今週は怒涛です。
7/16(火)井上尚弥・武居由樹の次戦正式発表
7/18(木)フェニックスバトル
7/19(金)ダイナミックグローブ
7/20(土)LIVE BOXING
目まぐるしい。7月もあっという間に過ぎそうです。
さてさて、いよいよ週末に迫ったLIVE BOXINGのプレビュー記事を書きましょう。
今回のブログは、中谷潤人vsビンセント・アストロラビオ、そして加納陸vsアンソニー・オラスクアガ、二つのタイトルマッチについてです。
↓田中恒成vsロドリゲスのプレビュー
7/20(土)両国国技館
WBC世界バンタム級タイトルマッチ
中谷潤人(M.T)27勝(20KO)無敗
vs
ビンセント・アストロラビオ(フィリピン)19勝(14KO)4敗
26歳で27戦、というのは、日本のボクサーとしてはかなり多い試合数です。
それもそのはず、中谷は戦績だけ見ればプロ叩き上げであり、4回戦からスタート、新人王トーナメントを制してのち、新設された日本ユースタイトルを獲得、そして日本タイトルを獲得して日本最強を証明、その称号を提げて世界タイトルマッチへと進んでいます。
今思えばデビューがミニマム級というのは驚きですが、2〜4戦目をライトフライ級で戦い、5戦目からはフライ級で新人王トーナメントに参戦していますね。このデビュー直後というのはまだ私もあまり注目はしていなかったと思います。
必然的に話題となる新人王トーナメントではKOで勝ち上がり、全日本新人王決定戦ではのちの世界王者、矢吹正道に判定勝利。そして2戦挟んだのちのユース王座決定トーナメントで工藤優雅との戦い、この2つの戦いだけが「苦戦」まではいかずとも「中谷が少々困ったように見えた」試合であり、そのほかの25戦に関してはもう全く問題ない、素晴らしいパフォーマンスを見せていると言えます。
中谷が戦い、乗り越えてきた「かつての世界王者」「のちの世界王者」は6人。
矢吹正道、ユーリ阿久井、ミラン・メリンド、アンヘル・アコスタ、アンドリュー・マロニー、そしてアレハンドロ・サンティアゴ。
階級を上げていくことでより良いパフォーマンスを見せられている、という点において井上尚弥と被るところがあり、これは複数階級を制すために階級アップすることを主目的とせず、より良いパフォーマンスを出すために階級を上げる、ということが考えられているためだと思っています。
特に世界王者となってからのパフォーマンスは圧巻で、KOオブザイヤーを獲得したマロニー戦、エストラーダを存分に苦しめたコルテスを全く寄せ付けなかった試合、そして5ヶ月前、ドネアに勝利したサンティアゴに結局何もさせず6Rで切って落とした試合。
はっきり言ってしまえば、今、中谷潤人に穴は見えないし、底も見えません。
矢吹や工藤というボクサーに若干困らされたことも遠い昔の話のように思え、全く参考にはならない情報です。
さて、ビンセント・アストロラビオはバンタム級において強豪と呼べる部類のボクサーです。
フィリピン人らしいフィリピン人で、攻撃は非常にパワフルであり、ハートが強い。ハンドスピードだってなかなかのもので、この勢いに気圧されてしまうボクサーも多いでしょう。
戦績では4敗してはいるものの、この戦績以上に怖いボクサーであることは言うまでもありません。
前戦ではナワポーン・カイカンハ(タイ)を11RTKOで破り、WBCの指名挑戦権を獲得しての一戦、文句なしの指名挑戦者であるわけです。
ちなみにカイカンハは長くトップコンテンダーの地位をキープしてきたボクサー。もちろんその試合ぶりを見れば強いボクサーであることはわかるのですが、何せアンダードッグとの試合が多く、ジェイソン・マロニーには完封されているし、アストロラビオ戦後には比嘉大吾にも敗れているので、彼を世界レベルと言って良いかどうかは疑わしくなってきてます。
ともあれ、今さら言うまでもなく、このアストロラビオキャリア最大の勝利は2022年2月のギジェルモ・リゴンドー(キューバ)戦であり、そこで自信をつけたのか次戦ではニコライ・ポタポフ(ロシア)を6RTKO。その勢いを駆ってジェイソン・マロニーとのWBO王座決定戦に臨みますが、ここは判定負けでしたね。
攻撃時の見栄えが良く、結構攻勢点が入っていた印象で、思いの外ポイントは競っていました。マロニーのボクシングはジャッジへのアピールが乏しいという面もあったかもしれませんが、リゴンドー戦も加味して、このアストロラビオの攻撃力というものはジャッジに訴えられるものを持っているのでしょう。
それでも、当然のことながら中谷は盤石です。
たとえアストロラビオが強く出てきたとしても、それを迎え撃つだけのカウンター、距離感を持っています。
ちなみにアストロラビオも非常に良いタイミングを持っているのですが、距離の問題で中谷に届くのかというと疑問。そうなるとやはり、中谷が自分のやりたい距離でのボクシングを敢行できるのではないか、アストロラビオは強い攻めに転じざるを得なくなり、そうなると中谷のカウンターの餌食になるのではないか、というところですね。
怖いところは、アストロラビオが非常に自由に振り回してきた時です。マロニー戦の終盤、もしかするとこれがアストロラビオの本来のボクシングなのかも、と思った振り回す系のボクシングをしてきました。ジャブを打たず、フィリピン人やメキシコ人によくいる自由奔放なボクシング。これは見切られてしまえばそれまでですが、純粋なボクサーである中谷を相手にすればある一定の効果が期待できるかもしれないのと、この他に突破口がないのではないか、と思います。
いずれにしろ、この試合は中谷がまた力を誇示してくれる戦いとなりそうで、この興行のメインイベントをしっかり締めくくってくれるはずです。
WBO世界フライ級タイトルマッチ
加納陸(大成)22勝(11KO)4敗2分
vs
アンソニー・オラスクアガ(アメリカ)6勝(4KO)1敗
意外にも、この試合は非常にオッズが競っています。
オラスクアガが-220、加納が+195とほとんど差がありません。ちなみに中谷vsアストロラビオは中谷が-2000、アストロラビオが+1480というとんでもない大差です。
これはキャリアの違い、ということもあるのかもしれません。何せ加納はオラスクアガの4倍(!!)ものキャリアを戦っています。引き出しは多いでしょう。
中谷同様、加納は27歳で28戦というのはものすごいキャリアです。(この戦績には日本デビュー前のものも含まれています)
日本でデビューする前にフィリピン、タイで戦い、そこで勝ち、すでに12ラウンズを戦って判定勝利を収めたというそのキャリアは凄まじく、このチャレンジは讃えるべきものであることは間違いありません。
やや急いだ感じのあったタイトルショットは、2016年にWBOアジアパシフィック暫定タイトルを獲得したのち、その次戦で高山勝成とのWBO世界ミニマム級王座決定戦でした。
この戦いに負傷判定負け、これはやはり時期尚早と言われてもおかしくはない試合でしたね。
その後もWBOアジア、日本へのタイトルマッチを叶えるも、届かず。2020年にWBOアジアパシフィック・ライトフライ級タイトル、減量苦を理由として返上したのち、2022年にWBOアジアパシフィック・フライ級タイトルを獲得しています。WBOアジアパシフィックタイトルに限って言えば3階級制覇です。
フライ級に上がってからの試合、井上夕雅戦(スプリット判定勝利した王座決定戦)や亀山大輝戦(ドロー防衛)を見る限り、本当にギリギリの試合であり、この井上にしても亀山にしてもこれまでタイトルとの絡みがあったボクサーではないわけですから、なかなか実力を計りかねるのが正直なところです。
さて、対するは我らがアンソニー「トニー」オラスクアガ。
わずか8戦目で2度目のタイトルショットというのは非常に恵まれているわけですが、それだけ期待値が高いということでしょう。
デビュー2戦目で元タイトルチャレンジャーのサウル・フアレス(メキシコ)戦をクリア、4戦目で無敗プロスペクトのグスタボ・ペレス(メキシコ)を撃破していますね。
あとは名のある相手との対戦経験はないですが、このオラスクアガに訪れたのは寺地拳四朗への挑戦話でした。
これは拳四朗が戦う予定だった当時のWBO世界ライトフライ級王者、ジョナサン・ゴンサレス(プエルトリコ)が直前で病気にかかり欠場のための代役挑戦者であり、オラスクアガを共同プロモートする帝拳プロモーションの勇気ある決断だったと言えます。すでに評価の高かったオラスクアガへの対戦相手への変更を受けた拳四朗サイドも英断だったとも言えますね。
この戦いは恐ろしいほどの大激闘であり、ポイントこそ拳四朗に流れていたものの、オラスクアガは期待以上のファイトを見せました。
これにより日本での知名度は急上昇することになり、オラスクアガは大きなチャンスを掴むことになりました。
↓観戦記
拳四朗への敗戦後、日本での戦いを継続することができたオラスクアガは前戦でジーメル・マグラモ(フィリピン)を7RTKO、これはかなり危ない試合でしたね。
マグラモは中谷潤人(M.T)に歯が立たなかったこと、桑原拓(大橋)にほぼ完封されたことがあるものの、やはり強かった。特にオラスクアガとは距離が噛み合い、マグラモの強打が活きる距離であっただけにおそらく途中まではマグラモがリードしていたでしょう。
しかし結果的にしっかりと倒しきっているのだから、やはりこのオラスクアガというボクサーは素晴らしいタフネスと素晴らしいパワーを持ったボクサーです。
ひとつ気になることは、やはりこのオラスクアガは最長で9Rまでしか戦ったことがないことです。
拳四朗戦では追い詰めながらもTKO負け、これが9R0:58だそうで、ここまでが最長なのです。実質は8Rです。
ここが一番きついところ、までしか戦ったことがない、というのはかなりのマイナスアドバンテージだと思います。
対して加納は前述の通りプロ7戦目ですでに12Rを経験しており、この辺りのペース配分は間違いなく加納の方に分があります。
なのでほぼ間違いなく、加納は後半勝負であり、前半いくらポイントを取られたとしても最後の最後までチャンスがあります。オラスクアガが突然失速しないとも限りません。
オラスクアガは果たして前半勝負で飛ばすのか、それともマイペースを維持していくのか、作戦に迷うところ。
注目は序盤の4Rくらいまでで、もしここで加納が五分以上に渡り合えるならば、オラスクアガ危うしとみます。この前半ラウンドをオラスクアガがとったとして、そこでペースを落とすのか、そのまま行けるのか、この辺りも加納の後半勝負(たぶん)にかかってくるかもしれませんし、オラスクアガがペースを落としたとして、ポイントを持っていかれてしまうのなら本末転倒になるわけです。
考えていくと、おそらくどちらが優れたボクサーなのか、というとオラスクアガでしょう。しかしまだまだ未知の部分も多いオラスクアガにとって、加納のキャリアは大いなる障壁になりえます。
互いのストラテジーの選択が如何なるものなのか、これにより勝負はまた変わってくるのかもしれません。そういう意味において、50-50に近く、もしかするとオッズは比較的信憑性が高いのかもしれません。
これはある種、この日最も勝敗の読めない試合なのかもしれませんね。
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