モンスター、井上尚弥の試合から数日が経ちましたが、未だその余韻は冷めやらず。
本来であれば、11/3(火)に行われるはずだったWBAスーパー世界ライトフライ級タイトルマッチ、京口紘人(ワタナベ)vsタノンサック・シムシー(タイ)の観戦記を書く予定でいました。
しかし、ご存知の通りこの試合は、というか興行自体が中止に。
今回のブログでは、その事を含め、井上vsマロニー戦後に思ったことをつらつらを書いていきます。ただの独り言なので、あまり内容は期待しないで下さい(笑)
京口紘人、PCR検査で陽性
この一戦は王者・京口のコロナ陽性を受けて興行自体が中止。延期の方向で、年内開催という噂もありますが、果たしてどうなるのでしょうか。
京口自身は無症状であり、前日だか数日前だかの検査では陰性だったとの報道もあったかと思いますが、ここからまた年内に向けてコンディションを作るのはきっと想像以上に大変なことだと思います。
シムシーにとっては本当に不運。
シムシーは10月に来日し、隔離生活の中で充分な練習も詰めていない状況にも関わらず、世界タイトルを母国に持ち帰る事を夢見てこの日を待ち望んでいたに違いありません。
年内開催に希望をもって、ここから日本に留まり調整を続けるとのこと。
シムシーのことを思うと日程が再設定されることを願うばかりですね。
前日計量を終えても、PCR検査の結果が出るまでは油断はできません。
今後もこういったタイミングで延期、もしくは中止の判断をしなければならない、となると選手は勿論ですが、主催者側にとっても本当にキツいと思います。
会場の設営、選手を隔離するための宿泊施設、海外からの選手の招聘。。。それで何もお金を生まないというのは、今後の興行に差し障りがありそうで恐ろしいです。
今回は興行自体を中止にしましたが、普通はそうはいかないでしょう。メインができなくなっても、セミファイナルをメインに格上げしてやる、というのが普通だと思いますが、今回は世界タイトルマッチのため、チケットもかなり高額。観客からも文句が出かねません。
真っ赤っ赤の赤字覚悟で興行自体を中止としたことについては、あの短時間で苦渋の決断だったと思い、主催者側の心中は察して余りあるほどです。
何が正解なのかは解りませんが、この判断が吉と出ることを祈っています。
井上vsマロニーの祭りのあと
さて、井上尚弥。
↓井上尚弥vsジェイソン・マロニーの観戦記
そのKOシーンはSNSでも何度も流れ、その衝撃的なKOの余韻はまだまだ残ったままです。
マロニー得意の左ボディにあわせた右アッパー。控室でのアップ映像が流れた際、何度も繰り返し右アッパーを打つ姿は見ていたので、そのアッパーがキーになることは何となく知れました。
このアッパー、鋭く振り切る時もあり、このアッパーをかすめたマロニーは、その後頭を下げて中に入る事ができなくなりました。
6Rにダウンを奪った左フックも、7Rに素晴らしいKOを演出した右ストレートも、マロニー対策として練習していたというパンチ。
井上尚弥だけでなく、チーム井上の分析力の高さにも驚愕を隠せません。
この左フック、右ストレートは予備動作が一切なく、タイミングだけあわせて拳を置きにいったようなパンチ。
誰しも、これは井上尚弥でもそうですが、力を込めてパンチを放つと多少なりとも振りかぶったり、モーションが大きくなったりはあるものです。
これはまさに、タイミングが生んだ芸術。
ただし、このパンチは井上にとってはただ置きにいったパンチでも、しっかりと下半身、体幹が効き、殺傷能力としては非常に高いパンチでした。
私個人はアマチュアボクシングのコーチをしており、改めて、基本の大切さを実感しました。
モーションを少なくしてパンチを打つ、パンチは下半身で打つ、何度も何度もそう教えて、シャドーやミット、サンドバッグでは打てたとしても、スパーリングや試合ではどうしても皆、多少なりとも振りは大きくなってしまいます。
こんなにも力み無く、最短距離で打てるのは、まさに反復練習の賜物と言えるでしょう。
対してマロニーのボクシングの基本のレベルの高さにも驚きます。
5Rに左フックでダウンを奪われますが、ジャブで踏み込む際にも右手のガードはしっかり上がった状態。
ジャブが1発で終わらず、2発、3発と繰り返し追って行ける姿は、並のボクサーであれば守勢に回ったり、打ち返すのが遅れたりするでしょう。まさか1発目をギリギリでかわされ、2発目は当たりながらもガードの隙間を縫ってカウンターを返されるとは思いませんよね。
マロニーがディフェンシブな選手だ、と至るところで意見されていますが、私はそうは思いません。どちらかというとアグレッシブな選手だと思っています。
マロニーの真価は、その攻撃のときに示されるものであり、攻撃はサイドステップを含めた波状攻撃、ボディを外側から叩いて内側にパンチを入れる等、コンビネーションの選択の正確さ、そしてフィジカルの強さ、どれをとっても一流にも思います。
ガードは固く、あまりもらうイメージもないので、ディフェンシブに思われるだけのような気もします。
そしてやはりハートが強かった。
今回井上相手に、唯一の勝機ともいえる超接近戦をなかなか挑めなかったのは、やはり井上のパンチングパワーを怯れたからでしょう。
井上のような破壊的なパンチャーに対しては、警戒しすぎてしすぎることはありません。マロニーの今回の闘いが、ある程度ディフェンシブになっても仕方のないように思えました。
ハートの強さとは無謀な勇気、いわゆる蛮勇ではなく、自らのプランを実行する勇気のことです。私には、マロニーは最後まで自分のプランを実行しようとしているように見えました。
それでもなお、それを上回り、最終的にはマロニーにほとんど何もさせなかった井上尚弥はやはり異次元のモンスター。
井上尚弥がついにPFPキングに。
イギリスのボクシング専門メディア「ボクシング・ソーシャル」では井上尚弥をパウンド・フォー・パウンド1位に選出しました。
ランキングはこちら↓
Boxing Social Inaugural Pound-for-Pound Rankings - Boxing Social
2位がカネロ、3位がウシク、4位がクロフォード、5位がロペス、6位がロマチェンコ、7位がエストラーダ、8位がロマゴン、9位が田中恒成、10位がジョシュ・テイラー。
大変栄誉なことではありますが、勿論井上にはここで満足してもらいたくはないです。(しないでしょうが。)
これからもまだまだ印象的な勝利を積み上げ、高みへ登ってほしいですね。
井上尚弥はネクスト・パッキャオ?次の犠牲者は誰か。
そしてこのPFPランキングよりも、アメリカで、いや世界でどれほどメジャーになれるのか、というのが今後の成功の鍵を握っています。
比較対象はマニー・パッキャオ(フィリピン)。
パッキャオは代役挑戦者としてレドワバにセンセーショナルなKOで勝利したのを皮切りに、マルコ・アントニオ・バレラ、ファン・マヌエル・マルケス、エリック・モラレス等々、数え上げればキリがないほどのメキシカンと好勝負を演じ、そしてオスカー・デ・ラ・ホーヤ、フロイド・メイウェザーJr等のスーパースターとリングで相まみえました。
さて、井上がこの境地に辿り着けるか、というのは現時点では難しいでしょう。
井上には現状、ライバルと呼ばれるようなボクサーがいません。
ノニト・ドネアの全盛期は過ぎ、再戦すれば差は開いているでしょう。
ジョンリエル・カシメロは、一発の怖さはあるものの、(盛り上がるとは思いますが)相手にはならないでしょう。
ノルディーヌ・ウーバーリは、アメリカでの知名度がなく、もしやるなら日本開催?日本開催なら拓真の仇討ち、ということである程度の盛り上がるとは思いますが、海外にアピールできるような試合にはならないと思います。
待たされ続けているIBF指名挑戦者、マイケル・ダスマリナスは、言わずもがな。
ギジェルモ・リゴンドーはおもしろい対戦相手ですが、井上にとっては4団体統一という目標がある以上、避けて通れてしまいます。4団体統一後にリゴンドーと闘う、としても、今度は井上自身のウェイトの問題が出てきます。
今回も足をつった、という井上は、バンタムには留まれてもあと1年ほどかと思います。2022年からは、おそらくスーパーバンタムでの闘いが待っていると思います。
井上の勇姿を次に拝めるのは。
ボブ・アラムが言うには次回は3月、日本開催。
なのでパターンとしては
①3月日本vsダスマリナス→初夏アメリカvsカシメロ→冬前アメリカvsウーバーリかドネア
②3月日本?vsカシメロ→初夏アメリカvsウーバーリかドネア→冬前vsリゴンドー
みたいな感じでしょうか。
私としては②のパターンで、全部アメリカでやってほしいです。
そしてその後、心残り(リゴンドー)をなくし、スーパーバンタムで無双してほしいです。
考えただけでもワクワクしますね。そして井上のライバルとなる未知の強豪が出てきてくれることも祈りつつ、井上尚弥の第二章を見守っていきたいと思います。
気持ちを切り替えて
そして11/6はいよいよ、待ちに待った中谷潤人の世界戦!
この井上尚弥の余韻、まだ浸っていたいような、早く上書きされてほしいような、複雑な気分ではありますが、中谷潤人の衝撃的な世界奪取を大いに期待して、今回のブログは結びとさせていただきます。
↓プレビュー記事はこちら!