振ぷりは打ち倒そうという気概が見えて好感が持てます。
あと、試合中も試合後もめちゃくちゃしゃべる笑。とても気になります。
世界戦線まではまだもう少し、もしくはまだまだ先。ビッグマッチのアンダーカードに組み込まれるほどの注目も、政治力はない。それでもこういう各国のプロスペクトを見てみるのも、なかなか良いものです。