信太のボクシングカフェ

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ボクシングが大好きです。大好きなボクシングをたくさんの人に見てもらいたくて、その楽しさを伝えていきたいと思います。

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【観戦記】井上尚弥vsマイケル・ダスマリナス。モンスターと、ドネアと、カシメロと。

待ちに待った、6月20日。

日本の至宝、略して「国宝」、モンスター井上尚弥の防衛戦。

2021年前半、本日を終えれば残す日本人ボクサーのビッグマッチは次週の「ロマチェンコvs中谷」のみ。日本人ボクサー全体にとっての「セミファイナル」ともいえる、井上尚弥vsマイケル・ダスマリナス、トップランク興行が始まります。

この一戦は、4団体統一を目指す井上尚弥が、IBF王座を保持するためには避けられないIBFの指名挑戦者、ダスマリナスを迎える一戦です。

 

井上尚弥には、この一戦をしっかりと乗り越えることで、自身が希望している4団体統一戦に進めることになります。並の王者、というか強い王者であっても、この指名挑戦者という部類のコンテンダーは非常にやっかいな存在ではありますが、PFP上位にランクされる井上にとっては、この指名試合ですら調整試合の域を出ません。

さて、今回のブログでは、トップランク興行、井上尚弥vsマイケル・ダスマリナスをメインに据えた、トップランク興行の観戦記です。

6/19(日本時間6/20)

フェザー級10回戦

アダム・ロペス(アメリカ)15勝(6KO)2敗

vs

アイザック・ドグボエ(ガーナ)21勝(15KO)2敗

ロペスの2敗は、ステファン・フルトンに1-2の判定で敗れ、オスカル・バルデスからダウンを奪うも倒し返された、その2敗のみ。

対してドグボエは、かつてアズマー・ネルソンの再来とまで謳われた、ガーナの至宝。エマニュエル・ナバレッテに連敗を喫し、フェザー級で再起したドグボエは、このロペスを喰ってサバイバルできるのか。

それともロペスが、元王者を喰っていよいよ世界戦線へと乗り出すのか。

 

ウィナー・テイクス・オール、勝者が全てを得て前進し、敗者は大きく後退するサバイバルマッチ。この興行の中では、勝敗についてのみいえばこの1戦が最も興味深いですね。

初回、ドグボエがパワフルなパンチで攻め立てます。速攻型のパンチャーであるこのドグボエは、予想通りラッシュをかけ、中盤にはボディでロペスを下がらせることに成功。ドグボエはやはり回転力があり、飛び込みざまの左フックで距離を詰めると、そこから回転力のある連打。

個人的には比嘉大吾ともかぶるところがあります。ハンドスピードが速く、回転力があり、パンチを強く振る。メンタル面でやや不安を抱える、と勝手に思っているのですが、そのあたりもやや被ります。

2R、ドグボエは結構余裕が出てきたかもしれません。ロペスのパンチはしっかりと見えているようですし、ロペスはドグボエの勢いにやや押され、慎重に戦いすぎ、ドグボエへの対応もしかねています。

 

3R、ここに来て、ようやく攻めはじめたロペス。こうなると攻守が逆転しそうな雰囲気です。ロペスは良いアッパーを当て、遠い距離からしっかりとドグボエを観察。そうすると距離に苦労してしまうドグボエ。

ドグボエは先程までの勢いはどこへやら、下がりながらの戦いとなります。踏み込みの勢いもややなくなったか。

4R、そこから早くも修正してきたドグボエは、踏み込みの甘さを修正。思い切って勢いよく攻め込む姿は、1、2R同様。ただ、ロペスは非常に冷静に対処、ドグボエのパンチのスピードにとパワーに慣れ、そして下から飛んでくるようなアングルを見切っているのかもしれませんね。

対応されてしまった速効型パンチャー、ドグボエは、これにどのように上回っていけるのか。

ドグボエは、対応されても愚直に攻め続けられているところは良いところ。

5R、このラウンドもドグボエが勢いよく飛び出し、近めの距離では左フックをヒット。中間距離ではロペスのジャブが良い。

 

後半、お互いにサウスポースタンスにスイッチするという場面がありましたが、両者の良いところが出たラウンドでもありました。

6R、折返し。ここまでは、3Rに一度ロペスのペースとなったものの、そこからメンタルを立て直し、盛り返してきたドグボエにポイントが流れているはずです。

そろそろ勝負をかけなければならないロペス、強いパンチを放ち、最小のバックステップでかわす。前半にはボディを効かせ、後半もコンビネーションを打っていけます。

ロペスは余り動き回らず、プレスをかけつつ最小の動きでかわし、ストレートを主体としたコンビネーションを当てられると調子が上がっていきますね。

7R、早々にアッパーをヒットしたドグボエは、その後ジャブで攻め込みます。そこからまたドグボエがフックをヒットできるようになり、ロペスのジャブに対して右オーバーハンドをあわせます。

この一戦、攻守交代というのが目まぐるしい。どちらもペースをしっかりとは渡さず、かといって奪えず、最後まで気の抜けない好勝負です。

 

良いパンチを運良く当てた方が、その後の戦いを優位に進められるという、ある種ラウンド競技であるボクシングらしい展開。

8R、先に仕掛けるのはドグボエ。その後ロペスが反撃し、ドグボエをコーナーに詰めますが、ドグボエのボディムーブも良く、クリーンヒットは少なめです。

ロペスはその後、アッパーをヒット、プレスをかけ続け、ドグボエは下がるという展開。

速攻型、前半に強いドグボエ、後半に入っても大きく崩れることなくがんばっていますね。ロペスに攻められますが、ドグボエも右カウンターをヒット。

9R、ここもドグボエが先手。体格で勝るロペスに対し、向かっていける勇気を称賛したい。ロペスもここは踏ん張りどころ、身体で押してドグボエの前進を阻み、更にドグボエを下がらせます。

 

近接戦闘でもロペスが細かな連打、ドグボエは中盤にはやや疲れを見せます。後半に、ロペスはドグボエをコーナーに追い詰めますが、ここでカウンターを浴びてしまう等、どちらとしても一方的な展開にはなりません。

ラストラウンド、ここはもう死力を尽くすべきところ。どちらもこのラウンドは取りたいところでしょう。

ドグボエが勢いよく出ていきますが、やはり中盤からロペスのスタミナ、コンパクトなパンチが上回り、ドグボエが下がらせられる展開。ロペスのアッパーはドグボエに有効で、ドグボエはスタミナも厳しくなってきたか相手にもたれ掛かりながらも手を出します。

ドグボエ、精神的にどうかとも思っていましたが、しっかりと勝利を諦めないハートの強さを有しています。バックステップで少し距離が空けば、右カウンターを打ち込むことができます。超接近戦よりも、やや距離が空いた方が闘いやすいドグボエ、中間距離か、超接近戦で戦えるロペス。

 

そしてこの激闘は判定へともつれ込みました。

ジャッジは95-95、97-93、96-94、2-0の判定でアイザック・ドグボエの勝利を支持。

ドグボエは比嘉大吾と被る。ここ、フェザー級で、ドグボエがこうしてロペスに競り勝ったことは、身体が小さくても、階級の壁にぶつかり、かつてのパワーを、フィジカルの優位性を示せなくとも、戦っていけるということだと思います。

このアダム・ロペスという好ボクサーをかろうじて撃退したドグボエ、このフェザー級でも王座を獲得してくれることを願います。

ここでShowtimeのチャーロvsモンティエルに移行。両方同時に見ていて、チャーロvsモンティエルがおもしろくなってきてしまったので。。。セミは録画でみます。

 

 

WBAスーパー・IBF世界バンタム級統一タイトルマッチ

井上尚弥(大橋)20勝(17KO)無敗

vs

マイケル・ダスマリナス(フィリピン)30勝(20KO)2敗1分

井上尚弥。もう、色々な言葉は必要ありません。

モンスターの心配事は、そのコンディションのみ。前戦、マロニー戦では足を攣りかけました。しかし今回、長期戦にはなりそうになく、正直その前に終わってしまうと思います。

その上今回は、前戦のマロニー戦よりも調子は良さそう。計量時の頬のこけ具合、肌の色ツヤ、筋肉のハリの良さを感じますね。

ただ、その後のリカバリーで失敗してしまわないとも限りません。

前回のラスベガスでの経験を活かし、自身のアプリで語っているところによるとミキサーを購入して、リカバリーでスムージーを飲む、とのこと。今回はその辺りもぬかりはなさそうです。

 

IBFのトップコンテンダーを迎え、勝敗ではなく、そのパフォーマンスにこそ注目の集まる怪物王者、井上尚弥の防衛戦がスタート。

初回、ダスマリナスは奇襲をかけて来ませんでした。早々にダスマリナスのジャブに左をあわせようとした井上。体全体でフェイントをかけ、プレッシャーをかけていきます。

開始1分ほどのところで、ダスマリナスの右に左フックのカウンターがかすめます。これで警戒したダスマリナス、右ガードをしっかりと上げ、踏み込んだ強いジャブが打てなくなってしまったダスマリナス。

ガードを高く上げた分、パンチが出づらくなったダスマリナスに対して、井上は元々リラックスしており、パヤノ戦同様に、内側に踏み込んでのジャブ等を放っていき、早くも楽勝ムード。

 

2R、井上の左フックは速く、危険。ダスマリナスはとにかくステップを使ってまわり、その攻めも中途半端になってしまいます。ややビビりながらコンビネーションを出すダスマリナス、「勇気を持って」「がんばって」ワンツーを打ちます。ただ一歩踏み込むだけでも、相当な勇気と覚悟を持って行わなければいけないのは、かなりのディスアドバンテージです。

対して井上は余裕、右ストレートで下がらせ、右アッパーから左ボディのコンビネーション。

レバーの付近をこすったようなボディスナッチ。これは、あのドラマ・イン・サイタマ、ノニト・ドネアからノックダウンを奪ったものと同じ左ボディ。

これが効いてしまい、たまらずダウンしたダスマリナスは、たちあがるもののリングを大きく使って逃げの一手。井上は焦らず騒がず、ジリジリとしたプレスから終盤にもまた左ボディをヒット。完全にボディでのノックアウトを狙い始めた井上、もう次のラウンドで決まるでしょう。

 

ラウンド中のスロー再生。右アッパーを打った後、ダスマリナスは急いで右ガードを上げ、左フックに備えようとしています。そこで丁度空いたレバーの位置に、井上の左ボディが吸い込まれるようにヒットするという、理想的なボディ。

3R、井上は強い右を振って、明らかに倒すことを意識。ガードを下げてダスマリナスが打ってきやすくした上で、相手が打ってくればステップで外し、強いパンチを打ち込みます。

ダスマリナスのジャブもいくつか浅くヒットしますが、もうこの状態では効くことすらないでしょう。この「詰め作業」において、多少の被弾をしながらもフィニッシュを狙う姿は、かつてのジェイミー・マクドネル戦で「雑だった」と言われた詰めにも共通しますが、おそらく相手の力を見切ってのこと。大事には至りません。

逃げまくるダスマリナスを右で止めて左ボディ。残り40秒のところでまたも右からの左ボディ、ダスマリナスはダウン!今度は突き刺すような左ボディ、完全にレバーに入りました。終わってもおかしくないダウンでしたが、根性を見せたダスマリナスは立ち上がります。

 

しかし、立ち上がったダスマリナスを待っていたのは、またも残忍な左ボディブロー。左ボディをガードしていたダスマリナスをしっかりと見定め、そのガードの腕の外側から左ボディを入れるという、もう鬼です。

ここでさすがにレフェリーは試合を止め、井上のTKO勝利が決まりました。勝った後はゴジラのテーマ。

試合後のインタビューを聞いた限りでは、この左ボディで倒そう、という明確な作戦ではなかったようですが、おそらくいくつもある作戦の一つだったことが伺えます。

おそらくあのジャブに合わせた左フックは、練習していたものでしょう。そしてサウスポー相手にまっすぐ放つ右ストレートも、アングル等を今回の試合のために修正したものだったと思います。

左ボディは、WOWOWの解説でも村田諒太が言っていましたが、まさにオマール・ナルバエス戦のセルフオマージュのようなコンビネーションの左ボディ。サウスポーに左ボディを入れるのは、近い距離にあるがために簡単に思われるかもしれませんが、リターンで顔面を打たれる可能性も非常に高く、危険なパンチでもあります。

それを易易と、しかも狙ったところに打ち込めるモンスターはやはり素晴らしい。

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Naoya Inoue uses body shots to stop Michael Dasmarinas in 3より

 

また、右アッパーから左ボディ(また左フック)というのは、ボクシング経験者なら一度は接近戦の練習でやったことのあるコンビネーションだと思います。基本中の基本のコンビネーションです。

その基本的なコンビネーションを、世界のトップの中のトップ、その中の本当のトップボクサーとして使える井上尚弥は、本当に基礎ボクシングの権化、ボクシングの歴史そのものだと思います。

思えば、エマニュエル・ロドリゲスから1度目のダウンを奪ったのも、この右アッパーから左フック(これは顔面)のコンビネーション。この井上得意のコンビネーションは、はじめたばかりのボクサーから、その精度こそ違えど世界のトップボクサーまで使える、良いコンビネーションですね。私も現役時代、よく使っていました。

ともあれ、試合後のインタビューで、「この程度で両手を挙げて喜んではいられない」と語った井上尚弥は、既に見据えているところが日本の歴代世界王者をしても遥か高み。目指すはバンタム級4団体制覇のみ、そしてその野望は、もしかすると今年中に叶うのかもしれません。

 

そもそも、「4団体統一を目指す」ことすら、並の世界王者では不可能に近い。世界から実力を認められること、もしくは世界中から絶大な人気を誇ることがなければ、おそらくプロモーターも動かないでしょう。

井上が4団体統一を目指せる理由としては、おそらく前者、世界から実力を認められ、リング誌のPFPランク2位にランクされることが一つの理由でしょう。そのために、おそらく周りが協力的になる。

ところで、Twitterのフォロワーさんで非常に興味深いデータを載せてくれた方が。

井上尚弥、21戦で今回の3度のダウンを含め、奪取したダウンは38回(!!)。そのうち、左ボディで奪ったダウンは16回(!!!)。とんでもないです。怪物です。

そして、21試合の中で、唯一、ダウンを奪われていないのは元ライトフライ級の統一王者、田口良一氏のみ、というのもすごいですね。

 

さて、まだオフィシャルの発表ではないかもしれませんが、8/14(日本時間8/15)に行われる予定だったジョンリエル・カシメロvsギジェルモ・リゴンドーという一戦から、リゴンドーが降ろされ、そこにノニト・ドネアが入ってくるそうです。

boxingcafe.hatenablog.com

とすると、実現するのは下記のカード。

8/14(日本時間8/15)

WBC・WBO世界バンタム級統一タイトルマッチ

ノニト・ドネアvsジョンリエル・カシメロ

こうなってくると、2団体統一王者である井上尚弥と、同じく2団体統一王者であるノニト・ドネア(という希望)が、年末、日本で再戦という可能性が非常に高くなってきます。

WOWOWのインタビューでは、会場に来ていたドネア、カシメロ双方にインタビューをしてくれていて、それぞれがドネア、カシメロとの一戦を認める発言をしています。

 

なので8月には、井上の他に2団体統一王者が誕生し、それがドネアでも、たとえカシメロだったとしても、いずれにしろ井上との対戦を望み、井上もそれを望んでいます。

プロモーター云々の話は勿論ありますが、これが締結しない理由はないでしょう。

そして日程としても、かねてから話題となっている12/28、ゲンナディ・ゴロフキンvs村田諒太というビッグマッチがある予定であり、村田と井上はともにフジボクシング組、同日開催になるのに何の障壁もありません。

どちらがメインを、という話は物議を醸す可能性もありますが(おそらくダブルメインと銘打つでしょうが)、この12/28という日程で、GGGvs村田、井上vsドネアorカシメロというマッチアップが組まれるのであれば、マイク・タイソン以来の東京ドーム開催は全く夢ではありません。50,000人入れば、チケット争奪戦にはならないでしょうし。

ただ、これで本当にかわいそうなのはリゴンドー。試合枯れが続くリゴンドーは、またここでも割を喰ってしまいますね。そして年末という日程であれば、井上は次戦が年末となってしまうでしょう。

その間に、例えば9月にもう一戦挟む、というと少し現実的ではない気がします。せめてこの試合が4月くらいで、ドネアvsウバーリもそれぐらいだったとすれば、その間に井上vsリゴンドーなんていうマッチアップもあったかもしれませんが。

 

ともあれ、フジボクシングを見ればまた村田諒太が出ていることに驚きつつ、今回はまた、我々の予想を超える強さを見せてくれた井上尚弥の今後に期待。あと、香川照之氏の言った、「バンタム級であと2戦」には賛成ですが、その相手はドネアとカシメロではなく、「ドネアvsカシメロの勝者」と、「ギジェルモ・リゴンドー」であってほしい、と思いますね。4団体統一を果たした井上の防衛戦が、リゴンドーだったらそれはそれでリゴンドーも報われます。

未だ、井上はバンタムに上げる前、ロマゴンやエストラーダとやらなかった、と言っている海外のボクシングファンもいるようで、できることなら全員倒してスーパーバンタムに行ってもらいたい、と思ってしまいます。

そして、日本ボクシング界、2021年上半期、メインイベントは来週。

当代を代表するボクサー、ワシル・ロマチェンコに挑む中谷正義を、全力で応援しましょう。

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