先週末も今週末もたくさんの興行が被っています。
そんなかで「注目ファイト」と呼ばれるものではないかもしれませんが、「注目ファイター」が登場するのがマッチルームのモンテカルロ興行です。
注目ファイターは次戦で井上尚弥との対戦が噂されるムロジョン・アフマダリエフです。
ということで今回のブログは、ムロジョン・アフマダリエフvsリカルド・エスピノサのプレビュー記事。
12/14(日本時間12/15)モンテカルロ
WBA世界スーパーバンタム級暫定王座決定戦
ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)12勝(9KO)1敗
vs
リカルド・エスピノサ(メキシコ)30勝(25KO)4敗
わずか一つの敗北で、その選手の評価が地に落ちてしまう、ということがままあります。
ムロジョン・アフマダリエフはその典型とも言えるボクサーです。
2018年3月のプロデビューからわずか22ヶ月、立ったの8戦目で2020年1月にタイトル初挑戦したアフマダリエフは、当時の統一王者、ダニエル・ローマン(アメリカ)をスプリットの判定で破って見事世界王者に輝きました。
たった8戦で、もちろん初の12ラウンズで、あのローマンを際どい判定ながら破る、というのはものすごいことです。
その後も岩佐亮佑、ホセ・ベラスケス(チリ)、ロニー・リオス(アメリカ)を難なく破ったアフマダリエフは、しかし4度目の防衛戦で不覚を取ります。
その相手がマーロン・タパレスで、岩佐に敗れたタパレスがアフマダリエフに僅差ながらも判定勝利を収める、という構図は、まさにボクシングには三段論法が通用しないということを地で示した格好となりました。
もちろん、岩佐戦よりもタパレスは集中していたし、バランスも良く、新たな環境でそのパフォーマンスは明らかに向上していました。それでもあの試合はどちらが勝ったかわからないような試合内容だったし、個人的にはアフマダリエフが勝利したように見えた試合だったので、このボクサーがこの階級のトップの1人であることを疑う余地はありません。
その初黒星から8ヶ月後に当時無敗のケビン・ゴンサレス(メキシコ)を6RTKOで屠り再起したアフマダリエフは、その際にWBAの使命挑戦権を獲得。しかし統一路線となってしまったスーパーバンタム級タイトルへの挑戦は巡って来ず、約1年たって今回の一戦を迎えます。
長く待たされたのは事実ですが、IBFの指名挑戦者であるサム・グッドマンの方が待たされてもいるし、WBAスーパー王座の指名戦の期限は18ヶ月。井上尚弥がWBA王座を獲得したのが2023年の12月なので、規定から言ってもまだ余裕があるはずです。
「声がでかい人の意見が通りやすい」というのは昭和とか平成の企業の話ではありますが、結局はどこのコミュニティでも、どの時代でもそうなのかもしれません。訴訟も辞さず、の構えを見せたアフマダリエフに対してWBAはこの試合を暫定王座決定戦として認定しています。まあ、ここはレギュラー王座ではないことが唯一の救いなのかもしれません。
そんなアフマダリエフの対戦相手は、現在8位のリカルド・エスピノサ。1位と8位の王座決定戦、というのはままあることですが、この暫定王座決定戦が組まれた後にエスピノサはランクイン、当初は13位というものでした。
しかし試合が近づくにつれ13位から11位へ、そして今回発表のランキングでは8位へと徐々にランクを上げています。当然のことながら、その間、試合はしていません。
さて、このリカルド・エスピノサ、そうは言っても全く無名のボクサーというわけではありません。
キャリア初期、6回戦と8回戦でそれぞれ1敗ずつしていますが、これはメキシコで結果を残したあとにBサイドとして呼ばれたアメリカでの試合であり、間違いなくBサイドでリングに上がった経験から来る敗戦です。
その2敗の後は連戦連勝でまたもアメリカ進出に漕ぎ着け、今度はWBOラティーノ・タイトルを獲得、その勢いのまま2019年、初の世界挑戦へと漕ぎ着けます。
2019年4月に行われたこの試合は、WBO世界バンタム級暫定王座決定戦と銘打たれたもので、対戦相手は当時すでに2階級制覇王者だったジョンリエル・カシメロ(フィリピン)です。
この時の試合は見た記憶がありませんが、結果はエスピノサの12RKO負け、ただ試合がストップするまでのポイントは1-1のドローでした。十分に善戦と言えるものでしょう。
その後、2021年5月に当時無冠となっていたダニエル・ローマンと戦い判定負け、そこからは1つのノーコンテストを挟んで5連勝(4KO)中です。
ローマン戦後の対戦相手の質は高い、とは言えませんが、34戦も戦っているこのボクサーはまだ27歳と若い。世界初挑戦時よりも随分と向上していることは確実でしょうし、今、脂が乗っているボクサーだとも言えると思います。
当然、アフマダリエフ優位は揺るぎがないものです。
しかし次戦にビッグマッチを控えたボクサーが足元を掬われる、なんてことはザラにあることですし、エスピノサとしてはここに勝てば今までアフマダリエフが待ち続けてくれた時間をそっくりそのまま手に入れることができ、来年春にラスベガスのリングに上がることができるのです。これは人生を変えられる一戦、モチベーションは極めて高いでしょう。
「リカルド・エスピノサ史上最強のエスピノサ」が出てくることは間違いありませんが、それでもアフマダリエフにはここは苦戦することなく、ストップ勝ちしてもらいたいところです。そうでなければなかなか盛り上がりません。
フルトンが井上尚弥にあの負け方をしてしまった以上、やはり現段階でこの階級最強はアフマダリエフ。フルトンよりもパワーがあるし、もともと技術力の高いボクサーでもあるし、やっぱり最も怖いのはこのムロジョン・アフマダリエフです。
その強さをぜひ、見せつけて欲しいものです。
アンダーカードと配信情報
アンダーカードにはEBUヨーロピアン・クルーザー級王座決定戦、シャボン・クラーク(イギリス)vsレオナルド・モスクア(フランス)という無敗対決がセットされています。どっちもよく知らないボクサーですが、クルーザー級という重量級においては、ヨーロピアンタイトルというのは大きな価値がありますね。
この無敗対決を制したボクサーは、世界タイトルに大きく近づくのでしょう。
その他にはライト級でゲイリー・カリー(アイルランド)vsマキシ・ヒューズ(イギリス)。プロスペクトのカリーが、まだ力を残しているベテランヒューズにどのような戦いを見せるのかは非常に楽しみですね。
配信はDAZN、日本時間12/15(日)です。
↓DAZNはこちらから
井上尚弥の2025年
井上尚弥は先週の公開練習で2025年に海外で戦う旨の発言をしています。
これはかねてから噂のあった通りであり、それに向けてすでにトップランクも動いています。
トップランクとしては来年の4月、井上をラスベガスのリングに上げたいとのこと。これまでは報酬面で上手くいかなかったのでしょうが、そこにリヤドシーズンの影がちらつくことによりその部分が解消。
ただし、アフマダリエフへの報酬は10%しか渡せない、と言っているようです。
ともあれ、4月にアフマダリエフ戦をクリアしたとして、その次は秋と冬に戦い、来年も3試合を計画しているそうです。3戦とも海外というよりはおそらく年末は日本であり、そこが中谷潤人戦となるかどうかはまだ疑わしい。
井上尚弥は先日発売されたボクシングマガジンの特別編集のムック本で「2026年春」と言っています。ということは来年中に中谷がバンタム級の王座統一を果たし、名実ともに階級ナンバーワンであることを証明しなければなりませんね。
いずれにしろ、来年はアメリカ、もしかしたらサウジ、そして東京。2025年もまた、楽しみな1年になりそうですね。
ボクシングマガジンの特別編集が発売されました。
スーパーバンタム級、バンタム級を主に特集した増刊号です。↓リンク
【宣伝】
ストック品(在庫があるもので即納できるもの)のセールやってます!
ダニエル・デュボアも愛用の「FLY」は日本唯一の正規取扱代理店です。是非、お試しください。
▼最新情報はInstagramをご覧ください