今に始まった事ではないのですが、フライ級周辺の日本人ボクサーたちが今、非常にアツい。
フライ級を挟んでライトフライ級、スーパーフライ級という周辺階級をあわせれば、ライトフライ級に2人、フライ級に1人、スーパーフライ級に1人と世界王者を有する、軽量級大国ニッポン。
そしてその王者たちの他にも元王者たちがひしめきあうという状態であり、かつ、それぞれの階級の強豪や王者たちが転級を匂わせることもあり、混迷してきてもいます。
ということで今回は、フライ級周辺階級の王者たちの動向をまとめつつ、今後の展望を書いていきたいと思います。
フライ級周辺の世界王者たちとその動向
スーパーフライ級
我らがWBO世界スーパーフライ級王者、井岡一翔。
2021年末には当時のIBF王者、ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)との統一戦が一度は発表されるも、日本政府の鎖国により試合は一旦流れてしまいます。
ここで互いに一戦ずつを挟み、日本の状況を見て統一戦を行う、という流れになったものの、アンカハスはその一戦で挑戦者に敗北、タイトルを失ってしまいました。
このことで統一戦は流れ、井岡の次戦は未定。アンカハスとやる予定だった5月?6月?くらいに、改めてリング登場となるのでしょうか。今後はアンカハスを攻略したIBF王者、フェルナンド・マルティネス(アルゼンチン)に標的を変更し、統一戦を模索するのかもしれません。
WBAスーパー・WBCフランチャイズ王者にはファン・フランシス・エストラーダ(メキシコ)。王座の名前も長いしボクサーの名前も長い笑。
WBAはレギュラー王者であるジョシュア・フランコ(アメリカ)との統一戦を指令。フランコも非常にアグレッシブなメキシカンスタイルのボクサー、これはまた大激闘が期待される一戦です。
そして、そのエストラーダvsフランコと同日に開催となりそうなのが、ジェシー・ロドリゲス(アメリカ)vsシーサケット・ソールンビサイ(タイ)というまたまた極上の一戦。
欠場したシーサケットの代役としてリングに上がったジェシー・ロドリゲスは、カルロス・クアドラス(メキシコ)を圧倒、見事WBC世界スーパーフライ級王者となりました。どんな力が働いたのかはよくわかりませんが、ライトフライ級でランクインしていたロドリゲスが、突然2階級上のタイトルを獲った、しかも倒した王者はスーパーフライ級のトップの一角だった、というのは驚き意外の何者でもありません。
そんなロドリゲスに、シーサケットが挑戦するというのは至極当然のこと。
そしてもうひとり、前戦でWBC世界スーパーフライ級ダイヤモンド王座を手に入れたローマン・ゴンサレス(ニカラグア)も忘れてはなりません。
ロマゴンが戦うのは、エストラーダvsフランコの勝者なのか、ロドリゲスvsシーサケットの勝者なのか。もしくは、日本贔屓のロマゴンにとって、来日してのvs井岡一翔というのも、選択肢にあるのでしょうか。これは非常に楽しみです。
フライ級
ネクスト・イノウエと呼ばれる中谷潤人(M.T)は、次戦で山内涼太(角海老宝石)を迎えます。強打を持っている山内には油断は大敵ですが、中谷は気を抜くなんていう事を知らないでしょう。
4/9(土)、防衛を果たせばスーパーフライ級への転級が濃厚、いやこれまでの発言を見るとほぼ確実と言えます。
WBOルールでは、返上して転級する王者は、転級先のWBOランキングではトップコンテンダー(1位)の位置につくという決まりがあります。
なので、仮に試合が終わってすぐ、4月に返上したとすれば、5月にはWBO世界スーパーフライ級1位というコンテンダーになり、井岡一翔への指名挑戦者となる、ということになっています。これは、アツい。
中谷潤人が2度目の防衛戦で山内涼太と日本人対決「必ず勝利したいと思います」 - ボクシング : 日刊スポーツ
この中谷潤人vs山内涼太の世界戦は、GGGvs村田のアンダーカードで生中継。
アマゾンプライムにもし入っていないようでしたら、早々に入りましょう。村田のドキュメンタリーとかも始まっています!(が、実は私はまだ見ていない笑)
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尚、現在のフライ級トップ戦線。
WBAにはアルテム・ダラキアン(ウクライナ)。このタイトルはしばらく停滞、ということで仕方がありません。ダラキアンはそれどころではありません。かといって剥奪というのは人の心がなさすぎます。
そしてIBF王者のサニー・エドワーズ(イギリス)は先日ムハマド・ワシーム(パキスタン)を相手に防衛、かねてから熱望しているWBC王者、フリオ・セサール・マルティネス(メキシコ)との統一戦を画策しています。
このマルティネスは一度引き分けたマックウィリアムス・アローヨ(プエルトリコ)との指名戦をオーダーされており、それが次戦、5/7とうい日付も決まっています。
果たして、スーパーフライのウェイトすら作れなかったマルティネスは、その試合から2ヶ月でフライ級のウェイトを作れるのでしょうか。練習復帰後すぐに減量しないと間に合わないんじゃないでしょうか。そもそも作る気があるのでしょうか!?
マルティネスがアローヨに勝った場合、すぐにIBF王者のサニー・エドワーズとの統一戦に臨むのでしょうか。
指名戦に厳格なIBFのトップコンテンダーは、リカルド・サンドバル(アメリカ)。このボクサーは、速く、巧く、そして強い。はっきり言って誰と戦っても驚異と言われるボクサーだと思います。
そのサンドバルはIBFの指名挑戦者、となっていますが、4/9にはWBCの指名挑戦者決定戦にも出場し、クリストファー・ロサレス(ニカラグア)と対戦する予定でいます。その他にもWBOでも1位と、このボクサーが誰のタイトルを狙うのか、は非常に気になるところ。
このボクサーは怖いボクサーです。覚えておいた方が良い。
↓サンドバルのIBFエリミネーター戦
ライトフライ級
WBAスーパー世界ライトフライ級王者には、京口紘人(ワタナベ)がいます。
怪我により、試合から遠ざかってしまっている京口。WBAレギュラー王者であるエステバン・ベルムデス(メキシコ)との対戦をオーダーされたものの、京口の怪我によりベルムデスはカルロス・カニサレス(ベネズエラ)とのリマッチに臨む事になりました。
正式な日程はまだ出ていませんが、この勝者と京口が団体内統一戦を行う予定です。
と、思っていたらカニサレスはガニガン・ロペスとのコンチネンタルタイトル戦に臨むことになったようです。しかもフライ級。(3/24WBA発表)
ということは京口の怪我の治りを待って、京口vsベルムデスとなるのか?それともベルムデスは一戦挟むのか?いずれにしろ、激突の日はそう遠くはないはずです。
その後、京口はかねてから熱望している他団体王者との統一戦へと身を投じていく事になるのでしょう。
そして対抗王者、かねてより統一戦が取りざたされていたボクサーといえば現在のWBC王者、寺地拳四朗。
矢吹正道(緑)を圧倒した拳四朗は、それまでの実績とあの勝ち方でライトフライ級当代最強の座を手にしたのではないでしょうか。
今後は統一戦、もしくは階級アップと名言していましたが、統一戦である場合、他の王者の動向が気になるところ。
WBAは京口の怪我もあり、統一戦実現はまだもう少し先になりそうで、以前に対戦が決定したこともあるIBF王者フェリックス・アルバラード(ニカラグア)は王座を返上してフライ級への転級というニュース、WBO王者のジョナサン・ゴンサレス(プエルトリコ)はエルウィン・ソト(メキシコ)をアップセットで降し、王者となったがまだ日が浅い。
拳四朗が次戦で統一戦ができる可能性があるとすれば、このジョナサン・ゴンサレスくらいのものですが、果たしてそれは叶うのか。
階級アップをするにしても、「1度くらいは防衛して」ということなので、もしかすると次戦がライトフライ級最終戦となり、その後はフライ級へ行くのかもしれません。そうすれば、京口との統一戦は叶いません。
フライ級周辺の日本人コンテンダー
まず一番に名前を挙げるべきなのは、すでに世界挑戦が決まっているフライ級の山内涼太(角海老宝石)。しかし、挑む王者があの中谷潤人なだけに、王座獲得の可能性というのは残念ながら高くありません。
ただ、山内はインタビューを読んでも、自分の位置をよくわかっている感じがします。自分が勝てば、アップセットと呼ばれる事を。そこまでわかっているのであれば、逆に恐れるものは何もなく、思い切って行けるでしょうし、「前戦以上のパフォーマンスを」と語る中谷は、万に一つの確率で力みや緊張が生じるかもしれません。
山内の怖いところは、中谷へのアップセットに必須ともいえるパンチングパワーを有しているところ。いずれにしろ、もう間もなく、4/9には結論が出ます。
そして次点では、勿論ユーリ阿久井政悟(倉敷守安)。弊ブログでもずっと名前を出し続けているボクサーですが、このユーリ阿久井は絶対に世界王者になれるボクサーだと思います。桑原拓(大橋)以降、よく名前を見かけるようになって嬉しい。
私は20年以上、この倉敷守安ジムを遠くから見守ってきましたが、こんなチャンスは本当にウルフ時光以来、盛り上がりと世界タイトルへの近さは完全にあの時以上。
何の後ろ盾も持たないボクサーが、自分で戦い、考え、ルートを考えて敷いてきた世界への道は、もう頂が完全に見える所まで来ています。
中谷が山内に勝ち、返上したとして、そのまま繰り上がれば現在WBOランキング4位のユーリは必然的に3位となります。そうなると、現在のトップコンテンダー、リカルド・サンドバル(アメリカ)と2位となるジャクソン・チャウキ(南アフリカ)の決定戦というのが通常の流れで、その勝者に指名挑戦者として挑戦できる、というのが最も近い道かもしれません。
そもそもWBO1位のサンドバルは、IBFのトップコンテンダーでもあり、指名挑戦者。十中八九、WBCでも指名挑戦権を得るでしょう。
だとすれば、中谷返上後すぐに、チャウキとユーリ阿久井の決定戦というのも大いに有り得る話です。ちなみに、山内が中谷に勝利すれば、むしろダイレクトに挑戦できるのではないか、とも思っています。
さて、現在発表されているランキングでは、WBOライトフライ級1位にランクされる加納陸(大成)、こちらもフライ級への転級を決定。この加納がフライ級でどのあたりにランクされるかは見ものですが、個人的には正直、実績的にまだ疑問符がつくところ。
そして、ライトフライ級で拳四朗が王座を返上、階級を上げれば今度は岩田翔吉(帝拳)の出番が来るのでしょう。
WBA2位、WBC3位という好位置につけている岩田は、前々戦の日本王座戴冠戦でも、前戦の初防衛戦でも強い勝ち方をして、評価を上げています。
この岩田は拳四朗の後釜を狙うのか、もし拳四朗の次戦の相手が決まらないようなら拳四朗への挑戦もあり得るのか?拳四朗vs岩田というのは帝拳が許さない気がしますが。
同じくライトフライでは、堀川謙一(三迫)もランクインしていますが、試合枯れが長い。このベテランにも、是非とも世界タイトルマッチへのチャンスを与えてほしいものですが、同門ともいえる拳四朗への挑戦はあり得ませんし、なかなか難しいところですね。
ということで、誰がどのような道筋を選択するのか、ということで色々と動きそうなフライ級の周辺階級。この軽量級に興味が少ない海の向こうのボクシングファンたちは、もったいないな、と思ったりもします。
我々は幸いにも、この軽量級ボクサーたちの素晴らしさを知っています。今後のフライ級周辺階級の色々、非常に楽しみです。