週末のファイト。
DAZNで放映されたモナコ、モンテカルロのボクシング興行。この興行は非常に楽しみではありますが、あんまり話題にはなっていませんね。
モンテカルロは人口16,407人(Wikipediaより)ということで小さな街ですが、カジノで有名のようです。
なるほどDAZNの映像を見ても、煌びやかなシャンデリア、小さな会場、ここはおそらくカジノホテルの1会場なのでしょう。
その分、集客や観客の盛り上がりには期待できず、原資もおそらくはカジノホテル側。
このモンテカルロでの戦いは、メインイベントに尾川堅一(帝拳)を破って王者となったジョー・コルディナ(イギリス)、セミファイナルには寺地拳四朗(BMB)の対抗王者シベナチ・ノンシンガ(南アフリカ)が登場するという、日本のボクシングファンにとっても注目の興行です。
ということで今回のブログは、モンテカルロ興行の観戦記。
11/4(日本時間11/5)モナコ・モンテカルロ
IBF世界ライトフライ級タイトルマッチ
シベナチ・ノンシンガ(南アフリカ)12勝(9KO)無敗
vs
アドリアン・クリエル(メキシコ)23勝(4KO)4敗1分
初回、プレスをかけるのはクリエル。メキシコ人らしいプレッシャーファイターであるクリエル、KO率こそ低いですが、想像以上に力強いスイング。赤いレイジェスのクリエルは頭を振って前進、プレスをかけていきますが、ノンシンガは鋭く長いジャブ、サイドに回ってのコンビネーション。
クリエルのやるべきことは明確。とにかく距離を詰めていかなければ話になりません。
2R、クリエルはかなりの手数を伴って前進。これを12Rにわたり続けるスタミナを有しているのでしょうか。このしつこい前進と手数に、ノンシンガは詰められてブロッキングを強いられる場面もありますね。
そして1分過ぎ、クリエルの右クロスがノンシンガにヒット、これでなんとノンシンガがダウン!!!
しかもこれでロープに頭を打ちつけたノンシンガ、しばらく微動だにせず、レフェリーがカウント途中で試合をストップ!!!
スロー映像が流れますが、絵に描いたようなクロスカウンター。ノンシンガのジャブの打ち終わりにジャストミート、倒れたノンシンガがロープに後頭部を打ちつけ。。。
なんともあっけない幕切れ。
シベナチ・ノンシンガ、ライトフライ級において寺地拳四朗のラスボスになってくれる存在だと思っていました。
今回は相手のKO率の低さを見て気持ちが入っていなかったのか、油断なのか、ここ最近何度も続いている、序盤のあっという間のKO劇。クリエルは値千金のビッグアップセット、ここに矢吹正道(緑)が挑戦できるとするならば、かなりの高確率で王座返り咲きとなるのではないでしょうか。
それにしてもノンシンガは無念の初黒星。これだからボクシングは面白い。
IBF世界スーパーフェザー級タイトルマッチ
ジョー・コルディナ(イギリス)16勝(9KO)無敗
vs
エドワード・バスケス(アメリカ)15勝(3KO)1敗
さて、ここはセミファイナルのようにはいかず、コルディナに順当に勝利しておいてもらいたい。やはりこのようなカジノホテルの会場だと観客数の少なさから、会場の盛り上がりには欠けますね。観客的にはリングがものすごく近くで良いかもしれませんが。
挑戦者バスケスのKO率の低さは気になりますが、セミファイナルでも見た通り、あまり関係がないかもしれません。挑戦者というのは、タイトルマッチでの実力は3割り増しです。
初回、バスケスがプレス。コルディナはさほど下がることはなく鋭いジャブを飛ばすと、バスケスはなかなかインサイドに入るタイミングを窺えずにいます。
中盤に入ると逆にコルディナがプレスをかける展開、非常にテクニカルな長い左ボディをお見舞いしています。
ノンシンガはプレスをかけられるとそのプレスから逃れるようにステップを踏みましたが、コルディナはカウンターの準備をしてそのプレスを受け止め、打ち合いを辞さないというスタンスを見せています。
2R、リング中央を陣取るのはコルディナ。その周りを回るバスケスは、突然スイッチが入ったように手数を出して攻め入ります。この連打はなかなか止まらず、コルディナはブロッキングでしのぎますが反撃のタイミングを逸しています。
連打時、異常なくらいに止まらないバスケスですが、その間隙を塗ってコルディナもコンビネーションでリターン、すぐさま修正しています。
試合は当然ながら打撃戦に突入。コルディナにとって決して得意な展開ではないと思います。これは、カウンターパンチャーであるコルディナに対し、とにかくパンチをつないでカウンターを取らせないようにするというバスケスの作戦なのでしょう。
3R、やはりリング中央を陣取るのはコルディナであり、いずれか一方が攻めれば手数の多い打撃戦に突入です。どちらも打たれっぱなしになる時間は訪れず、単発になることもありませんね。
後半、コルディナは技ありの左フックカウンター、ちょっと捕まえきれないバスケスは前進してプレス。少しずつコルディナペースになってきたか。
4R、強い踏み込みを見せるとカウンターを取られてしまう可能性が大きい、と感じているであろうバスケスは、ジリジリとプレス。距離を詰めるとステップでアングルを変えつつ、連続的に攻撃しています。これは見事なコルディナ対策。
しかし「ウェールズの魔法使い」コルディナのパンチは多彩であり、中盤にはアッパーカットをヒットしてバスケスの動きを止めると、そこからラッシュ。
この小気味よいラッシュを懸命に上体を振ってやり過ごしたバスケスですが、コルディナは低く入ってくるこのバスケスに対し、アッパーという一つの突破口を見つけたかもしれません。
5R、ここでバスケスはチャージ。体で押していきます。これは良い判断に見えます。
中間距離ではコルディナの速いジャブ、ストレートでなかなか近づけないバスケスですが、一度近づくと旺盛な手数で押していきます。コルディナもカウンターを準備していますが、この早い展開のなかで当てるのは容易なことではありません。
6R、前半はコルディナが比較的ステップワークを使い、ストレートの距離でバスケスにヒットを重ねます。中盤に入ると距離が詰まりますが、ここでもコルディナは右ストレートをヒットしています。
7R、プレスをかけるのはコルディナ、バスケスはちょっと入るタイミングを逸しているようです。一気に距離を詰めるというスタイルは、そのタイミングでカウンターを取るのが得意なコルディナに対して良い戦法とは言えません。このラウンドはコルディナが距離をキープして戦っているように見えました。
8R、セコンドからの指示か、それとも前ラウンドは休むラウンドとしたのか、開始早々にバスケスがチャージ。このチャージをしのいだコルディナはその後距離をキープして中間距離からコンビネーションを打ち込みます。
その攻撃の後はまたバスケスが距離を詰めて旺盛な手数で攻め入る、と攻守が交互に入れ替わる戦いで、後半は近い距離での打撃戦に発展。
9R、バスケスが強いプレス。コンパクトな連打に加えて、大きな右ボラードを使い始めているのが印象的で、これが当たればでかい。
やや攻め込まれる場面が増えてきたように思うコルディナ、ここはバスケスの左右のショートフックを被弾しています。
10R、後半に入ってもバスケスのプレスは衰えません。どころかさらに強くなっているように感じ、これにはコルディナも足を使ってエスケープ。
ただ、下がれば下がるほどバスケスのプレスは生きてくるため、中盤以降はコルディナも踏みとどまってリターンを返しています。
コルディナのボディは非常に効果的に思えますが、バスケスもフック、アッパーとアングルを変えて打ち込み、譲りません。
11R、バスケスのプレスに押されつつも、うまく戦うコルディナ。ただ、バスケスのガードも固く、クリーンヒットはなかなか奪えない状況です。
かといってバスケスも決定的なクリーンヒットを奪うことはできず、中間距離、接近戦でもどっちつかずの展開が続きます。互いに良い手数を出してはいるものの、大きな山場は訪れません。
ラストラウンド。トニー・べリューの採点によると、ここまでドローのようです。べリューは途中10-10のラウンドもあるようですね。私はコルディナの支配したラウンドの方が多いように思いますが。
ただ、ラストラウンドは大きな勝負のラウンドであり、自然と打ち合いに。
打ち始めたバスケスは止まらないのが非常に厄介なところですが、シャフカッツ・ラヒモフほどのパワーがあるわけではない分、コルディナも前に出て応戦。
互いに旺盛な手数で打ち合い、クリンチのほとんどないクリーンファイトは終焉を迎えます。
終了ゴングと同時に共に手を挙げて勝利をアピール、素晴らしいファイトでした。
判定は、114-114、116-112×2、2-0の判定でジョー・コルディナ。
想像以上に頑張った感じのあるエドワード・バスケス。コルディナ対策はほぼ完璧だったように思います。
前戦、ラヒモフのは入りぎわに効果的なカウンターを見舞っていたコルディナですが、手数の多いバスケスに対しては前戦のようにはいきませんでした。これでバスケスにもっとパワーがあればかなり危ない試合だったでしょう。
コルディナはパワーレス、とは思いませんが、どちらかと言うとキレとタイミングで倒すボクサー。接近戦で打ち合える近接戦闘の技術、そしてハートを保持しており、比較的何でもできる部類なのでしょうが、フィジカル勝負、タフネス勝負となると突き抜けてはいません。
ともあれ、おそらく苦手な部類の強敵、ラヒモフ、バスケスに薄氷ながらも勝利して防衛、このギリギリでも勝利を手にする能力は評価されるべきものかもしれません。
今後は統一戦線に進むのか、それともリー・ウッド(イギリス)の挑戦を受けるのか。
注目ですね。
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