王者同士の間でゴタゴタしている、世界バンタム級戦線。
本日9/21、WBCは正規王者ノニト・ドネア(フィリピン)と暫定王者レイマート・ガバリョ(フィリピン)の団体内王座統一戦をオーダーした、とのこと。
このことにより、もしかすると、2020年4月に行われる予定だった井上尚弥vsジョンリエル・カシメロと本人、両陣営、そして両者のファンが望むこの一戦が行われるかもしれません。
今回のブログでは、日本のボクシングファンが楽しみにしている世界バンタム級戦線、そのゴタゴタ劇の変遷を見ていきたいと思います。
Gaballo spoils Donaire-Casimero party – Daily Tribuneより
日本の誇り、井上尚弥!
日本ボクシング史上、最高傑作と謳われる井上尚弥(大橋)は、バンタム級で開催されたWBSS(World Boxing Super Series)で優勝、しかし手に入れられたタイトルはWBAスーパー、IBFのもののみでした。
本来、このWBSSに優勝すればWBC以外のタイトルが手に入ったはずだったのですが、当時のWBO王者、ゾラニ・テテ(南アフリカ)がトーナメント途中で負傷を理由に辞退。
しかもそのゾラニ・テテはその後の防衛戦でジョンリエル・カシメロ(フィリピン)に王座を追われ、新たにWBO王座にはカシメロが君臨することになりました。
そしてそのカシメロと井上は2020年4月25日の日程で対戦することとなり、日本中で大いに話題となりました。
しかし、その注目の一戦は、コロナのパンデミックにより敢えなく中止。
その後井上の防衛戦はなかなか決まりませんでしたが、結局は日本時間2020年の11月1日、ラスベガスのリングでジェイソン・マロニー(オーストラリア)を7Rでノックアウト、統一王座の防衛を飾りました。
↓観戦記
ドラマ・イン・サイタマで弟・拓真がノルディーヌ・ウバーリ(フランス)に敗北して以降、徐々に「4団体統一」を目指す方向にシフトしてきた井上は、このマロニー戦前には明確に「バンタム級で4団体を統一する」と明言しています。(敗戦当初は拓真がウバーリにリベンジすべき、とも言っていました)
さて、しっかりと目標を定めた井上は、次戦でも統一戦を模索していました。しかし、ここでIBFの指名戦のオーダーが入り、(ファンから見ると)仕方なしにIBFのトップコンテンダー、マイケル・ダスマリナス(フィリピン)と戦うことに。
これは日本時間で2021年6月20日にセットされましたが、その日程の前にバンタム級で興味深いカードがあったのです。
WBC王座の行方
このWBC王座こそ、井上尚弥の王座統一を阻む最大の要因の一つだったと思います。このWBC王座のゴタゴタは、そもそもルイス・ネリ(メキシコ)が山中慎介(帝拳)に勝利したことに端を発しています。
山中戦初戦、ルイス・ネリの薬物違反(厳密にいうとWBCの裁定はシロ、ファン感情でいうと真っ黒なメキシカンビーフ事件)により、山中との再戦がセットされるも今度はネリは大幅な体重超過、ウェイトの利を得たネリがTKO勝利。しかし当然王座は剥奪、空位となりました。
要はこの空位の期間にWBSSが開催されたため、WBC王座はこのトーナメントに賭けられなかったわけです。
その王座を射止めたのが正規王者のノルディーヌ・ウバーリと暫定王者の井上拓真(大橋)。この2人は2019年11月7日、ドラマ・イン・サイタマのセミファイナルで雌雄を決し、ウバーリがダウンを奪っての判定勝利。
このWBC王座もコロナのパンデミックによる延期、ウバーリのコロナ罹患、休養王座認定、対戦相手のノニト・ドネア(フィリピン)がコロナ陽性反応(偽陽性?)等々を経て、巡り巡って結局、暫定王座戦としてエマニュエル・ロドリゲス(プエルトリコ)とレイマート・ガバリョ(フィリピン)がセット。これが2020年12月に行われました。
↓観戦記
年明け2021年、ウバーリが休養王座から復帰、ここで(疑惑の判定で)暫定王者となったガバリョとの一戦ではなく、元々予定されていたノニト・ドネアと拳を交えることが発表。
日本時間で2021年5月30日、WBCの正規王座戦としてウバーリvsドネアがセットされ、ここ一番の強さを見せたドネアが大方の予想を覆す圧勝。
↓観戦記
見事新王者となったノニト・ドネア。井上vsドネア2にさして興味の湧かなかったファンも、井上尚弥本人でさえ、このドネアの強さを認めて、井上vsドネア2への期待が高まったと思います。
井上vsダスマリナスと、ドネアの重大発表。
そのウバーリvsドネアから1ヶ月も経たずして、井上がラスベガスのリングに再登場。マロニー戦では無観客でしたが、今回は初の有観客試合となりました。
日本ではWOWOWが中継してくれたこの一戦の直前、インタビューで「井上戦後にドネアから重大発表」とのこと、否が応にも期待が高まります。
↓客席には、ノニト・ドネアとジョンリエル・カシメロの姿も。
果たしてこの時に発表されたのは、日本時間8/15に行われる予定だったカシメロvsリゴンドーのバンタム級戦から、リゴンドーが降ろされ、代わりにドネアが戦うことになった、ということでした。
本来はこの形で、2人が2つずつの王座を持ち寄って、4団体統一戦を戦うということが望ましい。大歓迎ながら、井上vsカシメロ戦を待ちわびたファンにとっては少々酷だったのかもしれませんね。
しかし、この盛り上がったマッチアップも、結局のところはカシメロがVADAへの登録が遅れた、ということと、何よりカシメロ陣営のショーン・ギボンズがドネアはおろかその家族にまで暴言を吐き、怒ったドネアはこの試合をキャンセル。
そして結果、リゴンドーが呼び戻されて日本時間8/15にカシメロと戦うことに。そうすると必然的に、井上尚弥の次の相手はノニト・ドネアか?
さて、8/15の試合では、いいように使われるリゴンドーを応援していましたが、試合は世紀の大凡戦。史上稀に見るパンチスタッツを尻目に、36分間のダンスを見せたリゴンドーと何もできなかったカシメロ。
この試合はカシメロの勝利ながら、少なくとも「あのリゴンドーに勝った!」と、胸を張っていえるような内容ではなかったと思います。これはどちらも得をしない試合内容。。。
ともあれ、カシメロは道が繋がり、リゴンドーの道は途絶えました。
↓観戦記
カシメロの度を超えた挑発
この勝利者インタビューで、カシメロはドネア、井上を挑発。井上への挑発は、中指を立てて罵るようなもので、これに対して静かに怒りをあらわにした井上は、SNSでも強い言葉でカシメロを非難。
これがポーズなのか本心なのかは置いておいて、ファンの心は一致、「井上にカシメロをぶっ倒してもらいたい」ということになったのだと思います。
個人的には、勝負の見えたカシメロとの一戦はさほど興味はなく、どちらかというとドネアとのあの至高の一戦の再戦の方が見たい、と元々思っていました。そして、もしカシメロとやるのであれば、先にカシメロ戦にして欲しい。バンタム級のクライマックスは、ドネアであって欲しいのです。
しかし、ことはそう思い通りに進まず、9/15に発売されたボクシングマガジンのインタビュー記事では、「ドネアとカシメロが12月に決まったようです」との大橋秀行会長の言。
元々対戦予定だったドネアとカシメロ、2人の契約はまだ生きており、カシメロがリゴンドーに勝利してからもその話題は幾度となく上がっていましたが、大橋会長が言うならばその線が強いのでしょう。
そうすると、井上尚弥は別の対戦相手を探さねばならず、同マガジンでの記事は、サウスポーも見据えているとのこと。
誌面には、リゴンドー、ラウシー・ウォーレン、そしてゲイリー・アントニオ・ラッセルの名前が踊り、井上尚弥本人の言葉では「ラッセルは、もしかしたらカシメロより強いかもしれませんね」とのこと。
これはデビュー以来、強者とやらせてくれと言い続けている井上のことですから、戦うのならラッセルかもしれません。
リゴンドー、ウォーレンは既に土がついているボクサーなので、ここで無敗の、若いボクサーを倒しておくのも悪くはありません。
少々残念ながら、これで決まりか。。。と思っていたものの、最後に冒頭のニュース。
ドネアvsガバリョ!
この数日のうちで、ドネアはカシメロに契約書を送った、という発言をしており、その返答を待っている、とのことでした。
そしてカシメロは「届いていない」と。「電話してこい」と。(この辺は意味不明)
PBCを手がけるアル・ヘイモンが言うには、カシメロはドネアとの一戦を断った、ということですが、カシメロをマネージメントするショーン・ギボンズが言うにはいくつかの問題を対処している最中で、断ってはいない、とのこと。。。
どっちにしろ、早いところ決断してもらいたいですね。
ドネアは12月に試合をやることが決まっているようで、その相手がガバリョなのかカシメロなのか。ドネアの希望としてはカシメロで、契約書は送っている、とのこと。ガバリョ戦というのは強制なので、これを断ればWBC王座剥奪が筋なのですが、もし断ったとしても、果たしてゆるゆるのWBCがどう出るか。ゆるいのはメキシカンに対してだけかもしれませんが。
カシメロはドネアからの契約書にサインして送り返すか、それとも8月後半に「井上と日本でやる。井上の家でも良い。」と言っていた通り、12月?に日本に来てくれるのか。家はやめといてあげて下さい。新築だし、超迷惑だと思うので。
井上にはほぼ選択権はなく、カシメロの返答待ち、といった所でしょうか。カシメロがドネアとやる、となった時には対戦相手の最右翼に上がるのはゲイリー・アントニオ・ラッセルかな、と思いますね。
希望が出てきました。
もし、ドネアvsカシメロが締結し、もし、WBCが規定通りドネアの王座を剥奪するのであれば、あの超疑惑の判定で王座についたガバリョが正規王者に。
だったら、12月に井上尚弥と戦うのは名前の出ていたアントニオ・ラッセルではなく、WBC王座を持ったレイマート・ガバリョであっても良いですね。そうすれば3団体統一王者です。
そして、来年春、ドネアvsカシメロの勝者であるドネアとの再戦を経て、4団体統一王者に。
しかし、もう一つのパターンの方が好ましい。
ドネアvsガバリョがWBCの司令通りに締結し、カシメロが井上と戦うこと。何しろ個人的な第一希望はカシメロ→ドネアとの連戦であり、一つずつ王座を集めていく、という戦いが見たいわけです。ガバリョとやってもイマイチ盛り上がりません。
これについては、異論が少ないのではないか、とも思いますが、いかがでしょう。
ということで、ともすれば希望通りになるのか?とも思っていますが、もし、この状況で井上vsカシメロが決まらないようであれば、縁がなかったと思うしかありませんね。
つまりはカシメロ次第。結論を先送りにして、ズルズルと引き伸ばさないことだけを願います。