いよいよ週末、GGGvs村田諒太、日本ボクシング史上最大の一戦が始まります。
チケット最高値は220,000円、これも過去最高。たった3試合ながらも、そのどれもが素晴らしいマッチアップで、楽しみすぎるほどの楽しみな日です。
ミドル級の帝王、ゲンナディ・ゴロフキンに、日本のヒーロー、村田諒太が挑む、という構図で間違いはないと思いますが、今回のブログではそのメインイベントに華を添えるアンダーカードについて。
↓GGGvs村田のプレビュー記事はこちら
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GGGvs村田のセミファイナルは、「ネクスト・モンスター」の呼び声高い、中谷潤人が登場です。当初はクリスチャン・ゴンサレス(メキシコ)を相手に防衛戦の予定でしたが、結局はコロナの影響で対戦相手は変更。
日本人挑戦者・山内涼太を迎えての防衛戦となりました。
これはある意味順当で、山内はWBOランキングで2位につけています。他の日本人ボクサーは、4位のユーリ阿久井政悟(倉敷守安)ですが、2月末に試合を終えたばかり。流石に1ヶ月で中谷潤人との再戦は、地方ジムで練習環境の整わないユーリ阿久井にはキツいでしょう。
ということで今回のブログでは、GGGvs村田のセミファイナル、中谷vs山内のプレビュー記事です。
4/9(土)さいたまスーパーアリーナ
WBO世界フライ級タイトルマッチ
中谷潤人(M.T)22勝(17KO)無敗
vs
山内涼太(角海老宝石)8勝(7KO)1敗
もう随分前から、中谷潤人というボクサーは日本ボクシング界のホープでした。そのホープは、2016年12月にのちの世界王者、矢吹正道(当時薬師寺)を破って全日本新人王を獲得、その後2017年に現在の日本王者、ユーリ阿久井政悟(倉敷守安)を破って日本ユースの初代王者となりました。
そして2018年に挑戦者決定戦を勝ち、2019年に日本王座決定戦で勝利して見事日本王者に。
日本人ボクサーが歩むべき、世界王座への階段を一段一段、しっかりと踏み締めて登ってきた中谷は、その後も元世界王者、ミラン・メリンド(フィリピン)を倒す等世界挑戦者として相応しい実力をつけ、世界初挑戦。
決して奇跡でもない世界初戴冠は、2020年11月。2度の延期の末、ようやく開催に漕ぎつけた無観客試合での初挑戦でも強さを見せつけた中谷は、8Rでジーメル・マグラモ(フィリピン)を仕留め、世界初戴冠。
そして初防衛戦ではアメリカ・アリゾナのリングに立ち、元世界王者で破格のKO率を誇るアンヘル・アコスタ(プエルトリコ)に初回から大きなダメージを与え、4Rでストップ。想像を絶する強さで初防衛戦をクリアしました。
もし唯一、中谷のキャリアにケチをつけるとすれば、日本王座、世界王座の戴冠戦が王座決定戦だったことでした。(これは状況により、仕方のないことではありますが。)しかし、アコスタをあんな形で退けたのは、そのポテンシャルに見合った、紛れもない王者であるという証明となりました。
この一戦は、オスカル・バルデスvsロブソン・コンセイサンのアンダーカードで行われた一戦で、メインは疑惑の判定、間違いなくこの日の興行で最も鮮烈だったのは、この中谷のアメリカデビュー戦だったと思います。
この日、中谷はアコスタの強打、それも右アッパーのクリーンヒットという恐ろしいパンチを喰っています。しかし中谷はけろりとしており、22勝中21KOという強打を浴びたことで、図らずも中谷の顎の強さも証明した形になりました。
フライ級で172cmという長身、それもサウスポー。遠くはもちろん、接近戦でも戦える技術、線細く感じるものの強い体幹と、タフネス。そして気持ちの強さ。
これまでも苦戦がなかったわけではなく、競り勝ったという内容の試合もありました。
それでも中谷は着実に成長し、その時々のステージで最高のパフォーマンスを発揮し続けてきた、と言って良いでしょう。
今回の一戦はフライ級卒業、と位置付ける一戦。
当初は、「フライ級で統一戦」をしてからスーパーフライ級に上げる、という目論みではあったものの、コロナの中でなかなか試合が組めず、時間的なリミットに来てしまったようです。
まだ24歳、筋肉がついて体が大きくなっていくことはまだあります。
ここは無理せず、階級を上げるのは好判断と言えるでしょう。
そのフライ級戦最後の相手となるのが、前WBOアジアパシフィック・フライ級王者である山内涼太。
山内は現在WBA、IBF、WBOの世界ランキングで上位、または一桁に入っているボクサーで、これは日本人世界ランカーとしては最上位。WBOランキングでは年末に中谷に挑戦する予定だったクリスチャン・ゴンサレスよりも上位につけています。
豊富なアマ歴を持ち、B級デビューの山内は、わずか5戦目でウラン・トロハツ(中国)とのWBAインターナショナルの王座決定戦に臨みます。
敵地、中国、相手は世界ランクを保持する格上。このトロハツを相手に、ダウン応酬の激闘を演じますが、残念ながら判定負け。トロハツは同年(2019年)に三迫ジムの田中公士を相手に同タイトルを5RTKOで防衛、その後田中恒成(畑中)に挑戦しています(3RTKO負け)。
その後判定勝利を得て、再起に成功した山内は、現在3連続KO勝利中。
8勝7KOというKOを築いてきたものは、ただただ強いパンチだけではありません。山内は非常にバランスの良いファイターで、オールラウンダーという印象。しっかりとしたプレスをかけられるボクサーで、様々なものがハイレベルにまとまったボクサーであると思います。
ただ、中谷潤人を相手に、ポイントをピックアップしていって判定で勝利する、というイメージはあまり思い浮かばないのが正直なところです。
山内は、自らプレスをかけ、体全体を使って中谷をロープやコーナーに追い詰め、パワーパンチを見舞っていくという戦いにこそ、勝機が見出せると思います。ともかく、単純に遠い距離ではなかなか難しい。近づいて、接近戦の強い中谷に打ち勝つ、もしくはサイドに回って攻め込む、多角的な攻撃をしてそれが通用するか否か、というところのように思います。
当然、多くの団体で上位にランクインする山内には中谷に挑戦する権利はあります。その上で、フライ級最強と思われる王者、中谷挑戦を断らなかった山内には、きっと秘策を持ってくるはず。山内涼太は自分の立ち位置がよく分かっていると思います。きっと、無策ではこないでしょう。
中谷潤人に穴はあるのか
そうは言っても、なかなか中谷が不用意に一発を喰う姿は想像ができないし、アコスタのあの右アッパーに耐えた中谷に、それ以上のビッグショットを与えられるか、というと難しいかもしれません。
ただ、山内が保持していたWBOアジアパシフィック王座を返上し、失うものは何もないという状態でアップセットを目指すというその心意気は怖いものです。
メンタル面において、やりやすいのは圧倒的に山内。中谷にとっては勝って当たり前、とも思われる試合だと思います。
そして、勝負に絶対はありません。
今回、山内との防衛戦において、もしかすると、という中谷の穴を、考えてみます。
まずは、日本開催での試合であることは一つ、もしかすると中谷に良い影響を及ばさないかもしれない、ということ。
中谷は、前戦、出色のパフォーマンスを見せましたが、その理由の一つは、ボクシング留学時代から中谷をコーチしていた、ルディ・エルナンデスの指導が大きいかもしれません。
中学を卒業して渡米、ルディから薫陶を受けた中谷でしたが、あのアコスタ戦以降は渡米もままならず、指導は受けていないと考えられます。もちろん、今回のセコンドにもルディの姿はないはずです。
まあ、逆に声援(というか今回は拍手)はありますし、ルディがいないからと言ってもこれまでの試合もいない方が圧倒的に多かったわけでしょうから、全く気にもしないかもしれませんが。ともかく、前戦の素晴らしいパフォーマンスを作り出した要因の一つ、ルディ・エルナンデスは今回は不在。
そして、これまでのインタビューで幾度も語っていますが、「アコスタ戦以上のパフォーマンスを」と中谷自身が語っているし、思っていること。
これは普通に考えれば力みにつながりますし、こういうことを言ってその通りに成功させるボクサーを見ることは稀だと思っています。
この辺りの気持ちの部分が、中谷のパフォーマンスにどう影響を与えるのか、は見ものです。
もしくは全く与えないのか。。。
試合自体は、決して中谷にとって高いモチベーションを持って臨める試合ではない、と思います。これは、以前から中谷が統一戦を切望していたから、というのと、フライ級で統一戦をしたいけれども、それが叶わない、というためです。そして今回「も」試合日程は一度決まった日程から延期、今回は対戦相手も変更。
色々と惑わされ、集中が切れてもおかしくはありません。
しかし、中谷潤人というボクサーのメンタルはおそらく乱れないんでしょうね。。。
コツコツと、毎日、毎時間、毎分をボクサーであり続けている中谷潤人というボクサーは、傍目から見ても本当に真面目で、誠実で、ボクシングへの献身に溢れています。うわついたところが一切見えません。
なので、結局穴はないのか。。。
それでも、ボクシングというものはリングに上がって、拳を交えてみないと何ともわかりません。結局は強い方が勝つ、ではなく、勝った方が強い。
中谷の入場曲は(今回もおそらく)「神風特攻隊」ではあると思いますが、今回は山内にこそ相応しい。いや、山内だけでなく本当は村田諒太にも。(それで入場してほしいわけではないです。)二人のリョータ、その奮戦に期待したい。
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