トップランクの無観客興行がはじまってもうすぐ1ヶ月。はじめはボクシングがライブで見れる事で充分嬉しかったですが、そろそろビッグマッチが見たい、と思うのはどんどん贅沢になっていっている証拠でしょう。
世界タイトルマッチは始まっていますが、まだこれといって世間を騒がせるような試合は行われていない現状。
今はただ、プロスペクトの発見と、ベテラン勢の調子の伺うようなマッチメイクが続いています。勿論、ないよりは断然良いです。
7/6(日本時間7/7)
メインでは前戦でホセ・ペドラサを破ったホセ・セペダが登場します。エキサイティングな興行にならなそうな予感がしますが、その技巧を堪能したいと思います。
この興行の初戦、一ヶ月前の同興行に登場した3戦全勝全KOのガブリエル・ムラタヤが登場。その時、良い選手だな、と思って調べたらライト級のプロスペクト、レイモンド・ムラタヤのお兄さん。バンタム級ということで、上に上がってきたら日本人との対戦も十分にあり得る選手ですね。
↓この時の興行です
相手は噛ませ犬的な要素が強いセルジオ・ロペスという選手。
ガブリエル・ムラタヤvsセルジオ・ロペス
スピード、スキルともにやはりムラタヤの方が優れています。ロペスも頭の位置を変えながらやや強引に攻め込みますが、打ちはじめ、打ち終わりにムラタヤのパンチがヒットします。
ムラタヤは接近戦でもスキルフル。本場のリングではこのレベルの選手が4回戦を闘う。やはり本場のリングの選手層の厚さは軽量級といえどもすさまじい。
上手くパンチを当てるムラタヤですが、ロペスの闘志は一向に衰える事なく最終ラウンド終了のゴングを聞きます。
判定はほぼフルマークでガブリエル・ムラタヤ。
ホセ・セペダvsケンドウ・カスタネーダ
セペダは前戦で元2階級制覇王者のホセ・ペドラサを下している実力者。ホセ・ラミレスの持つ王座に挑戦した際も、かなりの接戦(0-2の判定負け)で星を落としました。
カスタネーダはガッチリしたガードから、前に出るファイタータイプでしょうか。時折スイッチ、ただセペダが基本的には後ろ足荷重のサウスポーで遠いので、なかなか距離を詰められません。
序盤からセペダの左目下が少し赤くなっています。ただ、クリーンヒットはセペダの方が多い印象です。3Rの終盤あたりはカスタネーダも攻めますが、セペダの独壇場。
4Rはほぼ一方的な展開になってきました。カスタネーダは休んでいるわけではないでしょうが、手数が随分と減ってしまいました。
5R、6R、カスタネーダはチャージをかけます。セペダは冷静に見て、下がってストレートで止めたり、再度に回って攻撃を防ぎ、終盤には攻め込む場面も。
全体的にセペダのクリーンヒットの方が多く感じますが、顔を見るとセペダも結構もらっていますね。逆にカスタネーダはあまりダメージがなさそう。
7R、カスタネーダが攻めます。クリーンヒットもかなり多くなってきています。このラウンド終盤、ボディがセペダに効いた?
8Rもセペダが下がりながら迎え撃つ展開。後半はセペダのクリーンヒットが増えます。やっぱりセペダは巧く、パンチが的確。
9R、序盤はセペダが攻め、カスタネーダが下がる展開。中盤以降はセペダはやっぱり下がりながらカウンター。そして相手が出てこようとするとジャブやストレート。この辺が非常に巧い。パンチも多彩。
最終ラウンドもセペダは下がりながらカウンター、カスタネーダは前に出る。
パンチの的確性では完全にセペダ。カスタネーダの攻勢を支持するジャッジはいるのか?でしたが、判定でセペダの勝利。
スローで見るとよくわかるのは、やっぱりセペダのパンチを当てる技術。下を打つと見せかけて上を、等のフェイントをよく入れています。これは相手からするとパンチの出処、どこを打つのかどんどんわからなくなって怖いです。このあたりのテクニックはさすがです。カスタネーダもがんばりましたが。。。
7/9(日本時間7/10)
カルロス・カストロvsセサール・フアレス
25戦全勝(10KO)のプロスペクト、カルロス・カストロが歴戦の雄、セサール・フアレスを迎えます。
今週の興行の中で実は最も楽しみな試合!
フアレスといえば、敗れはしましたが王座決定戦でノニト・ドネアやアイザック・ドグボエとの対戦経験もあるベテラン(といってもまだ28歳)、タイトルまではあと一歩の選手。この選手に挑戦者決定戦で勝利した岩佐亮佑は世界王者となっています。岩佐vsフアレスのときはもしかしたら岩佐敗けてしまうかも。。。と思っていたので勝利した時は感慨深いものがありましたし、あそこで岩佐復調を印象づけた試合でもありました。
そのフアレス相手に、プロスペクトのカストロがどのような動きを見せるのか??カストロの現在の立ち位置がわかるといっても良い試合です。
カストロは井上尚弥のスパーリングパートナーで、オスカル・バルデスの持つ世界王座への挑戦経験もあるジェネシス・カシミ・セルバニアを文字通り完封した事のあるボクサー。当時の印象ではジャブが得意なボクサータイプという印象でした。
向かい合った時点でカストロはリーチも長く大きそう。フアレスは分厚いですね。
開始早々、フアレスが重厚なプレスをかけて攻めます。カストロは最初はガード、しかしあとは距離をとってよく伸びるジャブ!距離をはかるジャブ、速いジャブ、突き放すジャブ。そしてボディーへのジャブ。フアレスはカストロを捕まえるには踏み込みのスピードがなさすぎるかもしれません。
カストロのジャブは最短距離で真っすぐ伸びます。距離が近くなった時のフックの連打も力強い。ステップワークも素早く、何より距離感が素晴らしいですね。
カストロがプレッシャーを強めた3R。ジャブの上下の打ち分けが見事です。そしてフアレスが入ってきたところでの右オーバーハンド、左フック。カウンターも上手い。コンパクトに打つジャブ、力いっぱいうつメキシカンらしいパンチと、強弱もしっかりつけて、このラウンド終盤にはボディを効かせます。
カストロはやりたい放題、フアレスは全くついていけません。
カストロ、遠い距離では長いジャブ、中間距離からアッパーやフックが得意なのですね。接近した距離ではボディー、そしてストレートを叩き込みます。この選手、KO率の割にものすごくパンチ強そうです。。。フアレスは防戦一方、かなり効いているように見えます。
このラウンド終了後、フアレスがどうやら棄権したようです。
フアレスの心を折ってのTKO勝利。う〜ん、ものすごい選手が現れたものです。ジャバーかとも思いましたが、中間距離で可動域抜群で外側から飛んでくるフック、アッパー系のパンチも要注意。パワーパンチを当てるための組み立ても巧いです。あとは超接近戦でどうでるか(超接近戦ではフアレスのパンチも入っていた)というのと、タフネスはどうか、ですかね。
ナバレッテがいなくなるスーパーバンタム級のトップ戦線にどこまで食い込んでこれるか。
カルロス・タカムvsジェリー・フォレスト
当初はジェリー・フォレストとジャレル・ミラーでしたが、ミラーが薬物検査で違反、代役として世界挑戦経験のあるタカムがリングに上がることになりました。ミラーは今回で5度目の薬物違反とのことですので、もうリングに上がる資格はないです。
実際そんなに興味をそそらないこのヘビー級の1戦。
カルロス・タカム、39歳。。。私の一つ下。心の中で応援してしまいます。
タカムはステップを刻み、サウスポーのフォレストに対してワンツーを主体として攻めます。タカムのジャブは思っているより速い。振り回すような左フックもなかなかにスピーディー、2R目の終盤は右ストレートから左フックのコンビネーションがよくヒットします。
4R、若干タカムのスピードが落ちてきたような気がします。ただ、単発で終わらず3発、4発と打ち、まっすぐ下がるフォレストには効果的です。
5Rにタカムが右目付近をカット?血が流れてくるのか、かなり気にしています。タカムはスピードが落ちてきているというよりは、緩慢になってきました。疲労かもしれません。疲労の他にカットで集中力を欠くようであれば、残りのラウンド厳しいかもしれませんね。。。
7R、開始直後こそステップを踏んだタカムでしたが、その後は近い距離での乱打戦。次の8Rもタカムはラウンド前半は元気にステップを踏みますが、ラウンドが進むにつれて足を止めての打ち合いに。
9R、タカムの足がよく動きます。ヒットアンドアウェイ。いきなりの右ストレート、外からまわす左フックがよく機能しています。フォレストは力を込めた一発を狙いますが、かわされたり逆に距離で殺されます。
最終ラウンドもサークリングして時折コンビネーションを打つタカム、そしてじりじりとにじり寄ってパワーパンチを放とうとするフォレスト。タカムはかなり疲れている用にも見えますが、フォレストを振り切ってゴング。
判定はタカム。終盤に向かって疲れが見えましたが、前半の闘い方はお見事でした。
そもそもそういえばタカムは代理で出た選手。試合決定は1週間程前でしょうか?充分な練習を積めていなかったと思われるので、スタミナに難があっても今回は仕方がないともいえます。
今週も無事トップランク興行が終わりました!
来週は7/14(日本時間7/15)に伊藤雅雪から王座を奪ったジャメル・ヘリングの防衛戦(対ジョナサン・オケンド)、7/16(日本時間7/17)にミゲル・マリアガvsマーク・ジョン・ヤップ!ここにまさかの元日本人キラー、ヤップの登場とは。。。楽しみですね!