「ライバル」というのは、強いボクサー同士が同じ階級、または近い階級あたりにいて、快進撃を続けていたりすると生まれるものであると認識しています。
だからこそ、このライバル対決というのは非常の盛り上がるし、双方の思惑がある分、決まりづらいというのもまた現状。
テレンス・クロフォードvsエロール・スペンスというのは現代において最たる例で、合意に達したけどまだお金の面(報酬ではなく、イベントのお金??)でもめているとか。
そんな中、まさかの方向から実現したライバル対決。
そもそもここにライバル関係が発生していたことすらも認識していませんでした。
まさかの父親同士のライバル対決を、階級の壁を越えて実現させたイギリスボクシング界、これはファンの期待に応えたのか、それともただの茶番劇か。
今回のブログでは、イギリスでは大いに盛り上がっている、クリス・ユーバンクJr.vsコナー・ベンのプレビュー記事。
↓サイズ差は結構ある。
10/8(日本時間10/9)イギリス・ロンドン
クリス・ユーバンクJr(イギリス)32勝(23KO)2敗
vs
コナー・ベン(イギリス)21勝(14KO)無敗
157lbs(ミドル級のリミット160lbsよりも3lbs軽い)のキャッチウェイトで行われる12Rのノンタイトル戦。何のタイトルもかけられない、かけようもないこの試合が12回戦で、しかもマッチルーム興行のメインイベントで行われるには理由があります。
若いファンは知らなくても無理はありませんが、両者の父親はともにイギリスで絶大な人気を誇ったボクサーであり、ライバル関係にありました。
ユーバンクJrの父、クリス・ユーバンクSrはWBO世界ミドル級、スーパーミドル級の2階級を制覇した名王者。このミドル級王座を、コナー・ベンの父であるナイジェル・ベンに9RTKO勝利で獲得しています。
このタイトルを3度防衛した後に返上、WBO世界スーパーミドル級タイトルを獲得し、このタイトルは14度もの防衛に成功します。
ナイジェル・ベンは、ユーバンクSrにタイトルを奪われてからスーパーミドル級へ転級、WBC世界スーパーミドル級王座を獲得。このタイトルは9度の防衛に成功しています。
両者2度目の激突は、ユーバンクSrの8度目の防衛戦、そしてベンの4度目の防衛戦のとき。王座統一戦として戦ったこの試合は、1-1の3者3様のドロー。
こう考えると、もう1戦あっても良さそうなものでしたが、結局3戦目は行われず、両者は引退してしまいました。
そこから時を経て2022年。じつに両者の2戦目からは19年の月日が経とうとしています。これはこれで非常にドラマティックなのですが、息子たちは父たちの偉業に、今はまだ遠く及びません。
それでも、やはりこの父親世代から続くライバル対決は、興味を唆るストーリーです。
クリス・ユーバンクJr
2011年にプロデビューしたクリス・ユーバンクJrは、2014年、ビリー・ジョー・サンダース(イギリス)に1-2のスプリットで惜敗し初黒星。その後、WBA世界ミドル級暫定王座を獲得しています。
2つ目の敗戦は2018年2月、WBSSのシーズン1のときで、ジョージ・グローブス(イギリス)に判定負け。このあともWBA世界ミドル級暫定王座を再戴冠していますが、これはWBAの王座削減施行により消滅しています。
キャリアでは、ここ最近だけでもジェームズ・デゲール(イギリス)、マット・コロボフ(ロシア)、リアム・ウィリアムズ(イギリス)といった元世界王者、世界挑戦経験者を退けており、まだまだ衰えのみえない33歳。年齢的にはプライムタイムに入っているところでしょう。
コナー・ベン
「ダーク・デストロイヤー」と呼ばれたナイジェルの息子、コナーのニックネームは「デストロイヤー」。2016年にプロデビューし、ここまで印象的な倒しっぷりを量産している26歳です。
前戦ではクリス・バン・ハーデン(南アフリカ)、その前はクリス・アルジェリ(アメリカ)をきっちりと仕留めています。
そのパワーは破格ですが、ここ最近の映像を見るとさらに上体が発達しており、これは今回の契約ウェイトにあわせて体をでかくした、ということなのかもしれません。
私には速攻型のパンチャーに思えますが、非常に獰猛な面があり、見ていて非常にスカッとするボクサーですね。
ただ今戦ではベンは前半我慢、おそらくスタミナに難の出てくるであろうユーバンクJrを削り、後半勝負というのが妥当な作戦となってくるはず。
いつものように早期決着を狙って前半出ていくと、そこを凌がれて後半グダグダになる展開も考えられます。
キャッチウェイト!
テクニシャンタイプのユーバンクJr、パワーファイターのベン。
この両者の一戦のキモは、間違いなくこの契約ウェイトにあります。
157lbsの契約ウェイトは、ミドル級よりも3lbs軽いウェイトですが、ユーバンクJrはこのウェイトで戦ったことはないのではないでしょうか。
しかも現在はスーパーミドル級を主戦場としており、ミドル級(160lbs)ですら2016年に卒業しています。
なので、ユーバンクJrはこのウェイトをコンディションを維持しながら作れるかどうか、というのがまず鍵。
そして対してベンは、147lbsを上限とするウェルター級が主戦場のボクサー。今回は階級のくくりでいえばスーパーウェルター級超、10lbsの増量を余技なくされる、という状態です。
ウェルター級のボクサーが、スーパーミドル級のボクサーと戦う、なんていうことは通常全く考えられないことですが、ここで折衷案をとっての契約ウェイト。やや短絡的にも思いますが、双方勝ち目がある、と考えてここに落ち着いたのでしょう。事故が起こらないことを願うのみ、ですね。
両者の不安材料
互いに未知のウェイトであるからこそ、両者の不安材料があります。
これはそのままウェイトのことなのですが、ユーバンクJrについては過度な減量による脱水症状や体調不良、スタミナ難が起こりえます。
ベンについては、増量ということなのでコンディションということでいうと問題なさそうですが、スーパーミドル級を主戦場とするボクサーの打撃を受けて、どうかというところ。
ベンについてはかなりビルドアップされていますが、それが実際に動ける筋肉なのかはわかりません。フェイス・オフの画像を見る限り、ユーバンクの方がかなりでかい。
しかし、考えれば考えるほど、ユーバンクJrにとってメリットの少ない試合ではないかな、と思ってしまいます。
格闘技の大原則として、「体の大きな方が勝つ」というのがあります。
そう考えると、これまでのキャリアも含めてユーバンクJrが優位、と考えるのが妥当(オッズは調べていませんが)なような気がして、だとすればユーバンクJrが勝って当然ともとれるマッチアップではないか、とも思います。
しかし前述のとおり、かなり危険な減量をせざるを得ないユーバンクJrの状況、ユーバンクが勝っても株は上がらず、ベンが勝てばきっと「デストロイヤー」だと称賛されることとなる試合(この場合、ベンの判定勝利は考慮していません。)。
個人的にはベンに勝ってほしいですし、ベンが勝てばすごい、となる反面で、ユーバンクは何でこの試合をやったんだ、となる。
ユーバンクが勝てばやっぱりな、とか、ベンは何でこの試合をやったんだ、とかになる。
どっちに転んでも超微妙、しかし、やはりオールドファンとしてはこの結末を確かめないわけにいかないでしょう。。。(楽しみだ、とは言えません。)
【放送・配信】
アンダーカードにはフェリックス・キャッシュ(イギリス)vsコナー・コイル(アイルランド)の無敗対決。WBAインターコンチネンタル・ミドル級王座決定戦があります。
その他にも、クリス・ユーバンク・ジュニアのいとこであるハーレム・ユーバンク(イギリス)の登場もありますね。
五輪金メダリストのガラル・ヤファイ(イギリス)はゴハン・ロドリゲス・ガルシア(メキシコ)との10回戦、WBCインターナショナルフライ級のタイトルがかかります。わずか3戦目でのタイトル戴冠なるか、というところですね。
リンドン・アーサー(イギリス)も出場しますが、相手は17勝17敗という選手なので、ここは調整試合ですね。
さて、この興行はDAZNで生配信、日時は日本時間で10/9(日)AM3:00〜です。
おそらくメインは同日のAM7:00前後にスタートすると思われます。
注目の一戦、DAZNで見届けましょう!
↓DAZNはこちらから
【宣伝】
ボクシング用品専門ショップをやっています!
FLY、Casanova、UNIQ等々、珍しいメーカーを集めたセレクトショップです!
是非見てみてください!