世界を期待された日本人ホープ、井上浩樹(大橋)。
強敵、永田大士(三迫)を迎えた防衛戦で、まさかのTKO負け。
コロナ自粛後、初のタイトルマッチでいきなりの番狂わせが起こりました。
↓戦前の記事です。
セミファイナル チャンピオン・カーニバル
日本スーパーライト級タイトルマッチ
王者 井上浩樹(大橋)15戦全勝(12KO)無敗
vs
挑戦者 永田大士(三迫)17戦14勝(5KO)2敗1分
サウスポー同士の1戦、いつもと違う雰囲気。静かな会場の中で、ゴングと同時にガードを固めた永田が距離を詰めます。
井上は永田の出てくるところに合わせて左ストレート、右フックをひっかけます。
1R目は井上は詰められる場面もあるものの、上手く距離をつくり右ストレート、左フックをヒットした印象です。やはりボクシングをすれば井上の方が上。
2Rは永田もより強引に、というか走っていくような変則的な感じで距離を詰めます。井上はジャブもよく出るようになり、まっすぐと横からを使い分け、左フックの的中率も上がっていきます。
3R、永田はリズムをとりながら前進。1分ほど、井上はバッティングで右眉上をカット。ここから井上が足でかわせないシーンが目立ってきます。永田の左で井上の腰が落ちる場面も。足で距離をつくれなくなってきた井上、ガードでしのぐ場面が目立ち、ガードすることにより永田はパンチを出しやすい展開に。
4R、攻勢を強める永田!永田のしつこい攻撃に、ちょっと弱気になっているような気がする井上。ガードの時間が目に見えて長くなっていきます。永田は逆にリズムにのり、テンポよく、手を出していきます。井上のカウンターも稀に効果的なヒットを生みますが、永田のプレッシャー、前進が上回ります。
5R、ガードを固めて前に出る永田、かなり体の力も感じます。パンチもいろいろな角度から出たり、入り方も様々でこれは相手が嫌になるパターン。完全にペースを掌握しています。井上は時折みせるカウンターに勝機を見出したいところです。
井上はもともと手数が多いほうではありません。しかしこの永田の手数に対しては、ある程度の手数で対応していかなければ永田の突進は止まりませんね。
解説の川島敦志氏から、「井上は左を痛めているのでは?」という指摘。
確かに左ストレートが減り、たまにスイッチして右を強く振るうところから、その可能性もあります。
5R終了時点の公開採点は3者ともに永田。(47-48が2者、46-49が1者)
6R、意を決してか、井上が足を止めての打ち合いに臨みます。井上のアッパーが効果的にヒット。永田はガードで押していき、手数を出します。井上の手数も打ち合いの中でようやく出てきました。
リズムにのってきたか井上、ジャブも出ます。このラウンドは井上が少し盛り返した感じがします。
7R、このラウンドも井上は足を使わず、がっちりとガードを固めます。永田はこのラウンドになっても体のキレは衰えず、手数もどんどん出ます。井上は手数が減り、守勢に回る場面が多くなってきます。そうなると永田は格段にやりやすくなり、まっすぐの左ストレートをガードの隙間にねじ込みます。
ここでレフェリーが試合を止めます。永田のヒッティングによる井上のカット、レフェリーストップによる7RTKO勝利で永田大士が新王者に!!
井上浩樹、7RTKO敗けと聞いて、かなり動きに精細を欠いていたのか、とも思いましたが、(そんな記事もあったように思います)想像ほどではありませんでした。闘い方も間違っていなかったと思います。
基本的には足を使ってアウトボックス、それができないなら接近戦で打ち勝つ。
接近戦の技術でも井上が上回っていたようにみえましたが、この勝負の分かれ目は、やはりハートの強さだったように感じます。
井上は、今回気持ちで永田に負けていたといっても過言ではありません。ハートの強い永田に対し、ハートで盛り返せなかった。永田からは何がなんでもタイトルを奪取するという心意気が見て取れましたが、井上からはここに圧勝して世界へ行く、という気概があまり感じられなかったのが正直なところです。
闘う理由。自らが命を削り闘い続ける理由が、井上は希薄だったような気がしています。
今回に限った事ではなく、これまでも攻めるべきときに攻められない、KOできる力を持ちながら手数が出ず、判定勝利をおさめる、そういった試合を幾つか見てきました。
バッティングにより戦いづらくなり、集中力が切れたのかもしれません。
自身が明かしたように、怪我で満足のいく練習ができなかったのかもしれません。(事実、一度この試合は井上の怪我で流れています。)
しかし、それを飲み込むような強い精神力を兼ね備えていなければ、きっと上に行けない世界なのです。
【ご報告】
— 井上浩樹 koki inoue (@krmr_511) 2020年7月17日
本日、会長に自分の意思を伝え引退する事になりました。
応援してくださった方々、本当にありがとうございました。
二度と後悔をしないよう、第2の人生歩んでいきます。
翌日、SNSで引退を発表した井上浩樹。
大橋会長は、「気が変わるかもしれないからWBOアジア・パシフィック王座の返上はまだしない」と。
私としても気が変わり、この敗戦を糧により大きくなってリングに戻ってきてほしい、というのが本音です。まずはお疲れ様でした。ゆっくり休んでください。
そして新チャンピオン、永田大士。三迫ジムは日本王者6人同時在籍という新記録、偉業を成し遂げ、ジム全体もさらに勢いづくことでしょう。永田王者、そして三迫ジムのボクサーの活躍に、これからも期待しています!!
メインイベント
OPBF東洋太平洋フェザー級タイトルマッチ
王者 清水聡(大橋)9戦8勝(8KO)1敗
vs
挑戦者 殿本恭平(勝輝)12戦9勝(4KO)2敗1分
前戦の痛烈なKO敗けを乗り越え、ダイヤモンドレフト炸裂なるか。
挑戦者の殿本がリーチの長い清水の懐に入ろうと、積極的にアタックを仕掛けます。清水が嫌がることがわかっているといわんばかりに、低い姿勢から。。。としかけたところで、清水の左が炸裂!1R、早速ダウンを奪います!
それでも怯まない殿本、フックの連打で攻め込みます。これは気持ちの強い選手!!
しかし攻め込む殿本に対し、清水の右フックがカウンターとなって炸裂、またもダウンを奪います。傍目にはわかりづらいこの清水のパンチの強さ。。。
残り30秒、攻め込む清水。しかし清水はスピードが(もともと)なく、殿本の方が回転力で上回るために接近戦では分が悪い感じがしますね。中間距離で闘った方が安全に見えます。
2R、殿本は痛烈なダウンを奪われたにもかかわらず、回復も早いのかどんどん前に出てきます。清水は勿論技術的には優れていますが、思い切り打つパンチはフォロースルーが効いている分、打ち終わりに雑になる傾向があります。そこに殿本のパンチが当たることもしばしば。そこで回転力のある連打をまとめるので、清水も結構パンチをもらっています。
3Rも当然殿本は前に出ます。清水のパンチを恐れず前に出ることが最善策。清水も被弾は多いので、このラウンドからはしっかりとガードを意識するようになってきました。しかし清水の当てカンはすごいですね。遠い距離から右ストレートのコンビネーション。
ストレートの距離で闘いたい清水、フックの距離で闘いたい殿本。ここまで、どちらかというと殿本の距離の方が多いように感じます。しかし4R、若干殿本の前進が落ち着いてきてしまった感があります。
4R終了後の採点は、3者ともに清水。(38-36、39-35、40-34)
1R目のダウンポイントがあるので、仕方のない展開。
5R、途中採点を聞いた殿本はラッシュを仕掛けます。清水はよく見てガードから、この試合はじめてアッパーを使い始めます。殿本は変則的な体の使い方から、前に出たいところですがラウンド後半はなかなか足が前に出ていきません。逆に清水はジャブがよく出るようになってきたので、ストレートの距離にくぎ付けにできています。
6R、殿本は突進が減り、どちらかというとリズムに乗るボクシングになってきました。清水の打ち終わりにパンチをまとめます。このラウンドは若干落ち着いた感じあり。
7R、殿本は体を大きく振って踏み込むタイミングを計ります。清水もかなりジャブが出ているので、なかなか大きくは崩せません。しかし殿本のオーバーハンドが清水にヒット、清水ピンチか?後ろに下がります。
しかし中盤、殿本にボディーを効かせ、今度は殿本が下がります。左ボディーが効いた殿本にラッシュを仕掛け、左ストレートをヒットして殿本の顎が跳ね上がったところで、レフェリーが割って入りレフェリーストップ!
清水の詰め方はさすがですが、なかなかに被弾が多く、心配な1戦でもありました。やはり突進力があり手数の多い相手は苦手に見える清水。ランキング下位ながら、殿本も清水のことをしっかり研究しており、回転の速さと気持ちの強さをもったホープ相手に圧勝というわけにはいきませんでしたね。
よりレベルの高い相手と戦うと、もっと被弾が増え、その一発が命取りになる気がします。一発の破壊力はだれしも認めるところではありますが、スピードが足りない気がします。同志、村田諒太(帝拳)のように、がっちりガードを固めて戦うスタイルでも良いのでは。。。?と思っています。
試合後、中部のホープ、WBOアジア・パシフィック王者である森武蔵(薬師寺)との一戦をぶち上げた大橋陣営。これが決まれば国内最大級のビッグマッチとなり、勝った方が世界へ行くのも納得できます。
↓フェザー級は猛者ぞろい。清水のさらなる飛躍を期待です。
無観客興行、結果を先に知って数日後に動画をようやく見れる。。。
それが最短というのは何とも寂しいですね。
テレビマネーは勿論馬鹿にはできないでしょうが、深夜のボクシング放送を見るコアなファン(しかも関東ローカル)は、きっとPPVでも見るのではないかと思ってしまいます。
ボクシング界の映像配信改革に期待。
ともあれ、番狂わせで始まった後楽園ホール興行。東京での感染者は日に日に増えている中で、いったいどこまで続けていけるのでしょうか。
そんな不安もありつつも、できる限りのボクシングライフを満喫していきたいと思います。