さて、いよいよ4月。
4月になると、9日(土)にはあのミドル級の帝王、ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)が日本ボクシング界のヒーロー、村田諒太と統一戦を戦います。
この試合はアマゾンプライムビデオで生配信。
(ちなみに、アマゾンにはこの映像のアーカイブが残るかどうかを確認しましたが、現在のところ、配信終了後15分以内なら見れますよ、とのことでした。つまり、見れんやん。)
多分、地上波なりWOWOWなりで再放送があると思いますが。
私は現地観戦に行きますが、映像でも見たいので海外DAZNにアクセスして見るつもりでいます。
ということで、今回のブログではいよいよ、となりました、ゴロフキンvs村田のプレビュー記事です。
4/9(土)さいたまスーパーアリーナ
WBAスーパー・IBF世界ミドル級王座統一戦
ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)41勝(36KO)1敗1分
vs
村田諒太(帝拳)16勝(13KO)2敗
「ミドル級」という日本人に馴染みが薄く、それでも世界的に強豪揃いのこの階級の「王座統一戦」というイベントを、日本で見れる日が来るとは思いもしませんでした。
しかし、いよいよ現実、3/31にはゴロフキンも来日ということなので、この記事がアップされるころにはもう来日しているのかもしれません。
これはとんでもない一戦、歴史の教科書にも載せてほしいくらい。
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ゲンナディ・ゴロフキン
試合前日の4/8、日本でハッピーバースデーを迎えるゴロフキンは、今年40歳を迎えます。これまでも惑っていないと思われますが、不惑の年ですね。ようこそ40代へ。
2006年にプロデビューしていますが、2005年までアマチュアボクシングの大会に出場。2003年に行われたバンコクでの世界選手権で優勝、2004年のアテネオリンピックでは銀メダルに輝いています。
まぎれもないトップアマだったゴロフキンは、ドイツのプロモーターと契約し、そのプロキャリアのスタートは非常に静かなもの。目立たず、騒がれることもなく、そして試合にも恵まれることはありませんでした。
カザフスタンは、旧ソ連の国ですが、中央アジアという部類に属します。ドイツのプロモーターからすると「外国人」で、特にヨーロッパ圏の選手ですらなかったことから不遇だったのかもしれません。
その後、クリチコ兄弟のK2プロモーションと契約したことで、ようやくゴロフキンは世界に打ってでます。ウクライナは東欧、ややアジアより、同じく旧ソ連。これは当時のゴロフキンにとって、きっと良い出会いだったのでしょうね。
その後ゴロフキンは、2010年にWBA世界ミドル級暫定王座決定戦で勝利して暫定王座ながら初戴冠(のちに正規王者に認定)すると、その後このタイトルは「スーパー」王座と名を変え、他団体のタイトルを吸収しながら合計なんと20度の防衛に成功。
※ケル・ブルック戦にはWBAタイトルはかけられなかったので、WBAの防衛は19度。
その中では、17連続ノックアウト防衛記録という記録もつくられています。
他に獲得したタイトルとしては、当初暫定王座として獲得したWBCタイトルは合計で8度の防衛、IBFタイトルは合計で4度の防衛。
そんな怪物ゴロフキンの「1敗」と「1分」は、当代一のボクサー、サウル「カネロ」アルバレス(メキシコ)によるものです。
2017年、全世界待望のビッグマッチとなったGGGvsカネロは、ドロー。統一王者だったゴロフキンは防衛に成功しました。
しかし、この一戦こそいわくつき、内容的にはゴロフキン勝利を推す声が非常に多いです。この辺りはジャッジに任せてしかるべきところなのですが、何よりも問題になったのは、接戦の試合内容において、「明らかに」カネロ贔屓の採点(118-110)があったからです。
他の二人は115-113でゴロフキンが一人と、114-114のドローが一人、納得のいかない人も多いかと思いますが、この辺りはまだギリギリ許容範囲ではないかと思います。
試合内容と判定内容がアレだっただけに、即刻のリマッチが決定。
しかしここでもまた問題が起こり、カネロに薬物陽性反応が出ます。
これは世に言う「メキシカンビーフ事件」の一角であり、汚染されたメキシコ牛を食べたボクサーたちからクレンブテロールが検出された、というものですが、カネロほどでもそんな汚染された牛、食べるか?が正直な感想。
結局この再戦は、当初の日程(5/5)から日程の変更があっただけで9/15に挙行され、今度はカネロが2-0の判定勝利。初戦ほどのひどい判定ではなかったものの、初戦のことがあったからこそこの判定も疑問視する声も多いです。
初の引き分け、初黒星を経験したゴロフキンでしたが、翌2019年6月に再起すると同年10月にIBFの王座決定戦に出場、王座に返り咲き。
その後、2020年12月にIBF王座の初防衛戦をクリアしています。
ブランクは、約1年4ヶ月。
村田諒太
対して村田諒太は、2013年にプロデビュー。2013年といえば、ゴロフキンはガブリエル・ロサド(アメリカ)を嬲り、石田順裕(当時グリーンツダ)を圧倒的な力で沈めたという年です。
村田は「日本のミドル級」において圧倒的な力を保持していたトップアマで、2011年にバクーで行われた世界選手権で銀メダルを獲得。これは快挙中の快挙で、「世界選手権」というオリンピックと並ぶ大舞台でメダルを獲った日本人ボクサーは、村田が初めて。しかもミドル級ということもあって、日本のボクシング界は驚愕していました。
続く2012年のロンドンオリンピックでは、「世界選手権準優勝」という肩書もあって期待大。そのオリンピックでは、期待通り、いや期待以上の結果と言って良い金メダルの獲得。
いずれにしろ、村田が当時のミドル級で1番だったか、というと疑問が残るのですが、だからこそ、トップに立つのに運が必要で、その「運」を村田は持っている、と感じたのを覚えています。
その後、色々なゴタゴタがあって無事にプロ転向した村田は、当時のOPBF東洋太平洋ミドル級王者、柴田明雄(当時ワタナベ)を相手にプロデビュー戦。
このデビュー戦では、右ストレートで2RTKO勝利を挙げ、鮮烈なデビューを飾りました。
その後の村田は、勝ち星を積み上げていくものの、どこか物足りないパフォーマンスを見せることもしばしば。
世界初挑戦となったアッサン・エンダム(フランス)とのWBA王座決定戦でも、誤解を恐れずに言うと「相手を選んだ」という感じが強かったです。それが「悪い」というわけではありません。
この一戦でまさかのスプリット判定負けを喫すると、再戦では7R終了TKO勝利。
念願の世界王座初戴冠。
嵐の日、2017/10/22。勝利した村田は、勝利者インタビューで「自分より強い王者」ゴロフキンについて言及しています。
その後初防衛をクリアし、日本人ミドル級世界王者として初めて防衛した王者として歴史に名を刻むと、2018年10月にはラスベガスのリングに立ち、防衛戦を行います。
しかし、このラスベガスで迎えたロブ・ブラントがなかなかの曲者で、終始アウトボックスを敢行して村田を寄せ付けず、村田は完敗の判定負け。これに勝てば本当にゴロフキン戦が見えてくる、という一戦でしたが、ここをモノにすることはできませんでした。
その後、村田を破ったブラントは大いに自信をつけたのか、素晴らしい内容で初防衛戦をクリア。村田は再起を決め、ブラントとの再戦に臨むことになりました。
前戦の内容を見るに、なかなか村田の勝ち筋を見つけるのは難しい。
しかし、村田の真骨頂は実はここから、だったのです。
立場を変えての再戦、村田は「攻撃力に全振り」といわんばかりに圧をかけ、しっかりとしたブロッキングで少々打ち気にはやるブラントの攻撃を阻止、手数と力強いパンチで打ち返します。
初戦と比べ、やや距離が近くなったのは、ブラントが村田を倒そうとしたからなのか、それとも村田の圧に耐えきれず、ブラントがステップで距離を測れなくなったからなのか。
いずれにしろ、功を奏したこの村田の戦略はブラントを飲み込み、結果2RTKO勝利。
これは本当に素晴らしい試合でした。
その勢いそのままに、初防衛戦を圧倒的な攻撃力でクリアした村田。これが2019年12月のことなので、ブランクは2年4ヶ月ちかくになります。
↓去年書いた記事。本当に漫画みたいな村田のキャリア。
二人のキャリアを振り返ってみると、ゴロフキンと村田の間には大きな大きな差があります。しかし、当然のことながらキャリアが対決するのではなく、2022年4月9日現在のゴロフキンと、同年同日の村田が、さいたまスーパーアリーナのリングで戦い、その時間、その場所で強い方が勝つ、というのがボクシング。
ということで、村田諒太の勝ち筋を探っていきます。
ゴロフキンの弱点?
まず、多くのところで語られているゴロフキンの弱点については、やはりボディ。というか、ボディが弱点というよりも、どんなボクサーであってもタイミングと角度、パワーが揃えばボディは効くものです。
それはおそらくカネロでも、クロフォードでも。
井上尚弥もアドリアン・エルナンデス戦でボディが効いたと語っていましたし、どんなに強い、穴のないボクサーだろうとも同じ人間、ボディは効かせることが可能です。
そしてこのボディについては、村田はかなり得意なパンチの一つであると思われます。
確かロンドンオリンピック前だと思いますが、内山高志からボディを教わった、というような話もあったと思います。明確な師弟関係云々の話ではなく、一時のものではあるでしょうが、当時から村田がボディショットに活路を見出していたことはよくわかり、その武器は未だ健在に思えます。
なのでこの左ボディをカギとして、ゴロフキンを下がらせること、これが絶対条件です。
ゴロフキンは、カネロ・アルバレス第二戦、セルゲイ・デレビヤンチェンコ(ウクライナ)戦では、思うようにプレスをかけられていません。カネロ戦では結構下がらされています。
こういう時のゴロフキンのボクシングは、あまり良くはありません。
ここにこそ付け入る隙があると思われますし、逆にここにしかない、とも言えます。
ゴロフキンが前に出るファイトスタイルを選択したのは、かつてのトレーナーであるアベル・サンチェスの影響が非常に大きいと思われます。(もちろんカザフスタン人という国籍の不利を覆し、人気を獲得するため、というのもあると思います。)サンチェスはゴロフキンにメキシカンスタイルを仕込み、そのフィジカルとパワーの強さが相まって無類の強さを築き上げてきた、と言えると思います。
そのサンチェスは、カネロ第二戦が終わり、ゴロフキンとは袂を分かっています。
このゴロフキンのメキシカンスタイルは、おそらくサンチェスなしにはあり得ません。ゴロフキンのプレスも、以前ほど緻密ではなくなっている可能性は大いにあると思います。
なので、もしかしたら、村田のプレスでゴロフキンは下がってくれるかもしれません。
これは非常に微妙なニュアンスになってしまうのですが、ゴロフキンは離れてのアウトボックスもできるボクサー。なので、たとえゴロフキンが前に出てこなくとも、「ボクシングをされる」という状況だとあまりよくありません。あくまでも、村田のプレスで「ゴロフキンを下げる」ということが必須条件となります。
村田諒太の戦法
ちなみに言うと、村田もアウトボックスができるボクサーです。しかし、ゴロフキン相手には通じないでしょう。
村田は「勝つために」今のスタイルに落ち着いたボクサーであり、そのスタイルは現在プライムタイムにあると思います。村田は今のスタイルをゴロフキンに対して自信を持ってぶつけ、シンプルに通用するのか、否か、という戦い。これだけシンプルだと、はっきり言って迷いが不要、全てをかけて前進できると思います。
この迷いのなさ、というものは、村田史上最強の「村田諒太」を作り上げてくれるのではないか、と思っています。
その理由の一つ目は、当然、このゴロフキン戦は村田諒太が心の底から目指していた舞台であること。ずっと片思いしていた相手が振り向いてくれた、そんな感覚です。
重度のボクシングフリークである村田諒太は、世界中のボクシングファンが「Ryota Murata」の名前を知っているわけではない、ということを知っています。
ただ、これに勝てば「Murata」の名前は全世界を駆け巡り、世界で最も有名なボクサーの一人となるはずです。モチベーションの高さは半端じゃないでしょう。
そして二つ目は、村田はこれまで、「勝たなければならない相手」との試合が100%。その重圧たるや、想像を絶するものがあるはずです。
しかし、今回は、辿り着いただけで(ファンとしては)万々歳、もうファンの思いのほとんどは成就している状態です。村田もこの状態だと非常に困りますが、村田としてはあとは磨き上げたものをぶつけるだけ、勝敗はあとからついてくるもの。当然勝利には向かっていくのでしょうが、これまでの試合よりも万全の精神状態で臨めるはずです。
それでも尚、GGGは化け物
しかし、それでも尚、ゴロフキンというのは化け物のボクサーです。
全盛期よりも衰えたとはいえ、間違いなく実力はPFPでもトップクラス。現在のミドル級ではトップ・オブ・トップでしょう。
試合の見所は、村田本人も語っていますが第一ラウンド。
まず、村田がかけるプレスをゴロフキンが真正面から受け止めるのか、それともいなすのか。
ゴロフキンが足を使うにしろ、受け止めるにしろ、逆に押し返すにしろ、ゴロフキンのパワージャブを受けて村田はどのように対応できるのか。村田のブロッキングは、まずゴロフキンのジャブに対して有効なのかどうなのか。
そして、村田の右ストレートや左ボディが当たった時に、ゴロフキンは少しは怯むのか、それとも全く気にしないのか。
村田の攻撃力、フィジカルは世界トップレベルだ、という人もいます。それは村田への忖度なのか、それとも心からそう思っているのかはわかりません。確かにブロッキングも固いですが、果たしてゴロフキン相手にあのブロッキングが通用するのかどうか。
デレビヤンチェンコはゴロフキンを追い詰めましたが、村田にはデレビヤンチェンコのようなサイドステップも、ウィービングもありません。デレビヤンチェンコは、ゴロフキンの左フックをよく外していましたが、あれが村田にはできないとなるとブロッキングで受け止めるほかなく、ガードの上からでもダメージを溜めてしまうのではないか。
多くの強豪ボクサーを意のままに操ってきた、ゴロフキンのプレスとパワージャブ。そして試合を決める左フックと、その他全てのパンチに宿るパワー。強固なフィジカルと、頑丈な鉄の顎、そして何よりも攻め続け、誰にも負けないその精神力。
私の中では、考えれば考えるほど村田の勝ち目は薄くなっていってしまいます。
しかし!!村田諒太というボクサーは、これまでも数々の奇跡を起こしてきたボクサーです。
世界選手権銀メダル、オリンピック金メダル、金メダリストからの初の世界王者、しかもそれがミドル級、そのミドル級で初防衛、そして王座返り咲き。
私の想像を超えたところで、村田が勝利することで、「こんなにも強かったのか」と思えるような試合を見せてもらいたい。4/9(土)、日本ボクシング史に残るさいたまスーパーアリーナでの「ビッグ・ドラマ・ショー」、その日まで存分に楽しみたいと思います。
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