今年、最大のビッグマッチ。
4団体統一王座戦。ロマチェンコvsロペス。
発表されてからはあっという間にもう来週。
楽しみですね!
今回のブログでは、ロマチェンコvsロペス戦のプレビューをしていきたいと思います。
このポスターもかっこいいですよね。両者の対比が素晴らしい。
両者のバンテージには、それぞれの対戦相手が書いてあります。
10/17(日本時間10/18)
WBAスーパー・WBCフランチャイズ・WBO世界ライト級王者
ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)15戦14勝(10KO)1敗
vs
IBF世界ライト級王者
テオフィモ・ロペス(アメリカ)15戦全勝(12KO)無敗
ワシル・ロマチェンコ
ボクシングという競技を知っている人で、ワシル・ロマチェンコの名前を知らない人はいないでしょう。かつてアマチュアボクシング界の最高傑作と言われたボクサーは、言わずもがなプロボクシング界でも最高傑作の1人となりました。
現在、リング・マガジンのPFPランキングでは2位ですが、これには異論のあるファンも多いのではないでしょうか。私もその1人で、1位のカネロはグレーな部分もあり、やはりPFPキングにはロマチェンコを推したい。
アマチュアボクシングの戦績は396勝1敗という考えられないほど優れたものです。3分3Rという短い時間、実際初回でつまずくとほぼ挽回が不可能なので、プロボクシングに比べて黒星はつきやすいアマチュアボクシング。
その中で400戦近く戦って、1敗しかしていないというのはどういうことなのでしょうか。
ちなみにその1敗は2007年の世界選手権決勝でアゼルバイジャンのアルベルト・セリモフというボクサーに喫したもので、翌2008年の北京五輪のときにリベンジしています。
北京五輪、ロンドン五輪で連続金メダル、その他にも世界選手権等、出場したほとんどの国際大会で優勝、まさにアマチュアボクシングの最高傑作です。1敗しかしてないから当然ですが。
その数々の実績を引っさげ、トップランクと契約し、プロの道へ。
トップランクとの契約に際して出した条件というのは、2戦目での「世界タイトル挑戦を実現させる」事だったそうです。本当はデビュー戦がよかったそうですが。。。正に規格外。
2013年10月12日にプロデビュー戦でいきなり世界ランカーに挑戦。ホセ・ルイス・ラミレス(メキシコ)を4RKOで屠り、約束通り2戦目での世界挑戦を実現させます。
しかしWBO世界フェザー級王者、オルランド・サリド(メキシコ)は、ロマチェンコとリングで対峙する前に体重超過でタイトルを失います。
スーパーのつくトップアマを迎え、意図的と思われる体重超過。フェアではない戦いとなったサリド戦、ロマチェンコはここをスプリットの判定で敗戦。本当に不運な敗北でした。
ある種、プロの洗礼を受けたロマチェンコは次戦でWBO世界フェザー級王座決定戦でゲイリー・ラッセルJr(アメリカ)を降し、たった3戦目で初戴冠。
そしてこの王座を3度の防衛ののち返上、7戦目でWBO世界スーパーフェザー級王者、ローマン・マルティネス(プエルトリコ)に挑み、5RTKOで2階級制覇。
この頃にはプロの水にも馴染み、圧倒的な強さを発揮します。特に、スーパーフェザー級時代のロマチェンコは圧巻でした。
初防衛戦でニコラス・ウォータース(ジャマイカ)の心を折って棄権させたのちは、ジェイソン・ソーサ(アメリカ)、ミゲル・マリアガ(コロンビア)、ギジェルモ・リゴンドウ(キューバ)と防衛戦で戦った相手は皆、ロマチェンコに心を折られ自ら棄権。
ついたあだ名は「ノーマス・チェンコ」。
ロマチェンコは、破壊力がずば抜けている訳ではなく、目にも止まらぬスピードがある訳ではありません。お世辞にも、体格に恵まれているとも言えません。一言でいえば「テクニック」と言われるものが彼のボクシングを形作っているのですが、その「テクニック」が正に異次元であると言えます。
幼少期から様々なスポーツに本気で取り組み、おそらく父、アナトリーの言う事を素直に聞いて、更に自ら考え、コツコツと練習をしてきたのでしょう。その中で、自身の身体の使い方をマスターしていったであろうロマチェンコは、ボクサーとしての人間の身体の動きの可能性を広げてくれたと言っても過言ではありません。
ボクシングはロマチェンコという傑物が現れて、一段階進化した、そう思えます。
背中に一本の棒を突っ込んだように姿勢正しく骨盤をたて、そのステップは乱れるということを知りません。相手の後ろに回り込むほどのサイドステップから、出すパンチは計算しつくされたコンビネーション。
自由自在に身体を操る事、そして身体の操り方を知っている頭脳。
相手が動いた時に自分がどう動くのが正解なのか、知っているかのような対応力。
勿論ボクサーに必要な反射やフィジカル。
相手を罵ることもなく、その華麗なスキルのみで見るものを魅了し、そして対戦相手が降伏する、至高のボクサー。
そんなロマチェンコも、ライト級への転級後は階級の壁にぶち当たっているといってもいいでしょう。
ライト級初戦はホルヘ・リナレス(ベネズエラ/帝拳)の持つWBA世界ライト級王座へ挑みます。ここでロマチェンコはリナレスの右ストレートを喰らってプロ初ダウン。この瞬間は日本中が夢を見た瞬間でもあったと思います。
しかしその後持ち直したロマチェンコは、結果的に10RTKOでリナレスを退け、3階級制覇。
フェザー級時代の防衛戦からここまで8連続KO勝利を飾っていたロマチェンコでしたが、次戦でWBO王者、ホセ・ペドラサ(プエルトリコ)との統一戦では判定勝利。
その後は統一王座の防衛戦でアンソニー・クローラ(イギリス)に圧勝。
次戦のルーク・キャンベル(イギリス)戦には、WBA王座とWBO王座の他に、WBCの王座決定戦としてWBC王座もかけられた3団体王座統一戦となりました。このあたりの経緯は微妙なところですが、キャンベルに善戦を許すもここもクリアし、3団体統一王者に。
そしてもっと不可解なことは、この後、このWBC王座は新たにできたWBCフランチャイズ王座へ昇格することになりました。
現在はロマチェンコはWBAスーパー、WBCフランチャイズ、WBO王座を保持する3団体統一王者であり、通常このフランチャイズ王座は試合の勝敗によって移動しないもののようなのですが、今回のテオフィモ・ロペス戦でもしロマチェンコが負けた場合は、ロペスに移るようです。(なんのこっちゃ)
簡単に言うと、今回のテオフィモ・ロペス戦は純粋に4団体統一王座戦、ということでいいでしょう。
↓ロマチェンコのハイライト
テオフィモ・ロペス
ロペスも元トップアマで、2015年には権威あるアマチュアボクシングの大会、ナショナルゴールデングローブスで優勝します。
しかし、翌2016年のリオデジャネイロ五輪ではアメリカ代表では出られず、ホンジュラス(両親はホンジュラスの移民。ロペスはアメリカ生まれ)代表として出場します。
このオリンピックに1回戦で敗退すると、トップランクと契約し、プロ転向。
早くから次代を担うプロスペクトとして注目を集めたロペス、数々の地域タイトルを手にしながら足早にランキングを上昇させていきます。
そしてナンバーワン・プロスペクトの地位を確立した頃に、IBF王座の挑戦者決定戦というチャンスが舞い込んできます。
IBFという団体は、主要4団体の中で最もランキングや世界挑戦の順番がしっかりとしている団体です。基本的に1位と2位が空位となっており、世界ランカー上位同士の争いでまず1位のランカーを決め、その1位が指名挑戦者となって王者に挑戦します。
IBF世界ライト級4位のテオフィモ・ロペスの相手は、同級3位の中谷正義(井岡)。
OPBF東洋太平洋王座を11度防衛、国内、アジアに敵なしのライト級中谷は、スーパープロスペクトのロペスを大いに苦しめました。
結果的には3-0の大差とも言えるポイント差でロペスが勝利しましたが、内容的にはドロー、中谷の勝利でも全くおかしくはない、という試合内容。もちろんロペスが勝っていてもおかしくはなかったのですが、ポイント差に愕然としたのを覚えています。これは本当に露骨な贔屓でした。
正直この件で、ロペスの評価は下がったと思います。少なくとも私の中では怪物的要素は薄れ、そして中谷の株は上がりました。絶対的な東洋王者とはいえ、層の厚い本場のライト級に通用するかは未知数だったからです。世界トップの実力を示した中谷、世界王座も近いと思いましたが引退。。。未だに戻ってくるのを待っています。
さて、この試合で評価を落としたと思われたロペスでしたが、次戦で挑んだIBF王者、リチャード・コミー(ガーナ)に右カウンター一閃。その後の獰猛なラッシュも含め、再度大きく評価を上げました。
ロマvsロペス
ロペスは若さと勢い、そしてパワーもスピードも併せ持ったボクサーです。
時期尚早かと思われたコミー挑戦でしたが、その持ち前のセンス、恐れを知らない勢いで見事アップセットを成し遂げたロペスが、ロマチェンコとの統一戦に進みます。
↓衝撃のコミー戦。
若く、勢いのあるロペスは粗さも目立ちますが、もし、万が一、億が一、ロマチェンコがロペスの勢いに一瞬でも怯むようなら面白くなるかもしれません。
ただ、ロマチェンコはクレバーで、そして慎重なために、可能性は低いでしょう。
そしてもう一点は、ロマチェンコはライト級では体格的に小さく、やはり適正階級はというとスーパーフェザー級。本人もそれを望んでいるようです。ライト級に上げてからは、パワー不足は明らか、そこを技術で補っているという状況かと思います。
その点はそのままいわゆる「タフネス」という部分にも通じてくると思うので、一瞬の隙をついてロペスの速い一撃がロマチェンコに当たる、という事は考えられます。お互いのパンチが交錯するような瞬間があれば、どちらが当たってもおかしくはなく、そして互いのパンチが当たったとすると倒れるのはロマチェンコの方かもしれません。
そしてロペスの速く、重い一発をもらえば、そのまま効いてしまって。。。という展開もなくはないです。
ということで、「何か」が起こらなければロマチェンコの勝利は固く、「何か」を起こさなければロペスの勝利はないでしょう。
ロペスがロマチェンコにいいようにやられる、というのが妥当な展開だとは思いますが、このまだまだ若いプロスペクトが、このビッグマッチでどう化けるのかも楽しみですね。
個人的な希望としては、ロマチェンコに圧勝してもらって、ライト級史上初の4団体統一を成し遂げてもらいたいです。そしてスーパーフェザー級に戻り、かつての絶対的強さをもう少し、見ていたいと思っています。
とにかく楽しみな一戦は、WOWOWで生中継。
そして、大好きなA-SIGNのYoutubeチャンネルでもこの試合について語っていました。