ここ最近としては稀有な、「視聴できる新たな興行がない」週末を乗り切り、ここからは平常運転。いや、秋のビッグマッチに向けて異常運転に進んでいきたいものです。
まずは10/8(日本時間10/9)、セバスチャン・フンドラvsカルロス・オカンポ。
イギリスではコナー・ベンvsクリス・ユーバンクJrが非常に盛り上がっているようですが、個人的興味はフンドラ。
アンダーカードも非常に魅力的なカードが揃い、Showtimeで放映する3カードだけでなく、素晴らしいマッチアップが揃います。
ということで今回のブログでは、フンドラvsオカンポをメインに据えた、PBC興行のプレビュー記事です。
10/8(日本時間10/9)アメリカ・カリフォルニア
WBC世界スーパーウェルター級暫定タイトルマッチ
セバスチャン・フンドラ(アメリカ)19勝(13KO)無敗1分
vs
カルロス・オカンポ(メキシコ)34勝(22KO)1敗
身長約2m、「タワーリング・インフェルノ」セバスチャン・フンドラ。
ヘビー級並みの高身長により目立ったフンドラは、2016年にプロデビュー、一つの引き分けを挟んで19連勝をマークしています。
特にここ数戦の活躍は顕著であり、好戦績を誇っていたハビブ・アフメッド(ガーナ)、世界挑戦経験もあるホルヘ・コタ(メキシコ)、当時無敗のセルジオ・ガルシア(スペイン)を撃破、2022年4月には非常に評価の高いエリクソン・ルビン(アメリカ)とのWBC世界スーパーウェルター級暫定王座決定戦に臨みます。
↓観戦記
ダウン応酬の素晴らしい試合となったこのフンドラvsルビン。
両者ともに良いところが出て、意地を見せたこの戦いは、ルビン陣営が9R終了後に棄権、フンドラのRTD勝利が決まっています。
非常に長いリーチを持つフンドラですが、接近戦を好みます。
この試合を見て、なかなか理に適っているのかな、と思ったところは、フンドラが近い距離でのアッパーカットを多用したこと。
とにかく何発もアッパーを打ち込み、やや上体を立てて相手から顔を遠くしておけば、リスクを少なくしてアッパーを打つことができます。京口紘人(ワタナベ)のように、前に入り込んで打つようなコンパクトなアッパーカットではなく、上体を立てて顔を上げて、カウンターのフックに対してはスウェーで対応する、というこのアッパーは、フンドラの大きな武器になりえます。
打ち下ろすストレートとともに、フンドラの強烈な攻撃です。
このフンドラは前に出ての戦いが得意、というか好きなのでしょうが、そこでの武器を着々と身に着けている印象です。もっと距離をとれば、とか、ジャブとストレートを遠い距離で打って、ステップワークで相手を近づかせないように、とか、普通に考えたらアウトボクシングをさせてしまいそうなものですが、このインファイトを選択し、またそれが許されているということが素晴らしいな、と感じます。
フンドラはヒスパニック系のアメリカ人であり、やはりある種のマチズモを継承しているボクサーなのでしょう。
さて、対戦相手のカルロス・オカンポ。
35戦というキャリアがありますが、若干26歳のメキシカンです。
このボクサーは非常に体が強く、バランスが非常に良いボクサー。178cmの身長で185cmのリーチという恵まれた体躯を持ち、強打を連打で出せる体幹の強さも有しています。
シントゥーラ(体の振り)からオーバーハンドを狙う、というタイプのメキシカンではなく、しっかりジャブをついて距離を詰め、左右のボディから上に返すという比較的オーセンティックな香りのするファイター。
そしてそのパンチは非常に力強く、めちゃくちゃ良いボクサーです。
唯一の敗戦は2018年6月、IBF世界ウェルター級王者だったエロール・スペンスJr(アメリカ)に挑戦したときのもの。結果は初回KOでの敗戦ですが、スペンス相手にもしっかりと距離を詰めて連打を放つことができていました。
ただ、ラウンド終了間際、スペンスの左ボディが鳩尾に突き刺さり、テンカウント。
このオカンポは、執拗にボディを狙う傾向がありますが(前戦のKO勝利もボディ)、この時の自分が倒された経験からきているものかもしれません。
そして、このスペンスに負けた時と今のオカンポを比べると、階級を上げたことで体はビルドアップされ、非常にパワーを感じます。押されたときの力も、押したときの力も、当時とは段違いのように感じますね。
事実、スペンス戦以降(は、スーパーウェルター級以上のウェイトで戦っています)、12戦して全勝9KO。パワーアップ、タイミング、そしておそらくボディへの集中打が効いていると思うのですが、数字に表れています。
フンドラは大きい分、ボディは打ちやすいはず。あとはフンドラのアッパーに気を付けていけば、もしくはそのアッパーに対してボディカウンターを取れれば、勝機はありそうな気がします。
しかし、やはりフンドラに頑張ってもらいたい。できれば、オカンポのボディをもらわない絶妙な距離で戦ってもらいたいものですが、そうもいかないのでしょう。
おそらくルビン戦同様に打撃戦となると思われる今回の一戦、これは非常に楽しみですね。
WBC世界ミドル級暫定王座決定戦
カルロス・アダメス(ドミニカ共和国)21勝(16KO)1敗
vs
ファン・マシアス・モンティエル(メキシコ)23勝(23KO)5敗2分
BoxRecを見ると、暫定王座戦となっていました。これはジャモール・チャーロ(アメリカ)逮捕による暫定王座設置なのかもしれませんね。
ともあれ、アダメスにとっては2度目の世界挑戦となります。
アダメスの唯一の敗戦は、2019年11月のパトリック・ティシエイラ(ブラジル)戦であり、この時はWBO世界スーパーウェルター級の暫定王座戦でした。
非常に反応が良く、ややディフェンシブな戦い方に見えるアダメスですが、そのパンチには非常にキレがあり、パワーも十分。相手の攻撃に対して常に備えるアダメスのボクシングは、徹底的にリスクを排除したボクシング、といえると思います。
まだ28歳、さほどダメージを負った経験もないでしょうから、これから長く活躍するボクサーだと思っています。
対してファン・マシアス・モンティエル、こちらはかなり緩めのファイティングポーズから、様々なアングルでパンチを放っていくパンチャー。
その構えは、ガードポジションにグローブを置いていないため、被弾は多め、それでも相手にとってはよくわからない軌道でハードパンチが飛んでくるので、非常に厄介な相手といって良いでしょう。
こういうボクサーに対しては、相手を俯瞰して見れる距離で戦ったほうが良いと思いますが、モンティエルはガンガン近づいてきます。
アダメスも下がりまくるボクサーではなく、前でかわすことも多いボクサーですから、距離が詰まることは避けられないかもしれません。
アダメスは、完全に距離をとって塩に徹するか、もしくはインサイドでの外側からのパンチに気を付けて戦うかが肝要であり、中途半端なポジションで戦ってはモンティエルが戦いやすくなってしまうでしょう。
どちらがどのように距離間を支配するのか、こちらも非常に興味深い試合ですね。
IBF世界スーパーフライ級タイトルマッチ
フェルナンド・マルティネス(アルゼンチン)14勝(8KO)無敗
vs
ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)33勝(22KO)2敗2分
2022年2月、安泰王者だったアンカハスを降し、世界初戴冠を果たしたフェルナンド・マルティネス。
その初防衛戦で、前王者となったアンカハスを迎えることになりました。
ただ、このダイレクトリマッチについては批判も多いことでしょう。
というのも、前戦の内容は、マルティネスの完全実力勝利。
安定王者アンカハスの穴をついて「攻略」したのではなく、真正面から正面衝突、旺盛な手数と素晴らしいアングルをもって的確なパンチを当て続けた末の判定勝利。
王者としての矜持を持ったアンカハスは、なんとか堪えしのぎ、最終12ラウンズのゴングを聞いた、というイメージです。
当時、「非常に強い王者が誕生した」という旨を記しました。
↓観戦記
もしかすると、「勝てば統一戦」と先を見据えてしまったアンカハスには、若干の油断があったのかもしれません。それを加味しても、このマルティネスは強い。
新米王者で実績もまだないからか、そのほかの王者たちの対抗馬としては上がってきませんが、もう時間の問題でしょう。
決して衰えを見せたわけでもないアンカハスに完勝したフェルナンド・マルティネス。
これは予想ではなく勘ですが、アンカハスは前戦の悪夢を逃れきれないままこの一戦を迎え、今度こそストップ負けを喫してしまうのではないか。。。と思っています。
ただしそれは、マルティネス側に油断がない、という場合に限りますが。
再戦は、一度負けた方が気持ちの上ではやりやすく、勝ったほうがやりづらい。
それでも、非常にまじめな雰囲気のするマルティネスは、ここに勝ってこそ道が開けるというものですから、万全に仕上げてくるでしょう。
スーパーフライ級は、井岡一翔(志成)を筆頭に、日本でも大激戦区。
今後のスーパーフライの盛り上がりにも期待したい。
放送・配信
この興行は、アメリカでは上記3試合をShowtimeが生中継。
10/3(月)現在、日本での中継の予定はありません。ただ、以前、フンドラvsルビンはFITE.TVがやってくれたので、もしかすると可能性はあるかもしれません。
やってくれると良いですね。
ちなみに、この3試合のほか、アンダーカードにはエギディウス・カバラウスカス(リトアニア)vsマイカル・フォックス(アメリカ)なんてのもありますね。そしてセバスチャン・フンドラの妹、ガブリエル・フンドラも登場です。
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