日本時間11/1は、ボクシングファン待望の井上尚弥のラスベガスデビュー戦!
20戦目の節目であり、35歳までと決めている現役生活の丁度折り返し地点。井上自身が語るように、まさに第二章のはじまりともいえるこの聖地、ラスベガスでの一戦。
おそらくボクシングファンで、この試合を見ていない人はいないでしょう。
その興奮を、冷めない内に残しておきたいと思います。
今回のブログでは、この井上尚弥vsジェイソン・マロニーの観戦記を書いていきます。
↓戦前に書いた記事1
↓戦前に書いた記事2
※この試合が終わった今となってはただの戯言です。
WBAスーパー・IBF世界バンタム級タイトルマッチ
井上尚弥(日本)19勝(16KO)無敗
vs
ジェイソン・マロニー(オーストラリア)21勝(18KO)1敗
井上尚弥のラスベガスデビュー戦。当初は、2020年4月にWBO王者であるジョンリエル・カシメロ(フィリピン)との統一戦が予定されていましたが、これがコロナ禍で延期となりました。
その後、カシメロとは折り合いがつかず、相手は同じくトップランク所属のジェイソン・マロニーに変更。
このマロニー、元スーパーフライ級世界王者である河野公平(当時ワタナベ)に引導を渡しているボクサーであり、総合力が高く、侮れない相手。
既に6月、今回の試合会場であるラスベガスの「バブル」での興行に出場しており、無観客試合ながらアメリカのボクシングファンにお披露目済み。
↓マロニーが登場した際の観戦記です
アウトボクシングもインファイトもこなせる好戦的なジェイソン・マロニーは、様々なステータスが高いレベルでまとまったボクサーです。
しかし、それよりも井上尚弥というボクサーのレベルは高く、多くの識者、ファンの予想は井上の勝利。それも、ただの勝利ではなくインパクトのあるKO勝利。
この高いハードルを設定された井上尚弥は、日本と同等、もしくはそれ以上のパフォーマンスをしっかりと出せるのか。それが今回の試合の焦点です。
さて、WOWOW、FITE.TVをそれぞれつけて観戦していた私。
時折映るアップの映像では、井上尚弥が右アッパーを打つ姿が映されます。マロニーが出てくることを想定して、それをストップするためのものでしょう。
マロニーが勇敢にも前に出てくるのか、それとも。。。マロニーの戦い方に注目です。
そして、この「バブル」の無観客興行は、入場に時間をかけませんが、井上ファンとしては入場曲も気になります。
ドネア戦で使った、井上用にアレンジされた「キル・ビル」のテーマなのか、それとも「Departure」なのか。。。
そして井上尚弥が入場する段階になり、流れてきた曲は、旅立ちを意味する「Departure」でした。第二章の出発、そんな思いがきっと込められているのでしょう。
果たして、ゴング。
1R、まずは一定の距離で様子を見ます。井上はそこから速いジャブを繰り出し、相手の出方を窺います。マロニーも勇敢にジリジリと距離を詰め、ワンツーを放ちます。ガッチリとしたガードのスタイルから、マロニーがプレスをかけます。マロニーの戦法としては、接近戦を挑むようです。
井上が下がると調子づくマロニー。セコンドの井上真吾氏からは後ろに下がらないような指示が出ています。
2Rが開始。マロニーはリズムを刻みながら、ジャブを打ち、鋭い左フックを狙ってきます。しかしジャブの打ち合いであれば井上は負けません。井上はまっすぐ打つジャブ、相手のジャブにあわせる右ストレート、そして相手のジャブと相打ちになるタイミングで放つ左フック。そしてボディへのジャブも有効です。
普通の選手の右ストレートほどの威力がある、といわれる井上のジャブ。そしてその3倍の威力があるという右ストレート。それにも臆さず、マロニーは自分のボクシングを完遂しようとしています。既に、マロニーの勇敢さに疑問はつけられません。
3R、井上はかなり余裕が出てきました。かなりプレスを強くしています。そしてマロニーのパンチはしっかり見えており、危険なタイミングでのアッパーカットを繰り出します。距離が近くなり、接近した場所でのパンチの交換も行われるこのラウンド。マロニーも接近戦ではしっかりと頭の位置を変えながら対応しますが、井上のパワーに押され気味。
ここまでで井上がペースを掌握した、といっていいでしょう。完全に井上は余裕を持ち、試合をつくっています。しかし、余裕を持ちすぎてもよくないことはドネア戦で学んだ事の一つ。ここは更に気を引き締めていってもらいたい。
4R、マロニーは下がりながらストレート系のパンチを繰り出します。井上はガードも強く、マロニーのストレートでは止まりません。逆にマロニーは井上のストレートでふっとばされます。しかしこのラウンド中盤、マロニーのジャブで井上の顎が跳ね上がり、接近戦でも左フックを浴びます。井上も攻撃する際、どうしてもガードが甘くなってしまう場面がありますが、これがおそらくマロニーが狙っているところ。
このラウンドは井上は更にプレスを強め、攻撃偏重になっていっています。マロニーの固いガードを崩すため、というものはありますがこの部分は今後において課題の一つでしょう。このラウンド、井上は若干の(ダメージになるほどではないにしろ)見栄えの悪い被弾がありました。
5R、「丁寧に」と送り出された我らがモンスター。やはり少し雑になった部分に被弾があったのは否めません。さて、井上のジャブ、左フックがマロニーを襲います。先程雑になりつつもフィジカルとパワーで押していった井上ですが、このラウンドはスキルを使っていきます。途中、ロープを背負う場面もありますが、相手をしっかり見てカウンター、そしてコンビネーション。マロニーはこうなった井上に対して、やや攻めあぐねている印象もあります。
このラウンド終盤、マロニーのジャブにあわせたフェイントをかけた右ストレートをヒット!素晴らしいタイミングの右で、若干動きが止まったように見えるモロニー。ここは強引にはいかず、終了のゴングを聞きます。
6R、ここも井上はリラックスしながらもプレスをかける井上。ここでマロニーのジャブにあわせた左フックをヒット!マロニーは尻もちをつくダウン!ここは確実にダメージがあるマロニーですが、しっかりと足を使ってかわしていきます。
RINGSIDE 🎥: The speed + power of this @naoyainoue_410 counter left when seen up close is just ... 🤯 #InoueMoloney pic.twitter.com/P8m8CJYg6P
— Top Rank Boxing (@trboxing) 2020年11月1日
足は効きづらくなっているはずですが、押すようなジャブで止め、近くなったら体を寄せてクリンチに行き、大きく足を使って逃げます。これはマロニー、やはり只者ではありません。
井上は深追いはしないまでも、しっかりとジャブを突き刺し、確実にマロニーにダメージを与えていきます。マロニーは初回から結構打たれているはずですが、マロニーのタフさにも脱帽です。
まだ6R、焦って攻める必要はありません。マロニーも徐々にダメージは溜まってきているはずです。
7R、インターバルで少し回復したか、マロニー。足はよく動きます。ジリジリとプレスをかける井上。静かに、KOパンチを狙っています。
井上はやや手数が少なく、マロニーにプレスを与えながら何かを狙っているように見えます。
ラウンド中盤以降、攻撃のペースを突然上げた井上。波状攻撃をしかけ、ディフェンシブなマロニーを誘い込んでいます。
そしてマロニーのワンツーのツーにあわせて、自身の右ストレートをヒット。
We know, it happened in a flash.
— Top Rank Boxing (@trboxing) 2020年11月1日
Got your replays right here. 👇
What a statement by @naoyainoue_410. #InoueMoloney pic.twitter.com/mwHaZQeZRb
膝から崩れ落ちたマロニーは、そのまま立てず。カウントなしで止めていいほどの右ストレートだったように思います。
井上尚弥の7RKO勝利。
さて、皆さんにとってはこの井上尚弥の勝利は、期待以上だったのか、期待通りだったのか、それとも物足りなかったのか。
私にとっては期待通りの結果でした。
やはり今回求めらたのは「完勝」だったと思います。ジェイソン・マロニーという強豪を迎え、相手にほとんど何もさせず、相手の全てを上回った上でのKO勝利。
早期のKO決着よりも、ある種怪物的なインパクトを残せたのではないでしょうか。
惜しむらくはそのすぐ後に行われた、ジャーボンタ・デービスvsレオ・サンタ・クルス戦で、より衝撃的なKOが起こってしまったので、世界的に見るとややこのKOは薄まってしまったのかもしれません。
ジェイソン・マロニーは評判通り、素晴らしいボクサーでした。ロドリゲスのように弱気を見せることもなく、ニエベスのようにギブアップすることもなく、手がなくなっても手を出し続けた、そんなハートの強いボクサーでした。
そんなマロニーを完膚なきまでに叩きのめした日本の誇るPFPキングは、ただのパンチャーではなく、まるでチェスをしているかのような理知的なボクシングに怪物のようなパンチ力をプラスした、正真正銘のモンスターです。
これから更に井上を取り巻く環境は厳しくなっていくでしょう。ある程度の手の内を見せていく事で、相手ボクサーの研究はやりやすくもなっていきます。
そして、勝ち続けていく事は、負けられないプレッシャーも大きくなっていくことを意味します。そのプレッシャーを楽しむ事ができるというメンタルを持っている井上ですが、それは本人にしかわからないことでもあります。
本人が言う現役引退まで、あと8年。
いつしか、「井上が不利」というような下馬評を見ながらモンスターを応援することを夢としておきます。
井上尚弥という稀有なボクサーと同じ時代に生きられた幸運を感謝しながら、これからも井上尚弥の試合、そして言動を楽しみにしていきたいと思います。