ここ数記事はウェルター級のことしか書いていないほど、今週末はウェルター級祭り。
↓残念ながら延期となってしまったスタニオニスvsオルティス
↓ジャロン「ブーツ」エニスvsビラ
↓現在の世界ウェルター級戦線
まずは日本で行われたファイティング・スピリット・シリーズ、八王子中屋の興行で、佐々木尽(八王子中屋)が登場。
この興行をU-NEXTが生配信してくれたのは本当にありがたいことです。
ということで今回のブログでは、佐々木vs星をメインに据えた、ファイティング・スピリット・シリーズの観戦記。
7/8(土)ファイティング・スピリット
配信開始は渡邊海(ライオンズ)vsジョンジョン・エストラーダから。
力の差は明らかで、様子見も早々に渡邊のコンビネーションが炸裂。最後は右アッパーのダブルでダウンを奪い、試合を決めてしまいました。
エストラーダがフェザー級のボクサーということもあり、身長差もかなりある戦いではあるものの、エストラーダは幾度となく日本のリングに登場し、意地を見せてきたボクサー。その中で渡邊があっという間に試合を決めきったのは素晴らしいですね。
そして続いては日本ミニマム級タイトルマッチ。
日本ミニマム級タイトルマッチ
高田勇仁(ライオンズ)11勝(6KO)8敗3分
vs
仲島辰郎(平仲)11勝(7KO)4敗1分
仲島は4戦連続のタイトル戦。ただ、これまでのタイトルマッチの対戦相手は谷口正隆、重岡銀次朗、重岡優大(いずれもワタナベ)といずれものちの世界王者。仲島にとって、今回は最も大きなチャンスとも言えます。
しかし、この高田勇仁こそが、現在のボクシング界にとって一縷の望みとなるボクサー。
戦績なんてものにとらわれず、結果を残し始めたのはここ最近という高田が、世界王者となることを心から願うボクシングファン、関係者は多いのではないかと思います。この高田が世界を獲ってくれたならば、諦めなければ世界チャンピオンにだってなれる、ということを証明してくれることとイコールなのです。
7年前のC級時代、戦った両者は仲島の3RTKO勝利。ただ、この舞台にたつ二人のボクサーは、当時とはおそらく別人でしょう。
初回、まずダブルジャブで攻め入るのは高田。仲島は遠い距離でサークリング、身長差はあり、仲島が一回りでかい。
中盤、仲島の右がヒット。長い距離では仲島が上、高田はインサイドに入らなければ勝負になりません。その後は高田がフェイントをかけつつプレス。
2R、高田がプレス、仲島がジャブ、ストレートで引き離すという展開。序盤は仲島が遠い距離で高田を止めていましたが、中盤に入ると高田が中に入れるようになってきたように見えます。
ただ、仲島のロングのジャブが良いというイメージです。
3R、このペースはまずいと思ったか、高田はプレスを強めます。特に飛び込みの左フックが力強く、これで強引に距離を詰めていきます。
結局のところ、この戦いは仲島がいかにストレートの距離で戦えるか、高田がいかに距離を詰められるのか。
このラウンドは身体を振ってプレスを強めた高田が非常に力強く、仲島はやや守勢のイメージ。
4R、高田が非常にパワフル。左フックは身体に当たれば仲島の体勢を崩すし、突き刺すようなジャブも仲島を下がらせます。高田がしつこく強いプレスからのやや大振り気味だがパワフルなパンチ、徐々に高田のペースになってきているのではないでしょうか。
が、どうやら高田の右瞼をカット。これはヒッティングのようです。
5R、序盤、仲島がリング中央で持ちこたえてはいましたが、中盤、高田の右がクリーンヒット!これでダメージを負った仲島、高田はラッシュ!
仲島はこれ以上のダメージを負わないようにサバイバルモード、こうなったボクサーを倒すのは至難。後半になってやや息を吹き返したような仲島、このラウンドをサバイブ。
途中採点は、49-46、50-45×2で高田。3-5Rは明らかに高田だったと思いますが、1-2Rもそんなに割れていなかったようです。
6R、こうなると仲島はかなりきつい。そしてこのタイミングで高田は序盤、プレスを緩めて休憩か。仲島は行かなければいけませんが、さほどペースは上がらず。
とか思っていた後半、仲島がワンツーをクリーンヒット!!油断でもしていたのか、これをモロに受けた高田はダウン!!!
立ち上がった高田に襲いかかる仲島!!!足にダメージが残る中ですが、残り時間も少なく高田はゴングに救われます。
一転して大ピンチ、高田よ回復していてくれ。。。
7R、仲島が自信を持って攻め入ります。高田はダメージが残るか、やや動きが緩慢というかちょっと反応がよくありませんし、踏み込みも浅い。
高田はなんとかジャブでしのぎつつ、この間にもどうやら回復しているよう。仲島はいききれず、高田の回復を許し、高田はステップも復活してきた印象。終盤、高田が巻き込むような右ストレートをヒット。
これは仲島、千載一遇のチャンスを逃した感さえあります。
8R、高田の動きは随分回復して見えます。ただ、仲島も打ち気になっているため、高田もプレスでグイグイとはいきません。
このラウンドはなかなか甲乙つけがたいラウンド、大きな山場はありません。
9R、ここはもう両者ともに勝負になるであろう残りの2R。特に仲島は落とせないことからか、前に出ていきます。
高田は迎え撃ちつつ仲島が出てきたところでインサイドに入り、中盤に左フックをヒット。前半ラウンドほど仲島のバランスを崩すことができていないように見えますね。
ラストラウンド、中間距離での攻防。お互い退く気はありません。仲島は軽いジャブのような右をダブルで出す等、この距離で上手く戦っているように見えます。
しかし中盤、高田の右がヒットすると仲島は後退!これは値千金の右ストレート、高田は猛然とラッシュ!仲島も下がりながらもカウンター、折れない心を見せつつ、最後の最後まで打ち合いました。
素晴らしい10Rを終えて、判定は96-93、97-92×2、3-0のユナニマス判定で高田の勝利。
微妙なラウンドは高田の方に流れた、という感じですがこれは(特に現地でみた時に感じる)見栄えによるものでしょう。
高田勇仁、見事な勝利。あのダウンからよくサバイブし、素晴らしかったですね。こういうピンチから巻き返した経験も大きいでしょう。
素晴らしい戦いを見せてくれた両者に拍手、高田の今後に期待です。
WBOアジアパシフィック・ウェルター級タイトルマッチ
佐々木尽(八王子中屋)15勝(14KO)1敗1分
vs
星大翔(角海老宝石)5勝(3KO)2敗3分
今回も佐々木にはまるで勝利したかのような入場を期待していたわけですが、これまた期待どおりのパフォーマンス。入場していきなりトップロープに登るというその姿は、なんだか純粋さがみえて非常に格好いい。
ただ、この戦いは佐々木にとって楽な戦いではありません。
豊嶋亮太、小原佳太をあっという間に仕留めてみせた佐々木に求められるものは、勝利ではなく圧倒的勝利。KOではなく、アーティスティックなKO。
対して失うものがないとも言える星、このバランスの良いボクサーがどのような戦い方をするのか、によってもそれの可不可が変わってくるとも言えます。
注目のゴング。
まずはじっくりと構えた佐々木、鋭いジャブ。これが速い。佐々木は時折スイッチもしますが、この瞬間的スイッチはまだ「戦うため」のものではないですね。
ガードを上げて頭をくっつけてくる佐々木に対して、星は足を使わずに迎え撃つスタイル。佐々木のパワーパンチを真正面から受け止め、その後コンビネーションで攻め込みます。
2R、このラウンドも頭をつけての打ち合いでスタート。佐々木のアッパーが良い。星もコンパクトなコンビネーション、佐々木の大きなパンチとは対照的に、単発では終わらないこのコンビネーションは効果的ですね。
ただ、パワーさは如何ともし難く、やはりインパクトは佐々木の方が圧倒的に上。
ただ、この距離であれば(大きく振れないこともあり)佐々木のパンチにも耐えられる、という目算かもしれません。
3R、ここも頭をつけてのスタート。佐々木に対する対策として、この距離でというのは非常に勇気のいることだと思いますが、逃げようとするよりももしかすると良いのかもしれません。フィジカルと、タフネスさえあれば。
中盤、佐々木が速いスイッチを繰り返すと、ちょっと星はやりづらそう。佐々木は引き出しをここで披露、これは星にとっても想定外か。
4Rも展開は変わらず。グイグイとプレスをかける佐々木、星は迎え撃つもフィジカルの強さ、パンチングパワーに差があります。
佐々木のアッパーが幾度も星の顔を跳ね上げますが、星も非常にタフ。
佐々木はブンブン丸時代から比べて細かなテクニックがひかり、ショートのアングルも素晴らしい。
5R、星がややサークリング、ちょっと離れて戦おうとするか。というところですが、こうなると佐々木としてもパンチが活きます。
ミドルの距離、ショートの距離と距離を変えながら戦う二人ですが、いずれの距離でも上回るのは佐々木。
6R、佐々木がペースを上げたか。手数と回転力を増やして攻め込みます。星はここでも佐々木を迎え撃ちますが、幾度も顔を跳ね上げられ、ややダメージが溜まってきたという印象。
終盤はコーナーに詰まった星。既に限界が近いようにみえます。
7R、サウスポーの佐々木が頭をつけにいくと、星も応戦。それでもこのままではジリ貧です。この距離での佐々木のパンチに慣れているのか、星のタフネスは称賛に値するものですが、被弾が多く、ダメージを溜めてきているのは明らかです。
佐々木はここにきても動きが落ちることはなく、クイックな動きとパワフルなパンチで星を攻めたてていきます。
8R、やや距離を空けたところでの打撃戦スタート。星もキレのあるパンチを繰り出しますが、ここは佐々木の土俵。やはり佐々木が打ち勝つ状況です。
9R、ここまで圧倒している佐々木、あとは倒せるか否か。星も「判定までいけば御の字」という感じではないですが、ちょっと勝ち目が薄い展開なので、何かしらの秘策がほしい。
このラウンドも佐々木がガンガン攻めますが、決定的な場面は訪れません。
10R、明らかに倒しに行く佐々木。ここでもアッパーが良い。コツコツとアッパーを打ってからフックを強振、それでも星も素晴らしい反応でこのフックのダメージを逃した受け方。
11R、ここも近い距離でのボクシング。レフェリーがふたりの近くで星を観察、ちょっとストップのタイミングをも伺っているようなイメージです。
中盤、佐々木の右がヒットしたところでレフェリーが割って入ってストップ。
佐々木尽、11RTKO勝利。
圧倒しながらも、倒し切ることはできなかった佐々木。それでも、この試合で証明したことは大きく、引き出しの多さ、強弱や緩急をつけたパンチ、スイッチ等の器用さと、打ち続けられるスタミナ。
星も本当によく頑張りましたが、やはり地力の差はあった、と感じます。
逆に言うと、地力の差があるにも関わらず、ここまで粘った星。この粘りは、ネガティブなものではなく、ポジティブな粘り。(ネガティブな粘りというのはポール・バトラー的なやつ)
改めて星大翔、素晴らしいボクサーですね。
佐々木はあくまでも実直なボクサー、これからも応援していきたいと思います。日本人初、ウェルター級世界王者となる姿を見届けましょう。
どうでも良いですが、このT氏のインタビューどうにかならないものか。なんだか上から、というか、識者ぶっているというか、フランクと失礼さを勘違いしているような感じ。というか失礼に感じます。
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