6月は尾川堅一、井上尚弥、京口紘人といった名だたる日本人世界王者がそれぞれイギリス、日本、そしてメキシコで防衛戦、または統一戦に臨みます。
日本のボクシングファン注目の「6月のゴールデンウィーク」とでもいうべき一週間は、その輝きに隠れて海外でも超注目ファイトがあります。
特にそれぞれの現地時間で6/4(土)という日は凄まじい。
尾川堅一vsジョー・コルディナというIBF世界スーパーフェザー級タイトルマッチの他、オーストラリアでは世界ライト級4団体統一戦であるジョージ・カンボソスJr.vsデビン・ヘイニー、そして今回紹介するWBC・WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ、スティーブン・フルトンvsダニエル・ローマンの一戦。
次々と迫り来るビッグマッチにおいて、最も印象的な勝利を収めるのはどのボクサーなのか。
今回のブログでは、尾川堅一やライト級4団体統一戦、そして井上尚弥vsノニト・ドネアにも引けを取らない、スーパーバンタム級の2冠戦、フルトンvsローマンのプレビュー記事です。
6/4(日本時間6/5)アメリカ・ミネアポリス
WBC・WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ
スティーブン・フルトン(アメリカ)20勝(8KO)無敗
vs
ダニエル・ローマン(アメリカ)29勝(10KO)3敗1分
ミネソタ州ミネアポリス。世界的に見ると、注目度はオーストラリアで行われるカンボソスvsヘイニーに及ばないでしょう。
しかし、このスーパーバンタム級という階級は、我々日本人にとって大いに関係のある階級であり、しかもこの後井上尚弥が進むはずの階級とあって注目度は高くて然るべき。
でも、あまり話題に上がらないですね。。。
やはりどうしても、同日興行の尾川vsコルディナに話題が集まってしまいますし、WOWOWもカンボソスvsヘイニーを生中継ということなので致し方ありませんね。
しかし、このスーパーバンタム級戦は、2団体のタイトルがかかる他、アメリカ大陸においてのスーパーバンタム級最強決定戦と言える試合だと思います。
まず、王者はスティーブン・フルトン。
映画「ロッキー」シリーズの舞台となったフィラデルフィア出身、人呼んで「クールボーイ・ステフ」。
ロッキー・バルボアとは真逆とも言えるファイトスタイルのこのボクサーは、早くからプロスペクトとして台頭し、2021年1月にアンジェロ・レオ(アメリカ)に勝利して初戴冠を果たしました。本来であれば2020年8月に行われる予定だったこの試合は、試合直前にフルトンがコロナに罹患したことで、レオは代役となったトレメイン・ウィリアムス(アメリカ)と戦うことになりました。
レオはアグレッシブに攻めてウィリアムスに判定勝利を挙げて戴冠すると、初防衛戦はスティーブン・フルトンとの指名戦。
「メキシカンファイターのような空気を持つレオか、完璧にアメリカナイズドされたアウトボックススタイルのフルトンか、五分五分。」という前評判の試合ではあったものの、フルトンは接近戦でもレオを上回って見せる完勝。この試合は、フルトンの初戴冠の試合となっただけでなく、その評価を大きく上げたステップアップファイトとなりました。
その後、当時のWBC王者、ブランドン・フィゲロア(アメリカ)との王座統一戦に臨みます。
2021年に激突した両者は、ここでもまたフルトンは接近戦を選択。
非常に手数の多いフィゲロアに対して、体で押されながらも打ち返し、非常に微妙な判定ながらも2−0の判定でこの試合をモノにし、王座を統一。
フィゲロアは試合後のインタビューで「負けていない」と気勢を上げていましたが、おそらく自身の減量苦によりこの階級のタイトルを諦め、再戦にも乗りませんでした。
↓観戦記
ともあれ、勝利したフルトンは、指名挑戦者であるダニエル・ローマンを迎えることになりました。ダニエル・ローマンは元WBAスーパー・IBF世界スーパーバンタム級王者です。
2017年9月、来日して久保隼(真正)の持っていたWBA世界スーパーバンタム級王座に挑戦し、見事7RTKOで勝利してこれを獲得。
そして初防衛戦でも来日し、松本亮(大橋)の挑戦を受け、一方的な展開で12R判定勝利で初防衛に成功しました。
この内の初防衛戦は後楽園ホールに見にいった思い出があります。非常にセンスのあるボクシングをする松本が優位かと思っていましたが、ローマンのボクシングは意外なほどに穴がなく、そしてフィジカルが強く、最後の最後まで突破口すら掴めないまま12Rが終了した、というイメージです。
その後のローマンは、元王者モイセス・フローレス(メキシコ)、ジェイミー・マクドネルの弟、ギャビン・マクドネル(イギリス)を立て続けに撃破。当初「穴王者」と思われた王者は、意外なほど強く、戦うたびに評価を高めていきました。
そして3度目の防衛戦で迎えた相手は、IBF同級王者のTJドヘニー(アイルランド)。岩佐亮佑(セレス)から王座を奪い、初防衛戦では高橋竜平(横浜光)を退けていました。
この王座統一戦をクリアし、2団体制覇王者となったローマンでしたが、次の防衛戦となるムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)戦で虎の子のタイトルを失ってしまいます。
ただ、これはどちらに転んでもおかしくないような腸がつくほどの大接戦。この時点では、両者の差は全くなく、単にジャッジの印象が明暗を分けた試合だった、と言っても良いほどです。
再戦があって然るべき、とも思われた判定結果だったものの、ローマンはその後ファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)とWBCの挑戦権をかけて争い、これを獲得。
調整試合を一試合経て、今回の一戦を迎えることになりました。
この一戦は、おそらく勢い的にスティーブン・フルトン優位と出るのでしょう。
ボクシングの見た目的に、フルトンの方が速く、強く、ボクシングが上手そうに見えるのは事実だと思います。ただ、ダニエル・ローマンというボクサーは、その見た目だけではわからない強者のボクシングを貫き通す、心と体の強さを持っているボクサーだけに侮れません。
「ベイビー・フェイス・アサシン」、みんな大好きな(知らんけど。私は世代的にアイドルです。)マルコ・アントニオ・バレラと同じニックネームを持つローマンは、その優しい風貌からガラリと変えたボクシングをリングで披露しますし、スピードとかテクニックでは対応できないほどのエネルギッシュファイトを見せるボクサーです。
そしてこの試合は、非常に予想が難しいのではないか、と私は思っています。
オッズを確認すると、最も有名なWilliam Hillでフルトン1.22、ローマン4.20。GGGvs村田の時にTシャツを配っていたStakeではフルトン1.21、ローマン5.20とフルトン優位は明らかなようです。
しかし、アンジェロ・レオ戦、ブランドン・フィゲロア戦で見せたような、インファイトで打ち勝つボクシング、これをもしフルトンが今回も選択するのであれば、フルトン敗北の可能性はグッと高まるような気がします。
インファイトでも上手さを見せるフルトンは、確かにレオ戦では打ち勝っていました。
フィゲロア戦では五分五分でしたが、どちらかというと最終盤に見せたヒットアンドアウェイのボクシングの方がうまく戦えたのではないか、と思います。
ローマンはレオやフィゲロアよりも、インファイトでのテクニックを非常にたくさん持っているボクサーです。近い距離では、ローマン優位だと思います。
もし、フルトンがローマンに接近戦で明確に打ち勝てるようならば、ムロジョン・アフマダリエフを差し置いてスーパーバンタム級最強はスティーブン・フルトンで異論ありません。ただし、これは非常に難しいことだと思います。
なので、私としては、フルトンがもし、近い距離だけで戦うならばローマンが勝利するし、そして遠い距離も同時に使い、稀に打ち合うというフルトンが最も力を発揮できそうなボクシングを貫徹したならばフルトンの勝利、と見ています。
いずれにしろ、フルトンの出方次第。フルトンは気も強そうなので、もしかしたら序盤は接近戦を挑むのかもしれません。そうなると、一体どのタイミングでアウトボックスに切り替えるのか、というのが見もの。
もしくは、ここ2戦ははっきりと「これで勝てる」と踏んで臨んだ作戦だったのかもしれません。ローマン相手には、序盤からしっかりとポイントアウトを狙っていくのかもしれません。
勝敗だけでなく、試合展開も非常に楽しみな一戦です。
そして、少し気が早い話。
兼ねてから(確か世界王者になる前から)「井上に勝てる」と公言しているフルトンが勝ってくれた方が、井上がスーパーバンタム級に行った時に面白いでしょう。フルトンのような、「アメリカのエリートボクサー」との対戦は、今までの井上のキャリアの中にありません。同時に、アメリカでも評価の高いフルトンをどのように降せるのか、というので井上への評価も変わってきそうです。
それでもやっぱり、今回はダニエル・ローマンを応援です。なぜかってそれは、好きだから。彼のファイトスタイルが、彼のハートが。
私は(松本亮を応援するために行った)後楽園ホールでの松本戦で、ローマンのファンになってしまった一人です。
WBAレギュラー世界スーパーミドル級タイトルマッチ
デビッド・モレル(キューバ)6勝(5KO)無敗
vs
カルビン・ヘンダーソン(アメリカ)15勝(11KO)1敗
セミファイナルに組まれているのは、WBAレギュラー世界スーパーミドル級タイトルマッチ。
そろそろ日の目を見ても良さそうなデビッド・モレルの登場です。
この王者は実に強い。と、思います。多分。
↓モレルの前戦の観戦記
正直、日本でこのデビッド・モレルについてしっかりと映像を見て追いかけている人は稀でしょう。
どんな政治力を持っているのか、デビューからわずか3戦で世界タイトルを獲得、現在まで2度の防衛を成功させている、カネロ・アルバレスと並び立っている(?)王者です。
ちなみに、このタイトルの初防衛戦でモレルはウェイトオーバーしましたが、なんとタイトル戦からノンタイトル戦に変更されて試合は敢行、しかもモレルの王座は剥奪されず、改めて半年後に普通に防衛戦が行われたという経歴を持ちます。本当に、キューバ出身のボクサーなのにこの政治力は何なのか。WBAレギュラー王座はこんなにも、緩いのか。
非常に強いフィジカルと、キューバン・ボクシングにルーツを置くスキル、そしてラッシングパワー、アグレッシブネス。はっきりと申し上げますと、ボクサー単体としては、人気の出る要素の全てを兼ね備えているボクサーです。
しかし、その対戦相手の質たるや悲惨なもので、だからこそ誰も知らない世界王者と言えます。
そんなモレルの今回の相手は、あのカルビン・ヘンダーソン!!!
。。。マジで初めて聞いた名前です笑。勉強不足ですね。
前戦のアランテス・フォックスについてはギリギリ聞いたことがありましたし、アンドラーデとやっているボクサーだったので、微かに記憶はありました。
このヘンダーソンに関しては、BoxRecで対戦相手を見てみても分かりません。
良い戦績を誇っている31歳、2021年7月に初黒星を喫していますね。つい最近のことなので、このヘンダーソンに勝ったボクサーを挑戦させた方が良いのでは?と思ってしまいますが、色々あるのでしょう。
映像を調べるという気にもならないので、この試合はそれはそれで楽しみにしておきたいと思います。
ただ、モレルにはこんなところでほんの少しでも躓いてほしくないですね。今回も圧勝でお願いしたい。
放送・配信
この興行は、アメリカではShowtimeが生放送。
残念ながら、日本での生放送・生配信の情報は今のところありません。
少し前ならばWOWOWで生中継されないShowtime興行はFITE.TVが中継してくれていましたが、ここ最近はそれもありませんね。気まぐれすぎる。。。
可能性があるとすればFITEでのPPV中継ですが、もし情報が出ましたらTwitterとこのブログでお伝えします。
生放送の開始は日本時間で6/5(日)11:00頃からだと思うので、WOWOWのカンボソスvsヘイニーと開始時間はモロ被り。
ちなみに、この試合はWOWOWでは録画放送が決定しています。日程は6/27(月)21:00からのレギュラー放送です。モレルはWOWOWに登場したことありましたっけ?もしかして初登場?初登場だとしたら要注目です。
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