トリプルタイトル戦!
とか言っていたのに、そのタイトル戦の挑戦者のひとり、ジャスティン・パウルドが体重超過。跡を絶たないこの愚行の被害者はロランド・ロメロ。
という事でダブルタイトルマッチとなりましたが、今回はアンジェロ・レオvsステファン・フルトンのWBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチをメインに据えた、PBC興行の観戦記を書いていきたいと思います。
↓プレビュー記事です。
1/23(日本時間1/24)
このPBC興行は全部で4試合。第1試合に登場した、マックジョー・アローヨ(プエルトリコ)は
ノンタイトル12回戦
ロランド・ロメロ(アメリカ)12戦全勝(10KO)無敗
vs
アベリー・スパロウ(アメリカ)10勝(3KO)3敗
↓公式ハイライト
当初、WBA世界ライト級暫定タイトルマッチと開催される予定だった一戦は、挑戦者ジャスティン・パウルドの体重超過により中止に。
リザーブとして準備をしていたアベリー・スパロウが代役として上がり、ノンタイトル12回戦として挙行されました。
↓スパロウはエイブラハム・ノバとも戦ったボクサー。
ジリジリとプレスをかけるロメロ。開始1分経たないうちに左フックをコネクトするとスパロウがダウン。ロメロののプレスは強く、踏み込みは鋭いですね。
2R、スパロウはサークリングしつつ速いジャブで対応。ロメロが出てくるのに合わせて左フックや右ストレートをあわせようとしています。そのためか、ロメロも後続打が出ません。
3R、ロメロは警戒心が強く、スパロウが前に出てくると大きくバックステップ。攻める時は強振して攻めますが、ここまで攻守が分離されている場合は、相手としては攻め続ければ怖さが半減しますね。終了間際、スパロウの右ストレートがヒット。
4Rも変わらず、大きな進展はなし。5Rにはロメロのコンビネーションがバシバシと決まり始めます。ロメロは強引に攻める気はなさそうですね。
6R、ロメロのかすったような右アッパーでスパロウがダウン!かと思いましたが判定はスリップ。でも効いています。再開後、ラッシュをかけるロメロ。ストレートが入ったところで、レフェリーが一度試合を止め、なぜか2ポイントの減点。スローで見るとその前にスパロウが打ったローブローに対して、のようですね。今まで注意を繰り返してきたならわかりますが(わからなかったけどしてきたのか?)、いきなり2点て。
残り時間は約20秒、ロメロは攻めますがスパロウも半的。スパロウはがんばります。
7R、プレスをかけるロメロと、大きくリングをまわるスパロウ。その後、スパロウが攻めはじめたところでまたレフェリーがストップ。今度は何だ?と思ったらそのまま試合がストップ。
何だこのレフェリー。。。
ロランド・ロメロの7RTKO勝利。
ロメロが順当に勝ちましたが、スパロウは納得がいかないようです。何故いきなり止められたのか見ている方も不思議です。(解説の言葉がわからないからというのはあるでしょうけど。)
攻め込む時に顎が上がったり、穴がありそうなロメロですが、非常にパワフルで、そのウィークポイントを今のところは補っているように見えますね。今後、そのパワーにひるまないボクサーがでてきたらどうなるのか。
お世辞にもボクシングは上手いとはいえないロメロ、特に戦略面でライト級トップ戦線のボクサーたちからは大きく後れを取っているように思います。
フィジカル、パワーゴリ押しでこれるのはきっとここまで。ここからは、もっと別の武器が必要になってくるでしょうね。
WBA世界スーパーバンタム級暫定王座決定戦
ビクター・パシージャス(アメリカ)16戦全勝(9KO)無敗
vs
ライース・アリーム(アメリカ)17戦全勝(11KO)無敗
↓フルファイト動画
無敗のハードパンチャー同士の一戦!高評価のアリームか、ここまで意外に話題にのぼらないけど強いパシージャスか。そもそも表記はパシージャスで良いのか?(まあいいか)
プレスをかけるのはサウスポー、パシージャス。アリームは中間距離からフェイントをかけっつ、鋭い踏み込みで攻め込みます。
パシージャスの攻撃に対しては主にステップワークでかわすアリーム。パシージャスはよりプレスを強める必要があります。
2R、パシージャスはできればアリームをロープやコーナーに詰めたいところですが、アリームは反応も良く、さーくリングも上手いのでリング中央で戦われている感じ。
パシージャスも基本技術が非常に高くまとまっており、大きなミスは犯さないように見えますがアリームの方が当てカン、踏み込みのスピードに優れている分このままでは厳しい。
と思った矢先、アリームの右がカウンターでヒット!パシージャスはダウン!終わってもおかしくないほど衝撃的なノックダウンで、パシージャスはかなり効いています。
3R以降も展開を変えられないパシージャス。アリームはやはり、運動神経の塊のようなボクサーです。これ格闘センスというものでしょうが、危険を伴わない距離で見合って見合って、鋭い踏み込みからコンビネーション。右から左の逆ワンツーなどは顎があがり、強振した後に体が流れる等、日本でボクシングをやっていれば間違いなく矯正の対象となる動作こそあれど、その後の動きが素早く、大事には至りません。
とすると、パシージャスはアリームの打ち終わりを狙いたいところですが、どちらかというと自ら攻めていくボクサー。アリームの打ち終わりにパンチを出すことはあるものの、やや手打ち。そしてアリームは打ち終わり、バランスを崩しながらも上体の動き、ステップが良く、致命打を与えることはできません。
6R、アリームの左フックがヒット、かまわず攻め込むパシージャスにアリームはもう一度左フック。これは後頭部をかすめますが、これでパシージャスはダウン。ダウンしたパシージャスは後頭部への加撃をアピールしますが、そのままダウン宣告。
ポイントは挽回不可能、一発にかけるしかないパシージャス。しかし5R以降、アリームのプレスがきつく、逆に下がってしまうパシージャス。
8R、疲れからかミスブローが目立ってくる両者。アリームは特に雑になっているように感じます。パシージャスはここからが正念場。
しかし9R、攻め込んだパシージャスに対してアリームが左フックをカウンターでヒット!映像では大きく腰を落としただけに見えましたがグローブをリングについたのか、ダウン宣告。
パシージャスも心身ともにタフ。決して試合を投げることなく、果敢にプレスをかけ、パンチを放っていきます。
一方アリームはもう余裕。
11R、ジャブワンツーで攻め込むパシージャスの打ち終わりに、アリームは右ストレートをヒット。左フックをフォローし、崩れるように倒れたパシージャスに、レフェリーは終わりを告げました。
ライース・アリーム11RTKO勝利。
アリームは足が速く、ワイルド。暫定王者という肩書を手に入れ、WBAの3番目の王者となりましたが、レギュラー王者フィゲロアでも捕まえることは難しいのではないでしょうか。
「暫定」なんていう何の旨味もない王座に挑戦するボクサーが現れるか、というと微妙なので、これからも別のタイトルを狙って挑戦していかなければいけないかもしれません。
ともあれ、混戦のスーパーバンタム級の新王者は、はっきり言って恐ろしく強く、そしておそらく日本人ボクサーとの相性は悪い。
パシージャスのように、基本が高いところでまとまっているボクサーですらたどり着けないアリームを攻略するには、戦車のように前に出て嫌がらせるか、もしくは運動能力に秀でた本能で戦うタイプのボクサー、又は鋭い踏み込みをかわし、アリームの打ち終わりにパンチをコネクトして塩に徹することができるボクサーか。
今後も対戦相手がどう戦うか、楽しみなボクサーです。
WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ
アンジェロ・レオ(アメリカ)20戦全勝(9KO)無敗
vs
ステファン・フルトン(アメリカ)18戦全勝(8KO)無敗
↓フルファイト動画
今回のメイン、レオvsフルトンは非常に楽しみな試合。アグレッシブな王者、レオに勝ってもらいたいですが、下馬評はフルトン優位とのこと。
フルトンて「スティーブン・フルトン」なんですかね?「Stphen」なのに。
初回、低く入るレオ、フルトンは鋭いジャブ。中間距離ではレオの手数は出ず、やはりくっついてからでないと勝負にならなそう。ガードの高いレオと、低いフルトンはやはり好対照。
初回早々からレオの左瞼から出血!いきなりのハンデ。
2R、体を寄せていくレオ。かなり強引で、カットによって焦っているのか、それとも元々超接近戦をしかけるという作戦か。
もみ合いの中で互いのボディを叩き続けますが、フルトンも意外と負けてはいません。3R、接近戦を嫌がったか、フルトンはスタンスを大きく取り、ステップを多用するボクシング。これがフルトンの戦い方ですね。
レオの突進をかわし、いなし、的確にジャブを当てていく闘牛しスタイル。中間距離では間違いなくフルトン、しかし接近戦でも互角。レオにはかなり分が悪いですが、フルトンが後半落ちてくればおもしろいですね。
4R、フルトンは思ったより足は使わず、レオの突進を受け止めています。接近戦でもやれる自信があるからでしょう。ここで打ち勝てないとレオはキツい。
5R、変わらず、レオは自分の土俵ですがフルトンのパンチは的確。フィジカルで押し負けることもありません。的確性に劣るレオは被弾覚悟で、より手数を出して攻めなければいけませんね。
6R、近接戦闘のスペシャリストと思っていたレオ。。。近い距離でもヘッドムーブが上手いフルトンに対し、下から攻めるのは良いとして、フック系のパンチし出ない。対してフルトンは頭の位置を変えつつ、ボディから上へのアッパーを多用。
これがしっかりとヒットを奪い、レオはこのままではジリ貧。フルトンが落ちるの待ちか?
7R、接近戦でフルトンが良いもう一つの理由は、肩の使い方ですね。相手に対して正面に構えるレオは、真ん中が空いてしまいますが、肩で押していくフルトンにはそれがありません。これは勉強になる接近戦。
8R、開始直後は大きく下がり、違う戦い方を選択したように思えたフルトンでしたが、やはりすぐに接近戦。後半にはレオをロープに詰め、ここでもやはり右アッパーが良い。レオはこれを外さなければいけません。
9R、いつもと違う戦い方でやはりフルトンは疲れたのか、このラウンドはスタンスを広く取ってジャブを多用。近づいてはクリンチ。押し込んでアッパー。中間距離ではレオは為す術なし。。。
10Rも展開は変わらず。11Rもフルトンのジャブが冴えわたります。一縷の望みは、もみ合いになったときにレオのビッグパンチが当たることですが、レオはもともと連打型のファイターであり、一発の破壊力にはあまり期待できません。フルトンももっと落ちるかと思いましたが、全然落ちませんね。
インターバル中、先ほど試合を終えたWBA暫定王者ライース・アリームが真剣な表情で見つめます。この試合の勝者と戦えればおもしろいですが、暫定王者は統一戦の権限ははないはずです。金次第で認められる可能性は大いにありますが。
ラストラウンド、フルトンは距離を取りつつジャブからストレートを多用。サイドへのステップも良く、レオが捕まえられるイメージが湧きません。
接近しっとしても、フルトンの頭の位置、肩の使い方は上手く、フルトンは自分の右アッパーを当てられるポジショニング。
判定は3-0でフルトンを支持。
ステファン・フルトンの12R判定勝利。
フルトンは意外にも接近戦も上手かった!離れてフルトン、くっついてレオという予想でしたが、接近戦でも上回っているように見えましたね。
おそらく、フルトン陣営としては離れて戦いたかったと思われますが、レオのプレスが強かったのと、接近戦でも十二分に戦えると判断しての作戦変更だったと思いますし、その場合の訓練も積んでいたのでしょう。
それに対してレオは、無策すぎました。
接近すれば勝てるだろうと踏んでいたのか、自分の土俵で完全敗北。特にアッパーをもらいすぎたのは、今後、修正しなければいけない点でしょう。
フルトン、お見事!
スーパーバンタム級という、日本人が絡みそうな階級で、非常に負けにくい、強い王者が誕生しましたね。
離れても近くでも戦える万能型、およそ穴が少ない王者です。
さほどパワフルではないのが唯一の救いではありますが、序盤、あのスピードついていけなかった場合は終盤までペースを握られてしまうでしょう。
スーパーバンタム級でナンバーワンのボクサーは誰なのか??現在のところは混戦模様、つまりはここからが非常に楽しみですね!
↓スーパーバンタム級の過去記事です。
そして日本のスーパーバンタム級でも楽しみな一戦が。