まだかまだかと待ち望んだ正式発表。
WBAスーパー・IBF世界ミドル級タイトルマッチ、GGG(トリプルジー)ことゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)vs村田諒太(帝拳)。
日本ボクシング史上空前のビッグマッチと言っても良いこの一戦の正式発表がありました。
兼ねてから噂のあったこの一戦は、当初12月28日とされ、場所は神戸のノエビアスタジアム。その後12月29日、さいたまスーパーアリーナに変わり、なかなか出ない正式発表を待ちつつ過ごす日々が続きました。
ただ、この一戦は噂レベル以上に進行しており、最も権威あるボクシングメディアであるThe RingのHPに試合が掲載されていたりしており、この試合が行われるという確信はおそらくファンみんなにあったことでしょう。正式発表を待つ間、発表された井上尚弥vsアラン・ディパエンの「調整試合」、次々と発表される海外ビッグマッチの数々を尻目に、心配するのはチケットの値段と、アンダーカードの内容。
11/12(金)時点で、未だその部分の発表はありませんが、随時発表とのことなので、楽しみにしつつ、まずはゲンナディ・ゴロフキンというボクサーの偉大さ、アンダーカードの期待について書いていきたいと思います。
ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)41勝(36KO)1敗1分
カザフスタンは、ロシア南方に位置する旧ソ連の国であり、ボクシングは当然強豪国。
ゴロフキンのアマチュアボクシングの戦績は345勝5敗、と言われており(記録上、8敗は喫しており、定かではないとのこと)、2003年の世界ボクシング選手権で優勝、そして2004年のアテネオリンピックでは銀メダルを獲得しています。
村田はオリンピックで金メダルを取りましたが、世界選手権は最高で銀メダル。アマチュアボクシング、世界最高峰の戦いでの実績という面においては、互角。
2006年にプロデビューするもしばらくは不遇、出身地柄、この地域のボクサーはまだまだ冷遇されることが多かった時代です。ドイツのプロモーターと契約したものの、2010年には契約解除、K2プロモーションと契約します。
このK2プロモーションは、クリチコブラザーズのプロモーションであり、ここからゴロフキンのキャリアは大きく飛躍できることになります。
まずは2010年8月にWBA暫定王座決定戦を初回KOで勝ち取ると、そこからIBO王座やWBC王座、IBF王座を吸収しながらの17連続KO防衛を記録しています。
この17連続KO防衛というのは、世界王座における連続KO防衛のタイ記録。ウィルフレド・ゴメス(プエルトリコ)の持つ記録を抜く事は叶いませんでしたが、ゴメスと同じく最多記録。
17度連続で防衛するだけでも化け物のような強さを必要とするにも関わらず、ミドル級という人気階級で、タイトルを増やしながらというのは本当に化け物。
この17連続KO防衛の中に、八王子中屋ジム所属の渕上誠(3RTKO)、当時グリーンツダジム所属の石田順裕(3RTKO)も含まれます。
この17連続KO防衛という偉業の途中からPFPランキング上位の常連となり、当時はローマン・ゴンザレスやワシル・ロマチェンコ、テレンス・クロフォード等々とトップを争いました。
最初に手に入れた王座、WBAの18度目となる防衛戦でダニエル・ジェイコブスを相手に久々の判定勝利で防衛。
その後、今をときめくPFPトップ、サウル「カネロ」アルバレスとの一戦を迎える事になるのです。
ゴロフキンは、そのファイトスタイル、そしてその圧倒的な強さから、当然非常に人気の高いボクサーです。
しかし、カザフスタンという中央アジアの出身であり、アメリカにファンベースを持たないゴロフキンは、その人気に反してファイトマネーはそれほどではなかったようです。
やはりファイトマネーを吊り上げられるのは、アメリカやメキシコ、ボクシング人気が絶大な国のファンをベースに持ったボクサーばかり。
ゲンナディ・ゴロフキンというボクサーは、マッチメークの妙ではなく、その拳一つで地位を掴み取ったボクサー、これがおそらく日本のファンに受けている大きな事柄だと思います。
さて、このカネロ・アルバレスは、現在は「金のなる木」ですが、当時も勿論そうでした。カネロが自身に都合の良いマッチアップを続けられていたのは、絶大な人気と、それに伴い大きなお金が動くからです。
そのカネロは、スーパーウェルター級からミドル級近辺で戦っていたものの、なかなかゴロフキンを指名せず。それでもジェイコブス戦で倒せなかったゴロフキンを見て、ここがチャンスとばかりにカネロvsGGGというファン垂涎のマッチアップが決定を見たのです。
その数戦前から、ゴロフキンはディフェンス面においてパンチをもらうことが以前よりも多くなっており、衰えの指摘もいくつかはありました。それでも勝ち続けている絶対王者。
ゴロフキンとカネロは2017年9月に激突。終始ゴロフキンがプレスをかけ続け、カネロは下がりながら対応。多くのファンがゴロフキン優勢と見た試合でしたが、ジャッジは3者3様のドローで決着はつかず。カネロにつけたジャッジは118-110というありえないもので、これは批判の的となってしまいました。疑惑の判定、と言われていますが、疑惑以外の何物でもなく、これはゴロフキンの勝利で問題ありません。
村田諒太がWBA世界ミドル級レギュラー王者となったのは、この翌月、2017年10月22日、嵐の日の夜のこと。
翌年5月に挟まれた防衛戦を軽くクリアしたゴロフキンは、2018年9月、カネロとの再戦に臨みます。この再戦は2-0でカネロ、ゴロフキンはとうとう陥落。
しかしこの再戦においても、「カネロ優位に働いた」と見る向きが多く、疑惑は未だ拭えていません。
これを持って、ゴロフキンを「未だ無敗」と見るファンも多いでしょうし、村田本人も会見でそのように語っています。
その後、再起したゴロフキンは、2019年10月にセルゲイ・デレビヤンチェンコ(ウクライナ)に苦戦しながらも勝利してIBF王座に返り咲き、前戦は2020年12月にカミル・シェルメタに差を見せつけた7R勝利。
そして1年のブランクののち、日本に来てくれる事になりました。
村田諒太は、GGG戦を本気で望む
村田は熱心なボクシングファン、というかボクヲタとして知られています。その村田は、初のタイトルを獲ったあと、勝利者インタビューで「自分より強い王者がいる」と名言したことがありました。
それがゲンナディ・ゴロフキン。
キャンプをともにしたこともあるこのゴロフキンとの一戦を、村田は待ち望んできました。それがリップサービスなどではなくて、本気だったことはこれまでにも伝わってきています。
ファン目線で見て、村田とゴロフキン、戦えばどちらが優位か、というのは、間違いなくゴロフキン。
ゴロフキンは、全盛期から衰えたとはいえ、未だ世界のトップ・オブ・トップ。結局、誰も勝てていないのです。
そのゴロフキンに、ミドル級王者の中ではおそらく最も評価が低い村田諒太というボクサーが挑む、これは海外のボクシングファンからすれば滑稽に映るのかもしれません。
しかし、我々はこの村田諒太が規格外のボクサーである、いくつもの奇跡を起こしてきたボクサーであることを知っています。
↓村田諒太の軌跡
ロンドンオリンピック金メダリストの村田諒太は、世界王者になることを宿命づけられたボクサーでもありました。
戦ってきた相手には、強豪と呼ばれるボクサーはほとんどいないことも事実。
「責務」だった世界王者となったあの日、「世界最強を目指す」という「夢」を語った村田の姿は忘れられませんし、ラスベガスで完敗したあと、日本でリベンジしたあの姿も忘れる事ができません。
村田諒太のドラマは、完結編へと向かい、その最後の最後が日本、さいたまスーパーアリーナで行われる「BIG DRAMA SHOW」なのです。
もちろん勝って次につなげてもらいたい。勝とうが負けようが、村田諒太の物語は、おそらく一つの完結を見るはずです。
また近くなったらプレビュー記事にて、村田諒太の「勝ち目」については書きたいと思います。
アンダーカードはどうなるの?
これはまた随時発表されると思うのですが、今のところの候補はどうでしょうか。
中谷潤人(M.T)の登場はほぼ間違いない、と思っています。理由は中谷自身が年内にもう一試合、と望み、そして帝拳プロモーションと関わりが深い、フライ級という階級で、相手探しが比較的容易、という点からです。
京口紘人vsエステバン・ベルムデスというWBA世界ライトフライ級王座統一戦、こちらも入札期限が11/12。この12/29が試合期限に入っており、京口はキャンプを張っている事から、可能性は高いのではないでしょうか。
海外志向が強い京口ですが、村田vsGGGという超大注目興行のアンダーとなれば話は別でしょう。
最後に期待したいのは、清水聡(大橋)vsエマニュエル・ナバレッテというWBO世界フェザー級タイトルマッチ。これは確か交渉中という噂でした。
村田の盟友である清水が、ここでタイトル挑戦試合を得るならこんなにも魅惑的なアンダーカードはありません。
ちなみに、同じ帝拳ジムということでスケジュール的には無理のなさそうなホルヘ・リナレスや中谷正義の登場も期待してしまいますが、今回、ゴロフキン招聘に際し、ゴロフキンの練習場所は帝拳ジムとのこと。
ゴロフキン来日以降、帝拳ジムは村田とゴロフキンの練習時間を調整し、他の所属選手はジムでの練習を禁止する方針だとか。
なので、帝拳ジム所属選手は自身のジムで練習することができず、中谷にしてもリナレスにしても、この日に試合を組む事は実質不可能と言えると思います。
他のジムのボクサーたちが登場することになりそうですが、そのボクサーたちにとっては大注目興行のアンダーカードということでアピールの大チャンス。是非とも粒を揃えてもらいたいものです。
放送・配信
本日の発表で一番のサプライズは、この項目。
生放送はフジテレビでもなく、DAZNでもなく、なんとまさかのAmazonプライムビデオ!!
フジテレビの1時間番組でやるよりは当然良いですが、DAZNじゃないのか。。。日本ではAmazonプライムビデオ、他の地域ではDAZNでの放映で、放送時間は日本の夜だそうなので、アメリカやイギリスのプライムタイムには当然あいません。
これは注目度からして致し方のないことかもしれませんね。
Amazonプライムビデオは月額500円のストリーミングサービス。まあ、皆さん知ってますよね。まだ加入していない方は加入して待ちましょう。
プライム会員になれば、追加料金なしで見れるようです。
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これから色々宣伝していくのかな?是非とも、この試合を盛り上げる色々な映像を流してもらいたいですね。
そして願わくば、このAmazonプライムビデオがこれからもボクシング生配信の大きなプラットホームとなってもらいたいです。月額500円というのは非常に魅力的。