ニッポンのボクシング界は、今、黄金期を迎えていると言っても過言ではありません。
「モンスター」井上尚弥(大橋)の名声は、「アメリカでのリングでの不活動さ」があるにも関わらず、世界を席巻し、2023年はリングマガジン、BWAA、ESPNといった主要メディアのFOTY(Fighter of the Year)を総なめにし、その活躍はとどまるところを知りません。
また、中谷潤人(M.T)もKO of the yearを受賞、その知名度をメキメキと上げているし、寺地拳四朗(BMB)もライトフライ級のリングマガジン王者に認定されてもいます。
年末にぐっと世界的評価を高めた井岡一翔(志成)、井上拓真や重岡兄弟やユーリ阿久井といった世界王者たち、そして週末にはきっと田中恒成(畑中)もこのリストに加わり、統一王座戦線へ復帰をしてくることでしょう。
さて、以前は日本の王者たちが評価されにくい時代もありました。
しかし今、大配信時代に突入し、Youtube(の違法アップロード)も含めてこの極東の国のボクシングも世界的に見られる時代。ファンにも届くようになった日本のボクサーたち全体が評価を受けているのだと思っています。
さて、この大配信時代に至る前、評価を上げるためにはアメリカのリングで戦う他方法はなく、その完全アウェーとなるリングでアップセットを繰り返し、評価を高めていった稀有なボクサーといえばマニー・パッキャオ(フィリピン)。日本のリングにも上がったことのあるこのボクサーが、アジア人ボクサーで最も成功したボクサーであることの疑いの余地はないでしょう。
フィリピンという国は、ご存知の通り日本と長くライバル関係にある国であり、現在OPBF(東洋太平洋ボクシング連盟)と呼ばれる団体は、もともと日本、フィリピン、タイの3カ国で結成されたOBF(東洋ボクシング連盟)が前身です。
あの時、パッキャオの大躍進は東アジアに住むボクシングファンとしてとても誇らしくも思ったことも覚えています。同じく、東アジアの人たちが、井上尚弥の高い評価を喜んでくれていたら嬉しいものですね。
さて、そんなフィリピンですが、現在世界王者が不在。
それでもボクシングの土壌のあるフィリピン、今後の世界王者誕生を期待するわけですが、現状、世界に近いボクサーとして幾人かのボクサーたちをリングマガジンが紹介しています。
ジェルウィン・アンカハス(B級)34勝(23KO)3敗2分
クリスチャン・アラネタ(LF級)24勝(19KO)2敗
このうち、とりあえずアンカハスについてはタイトルショットが決まっており、それは2/24の両国国技館でWBA世界バンタム級王者、井上拓真(大橋)への挑戦です。これは王者にとって厳しい戦いでもありますが、当然アンカハスとしても楽観視できる戦いではありません。アンカハスは実績には勝りつつも、バンタム級ではまだ未知数。しかも、井上拓真というボクサーは、世界的な名声こそ手にはしていないものの、日本のトップレベルたちを次々と退けてきたテクニカルなボクサーです。アンカハスにとっても、空転させられる可能性がある、かなり50-50に近いマッチアップと言えるでしょう。
↓プレビュー
そして、おそらく2024年にタイトル戦を迎えるであろう、というところなのがクリスチャン・アラネタ。
前戦でIBFの指名挑戦者決定戦に初回TKOで勝利を飾ったアラネタは、順当にいけば今年中にはIBF王者に挑戦できるはずです。IBFの王座は、現在シベナチ・ノンシンガの手に戻っています。
マーク・マグサヨ(SFe級)25勝(17KO)2敗
レイマート・ガバリョ(B級)26勝(21KO)1敗
マグサヨ、ガバリョ。
この二人のボクサーは一度は世界タイトルを手にするもそれを手放し、再帰を誓うボクサーたちです。
マグサヨはアップセットで当時の絶対王者、ゲイリー・ラッセルJr(アメリカ)を降すという快挙を成し遂げるも、初防衛戦でレイ・バルガス(メキシコ)に判定負けを喫しています。
その後ブランドン・フィゲロアと暫定王座を争うも2連敗、前戦はスーパーフェザー級超のウェイトでリングに上がっています。記事を読む限り、フェザー級では限界があったということなので、今後はスーパーフェザー級に転級、ということで良いのでしょう。
階級を上げることにより、パワーが戻ってきたと語るマグサヨ(というかギボンズ)ですが、このTGBとMPの後ろ盾は非常に強く、近いうちにタイトルショットが訪れるのでしょう。その際はおそらくアメリカAmazonでの興行であることが予想されます。
ちなみにギボンズ曰く、次はエドゥアルド・ラミレス(メキシコ)とのことで、このテストマッチをクリアすれば世界タイトル戦にゴーサインだそうです。
さて、ガバリョはちょっとマグサヨとは違いますが、一応世界タイトルを獲得しています。ただ内容は、というと、エマニュエル・ロドリゲス(プエルトリコ)にアウトボックスされた、というのが正直なところですが、なかなか妙と言える判定での勝利。そのタイトルを初防衛戦でノニト・ドネアに4RKOで奪われており、そこからアメリカのリング登場はありません。
現在は失地回復に勤めているところで、ドネア戦からは3連勝、地域タイトルを獲得しています。WBO世界バンタム級1位、ということで、近々WBO王者、ジェイソン・マロニーに対して指名戦のオーダーがなされる可能性がありますね。
ヴィンセント・アストロラビオ(B級)19勝(14KO)4敗
チャーリー・スアレス(SFe級)16勝(9KO)無敗
デーブ・アポリナリオ(F級)19勝(13KO)無敗
そんなマロニーと王座決定戦を争ったのがヴィンセント・アストロラビオ。2022年にギジェルモ・リゴンドー(キューバ)、ニコライ・ポタポフ(ロシア)を破って大躍進を遂げた『Asero』(=鋼鉄)は、マロニーと大接戦を演じての黒星の後、ナワポーン・カイカンハ(タイ)を11RTKOで撃破して再浮上。
このカイカンハ戦こそがWBCのエリミネーションバウトであったので、アストロラビオは2/24に日本で行われるアレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ)vs中谷潤人(M.T)の勝者に挑戦することになります。これが2024年中に行われるかどうかは(WBCなので)わかりませんが、要注目です。
そしてチャーリー・スアレス、デーブ・アポリナリオという無敗のボクサーたち。
スアレスは35歳、プロスペクトと呼ぶには歳をとりすぎているようにも思いますが、元リオ五輪のオリンピアンという肩書を持つボクサーで、4月に勝負の1戦を控えています。それはプエルトリコのプロスペクト、ヘンリー・レブロン(19勝10KO無敗)であり、これはトップしたの注目ファイトに数えられそうですね。
そしてデーブ・アポリナリオ、こちらはWBAとIBFのフライ級でトップ3に位置しており、世界挑戦も間近。WBAはユーリ阿久井政悟(倉敷守安)、IBFはジェシー「バム」ロドリゲス(アメリカ)と、いずれも広義でみれば帝拳プロモーション所属の選手。
そしてこのアポリナリオは、大橋ジムのフェニックスプロモーションがサンマンプロモーションと共同プロモーションしているボクサーです。
バムの動向は不明(フライ級に留まるのか、スーパーフライへ行くのか)であり、もし現状で試合を組むならWBAの方が手っ取り早い状態。果たして今年中の世界挑戦は叶うのか。
「マニー・パッキャオ」以後
20年以上前は、日本のリングにフィリピン人が立つ時、その多くは明らかなかませ犬でした。本当に倒されるために来ているボクサーが多かったのではないでしょうか。しかしマニー・パッキャオの登場後、非常に骨太なフィリピン人ファイターたちは日本でいくつものアップセットを起こして日本のボクサーにとっての大きな脅威となったり、それを飛び越えてアメリカで戦い力をつけ、日本人と交わることなくそのキャリアを駆け抜けていったボクサーたちもいます。
アンカハスとかガバリョとかはその後者の例ではありますが、ここに来て日本のボクサーたちも追いついてきた印象であり、これらのボクサーたちが得た名声をこっちに引っ張るチャンスでもあります。
ともかく、フィリピン人ボクサーたちは絶対不利な条件下で戦うことを恐れず、敗北を恐れず、とにかく一発で試合をひっくり返すことができるパワーを持つ、素晴らしいファイターたちです。
できれば日本人の持つタイトルを奪ってほしくはないものですが、フィリピンでの世界王者不在は非常に寂しいため、やはりフィリピン人たちの世界挑戦も応援したいものですね。
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