エストラーダvsロマゴンをメインとしたDAZN興行観戦記の続きです。
激アツ階級、スーパーフライ級の頂上決戦!
ライトフライ級で対戦して以来、8年、前戦ではロマゴンが僅差の判定勝利を得ています。
それからの道のりは、両者ともに平坦とはいえなかったものの、勢いとしてはエストラーダに分がありそう。
ロマゴンはやはりスーパーフライでは小さく、エストラーダは今やスーパーフライにマッチしている印象です。
ただ、個人的には日本に馴染みの深い、礼儀正しい好漢ロマゴンに頑張ってもらいたい。
そしてこのエストラーダvsロマゴンに先立ち、シーサケット・ソールンビサイ(タイ)が世界前哨戦(この勝者への挑戦者決定戦)に勝利。ただ、相手のクワンタイ・シスモーゼン(タイ)とはミスマッチ感も甚だしかったですね。
↓観戦記
ちなみにこのメインの前、マービン・ハグラーへの10カウントが鳴らされます。本当に亡くなってしまったんですね。。。信じたくは、ありません。
↓プレビュー記事
WBAスーパー・WBC世界スーパーフライ級王座統一戦
ファン・フランシス・エストラーダ(メキシコ)44戦41勝(28KO)3敗
vs
ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)52戦50勝(41KO)2敗
WBC王者、エストラーダとWBAスーパー王者、ロマゴンとの王座統一戦。ミニマム級、ライトフライ級、フライ級、スーパーフライ級の4階級を制覇したロマゴンも、ここまで統一戦の機会には恵まれませんでした。
52戦というキャリアを経て、ようやくたどりついた統一戦の舞台で、勝利をもぎ取れるか。
そしてエストラーダ、今やリングマガジンのPFPランキングのトップ10に入るボクサーに成長しました。これに勝てば、アンカハスや井岡との他団体統一戦を希望、それが叶わなければバンタムに上げるという話。
夢見るふたりが雌雄を決する、大注目のビッグマッチがゴング!
やはり適正階級に見えるエストラーダの方が身体が締まって見えます。ロマゴンは明らかにサイズで劣ります。
初回、エストラーダのハンドスピードは速く、キビキビとした動きで調子の良さを伺わせます。ロマゴンはエストラーダのリードブローに阻まれ、距離を詰めてのいつものコンビネーションが出しづらそうな雰囲気。
もしかするとこの8年の歳月は、ふたりの拮抗したボクサーにとって天と地の差があったのではないだろうか、とも思う立ち上がり。
2R、エストラーダは俄然戦いやすくなったか、プレスを強めます。エストラーダが先にパンチを繰り出し、サークリングしてまたプレス。ロマゴンがガードを固めると、空いているスペースを見つけて的確にパンチを放つ姿は、やはりPFPランカー。
しかし、このラウンドの中盤からロマゴンは反撃、前に出ながら流れるようなコンビネーションを披露。ようやくエンジンがかかってきたロマゴン、エストラーダをのけぞらせます。
そしていつの間にやらプレスをかけて前に出るのはロマゴン、エストラーダは若干下がり気味になっていきます。
3R、ロマゴンがプレスをかけ、エストラーダが回りながら応戦するという展開が続きます。ロマゴンのコンビネーションはやはり素晴らしく、上下の打ち分けも見事。
エストラーダのコンビネーションも速く、そして力強いです。特に左ボディから顔面へのコンビネーションは非常にスムーズ。
終盤、エストラーダの左に合わせて右を決めたロマゴン、試合は極上のクロスファイトへ発展していきます。
4R、ロマゴンはよりプレスを強めた感じがします。ガードを固めてにじり寄り、後少しの距離から鋭い踏み込みでエストラーダを襲います。
ロマゴンは前傾して身体を前に倒し、エストラーダが打ってきたところをガードしてその後打ち返します。そこが非常にスムーズなコンビネーションなので、打ち終わりを狙われたエストラーダは被弾し、下がります。
加えて、ロマゴンはボディムーブが非常にスムーズ、身体を左に倒した時に右ガードをしっかり上げておいたり、エストラーダにガードの上を打たせる体制をつくっているところが素晴らしい。
対してエストラーダはボディムーブも使いますが主にはガードと、パーリング。ポジションによってグローブの位置を変え、こちらも相手の打つスペースを誘導し、ロマゴンが右ストレートしか打てない体制のときは自分の左顎の位置に右グローブを置き、それをパーリングして打ち返します。
ともに被弾はあるものの、耐久力もあり、ディフェンスも良い。
オフェンス面では、エストラーダの方がパンチのパワー、スピードともに優れ、迫力のあるパンチを放っていく分ややモーションが大きい。ただ、ヒットした時の印象はでかいかもしれません。
ロマゴンは、非常にコンパクトなパンチでコンビネーションを打つため、相手にとっては本当に次から次へと拳が飛んでくるイメージかもしれません。左が当たった瞬間には次の右パンチも当たっている、そんなイメージです。
ロマゴンはハンドスピードで負けているエストラーダに対して、ノーモーションのコンビネーションで対抗しています。
ディフェンスは、というと常に頭の位置を変えているロマゴンの方が優れているように見えます。
しかし、やはりエストラーダとロマゴンとの間にはパワー差、そしてフィジカルの強さの差があります。同じ数だけパンチを受ければ、ロマゴンの方が見栄えが悪くなってしまうように見えるのは致し方のないことかもしれません。
とか思っていればあっという間に8R、ともにビッグパンチを当てており、これは今後が心配になるような大激闘。
インターバルで映る観客は思いっきりマスクを顎にかけており、アメリカのゆるさを感じますね。
8Rも超危険な距離での打撃戦。途中、非公式の採点は67-66でロマゴンと出ていますが、互角、というところでは妥当でしょう。私は採点する気は全くありませんが。
クリーンヒットはロマゴンの方が多いように思います。ロマゴンは、パンチの当て方、セレクトがやはり非常に上手い。
9R、ロマゴンはエストラーダの右ストレートをガードしてもふっ飛ばされ気味になるので、やや見栄えはよくないかもしれません。ただ、ロマゴンの上体を前に置いて、誘って打たせたのをかわして攻撃するというパターン、そしてエストラーダが一息ついたところで攻め込むタイミングは素晴らしく、この技術で身体的強さで劣る部分を見事にカバー。
10R、サイドへサイドへ回っていこうとするエストラーダに対して、安易に隙の多いフックを振り回さず、ストレートで追いかけるロマゴン。ここまでの打撃戦ながら、ロマゴンのテクニックはやはり素晴らしい。
エストラーダも変わらず旺盛な手数を出し、要所でパワーパンチを叩き込み、攻勢をアピール。この試合、採点しながら見ているファンはもう辛くなっているのではないでしょうか。
ポイントなんて、もうわかりません。
11R、ロマゴンはシーサケットにノックアウト負けをくらったことが尾を引いて、タフな印象は少ない。ただ、この一戦、ロマゴンはエストラーダのハードパンチをいくつも受けつつも、大きく効いたそぶりを見せていません。
これには、彼の上体の動きが肝になっているかもしれません。若干、パンチの威力を逃しているように見えます。足で踏ん張らず、常に頭を(体ごと)振りつつ、ダメージを逃がす。ここまでにロマゴンが52戦も戦えたのは、こういうダメージを溜めないディフェンステクニックも大きそう。だからこそ、シーサケットは相性が悪いと言わざるを得ません。
ラストラウンド。私のイメージでは、ここまでややロマゴンが上回っている印象。
ただ、エストラーダのパンチはまだ怖く、ロマゴンのパンチではエストラーダを倒せそうにない、そんな印象もあります。
結局の所拮抗したこの一戦は、最後のラウンドを獲った方に勝利の女神がほほえみそうな予感がします。
最終ラウンドだけにバチバチの打ち合い。両者一歩も引きません。
手数も多く、もうこれは最高の4回戦を見ているような気分。
終盤、ここで打ち勝ったロマゴン!エストラーダは下がるというより下がらされ、苦しい!
しかしこの危機をエストラーダはストレートのパンチを連打することで免れ、最後のゴングを聞きました。
終了後、ともに勝利をアピールした両者。採点は割れそうですが、果たして。
115-113、ロマゴン。
117-111、エストラーダ。117-111???思わずここでちょっと巻き戻し、もう一度聞いても117-111。
嫌な予感しかしない最後の採点は、115-113、エストラーダ。
スプリットの判定で、エストラーダの勝利、エストラーダ、見事2冠を統一!
私の見た感じでは、ロマゴンの勝利が妥当かと思われましたが、エストラーダの僅差スプリット勝利ならまだ納得できる範囲ではあります。
どうしても私はロマゴン贔屓で見てしまった感があるので。
117-111はいただけないな、と思っていたらやはり皆さんそうですよね。詳しく採点しながら見たわけではないので、僅差のラウンドを全部エストラーダに振るとそうなるのかな?
ともあれ、エストラーダ、おめでとう。素晴らしい戦いでした。
ロマゴンは敗れて涙。。。。これは非常に切ない。
かつて、ロマゴンの復帰戦を見ました。日本が大好き、日本に感謝していると言ってくれたチョコラティーとは、興味トランクスのベストラインに日の丸をつけて戦ってくれました。
スーパーフライ級においては、スピード、パワーとしてはエストラーダに劣るものの、そのファイティングスピリッツ、そしてテクニックでは上回り、互角以上の戦いを演じてくれました。
コンピューター集計ではロマゴン391発、エストラーダ314発とヒット数でエストラーダを大きく上回っています。私の見ていた通り、クリーンヒットはロマゴンが上回っていました。
判定が盗まれたか、というとそうではないかもしれません。コンピューター集計はコンピューター集計であり、絶対的なものではありません。
現地、特にリングサイドで見るのと映像で見るのに大きな差がある可能性がある、とも理解はしています。
それでもなお、やはりロマゴンに勝ってもらいたかったし、勝ちでよかった試合だとも思います。
この勝者はシーサケットの挑戦を受ける。。。エストラーダvsシーサケットでは、昨日今日の試合を見れば差が開いているかもしれません。
ロマゴンについては、おそらく引退論も多くあることでしょうが、続けるか続けないかはロマゴン次第。もし続けるのであれば、そしてもし可能であるならば、もしこの判定が物議を醸すならば、ラバーマッチが見たい。
ロマゴンももう33歳、残された時間は、いずれにしろ、少ない。
↓アンダーカードで行われた、京口紘人のアメリカデビュー戦!!!