2020年のチャンピオン・カーニバルの残り香。昨年はコロナショックにより試合も少なく、チャンピオン・カーニバルすら消化できない非常事態でした。
今年になっても変わらず、むしろ感染者数は増える一方であり、2019年以前のような活気が戻ってくるのはいつになるのでしょうか。
一刻も早い収束を願い、このような状況下でもボクシングの灯を絶やさず、興行を続けてくれている事に、関係者皆様に感謝をしつつ、今日もボクシングを楽しみたいと思います。
本日はBOXING RAISEで生配信された、DANGAN興行の観戦記です。
1/22(金)DANGAN
DANGAN B級トーナメント決勝 スーパーバンタム級5回戦
三尾谷昂希(帝拳)vs木村天汰郎(駿河男児)
8勝(2KO)1敗2分の三尾谷と5勝2分の木村、注目のホープ対決です。
ともに距離をとって闘うボクサーです。距離の取り合いに注目です。ともに踏み込むタイミングを伺いつつ、相手が出てくればステップでかわすかカウンターを合わせます。
木村は後ろ荷重、いつでも相手に合わせる準備をしています。三尾谷は踏み込むとどうしても踏み込みすぎてクリンチの距離になってしまう印象。攻め込む場面が多いのは木村でしょうか。
オーソドックスとサウスポーにはバッティングもありがちですが、やはり頭は当たってしまいますね。
木村の方がややアグレッシブにコンビネーションを打てており、三尾谷が出てくればパンチを合わせにいき、クリーンヒットは少ないながらも優勢には見えます。
4R、木村はワンツーのツーをボディに持っていって左フックを上に返すコンビネーションが良いですね。この微妙なラウンドが続く中では、ボディへのパンチは音も含めて見栄えも良いように思います。
あっという間に時間が過ぎます。木村は三尾谷の出てくるところに右ストレートをヒット、右手を挙げてアピール。三尾谷は木村の攻めどころで、バックステップでかわすだけでなく打ち返したいところです。
木村はボディムーブも良いですね。5Rに三尾谷のコンビネーションをボディムーブとステップを使ってエスケープ。このラウンド終盤、良い右オーバーハンドを当てた木村!
ラストラウンド、木村が先にアクションを起こし、三尾谷を誘います。三尾谷は警戒心からなかなか攻め込む事はできず、攻め込めば木村の右ストレートが飛んできます。
このラウンドもクリーンヒットは少なく、技術戦の第1試合は判定へともつれ込みました。
判定は、三者ともに木村天汰郎を支持。(58-57、58-56✗2)
前半3Rはどちらともいえないラウンドが続き、4R以降は木村のラウンドだったように見えましたね。
ともに攻めづらそうでしたが、木村の方がアグレッシブであり、攻め込まずともフェイントをかけて三尾谷を誘ったりしつつ、ゲームメイクをしていた分、優勢に見えました。
三尾谷は待ちの時間が長くなってしまい、木村が出てくるのにあわせてカウンターが取れませんでした。木村のスピード、そしてフェイントがそうさせたのかもしれません。
まだ若い二人のボクサー、これからもどんどん成長していってほしいですね。
DANGAN A級トーナメント決勝 ライト級5回戦
宇津木秀(ワタナベ)vs脇田将士(ミツキ)
7戦全勝(6KO)、ワタナベジム期待の宇津木、「この試合で全部出し切りたい」と語る10勝(5KO)10敗2分の脇田。
どっしりとした構えからジリジリとプレスをかける宇津木。サウスポー脇田は右へ左へサークリングしつつ、右ジャブを出します。その右ジャブはポンポンとリズムよく出て、宇津木はやりづらそうです。
2R、プレスを強めた宇津木。ジリジリと距離を詰め、ジャブから右を上下に散らします。そして脇田はジャブを中心に手数が出ます。
終盤、宇津木のコンビネーションがヒット。サイドステップがやばいです。
3R、尻上がりに圧力の強まる宇津木、サイドステップを使いながらのコンビネーションは素晴らしいですね。脇田も負けじと中盤には左ストレートをヒット。しかし宇津木は後半、ラッシュをしかけてポイントをピックアップします。
宇津木はここまでほとんど倒してきていますが、ポイントを取るボクシングも非常にうまいですね。
4R、ここまで我慢してきた脇田でしたが、宇津木の左フックで効かされ、その後右ストレートでノックダウンを奪われます。立ち上がった脇田に宇津木は襲いかかり、連打をまとめてストップを呼び込みました。
宇津木秀、4RTKO勝利。
何ともとんでもないボクサーですね、宇津木秀。攻撃時の自在のステップは、それこそロマチェンコを彷彿とさせるものでもありましたし、あまり振りかぶらないタイプのコンパクトなパンチにもかかわらず、非常に硬さを感じるハードパンチでした。
そろそろ試練の一戦を望みます。
セミファイナル 日本スーパーフェザー級タイトルマッチ
坂晃典(仲里)25戦20勝(17KO)5敗
vs
渡邉卓也(DANGAN AOKI)47戦37勝(21KO)9敗1分
この日の興行の中で、最も楽しみにしていたのはこの試合!アマ上がりの技巧派ながら、そうは見えない無骨なスタイルな坂と、プロ叩き上げながら技巧派の渡邉。好対照な両者の対決は、非常にわかりやすい構図。
ここは坂に勝利して、前戦の勝利がフロックでなかったことを見せてもらいたいですが、倒して勝つというスタイルの坂野の強打が、47戦して一度もKO負けがないという渡邉を倒せるか、というのも焦点。
初回からプレスをかけるのは勿論王者、坂。先手は坂、それにあわせてジャブを出す渡邉。両者ともにジャブが非常によく、相互にヒットを重ねます。
スピーディなジャブを打つ坂、落ち着いて組み立てていきます。
そして渡邉のジャブはまっすぐ伸び、坂の打ち終わりにヒットを重ねます。好勝負の予感です。
2Rも初回と変わらず、坂がプレス。プレスをかけながらもポンポンとジャブが出ますので、渡邉も手を出しづらくなりますね。距離がつまると坂がパワフルな左右のフックを振るっていきます。
渡邉はガードが非常に良いですが、ハードパンチの坂相手だと後半にかけてきつくなっていくかもしれません。
3R、坂が速いジャブから右ストレート、フックへつなぐコンビネーション。対して渡邉はここからがっちりとガードを固め、坂にプレスをかけ返します。
あまり下がらなくなった渡邉、まっすぐのジャブを強く打ち、坂は鼻から出血。
このラウンドは幾度となく渡邉のジャブがヒット、坂の顔を跳ね上げます。
4R、このラウンドも渡邉は3Rと同様、自分から手を出す立ち上がり。坂は素早く体を振り、渡邉のジャブに合わせて右をヒット。渡邉も坂のこのカウンターを警戒しますが、ジャブの差し合いはやや渡邉に分がありそうです。
このラウンド、坂はバッティングで左目上をカット。よくない流れですね。
5R、坂はボディを起点としてチャージ。カットに対する焦りもあるかもしれません。ここでドクターチェック。
再開後、両者ともにパンチが当たる距離での攻防から、坂のラッシュ。坂のパンチのまとめかたは非常にパワフルです。渡邉はジャブが特徴的、坂の顔はやはりこのラウンドも跳ね上げられます。
5R終了時の途中採点は、3者ともに49-46で坂がリード。
坂としては、バッティングの傷で試合が終わってしまっても良いですし、このままいけば勝てるとわかりました。そして渡邉は、この後試合をひっくり返すしかありません。
途中採点発表後の両者には注目です。
6R、ジリジリと前に出るのは渡邉。坂は細かくサークリングしながら、ジャブを突きます。ただ、渡邉のジャブは良いですね。ポイント差ほどの余裕は、坂にもないでしょう。
しかしこのラウンド、渡邉の一瞬の隙をついて坂の右ストレートがヒット!大きくグラつく渡邉にラッシュをしかける坂、足に力が入らない渡邉はそのままダウン。それを見たレフェリーはノーカウントでストップをかけました。
坂晃典の6RTKO勝利!
これまでKO負けのないタフな渡邉をしっかりと倒しきった坂。渡邉はこれまでKO負けがないことも頷けるほどガードも非常に良かったですが、坂が効かせたパンチはガードの間隙を縫うような右ストレートでした。きっとそれまでのダメージもあったのでしょう。
坂はアマチュア上がりの技術、そしてパワーが上手く噛み合っていましたね。そのジャブは鋭く、ジャブでは若干指し負けてしまう部分もありつつ、足りない部分をパワーで補ってみせたとも言えます。
いずれにしろ強豪・渡邉を相手に完勝し、見事に国内最強を証明した坂。末吉大に見事な勝利を飾った時は、防衛戦を見てみなければまだ評価は定まらない王者ではあったものの、この渡邉戦のこの勝ち方は、本当に素晴らしいものです。ここから上のタイトルを充分に狙えるでしょう。
天笠尚、細野悟といった世界挑戦経験者や、三代大訓、元世界王者の伊藤雅雪。誰もが倒せなかった渡邉をKOで屠った坂晃典のこれからには期待しかありません。
是非、世界のスーパーフェザー級をかき回してもらいたいものです。
メインイベント前に、国内スーパーバンタム級ビッグマッチが発表!
小國以載(角海老宝石)vs和氣慎吾(FLAIRE山上)!!!これは激アツです!!
↓タイミング的にも最高でしたね。
そして、メインイベント!
メインイベント 日本スーパーバンタム級タイトルマッチ
久我勇作(ワタナベ)24戦19勝(13KO)4敗1分
vs
古橋岳也(川崎新田)35戦26勝(14KO)8敗1分
初回、少々の様子見の時間も緊張感が走ります。しかしすぐに距離は縮まり、久我のパワフルなパンチが古橋を襲います。かなり重厚な攻撃!
キビキビとした動きで好調を伺わせた古橋はブロック、ボディムーブで対応。しかし近い距離では久我のハードパンチで押され気味です。
2R、両グローブを叩き気合を入れた古橋。久我のハードパンチに怯まず、近い距離で回転力のある連打で対抗する古橋!近距離の打撃戦、効果的なのは久我の巻き込むような右ストレートと、左ボディ。一発一発力を込めて打つタイプのパンチは、ガードの上からでも攻勢を印象づけます。
3R、久我のパンチについて「詰まっている」との表現は三代。ガツンガツンと響きそうなパンチであり、大振りではない久我のパンチは非常に見づらいでしょう。
しかしその久我のパンチをしっかりと受け止め、打ち返していく古橋の気合たるや。
頭をつけての打ち合い、おそらくダメージは古橋の方があるでしょう。それでも一歩も曵きません。
4R、ともに頭をつけての打ち合い。交互に打ち合いますが、中盤から古橋の手数が上回ります!久我は若干ボディを嫌がっている?手が出なくなる場面も!
拍手で盛り上がる会場、声が出せれば熱狂の渦だったでしょう。このラウンドは古橋が打ち勝った印象です。
5R、このラウンドも開始早々距離が詰まり、打撃戦。一度パンチが捉えた時の古橋のラッシュは気持ちが入っています。久我は我慢して我慢しての強い一発。
古橋は久我を下がらせ、そして古橋の左フックで久我は右目上をカット。おそらくポイントは久我優位ながら、苦しくなってきた久我。
公開採点は、48-47✗2、49-46で久我!4R、5Rが古橋に流れていると思われます。
6R、古橋がラッシュ!劣勢とはいえ勢いは古橋に思います。しかし優勢を聞いてややリラックスできた久我にも力みがなく、ステップも冴えます。
7Rのスタートは、久我は若干下がり気味。古橋の気迫に押されたか、それとも休もうとしたのか。右と右の相打ちを起点に、久我もラッシュ。このラウンドに来てボディを交えたラッシュを受けた古橋は、苦しいはずですが敢然と打ち返します!
このラウンドは明確に久我、後がなくなってきた古橋は、残り3Rをどう闘うか。
8R、グイグイと攻める古橋、下がりながらも強打を繰り出す久我!古橋の挑戦者らしいボクシングには感動すら覚えます。
終盤、久我の右にあわせた古橋の右がヒット!若干足が定まらないように見えた久我ですが、ここはゴングで終了。
9R、古橋は開始早々ラッシュ!止まらない連打、連打、連打!!回復出来ていない久我は、ここでダウン!立ち上がったものの、足元は定まらず、それを見たレフェリーがストップをかけました!
古橋岳也、9RTKOで新王者!!
3度目の正直で見事!日本王座を獲得した古橋岳也!!特に気持ちの強さが際立ちましたね。
久我の強打に一切弱気にならず、持ち前の粘り強さを発揮した古橋。この一戦にかける意気込みは並々ならぬものだったでしょう。
下馬評不利、試合内容も押されていた中で、決して諦めずもぎ取ったこの勝利。負ければ「引退」の二文字もちらつく年齢であり、ラストチャンスという事も覚悟して臨んだ一戦だったかもしれません。
最後にして唯一のチャンスをものにした古橋、本当に天晴です。
激アツの国内スーパーバンタム級のトップ戦線に名乗り出た、新たな王者、古橋岳也!
非常にタフで、ハートの強いこの新王者は、これからどのようなアツい試合を見せてくれるのか楽しみですね!