な〜がれ〜るき〜せつ〜のま〜んな〜かで〜
ということで、3月9日。
2023年3月9日、瞳をとじて、瞼の裏にいたのは、ジャーボンタ「タンク」デービスと、「キングライ」ライアン・ガルシアでした。
日本時間3/9にタンクとガルシアはキックオフ会見でフェイスオフ。
やるやると言いつつやらないパターンかと思われた両者の試合は、結局オスカー・デラホーヤ率いるGBP側が少しだけ折れる形で締結、とうとう会見までたどり着くことになりました。
この「プロモーターの垣根を超えたビッグマッチ」に辿り着いた両者の功績は非常に大きい。
数日前には、同じくプロモーターの垣根を超えた軽量級のビッグマッチの正式発表もあったわけですが、もしかするとここに来てボクシング界は変わろうとしているのかもしれません。
どうかこの流れを止めてくれるな、という願いを込めつつ、今回のブログでは今後の期待を書いていきたいと思います。
ジャーボンタ・デービスvsライアン・ガルシア
ジャーボンタ・デービスは、もともとフロイド・メイウェザープロモーションに所属するボクサーでした。このメイウェザープロモーションに所属するボクサーたちの試合は、ケーブルテレビ局であるShowtimeが中継。
デービスはメイウェザーのもとを離れ、GTDプロモーションを設立しましたが、独立後もShowtimeのお世話になっており、ShowtimeもデービスのPPVは常にバカ売れするがために、手放し難いドル箱スターです。
そして、ライアン・ガルシアは、オスカー・デラホーヤ率いるゴールデンボーイプロモーション所属のスターボクサーであり、こちらの試合は巨大プラットフォームであるDAZN、こちらはShowtimeと違って全世界に届く分、その影響力は計り知れません。
その二人が激突、となると、非常に大きなお金が動くため、一筋縄ではいかないのは想像に難くありません。
この辺は「ボクシング界の闇」とも言えるところですが、この試合が実現に至った経緯としては、ライアン・ガルシアのこの試合にかける熱意だったということはすでに知るところであり、この部分こそがピックアップされるべきところだと思うのです。
↓デービスvsガルシアの正式発表
スティーブン・フルトンvs井上尚弥
そして先日発表された、スティーブン・フルトンvs井上尚弥という試合も、プロモーターの垣根を超えた一戦です。
フルトンもタンク・デービスと同じく、Showtimeに恩のあるボクサー。
これまでの試合はShowtime放映のShowtime Championchip Boxing(つまりはPBC興行)で放送されており、タンクのようにPPVとはいかないまでも、メインを張ってきたようなボクサーです。
そして井上尚弥というボクサーは、日本では大橋ジムに所属していますが、世界的にみれば帝拳プロモーションのコネクションをつかってのトップランクの契約選手。
ご存知の通りPBCのアル・へイモンとトップランクのボブ・アラムは犬猿の仲、ここが歩み寄ることは不可能に近いもの。
これは「日本開催」というある種のウルトラCを使ったことが決めてであることは間違いありませんが、みんな大好き杉浦大介氏が語る通り、フルトンが井上尚弥戦を渇望していた、ということが非常に大きなファクト。
↓杉浦氏の素晴らしい記事
井上尚弥vsフルトン急転直下の“最高級のカード”はなぜ実現した? 米識者たちが明かす舞台裏「フルトン本人が反対する陣営を説得した」 - ボクシング - Number Web - ナンバー
↓フルトンvs井上尚弥の正式発表時の記事
プロモーター間の障壁を取り除いたのは
スティーブン・フルトンはその開催地において、またその対戦相手にリスクを持ち、井上尚弥は新たな階級であることとその対戦相手にリスクを持つ。
ジャーボンタ・デービスも、ライアン・ガルシアも、それぞれの相手に対してリスクを持っています。こちらの契約体重はライト級のリミット+1ポンド、ライト級ではかなり小さいデービスと、ライト級がギリギリでスーパーライト級に転級希望のガルシアにとっては、どっちが得なのかはわかりません。ただ、当日の体重を146lbs(前日計量から+10ポンド=+4.5kgくらい)に抑えなければいけない、というのはガルシアにとってやや不利なのかもしれません。(本人は別に気にしていない様子)
いずれにせよ、このプロモーター間の障壁を取り除いたのは、ボクサーたちの熱意。
それぞれのプロモーターが、それぞれのスターボクサーを囲い込み、その中で対戦相手をまわす、といういつの間にやら出来上がってしまったこの滑稽な小さな世界は、「本当の一番は誰なのか」というボクサーたちの想い、ファンたちの声を聞き届けるような形で実現に向かっているように思います。
数年前、World Boxing Super Seriesが世間を騒がせ、それは日本でも井上尚弥を巻き込むことで大きな話題となりました。
これはそれまでなかなか実現しなかった「王者同士の統一戦」のハードルを大きく下げ、WBSSの開催以降、多くのUndisputed王者が誕生するようになり、それは今後も続いていくビッグウェーブとなっていると思います。今、世界王者たちは口を揃えて「階級最強を証明したい」と言っています。
この流れは非常に素晴らしいもので、ビッグマッチがなかなか決まらないことはボクシングの競技の1つの特徴とも言える事象にまで発展し、盛りを過ぎた頃にようやく戦うのが風物詩、とまでなってきてしまっていました。
ここに来て行われるジャーボンタ・デービスvsライアン・ガルシア、スティーブン・フルトンvs井上尚弥という戦いは、このボクシング界に大きな波紋を広げてくれるのではないか、と期待をしています。
ここに挙げたボクサーたちは、4人とも無敗で全勝、そして年齢的にはプライムタイムを迎えていると思われるボクサーたち。
こんなにも嬉しいことはないし、こんなにもありがたいことはありません。
この4人のボクサーのうち、2人は土がつく、敗北する可能性が大きいのです。
しかし、この4人のボクサーのうち2人が全勝でなくなったとしても、それをあざ笑うファンはいないでしょう。
2022年は日本のボクシング界にとって大きな転換期であり、最大とも言える年でした。
そして2023年、もしかすると世界のボクシング界にとって大きな転換期となるのかもしれません。
そして2023年に世界のボクシング界が大きな転換期を迎えるためには、やはりアレをやらなければいけません。どうしても。
テレンス・クロフォードvsエロール・スペンスJr。
この試合が決まれば、もうプロモーターの垣根は乗り越えたと言って良いのかもしれません。
そしてこの試合を実現するのは、周りの大人たちの云々ではなく、やはりふたりのボクサーの熱意なのかもしれない。そうであってほしいと願います。そう考えつつ、やっぱり実現可能性は低いのかな、とか思ったり、思わなかったり。
ともあれ、今年前半に連なるこのビッグマッチの連鎖を、ここで止めてはいけません。
今後のボクシング界に、最大限の期待を込めて。
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