日本時間3/31(日)、いよいよ北米Amazon Prime VideoがPBCファイトを放映し始めます。
Showtimeのボクシング放送終焉から3ヶ月半のレイオフ期間を設け、満を持しているのかはわかりませんが、ともかくティム・チューvsセバスチャン・フンドラというカードを携えてのカムバック。
すでに第3弾(第3弾はまだ正式な発表には至っていませんが)まで発表されているAmazon Prime PPV興行、そのほかにも今年は12-14興行を予定しているらしいので楽しみにしましょう。
ちなみにこの興行、なんと5つも世界タイトルマッチが開催されるというトンデモ興行です。どっからPPVになるのか、というとよくわからないのですが、この5つの世界タイトルマッチにプラスしてイライジャ・ガルシアvsカイロン・デービスがとりあえずPBCのサイトに載っているマッチアップです。
ということで今回のブログは、Amazon Prime Video Presents PBC興行、クィンティプル(5つの)世界タイトルマッチのプレビュー記事、その1。
3/30(日本時間3/31)アメリカ・ラスベガス
WBO・WBC世界スーパーウェルター級統一タイトルマッチ
ティム・チュー(オーストラリア)24勝(17KO)無敗
vs
セバスチャン・フンドラ(アメリカ)20勝(13KO)1敗1分
無敗のライジングスター、ティム・チュー。今やこのチューを「コンスタンティン・チューの息子」とわざわざ注釈するメディアも少なくなったことから、チューが自らの拳で掴み取ったこの地位を実感するものです。
当初、キース・サーマン(アメリカ)との無冠戦だったこのメインイベントは、サーマンの負傷により対戦相手変更。リザーバーとして用意されていた、という可能性もありますが、アンダーカードに出場予定だった元WBC世界スーパーウェルター級暫定王者、セバスチャン・フンドラが抜擢されています。
これはサーマン負傷により、非常に興味深いカードになった、と言えるマッチアップです。
チューは2023年3月、WBO世界スーパーウェルター級暫定王座決定戦に出場してこれを獲得、その後は4団体統一王者だったジャーメル・チャーロ(アメリカ)の正規王座剥奪に伴い正規王座に格上げされています。
王座獲得戦からトニー・ハリソン(アメリカ)、カルロス・オカンポ(メキシコ)、そしてブライアン・メンドサ(アメリカ)といった元タイトルホルダーやタイトルチャレンジャーを相手に勝利、今回の一戦を迎えます。
フィジカルの利を存分に活かしたオーセンティックなファイトスタイル、ストロングスタイルが持ち味です。そのボクシングは非常に崩しにくく、オージーボクサーに共通した勤勉さやハートの強さも感じるスタイルですね。
対してヘビー級並み、2m近い身長を誇る元WBC世界スーパーウェルター級王者、「タワーリングインフェルノ」セバスチャン・フンドラ。
出始めの頃はキワモノ色が強かったフンドラですが、2020年頃から元タイトルチャレンジャー、ハビブ・アフメド(ガーナ)、強豪との対戦経験が多いホルへ・コタ(メキシコ)をを降し、2022年にはエリクソン・ルビン(アメリカ)に9RTKOで勝利してWBC暫定王座を獲得しています。
この頃にはもう知名度だけでなく実力を証明したフンドラは、初防衛戦でカルロス・オカンポを圧倒、そして2度目の防衛戦でブライアン・メンドサを迎えます。
フンドラは2m超えのリーチを全く活かすことなく、接近戦を仕掛けるのは常。序盤の1〜2Rはジャブで様子を見ることが多いので、もしかしたらスロースターターなのかもしれません。
それでもインサイドに入って効果的な攻撃をしかけられないメンドサ、ポイントはほぼフルマークでフンドラでした。
しかし7R、ずっと狙っていたものなのか、メンドサの左フック一発ででフンドラが効かされそのままダウンからのカウントアウト。結果ほぼ一発で勝負がついてしまったような試合で、メンドサとしてはその詰めが素晴らしかったことと、フンドラとしては顔面の打たれ脆さを露呈した(かも)しれない戦いでした。
↓チューvsメンドサ
↓フンドラvsメンドサ
ブライアン・メンドサ、カルロス・オカンポ等、二人が戦ったボクサー相手へのパフォーマンスを比べてみれば、もちろんチュー有意で問題ありません。
ただし、3段論法が通用しない、ということもまた事実であり、メンドサがフンドラに勝てたのはそのスタイルが大きく関係している、とも言えます。サイドに素早く動くメンドサは、やや変則で、飛び込んでのパンチも多用する方、さらにパンチの伸びもあって顔面に届きやすかった、というのが今となっては思うところ。
ではチューは、というと、右ストレートはよく伸びますが、フンドラの顔面に届かせるにはフンドラが得意のアッパー、フックを打ちまくれるところまで行かなければなりません。
なのでチューとしてはボディから丁寧に削っていく、という必要性がありそうで、このチューとメンドサのファイトスタイルの違いもあってそう簡単にはいかないと思われます。
いずれにしろ、チュー優位というのは当然ながらも、果たしてチューをしてもフンドラの顔面にパンチを当てられるのか、は謎なところ。
この試合は、チューの持つWBO王座に加え、WBC王座決定戦ともなるようです。
これは非常に楽しみな一戦です。
WBA世界スーパーライト級タイトルマッチ
ロランド・ロメロ(アメリカ)15勝(13KO)1敗
vs
イサック・クルス(メキシコ)25勝(17KO)2敗1分
そしてセミファイナルにはロランド・ロメロvsイサック・クルス。
これまた興味深い一戦、というかイサック・クルスの世界初戴冠が期待できる一戦です。
嫌われ者のロランド・ロメロ、これはトラッシュトークで大言雑言を吐きつつ、実力が伴っていないのでは?というのが大方の見方、ということだからでしょう。
元々は評価の高かったロメロは2020年8月、当時無敗だったジャクソン・マリネス(ドミニカ共和国)との一戦に疑惑の判定で勝利してWBA世界ライト級暫定王座を初戴冠。
この後初防衛戦はアンソニー・イギット(スウェーデン)に勝利するも、この試合はイギットのウェイトオーバー、スポーツマンシップに欠ける戦いとなったダーティファイト。
その後にジャーボンタ・デービス(アメリカ)にKO負けで初黒星、そしていわくつきのイズマエル・バロッソ(ベネズエラ)戦とまあとにかくお騒がせ状態です。
これらの流れにおいて、ロメロが悪いかというとそうではないのですが、やっぱり判定で優遇されるイメージ、周りが負けさせないようにしようとしている、と感じるファンは一定数いるのが現状。あとはロメロのキャラクターも相まって、なかなかの憎まれっ子に成長してきています。
対してイサック・クルス、そのエネルギッシュなファイトスタイル、パンチの全てが強振、面構えといい、全てが応援したくなるボクサーです。
2020年、トーマス・マティセ(アメリカ)とのプロスペクト対決を制したクルスは、その後ディエゴ・マグダレノ(アメリカ)、当時無敗だったホセ・マティアス・ロメロ(アルゼンチン)を撃破。元王者フランシスコ・バルガス(メキシコ)を撃破したのちにジャーボンタ・デービスに挑戦しますが、判定負けを喫しています。
ただ、このデービスを大いに苦しめた判定負けという事実は、ピットブル・クルスの評価を大いに高めるもので、その商品価値を高めるものでもありました。何せタンクはここまで29勝27KOであり、クルス以外でKOされなかったのは6回戦時代に遡らなければなりません。
タンク相手に12Rを戦った、という事実は素晴らしいことで、さらにポイントもかなり競っていたように記憶しています。
そうして評価を高めたクルスは、ユリオルキス・ガンボア(キューバ)、エドゥアルド・ラミレス(メキシコ)、ジョバンニ・カブレラ(アメリカ)を撃破してこの試合に到達。
超がつくほど好戦的なボクシングのイサック・クルス、今回は世界初戴冠の大チャンスです。
とまあ、戦ってきた相手、そしてその相手に対するパフォーマンス、という部分で勝るのはイサック・クルス、であるだけにオッズはクルスが優位となっています。
ただ、クルスにとってロメロはさほど簡単な相手ではなく、猪突猛進型のクルスはいなされてしまう可能性も孕んでいます。ロメロは実際、技術のあるボクサーだと思っています。
クルスの勝利は、突出した攻撃力を活かしたゴリ押しボクシング。一瞬でも躊躇してはいけません。ただ、ロメロも倒せるパンチを持っているだけに、インサイドでの戦いは危険を伴います。さらに、クルスはスーパーライト級での戦いはデビュー直後にあったくらいで、この階級では未だ未知数とも言えます。
スカッと爽快なクルスのボクシングがロメロを凌駕するのか、それとも、憎まれっ子が世に憚るのか。
いずれにしろ、この勝者には暫定王者のイズマエル・バロッソとの団体内王座統一戦が義務付けられるはずです。WBAだけにわかりませんけど。
化け物だらけのスーパーライト級、今後の動きも非常に楽しみです。
【配信情報】
こちらの興行は、アメリカではAmazon Prime VideoのPPVで放映。
そして日本ではもちろん、我らがWOWOWでライブ配信!
本放送では10:30〜となっており、この頃に上記2試合が始まるイメージかもしれません。一応、アンダーカードが9:30〜となっているので、もう1-2試合ほどの放送もありそうです。
WOWOWで5つの世界戦全てを見れたら良いですが、見るにしてもかなり時間もかかりそうですね。
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