トリプルタイトルマッチがダブルタイトルマッチへ。
世界戦が一つなくなったとて、他にも興味深いマッチアップしかないので、金返せとはならないのでしょうが、これは非常に残念なことです。
田中恒成の試合がなくなったということはもちろん、ここで田中のキャリアが停滞してしまうということも彼のキャリアにとって非常に残念なこと。ここで良い勝ち方をしてバム、マルティネス戦へ繋げてもらいたかったです。
ともあれ、今回のブログはAmazonPrimeビデオPresente LIVE BOXING 9、観戦記。
7/20(土)両国国技館
荒本一成(帝拳)プロデビュー戦
荒本一成は史上初、高校8冠を達成したボクサーです。高校8冠というのは、高校3年間である全国大会、つまりインターハイ、国体、選抜大会(選抜は3年生の時は出られない)全てで優勝している、ということです。
高校1年生から全国大会を制した荒本は当然の如く国際大会に出場、確か国内で負けたのはいつかの全日本での岡澤セオン戦のみだったような気がします。(間違ってたらごめんなさい)
対戦相手はモンゴル人。モンゴル人といえばラクバ・シンですが、四半世紀前と変わらず、モンゴリアン・ボクサーの主戦場は韓国なんでしょうかね。
モンゴル人の名前はムングンウォージ・ナンディンエルデン。長すぎる。
コーナーがどっちなのかわからないのか、若干もたつく入場を経て、ゴング。
初回、若干か固くみえる荒本は左フックのカウンター狙い。ジャブを躱しての左ボディを執拗に打ちます。これは派手、エグい左ボディが何発も入っていますが、距離が近く、荒本も被弾も見受けられますね。
2R、プレスをかける荒本は狙い澄ました左ボディ。やや低いかなーと感じていたましたがローブローで中断。
再開後は荒本の左フック、左ボディ。ムングンもスイッチを繰り返し、手数を出してがんはりますが、ちょっとオープン気味でしょうか。
3Rに入るとムングンは手数が出てきました。荒本はちょっと良くない。バッティングもありやりづらさもあるのでしょうががちょっと後手か。疲れているのか集中力なのか、相手に巻き込まれてるようなイメージですね。
4R、キレを取り戻した荒本は左フックカウンターからラッシュ、その後もムングンの右の後に左カウンターを決め、ラッシュ。このパターンは良いですね。ムングンはダメージを溜めているようにみえますが、荒本も仕留めきれず。ここは仕留めて欲しかった。
5R、ここにきて丁寧になる荒本。ムングンも手数が復活。これはタフなボクサーですね。ここでまたもローブロー、ムングンがスリップダウン。これはちょっと減点してもいいのでは?
荒本の左フックカウンターはさすがですが、ムングンは倒れません。
ラストラウンド、ここもムングンが右を振ろうとしたところで左フックカウンター!
ぐらりときたムングン、その後はサウスポースタンスからムングンが右フックを振ると、それを荒本はかわし、完璧な左フックカウンターーー!!
前のめりに倒れたムングン、すぐさま勝利を確信したであろう荒本、レフェリーも即刻ストップ、荒本一成、最終ラウンドTKO勝利でデビュー!
やや相手の戦いに巻き込まれ、期待を超えてこなかった1-5Rを経て、それまでの全てを補って余りあるフィニッシュ。本人が反省しきり、というのは十分にわかりますが、まずはこの「魔物が棲む」デビュー戦を無事にKOで勝ち切れたことは良かったことでしょう。
今後の荒本に期待。
WBO世界フライ級タイトルマッチ
加納陸(大成)22勝(11KO)4敗2分
vs
アンソニー・オラスクアガ(アメリカ)6勝(4KO)1敗
がんばれトニー。
アンソニー・オラスクアガは比較的試合による出来不出来がある分、若干の心配を伴います。
お互いに2度目の世界タイトルマッチ、ここは絶対に負けられない戦いです。加納の意地ごとねじ伏せて欲しいところ。
国歌斉唱はメインのみらしく、ここは無し。個人的にはポンポン進んでもらった方がありがたいので嬉しい。陣営としては、やはり君が代は聞きたいかもしれませんね。
さて、ゴング。
先にしかけたのは加納。加納の試合は何度か見てきましたが、キレは過去イチのように感じます。オラスクアガは非常に慎重な立ち上がり、近い距離でボディから左を返すコンビネーションが良いですね。
スピーディな加納の動きをやや警戒していたのか、オラスクアガはアクションの少ない前半を過ごし、後半にかけて手数を増やしていきます。後半に入って目立ったのはオラスクアガの左ボディ、これは非常にパワフルなパンチで、これに気を取られたか、終盤にはオラスクアガが左フックのダブルをヒット。
サウスポーに対して左ボディを打てるのはサウスポーが得意な証拠。まあ、そりゃあそうだ。彼のチームメイトはなんといっても中谷潤人。
2R、初回後半、若干苦しくなった加納ですが、このラウンドの始まりは良いスピードを伴っています。しかしオラスクアガは固かった初回序盤を過ぎ、リラックスしてきており、加納の左の軌道を見切っているように見えます。
近い距離ではオラスクアガの右アッパー、左フックが非常に効果的。
ただ、加納も手数を出して攻め入り、良いコンビネーションを見せています。ちょっと攻撃力に差がありそうな中で、ここで引かないところはさすが気持ちの強いボクサー、ただこの距離は危険です。
3R、ダメージが溜まってきているように見える加納ですが、ここでも真っ向から行きます。スタミナには不安がないでしょうから、このハイペースにも耐えうる、との判断なのかもしれません。オラスクアガは、というと、12R戦うことについてはまだ若干の不安があるでしょうから、ここまではちょっと抑えめな印象。
しかしこのラウンドはオラスクアガも強く攻め入り、スタミナを使って加納を攻め立てます。早くもフィニッシュを狙うか。
しかし可能もオラスクアガのうち終わりに単発ながらもリターン、これは非常に良いタイミングであり、浅くも入っています。作戦としては非常に良さそうです。
と、加納に若干の光明が見えたところで、オラスクアガが右で崩しての左フック!!これで加納はダウン!!!これで加納は立ち上がれず、オラスクアガが3RKO勝利!!
加納はよく頑張りましたが、オラスクアガとは実力差がありましたね。スピードは加納の方があったと思うのですが、ちょっと近い距離での戦いは分が悪い。
最後のシーンが会場のモニターで流れていますが、右で加納の右ガードを外し、空いたところにスリークォーターブロー、ですね。これはすごい。。。
第一試合に続き、第二試合も衝撃的なノックアウト劇。こういうのは続いていきますよね。。。
那須川天心(帝拳)3勝(1KO)無敗
vs
ジョナサン・ロドリゲス(アメリカ)17勝(7KO)2敗1分
那須川天心は、ボクシング界にある一つの光明です。彼がいる限り、おそらくボクシングという競技に光は当たるでしょう。
そして彼の好印象なところは、あくまでも焦りなく、一つ一つステップアップしていっているところ。その一つのステップはとてつもなく大きく、当然のことながら4戦目で世界上位ランカー(WBAのみですが)というのは驚異です。
那須川天心の入場を見て感じるのは、やはりそのスター性。私の席の隣のキッズがめっちゃ前のめり。この試合までに弁当を2つくらい平らげ、お菓子まで食べていたのにもはや食べ物どころではありません。
自分の見せ方をよく知っている。内向的なボクサーが多い中でそういう意味でも稀有なボクサーですね。
初回は静かな立ち上がり、天心はどっしり構えて、速いジャブ。
この重心は前戦からで、ボクシングにアジャストしてきてきるのがよくわかります。そこから上下に打ち分けるコンビネーション、これがまた速い。ロドリゲスは攻め手を欠く印象ですが、ちゃんとブロッキング。ただ、このブロッキングの後に手がでない、もしくはかなりカウンターを警戒しながら手を出しているので、遅く、また踏み込みも足りません。それでもジリジリプレスをかけるのはロドリゲスの方です。
2Rも天心はとにかく速い。天心得意の左ボディストレートがヒット。
ただ、ガードが固くプレスをかけながらも攻めてはこないので、決定打は生まれにくいかもしれませんね。
もっとロドリゲスが出てくれば天心もカウンターを打ちやすくなるかもしれませんが、ロドリゲスはとにかく手を出してこないので自ら行くしかありませんね。
ロドリゲスは天心が攻めてきたときのカウンター左フックを狙います。ただ、このスピードでは当たりません。終盤に天心の左ストレート!これがロドリゲスが狙っていた左フックカウンターのカウンターとなって入り、腰が折れたロドリゲスにラッシュ!
ちょっと一瞬倒れたかと思ってラッシュタイミングが遅れたのは勿体無かったですが、もはや止めても良いレベルだったかもしれません。
3R、ダメージがどれほどなのか、まずは見定めようという天心。ロドリゲスはもっと追い詰めないといけません。ちょっと距離が遠すぎます。
天心は仕掛けてのカウンター狙いたい。
中盤、天心がワンツーを綺麗にヒット!明らかに効いたロドリゲスに天心は追撃、左のアッパーからの左ストレート!これでロドリゲスはロープに弾け飛ぶダウン!
レフェリーはストップ!那須川天心、3RTKO勝利!!!
ロドリゲスは何も出来ず。天心のスピードに対応できるようになる前に終わってしまいましたね。
天心はお見事!無邪気に喜ぶ姿は多くのボクサーが参考にしてほしいムーブです。素晴らしいKO勝利を挙げたらやっぱりボクサーには喜んでもらいたい。
しかし前戦からそうですが明らかにスタンスが安定し、非常にパワフルになった那須川天心。今回は左ストレートの当て方をしっかりと学び、さらに自ら攻めて効かせ、そこからフィニッシュへ持っていくところも完璧だったのではないでしょうか。
もはやカウンターだけではない、相手を待たずとも自ら攻められるようになった、というのが今回の進化でしょう。左ストレートのキレもぐんぐんと増し、次はぜひタイトル戦、そして来年中くらいには是非、世界タイトル戦を見たい。
もう個人的にはゴーサインを出しても良いと思います。
WBC世界バンタム級タイトルマッチ
中谷潤人(M.T)27勝(20KO)無敗
vs
ビンセント・アストロラビオ(フィリピン)19勝(14KO)4敗
いよいよメインイベント。我らが未来のP4P、井上尚弥に対する現状では唯一の対抗馬。この「井上尚弥に対する唯一の対抗馬」は世界的に見てもそうで、スーパーバンタム級以下で見れば中谷を置いて他にはいないでしょう。
当の井上尚弥はあと2年、スーパーバンタム級。
中谷がバンタム級を制してスーパーバンタム級に上がるとすればかなり忙しいですが、4団体制覇せずとも井上尚弥との対戦を優先するならば不可能なスケジュールではありません。というか、めちゃくちゃベストなタイミングに思います。
どうかそれまでお互いに強さを見せ続けてもらいたいところ。
↓井上尚弥の「あと2年」発言について
さて初回のゴング。
まずはいつもの通り体をやや左に倒し、広いスタンスで前手をやや前めに出したファイティングポーズ。
アストロラビオはゴツい上体を持ち、パワーがありそうですね。
ジリジリとプレス、低い姿勢の中谷とやや腰高に見えるアストロラビオ、身長差はあれど向かい合った時の目線の高さはさほど変わりません。まあ、このことがおそらく相手の距離感を狂わせるという業なのだと思います。
中谷が左から入る逆ワンツー。これは浅くヒット。
アストロラビオは距離感を計りかね、ちょっと攻め入ることができていません。
中谷の打ち終わりに鋭く踏み込みますが、やはりまだ遠い。
そして中盤から後半にかけ、中谷は幾度か顔面にワンツーを見せてからジャブからの左ボディストレート!!!一拍おいてアストロラビオはダウン!!!
カウントが進む中、一度は立ち上がったアストロラビオでしたが、再度膝をつきます!これはストマックでしょうか。。。?
中谷潤人、初回KO勝利で初防衛成功!!!
なんとも、衝撃的なKO決着がなんと4戦連続です。
そう、こういう興行が過去にもあった、ということを思い出しました。
2018年5月25日、井上尚弥vsジェイミー・マクドネル、アンダーカードが寺地拳四朗vsガニガン・ロペス等々の世界タイトルマッチもあったのですが、とにかく序盤決着の衝撃KOが多かった興行です。
そこから序盤KOを繰り返して圧倒的に評価を高めた井上尚弥。
今にも至る、「ファンの想像を軽々と超えてくるパフォーマンス」の量産が本格的に始まった頃ですね。
長谷川穂積が序盤KOを続けた頃、それとも被るパフォーマンス。
3階級目にして、大きな成長期を迎えているかもしれない中谷潤人。
インタビューでは統一戦への思いを今一度語りましたが、この中谷潤人vs井上拓真については決まらない理由がほとんどない、と言えます。
会場には西田の姿もあるのですね。中谷vs西田凌佑というのも非常に見たいカードです。
これはもしかすると六島陣営が嫌がるかもしれませんが。
いよいよ我々の想像を大きくこえ、「次世代のモンスター」となった中谷潤人。このまま、ファンの望むキャリアを築き、その夢を築いていく姿を見られるのかもしれませんね。
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