さて、今日は朝から（夜中から？）ボクシング三昧、という人も多いでしょう。
そしてやっぱりこの日のメインイベントは、ルイス・ネリvsアザト・ホバニシャン。
みんな大好き（）ルイス・ネリが猛烈フィジカルファイターであるホバニシャンと戦うこの一戦は、そのマッチアップ自体も素晴らしいですが、勝者はWBC世界スーパーバンタム級タイトルに挑戦できる権利を獲得できるというもので、それもまた非常に興味深い。
ということで、今回のブログはネリvsホバニシャンの観戦記。
↓プレビュー記事
2/18（日本時間2/19）アメリカ・カリフォルニア
WBC世界スーパーバンタム級挑戦者決定戦
ルイス・ネリ（メキシコ）33勝（25KO）1敗
vs
アザト・ホバニシャン（アルメニア）21勝（17KO）3敗
世界初挑戦で世界初戴冠となったルイス・ネリが山中慎介戦に臨んだのはもう何年も前の話。そこからネリにも色々とありましたが、日本のボクシングファンの国民感情としてはネリを許す気にならないことは当然のことです。
初戦では薬物疑惑、再戦では体重超過というコンボを叩き出したルイス「パンテラ」ネリは、その後何事もなかったかのように大復活してこの位置まで舞い戻ってきました。
ブランドン・フィゲロア（アメリカ）に敗北も、プロスペクトを降して得たネリは、早々の世界挑戦とはいかず、ちゃんと順を追って挑戦者決定戦に出場。メキシカンという利点を活かし、このまましれっと世界挑戦にこぎつけるかと思っていましたが、ネリに立ちはだかるのは強豪、アザト・ホバニシャン。
さて、ホバニシャン！ボディだ、ボディをたたけ！！
初回、まずはリング中央、ネリがリードを伸ばして牽制。ファーストヒットはホバニシャンの右ストレート、この右から入るパターンは良さそうです。
ネリも負けじと得意のカウンター、またリターンで反撃します。
ガードを固めてインサイドに入ろうと試みるホバニシャン、ネリは自分の得意の距離をキープしようとする、予想通りの展開。
ただ、ネリの方がより手数を多く出し、ホバニシャンはちょっと見すぎている印象。もっとグイグイ行ってもらいたいが、ネリが常にカウンターの準備をしているため、ちょっと入りきれないか。
2R、低い姿勢からプレスをかけるホバニシャン。右ボディストレートを見せてから上へ返す、という定石のプレスのかけ方ですが、これがネリには非常に効果があると思います。ボディを警戒してかL字に構えるネリは右リードブローが減り、その分ホバニシャンは攻めやすくなります。
ネリの左カウンターは鋭いですが、それを恐れず前に出るホバニシャン。こうして徐々に削っていけば、後半にチャンスがありそう。
しかし後半はネリの猛チャージ、からホバニシャンも反撃してエキサイト！
3R、更にアグレッシブにいくホバニシャン。ただ、ネリのディフェンス能力はさすがという反応に支えられています。
ここで諦めずにしつこく攻められるのが「クレイジーA」ホバニシャンのストロングポイント、前半は多少ポイントを取られても構わないのでこのまま行ってほしい。
中盤、ネリのワンツーが真正面からヒットしますが、ホバニシャンはニヤリとして効いていないアピール。ただ、やはりネリの回転力は侮れません。
4R、ホバニシャンの踏み込みは鋭いですが、その分ちょっと隙も多いか。ネリのカウンターのいくつかはホバニシャンにヒット、それでも前進をやめないホバニシャンですが、こちらの的中率はやや低い。更に、ボディをあまり打てていないのも懸念事項。
中盤打ち合いとなった際に先にクリンチに行ったのはホバニシャンで、ここまでどちらがダメージを被っているか、と考えると、やはりホバニシャンの方かもしれません。何せネリのパンチは1発のクリーンヒットで終わらず、2発3発と立て続けにヒットして脳を揺らすパンチで、対してホバニシャンのパンチはやや単発気味。
5R、追っていくホバニシャン、ネリはステップワークと上体の動きでエスケープ。ちょっとホバニシャンはネリを捕まえられませんが、ネリのカウンターも単発気味になっており、こちらはちょっと疲れが見えるか。ディフェンスも横着のスウェーでかわそうとすることが多くなっているように見えます。
そして足を止めたネリは、後半、ホバニシャンの前に立ち止まってその場でカウンターを取り始めますが、これが上手い。下半身は伸び切ったままながらも、その弧を描くパンチは的確にホバニシャンを捉え、ホバニシャンは後退！そこからネリが得意のラッシュをしかけるとホバニシャンは更に後退、これはピンチ！
ネリはここで決めようと来ますが、ホバニシャンも応戦！ホバニシャンは甚大なダメージを被ってしまったかもしれません。インターバルで回復できるか。
6R、ホバニシャンは肚を決めたか、低い姿勢から打ち合いを挑みます。それをネリはすかし、カウンター戦法。奥手のパンチを同じタイミングで打ち合う場面が過ぎ、中盤はホバにシャンがフィジカルでゴリゴリ押していく戦法。この距離にとどまれればホバニシャンの距離です。
ただ、ネリがステップを使い始めるとホバニシャンはなかなか追い詰められず、このラウンドは終了。
7R、ネリは完全に省エネ戦法に移行、基本的にはステップワークで躱し続けるカウンター狙いで、おそらくどこかでパンチをまとめてポイントを奪取しにくるのでしょう。
ホバニシャンが逆ワンツーを当てるとネリもワンツーをヒット、中盤移行は中間距離での打ち合い、上体の動きが豊かで回転力のあるネリと打っている時の頭の位置が変わらないホバニシャンでは、ちょっとホバニシャンに分が悪いように見えます。
このラウンドのゴング後、ネリはパンチを出してしまいますが、これをレフェリーが見事なタイミングで割って入ります。これがホバニシャンに当たらなくてよかった。ナイスレフェリー、よく見ていますし、見事なパリー。
8R、このラウンドは前半から危険なパンチの交換！双方カウンターのタイミングでフックをヒット、これは危険な戦いです。
その後はやや落ち着いた展開、ホバニシャンはプレスこそかけていきますがさほど手がでるわけではありません。ただ、ネリのワンツーをしっかりと外している事は素晴らしい。
後半はホバニシャンがヒットをまとめたことで、このラウンドはホバニシャンに流れたか？
9R、さて、ここからです。ネリのスタミナと集中力が切れてくると思われるのは。ホバニシャンにはここからもう一段階、がんばってもらいたい。
序盤からホバニシャンはスパート、時に頭から入ったりと手を出します。ネリはここにきてガードを固め、下がりこそしないもののやはり休んでいる感じも見えます。かといって、ネリのカウンターやパワーが衰えているわけではなく、ホバニシャンとしてはここを休ませない事が必要です。
ネリは時折のカウンターで対抗、さすがに良いカウンターをコネクトしますが、それでもやはり手数は少なすぎる気がします。
加えてやはり疲れも見える事から、ホバニシャンはネリと同時打ち、もしくは打ち終わりを狙うべき。
終盤、会場からは大歓声の打ち合いも、ネリはホバニシャンにもたれかかろうとしている場面も。
10R、いよいよホバニシャンのプレスがネリを上回ってきたか。と思った瞬間、ネリのカウンターで顔を跳ね上げられるホバニシャン。
しかしその後も止まらなホバニシャンのしつこいアタック、ネリはディフェンスに大きな注意を割き、待って待ってのカウンター戦法。
ホバニシャンのパンチの的中率はよくありませんが、明らかに押されているのはネリ。
しかし後半、ネリが起死回生のカウンターをヒット！ぐらりと後退したホバニシャンにネリは追撃、ホバニシャンはダウン！！！！
なんとか立ち上がったホバニシャンに対してネリは猛攻、ここで助け舟のラウンド終了のゴング！！！
一瞬ストップされたかと思いました。ホバニシャンのダメージはかなり深そうで、残念なことにネリのKOチャンス。。。
11R、やや足取りが怪しいホバニシャンですが、あくまでもプレスをかけます。ネリは精神的にかなり回復してしまったか、嵐のような回転力で連打を繰り出してきます。
これに対して応戦してこの難を逃れたホバニシャン、限界は近いでしょうがしつこいプレスをやめません。この攻撃はネリのディフェンスに阻まれ、ネリは一通りのディフェンスを行ったのち、カウンター一閃！ここでまたもよろめいたホバニシャンをみてレフェリーはストップ！！
ルイス・ネリ、11RTKO勝利！！！
う〜ん、これは残念な結果になってしまいました。ネリは序盤から的確なカウンターと連打を決め続けた事でホバニシャンにダメージを蓄積させての11RTKO勝利、お見事です。
多くの時間はディフェンスに使いながらも、攻撃する時は一気に攻め立てる分見栄えもよく、またその連打の回転力は速く、そして当て勘もあるため、ポイント自体も振りやすいボクシング。休む時は休むというメリハリも効き、やはりこのルイス・ネリはボクサーとして非常に強い。
対してホバニシャンは非常によく頑張りました。ポイント的にはおそらく劣勢だったと思いますが、巻き返しはじめたところでの10R目のノックダウン、あれがすべてを決めてしまいましたね。フルラウンド戦っていれば、勝負はわかりませんでした。
それまでのダメージの蓄積と、もしかするとちょっと気を抜いてしまったところにもらってしまったかもしれないカウンター。そこから詰め切るネリのラッシングパワーも手伝っての敗戦。
タラレバを言えばいくらでも出てきそうですが、今日の結果はネリの11RTKO勝利、そして非常に面白い、素晴らしい試合だったと言えます。
これでWBC世界スーパーバンタム級の挑戦権を手に入れたネリ、挑む王者はスティーブン・フルトンか、それとも井上尚弥か。
これはこれで、楽しみなのです。
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