フェザー級は軽量級の激戦区のひとつです。体格的には日本でも馴染みのある階級ではありますが、1970年前後に西城正三、柴田国明が世界王者を獲得してから、次の王者誕生までは21世紀まで待たなければなりませんでした。
2006年に越本隆志、2009年に粟生隆弘、2010年に長谷川穂積が王者となりますが、防衛することは叶わず初防衛戦で王座陥落。近くて遠い階級、そんなイメージがあります。
今回のブログでは、漫画「はじめの一歩」でもおなじみ、でも実は日本人にとってはとても壁が高い、そんな階級であるフェザー級を見ていきたいと思います。
スター候補・シャクールと戦う(元)王者・ナバレッテ
数日前から、WBO王者のシャクール・スティーブンソンが王座を返上し、スーパーフェザーへ上がり、スーパーバンタムからWBO王者のエマニュエル・ナバレッテが上がるという情報がでました。</p
正直シャクールにはこの階級でもっと実績を積み上げてから階級アップしてもらいたかった思いはありますが、複数階級制覇の先を急ぐようです。
WBOの王座を返上し、階級アップする場合は、上の階級で1位になるのが規定であるそうです(井岡一翔vs田中恒成の1戦が持ち上がっているのもこのため)。なのでシャクールはジャメル・ヘリングに対しての挑戦権を得るのですが、同胞のヘリングへの挑戦の可能性は低いそうです。いずれにしろすぐに世界王者になる、というよりはテストマッチを繰り返して時を待たねばならなそう。目前に迫った7/14(日本時間7/15)のヘリングの防衛戦で、相手のジョナサン・オケンド(プエルトリコ)が勝てばすぐにでも挑戦するかもしれませんが。。。
シャクールのコロナ後再開第一戦。WOWOWで7/20(月)に放送予定です。
ナバレッテも個人的にはスーパーバンタムでまだいけそうな気がしますが、階級アップ。井上尚弥との対戦をほのめかすも、やっぱり待っていられないと翻意。
今のフェザー級のトップ選手たちは、手数が多いですが一発のパンチ力に欠ける、そんな王者が多いので、ナバレッテの思い切りの良いパンチを振り回すスタイルはフェザー級をかき回してくれそうです。
メキシコで行われたナバレッテの試合。こちらも7/20(月)WOWOWで放送予定
フェザー級の世界王者
WBAスーパー王者
レオ・サンタ・クルス(メキシコ)39戦37勝(19KO)1敗1分
2019年の11月、WBA世界スーパーフェザー級のスーパー王座決定戦なるもので、スーパーフェザー級のスーパー王座も獲得して4階級制覇したサンタクルス。WBAのフェザー級、スーパーフェザー級でスーパー王座に認定されていますが、今後はスーパーフェザー級で戦っていくようです。
WBAのスーパー王座はもともと長期王座防衛、他団体の王座統一で認定されるはずでしたが(その認定方法もすでに疑問ですが)、最近はもうスーパー王座が空位だと不安を覚えるくらいの認定率です。
このフェザー級のスーパー王座をサンタクルスが返上したら、まさかシュ・ツァンがスーパー王者に?それともまたスーパー王者決定戦が別のボクサーで??ある種興味がつきません。
WBAレギュラー王者
シュ・ツァン(中国)20戦18勝(3KO)2敗
キャリア初期に2敗し、KO率も低い。一見チーズチャンピオンに見える戦績ではありますが、在りし日の「コリアン・スタイル」を彷彿とさせる中国の「モンスター」。初防衛戦では久保隼(真正)を迎え、滅多打ちにしてTKO勝利。とにかく手数がすごいファイターなので、この連打に巻き込まれると根負けしてしまいます。
WBC王者
ゲイリー・ラッセルJr(アメリカ)32戦31勝(18KO)1敗
2009年デビュー、2015年にジョニー・ゴンサレスを下し戴冠。唯一の1敗は2014年にワシル・ロマチェンコにスプリットの判定で喫したもの。
以降5年以上、同一のタイトルを保持したままではありますが、現在でもまだ5度の防衛。
その実力、そのセンスに偽りなく、もっとアクティブに試合をこなしていけばPFPランキングにも入れる実力の持ち主だと思います。個人的にはラッセルJrとシャクールの試合を見てみたかったのですが、露と消えました。
IBF王者
ジョシュ・ウォーリントン(イギリス)30戦全勝(7KO)
旺盛なスタミナと手数で世界タイトルを手にした未だ無敗の王者、ウォーリントン。とにかく嵐のような手数を出し、決してスタイリッシュとはいえないボクシングですが、誰もがその馬力に圧倒され、ポイントを奪われていきます。
リー・セルビー(イギリス)から奪った王座を初防衛戦ではカール・フランプトン(イギリス)を退け、ビッグマッチを目指します。
KO率は低いものの、打ち合いに活路を見出すスタイルなので、シュ・ツァンとの統一戦が組まれれば大変な打撃戦になりそうです。
コンテンダーたち
キッド・ガラハッド(イギリス)28戦27勝(16KO)1敗
ウォーリントンの王座に肉薄したガラハッド。序盤は上手く闘えましたが、ウォーリントンの馬力に屈してしまいました。とはいえ、世界トップレベルの実力を備えているので、今後の行方も気になる所です。
ジェシー・マグダレノ(アメリカ)29戦28勝(18KO)1敗
議論を呼ぶ判定でドネアを下し、アイザック・ドグボエ(ガーナ)に王座を追われたマグダレノ。階級を上げて2階級制覇を目指します。
boxingcafe.hatenablog.com
無観客興行で登場した前戦では、荒れた試合内容の中失格勝ちという微妙な内容。今後、巻き返せるか。
マイケル・コンラン(イギリス)13戦全勝(7KO)
アマで世界選手権優勝、オリンピアンというエリートボクサー。パワー、スピード、テクニックと高い水準で整っているボクサーです。
ピンチに陥った時にどう対処するのか、対戦相手との相性等、試されていない部分もあると思います。個人的にはウォーリントンやシュのような激闘型との対戦がどうなるか楽しみ。いなせるのか、それとも飲み込まれるのか。
マーク・マグサヨ(フィリピン)20戦全勝(14KO)
かつて世界ランク1位まで登り詰めた後、ブランクをつくってしまったマグサヨ。現在はまた世界ランク上位に返り咲き、そろそろタイトル戦線にからんできそうです。
ながらくスーパーホープと恐れられてきたマグサヨですが、いっときのフィリピン人らしいワイルドでダイナミックなボクシングよりも若干落ち着いてきた印象もあります。そこが良いか悪いかは、今後を見てみないとわからないかもしれません。いずれにしろ、未だ未完の大器。
ルーベン・ヴィラ(アメリカ)18戦全勝(5KO)
元トップアマで、アマ時代シャクール・スティーブンソンと4度戦い、星を分けています。安全運転のテクニシャンタイプなので、アメリカで人気がでそうか、というとそうではありませんが、王者となった暁には難攻不落の政権を築きそうです。
反面、スタイルチェンジをしなければ観客を熱狂させることはできないでしょう。
王座を狙う日本人ボクサー
大沢宏晋(オールボクシング)45戦36勝(21KO)5敗4分
WBA1位、トップコンテンダーの位置まできた大沢。2016年の初挑戦ではオスカル・バルデスにTKO敗け、久保隼(真正)とのサバイバルマッチではどちらが勝ってもおかしくない内容でスプリットの判定敗け。
いよいよ最終章という雰囲気ですが、介護士との2足の草鞋を履く大沢。応援したいです。
「自己中心的な人間、周りの人に優しくできひん人間は、人の上に立てるわけない」――介護士ボクサー・大沢宏晋の仕事論(1) | リクナビNEXTジャーナル
亀田和毅(?)39戦36勝(20KO)3敗
メキシコ在住の亀田家3男。現在は日本のジムに所属していない(か、もしくは協栄新宿に所属している?)状態です。バンタムを制したあと、スーパーバンタムは暫定王座を獲得、正規王座のレイ・バルガスにリベンジならずでしたが、フェザー級で闘うようです。
スーパーバンタムの経緯をみると、これでフェザーを獲って3階級制覇と言っていいかどうか微妙なところですが、誰とやっても勝負になりそうな地力を持っています。
OPBF東洋太平洋王者
清水聡(大橋)9戦8勝(8KO)1敗
世界まで後一歩というところでジョー・ノイナイ(フィリピン)に不覚をとってしまった清水。7/16、いよいよ後楽園ホールでのボクシング興行再開の1番手として、殿本恭平(勝輝)を迎えての防衛戦を予定しています。
前戦から1年、心身ともに傷が癒え、また世界に向かっていけるようなパフォーマンスを見せられるか。
WBOアジアパシフィック王者
森武蔵(薬師寺)11戦全勝(6KO)
U-15大会で優勝経験もあり、その後すぐにプロ入りした森武蔵。若干20歳。シャクール・スティーブンソン陣営との交渉中だとコロナ真っ最中のニュースで流れましたが、そのシャクールは王座を返上。
来春の世界挑戦を画策していたようですが、交渉し直しになってしまったかもしれません。若く、勢いのあるファイター、焦る必要はないと思いますので、国内のライバル対決もみてみたいですね。
日本王者
佐川遼(三迫)10戦9勝(4KO)1敗
世界挑戦経験者の松本亮(大橋)をストップし、王座決定戦では評価の高い阿部麗也を退け、勢いにのった佐川。初防衛戦の日野僚(川崎新田)に善戦を許しましたが、対応された、というのが私の思うところで、その勢いはまだ衰えていないと思います。
次戦は挑戦者決定戦を勝ち抜いたホープ、丸田陽七太(森岡)とチャンピオン・カーニバルでぶつかります。これは楽しみな1戦です。
今後のフェザー級戦線は?
混沌としている感じがするフェザー級。ナバレッテが旋風を起こしてくれるのでしょうか。
個人的には階級ベストは、シャクールがいなくなった今、ラッセルJrなのですがいかんせんインアクティブ。シュやウォーリントンはあの馬力に対応できさえすれば何とかなりそう、と思って「しまう」ボクサーでもあります。
世界の壁がむちゃくちゃ高いか、というとそういう感じもしないのですが、なかなか日本人が獲得できないのも事実。
今現在も、すぐに世界へ、という日本人ボクサーはおらず、もう少し機が熟すのをまたなければならないような気もしています。
アメリカのプロボクシングについては、フェザー級あたりからぐっとレベルが上がるような気もしているので、そこで勝負できるような日本人ボクサーがフェザー級にあらわれてくれることを願っています。