今朝起きたてで見たニュース。
サウル・アルバレスがゲンナディー・ゴロフキンとの第3戦を行うとの「正式発表」。
思った以上に展開が早かった。
今はまだ5月、こんなにも早く発表される試合は特に海外戦において稀です。カネロが戦う時期が決まっている事、そしてかねてから予定されていたものが元サヤになった、ということだからなのですが。
この一戦の意義は、カネロのための戦い。カネロが自信を取り戻す戦いであり、マッチルームが儲けるための戦い。それでも、ゴロフキンには大金を手にするという恩恵を受ける事になります。
カネロのために鳴るゴングは、キャリア終盤を迎えたゴロフキンのために鳴るゴングでもある。
ということで、今回のブログでは「決まってしまった」感の強いカネロvsGGGのトリロジー、その愚痴、不平、不満についてです。
9/17(日本時間9/18)開催地未定
サウル・アルバレス(メキシコ)57勝(39KO)2敗2分
vs
ゲンナディー・ゴロフキン(カザフスタン)42勝(37KO)1敗1分
開催地はまだ未定、とのことながら、アメリカのどこかの地になるのでしょう。ラスベガスか、ニューヨークか。
サウル・アルバレス=カネロは、前戦、ライトヘビー級へのチャレンジマッチでまさかの敗北。
冷静に考えれば、ウェルター級上がりのカネロが勝つ確率は低そうなものですが、スーパーミドル級での充実ぶり、ライトヘビー級戦ではセルゲイ・コバレフ(ロシア)を倒し切ったこと、そしてこれまでの数々の「ビバメヒコ判定」というカネロ優位の判定結果、これらが合わさってカネロ優位となった一戦だったのだと思います。
しかし、ドミトリー・ビボルはこれらの全てを跳ね返し、値千金となる勝利を得ました。
この試合にも、確かに「ビバメヒコ判定」は存在しました。
カネロに少しでも振れそうなラウンドは全てカネロに振られたようなイメージで、ビボルの完勝ながらも3者共に115−113という、僅差。
そこから2週間と少し、敗北を喫した側のカネロの次戦が決定、というのはいくら何でも早すぎる。
↓観戦記
とはいえ、カネロvsGGGのこのトリロジーは、もともと予定されていたものでありました。
しかしそれは、4/9に行われるGGGvs村田諒太でGGGが勝利し、そして5/8に行われるビボルvsカネロでカネロが勝利した場合のみ、とのことだったはず。
それでも尚、カネロはGGG戦を選択。
これまでもやりたい放題だったカネロは、ここでもやりたい放題ということなのでしょうか。
スーパーミドル級戦である、ということ
さて、一番の問題は、この一戦がスーパーミドル級戦である、ということです。
2006年のプロデビュー戦を160lbs(ミドル級リミット)上限の体重で戦ったゴロフキンは、ここまでずっとミドル級で戦っています。
BoxRecを確認すると、ゴロフキンがこのミドル級リミットを上回ったウェイトでリングに上がったのは過去たった3度。2008年6月のアマール・アマリ(アルジェリア)戦、同年11月のマリック・ジアラ(ベラルーシ)戦、そして2019年6月のスティーブ・ロールズ(カナダ)戦の3度です。
アマリ戦では161.25lbs、ジアラ戦では161lbs、ロールズ戦では163lbs。どれもスーパーミドル級リミットの168lbsには届かない契約体重の試合です。
アマリ戦、ジアラ戦の他にも、対戦相手が160lbsを上回っている試合はいくつか散見されましたが、ゴロフキンはそのほとんどを160lbs以内に抑えていました。このことは、現在に至るまで、ウェイト面には全く困ってこなかった、ということが言えると思います。何せプロデビュー以来、もう16年もの間、同じ体重を作り続けています。
そんな中で、168lbsという過去一番重いウェイトで戦うゴロフキン、それも相手はカネロ・アルバレス。
カネロは現在、スーパーミドル級でこそ最もパフォーマンスを発揮できると思います。
ライトヘビー級では、相手を萎縮させるほどのパワーを見せることができませんでした。それは、コバレフ戦でも、ビボル戦でも。
そして、大きくなった体はミドル級までは落とせないのでしょう。
結果、この契約ウェイトについてはカネロが断然有利、ということになってしまいます。
大人の事情
そして、この一戦が行われることになった背景には、カネロやチーム・レイノソの思惑だけでなく、大人の事情が絡んでいるであろうことも容易に想像がつき、これもまたつまらないことです。
カネロの試合の複数戦で放映権を獲得したDAZNは、もともとこのカネロvsGGG3を煽ってきた張本人。
ここは是が非でも叶えなければいけない一戦だったに違いありません。
当然、カネロがビボルに勝ってトリロジーに望む、1戦目で負けたとか2戦目でもGGGの勝ちだったとか、そういう声を払拭するために完勝を目指す、というのがベストだったはず。
しかし勝負というものは真剣勝負であり、プロモーターの思い通りに事が進むわけではありません。時に、プロモーターは進路変更を余儀なくされるはずだと思います。
しかし、DAZN、マッチルームが選択したのが、「進路変更なし」。
まだカネロとゴロフキン、それぞれに商品価値が残っているうちに、このトリロジーを組まなければならない。そんな意味不明な使命感により、この試合を進めたのではないか、と思います。
カネロvsGGGは、金になる。
そのことこそが、この二人のボクサーを完結させる重大な要素なのでしょう。
ゴロフキン。。。
非常に残念なことで、認めたくはありませんが、ゴロフキンの衰えは顕著です。
前戦、村田諒太戦では、特に序盤、その衰えを顕著に見せる場面が多かった。
村田の頑張りに水を差すつもりは当然ありませんが、ゴロフキンのあの序盤の戦いに寂しさを覚えたのは事実。
後半に行くに従い、戦いの勘を取り戻したのか、巧さを発揮したものの、あのゴツゴツとしたプレッシャー、鬼神のごときアグレッシブネスには翳りがあったことも事実。
この状態で、初めての168lbsウェイトでの試合を受けたのは、それこそゴロフキンがグローブを吊るすことを意識しているため、だとも取れます。
恩師、アベル・サンチェスと離別したゴロフキンは、確実にキャリアの終焉を迎えているし、最後のビッグマネーを稼ぐ場としてカネロ戦は悪くありません。
そして、ビボル戦だのマカブ戦だのと選択肢がたくさんあったカネロと違い、ゴロフキンが目指していたものは4年も前からカネロ戦だったはずです。つまりは、あの第二戦から、ずっとカネロを目掛けてトレーニングを積んできたはず。そこにこそ、期待をかけたい。
それでも尚、カネロが優位。
例えゴロフキンが、この試合で自身初めてのノックアウト負けを喫することになろうとも、その栄光の実績は何も傷つかないはずです。
絶対優位、カネロの懸念事項はあるか。
さて、当代随一のスター、カネロにとっては、絶対に負けられない一戦となります。
カネロはこのゴロフキン戦の後、ビボルへのリベンジへと進む、という意向のようです。
ここでもしゴロフキンに敗れるようなことがあれば、ビボルへのリベンジどころの騒ぎではなくなります。
しかも、スーパーミドル級の王者としてゴロフキンを迎えるという一戦においては、誰しもが「カネロ優位」という予想を立てることは間違いありません。
更には、このことでカネロを批判するわけではありませんが、先にも述べた「ビバメヒコ判定」がついているカネロが負ける確率は更に低い。
なので、カネロにとってはゴロフキン戦はいつも以上に絶対に負けられない戦いですし、元々のマッチルームとの契約履行の一戦でもあります。
このことはもしかすると、カネロにとって相当なプレッシャーになることなのかもしれません。
まずこのことがカネロの一つの懸念事項とはいえますが、もう一つはやはり、ライトヘビーに上げてすぐにスーパーミドルに戻す、ということ。
カネロがどれほどの減量をしているのか(あまりしていないと思っています)、ということもあるのですが、一旦上げた体重を元に戻して上手くいったボクサーの例は非常に少ない。まあ、上手くいった例の一人として、カネロがいるわけですが。
前回上手くいったからといって、今回も上手くいくかどうかはわかりません。
なので、カネロの懸念事項としては、メンタル面とフィジカル面の調整、これにつきます。
果たしてカネロは、自身の尊厳を取り戻す戦いに勝利できるか。
大人の事情その2
実際、カネロは既にスーパーミドル級で最強を証明したチャンピオンです。この試合にどのような意味があるのでしょうか。
ゴロフキンを完膚なきまでに叩きのめし、カネロ健在をアピールする試合?カネロがビボルへのリベンジに向け、勢いをつけるための試合?カネロにまだ市場価値がある、それを示すための試合?そんな必要がどこにあるのでしょうか。
しかも、この試合は(以前から決まっていたことだと思いますが)DAZNのPPV。
これはまた、北米だけのことだと思われますので、日本人の我々にとっては関係のないことでしょう。
しかし、DAZNはすでにビボルvsカネロで、PPVに失敗しています。
ビボルvsカネロのPPV契約件数は52万件ほどで、その前にカネロが戦ったカレブ・プラント戦での80万件という数字を大幅に下回りました。
なので、このビボルvsカネロの再戦もPPV件数が望めないからこそ、より興味を引くマッチアップで誘い、これで勢いをつけてビボルvsカネロ2に行こう、ということなのでしょう。
そのためにゴロフキンを出汁に使うというのは、何とも失礼な話です。
そういえば、カネロはDAZNとは「2試合契約」(ビボル戦とGGG戦)だったはずですが、ビボルvsカネロ2が実現するとすれば、プラットフォームは争奪戦となるかもしれませんね。
ソレカラ
カネロは好き勝手に振る舞い(カネロじゃなくて陣営かも)、自分に有利な試合を決めまくり、後はお薬疑惑もあり。。。等々ありますが、私個人としてはボクシングそのものは素晴らしいと思っています。
ただ、この試合は、当然のごとくゴロフキンを全力応援。
私はアンチカネロでもないし、どちらかというとカネロの試合はため息が出るほどののテクニックやパワーを見せてくれるので、面白いと思ってしまうタイプの人間ですが、この試合に関しては迷う余地はありません。
今回は心情的にゴロフキンを応援しますが、今回のトリロジーでゴロフキンが勝てる可能性は非常に低い、と言わざるを得ません。
後もう一点、これによりミドル級、スーパーミドル級のタイトルは長く停滞することになります。
元々アクティブでなかったWBAスーパーのミドル級タイトルはこれにて年内は停滞、更に問題なのはどちらかというとスーパーミドルの4つのタイトルでしょう。
ここまでカネロのためにアクティブに動いてきたスーパーミドルのタイトルは、カネロの手に渡ったがために挑戦者たちにチャンスが回ってこない事態になりました。
今年いっぱい、各団体では暫定王座の設定、指名挑戦権を得たボクサーが調整試合に臨む。。。ということが(もう始まっていますが)まだ続きそうです。
これでカネロがゴロフキンに勝って、ビボルとの再戦となるのならば、さすがに全王座返上が無難な道でしょう。誰か提案してあげてほしい。みんな困ってる、と。
そんなわけで、どうにかゴロフキンに勝利を得てもらい、大人たちの思惑、レイノソ陣営の思惑、全てひっくり返してもらいたいものです。そうなったら、痛快です。
あくまでも、このカネロvsGGGのトリロジーは、カネロのためのもの。それに乗っかる形で大金を手にするであろうゴロフキン。
と、ここまで文句を言っているならば、「じゃあ見るなよ」との声も聞こえてきそうですが笑、そういったものも全て含めて楽しむことこそがボクシングファン。
私個人としては、ここまで文句をいえばスッキリしました笑。最後までお付き合い頂き、本当にありがとうございます!!
ゴロフキンの勝利を祈り、そして何よりもゴロフキンが無事にリングを降りられることを祈り、9/17をまで待ちたいと思います。
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