あっという間に7/30(日)。
ついこの前フルトンvs井上が終わり、その余韻に浸っていたかと思うと、すぐにスペンスvsクロフォードというビッグマッチが訪れました。
まあ、そういう日程だったわけですが。
このスペンスvsクロフォードは、フルトンvs井上よりもその結果が分かりづらい。
オッズも非常に競っており、両者ともにハイレベルすぎて予想がつかない、というレベルのものです。
フルトンvs井上を経て、井上尚弥のPFPキング返り咲き、と囁かれるものの、この試合のいずれかのパフォーマンス如何によってはまだまだわかりません。
ということで今回のブログは、スペンスvsクロフォード、そしてそのアンダーカードに組み込まれた、ドネアvsサンティアゴの観戦記。
7/29(日本時間7/30)アメリカ・ラスベガス
WBC世界バンタム級王座決定戦
ノニト・ドネア(フィリピン)47勝(28KO)7敗
vs
アレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ)27勝(14KO)3敗5分
7/15に予定されていましたが、この興行に穴が空くとこの日にスライドした一戦。日本ではあまり考えられないことですね。
↓プレビュー記事
ドネアの勝利を願いますが、やはりドネアは常に年齢というのが気にかかりますね。リング中央で向き合ってみると、やはりサイズの違いはあります。さて、どうなるか。
初回、ドネアがどっしりと構えてプレス。サンティアゴは下がりながら対応、ここはまだ様子見段階でしょう。
サンティアゴは時折右オーバーハンド、まっすぐのジャブ。ドネアはプレスをかけつつ距離をつくっており、まずはサンティアゴに圧をかけて手を出させ、カウンターのタイミングを探ろうとしているように見えます。
ドネアの動きはキレという点においては物足りませんが、まだフルスロットルではないでしょう。良いプレスをかけれています。ただ、このラウンドはサンティアゴの鋭いジャブも良いイメージ。
2R、ドネアはサンティアゴの左フックに下がりながらのカウンター。これは当たりませんが、タイミングは合ってきています。サンティアゴのジャブに対しての右クロスは、ちょっと遅いか。
サンティアゴは後半にかけて手数を増やしていきますが、この回転力は非常に厄介なものです。絶えず左右を振っていけば、ドネアのカウンターチャンスは非常に少なくなります。
3R、とか思っていたのに、ここはさすがドネア、サンティアゴの鋭い左右のフックのさなかに左フックカウンター!これでサンティアゴは後退!
じっくりと追うドネア、ここは無理をしてまではいきませんが、サンティアゴもハートの強いボクサーで、逃げることはせずしっかりと手を出して来てここをサバイブ。
やっぱりドネアは当てるんですよねぇ。。。
4R、サンティアゴはよく動きます。そのコンビネーションは非常にパワフルで、回転力があり、ダメージを感じさせません。回復力もさすがのものです。
ドネアは相変わらずどっしりと構えたスタンスから、一発必中のカウンター狙い、合間に出すジャブも良い。
5R、ドネアのジャブカウンター、左フックカウンター。サンティアゴは思った以上にドネアの圧が強いのか、なかなかチャージできずにいます。
後半、ドネアの左ボディカウンターで一瞬サンティアゴの動きが止まるも、サンティアゴは強気に手を出してリターン。ちょっとこのラウンドはドネアの被弾が増えてきたような感じがします。
6R、サンティアゴが一段ギアを上げたか、非常にエネルギッシュに出てきます。ちょっとドネアはやはり反応が良いとは言えませんね、サンティアゴのいくつかのパンチを被弾。
後半にかけて、スタミナ面や集中力の面でちょっとドネアに対して不安がよぎります。
7R、サンティアゴの暴風のようなコンビネーション!このサンティアゴの真骨頂にドネアはガードで対応ですが、バランスを崩して見栄えが悪い。このあとバッティングでサンティアゴがカット、その後はドネアがプレス。
8R、前半、ドネアの左フックカウンター。しかし中盤にはサンティアゴのワンツー。このワンツーがオーバーハンドではなくまっすぐのワンツーで、タイミングが速く、これにドネアが反応できていないことが悲しい。
そして後半、ドネアはロープに詰められる場面もあり、これはキツいか。。。
9R、ドネアがプレス。これはこの危機に戦い方を変えることができるのはキャリアなのでしょう。サンティアゴのパワーパンチで体勢を崩すことが多くなっているドネア、その後もどうしても被弾は多い。
10R、サンティアゴの動きは落ちません。このラウンドはサンティアゴの右クロスが幾度かドネアを捉えています。
この右がクロスで打ったりまっすぐ打ったりと意外と頭を使っています。
ドネアは厳しい。警戒心を隠さないサンティアゴに対して、なかなか左カウンターが当たるイメージが湧きません。
11R、ドネアの攻撃は非常に力がこもっています。しかし力めば力むほど、どうしても身体も固くなってしまい、リターンにより被弾。サンティアゴはしっかりとドネア対策をしてきた、といえるスピードと回転力、ぐいぐいと行くのではなくちゃんと引きを考えたボクシング。疲労感、ダメージのあるドネアはこのラウンドも押し込まれています。
ラストラウンド、サンティアゴはかなり余裕を持って戦っており、スタミナも十分、パンチのキレもあり、身体もキレています。
ドネアはいつ頃からか足元に力が入っていないように感じられ、まだナチュラルタイミングこそ持っていますが倒せるパンチは持っていないのでしょう。
絶望感とともにフルラウンドが終了。
前半いけるか、と思いましたが、やはり後半にかけてはどんどん落ちていってしまったドネア。序盤に思い切って勝負をかけていれば、タラレバはいえるかもしれません。
ともあれ、判定は115-113、116-112×2でアレハンドロ・サンティアゴ。
なんともつらい、落日。しかし若きボクサーに次を託した、という役目を終えたともいえるノニト・ドネア。井上戦、ウバーリ戦、そしてガバリョ戦。この戦いは、やはり「灯滅せんとして光を増す」という戦いだったのでしょう。
新王者となり、涙を流すサンティアゴ。いくつもの敗北を経験し、ようやくたどりついた世界タイトル。やはり、タイトル戦というのはこうであってほしい、このようなリアクションをしてほしい、というような勝者の姿です。
ある程度は予想出来た結果ながらも、それでもやはり、切ないものです。
世界ウェルター級4団体統一戦
エロール・スペンスJr(アメリカ)28勝(22KO)無敗
vs
テレンス・クロフォード(アメリカ)39勝(30KO)無敗
そしてとうとう、この戦い。
現代の「The Super Fight」、まさにその名に相応しい戦いです。
お互いへのリスペクトを持ち、様々な困難を乗り越えてこの試合を実現した立役者は、二人のボクサー。
↓プレビュー記事
いよいよ、ゴング。
サウスポースタートのクロフォード。まず快調にジャブを飛ばすのはスペンス、クロフォードはやや後ろ荷重で様子見。
右ジャブの差し合い、先に奥手を出したのはスペンス。ここをガードするクロフォード、若干、クロフォードのジャブの方が伸びているように見えます。
後半、強く攻め入るスペンス、これにクロフォードも奥手を出して応戦。将来殿堂入り確実のボクサーふたりが、無敗という状態のまま、戦う至高の第一ラウンドは最高の様子見ラウンド。
2R、スペンスがダブルジャブから左ストレート。クロフォードは低く構えてアップガード。
1分が過ぎた頃、クロフォードがやや攻撃のためのフェイント。からのコンビネーション。
徐々にパワーパンチを出し始めるスペンス、対してクロフォードは後半、ジャブのギアを上げたように感じます。
そしてスペンスがボディジャブで入ったところに左ストレートをリターンからの前手(右)のストレート!これでスペンスは押し倒されたようなダウン!!!
なんと、この序盤でダウンシーンが訪れようとは。
立ち上がったスペンスにクロードが攻め入ったところでゴング。
3R、スペンスはプレスを強めます。やはりフィジカルのパワーはスペンスか。
明らかなチャージ状態に入ったスペンス、ここはいくべきところなのか??
出てくるスペンスに対してクロフォードはリターン、ダウンを奪った逆ワンツーも出しています。このパンチの右ジャブを右フックに変えたパンチもヒット、今日のクロフォードはこの奥手から入るパターンが非常に良く、これにスペンスはまだ対応ができていません。
スペンスをもってしても、クロフォードを崩すことは難しいか。
4R、スペンスが攻め入ります。そのリターンで流れるようなコンビネーションのクロフォード。
スペンスが鼻から出血、クロフォードはボディ、顔面への打ち分けが素晴らしく、左ストレートの角度が素晴らしく、というかもう何でもかんでも素晴らしいコンビネーションを見せています。
ちょっとよくないもらい方をしているスペンスも、それで怯むようなことは勿論なく、力強い攻撃。
しかし後半、クロフォードがプレスをかける展開になると、スペンスはちょっと手が出なくなってしまいます。何をやっても通用しない、という気持ちになっているのかも。
5R、スペンスのステップインジャブに対して、左クロスから右、左、右と恐ろしいほどのコンビネーションをリターンするクロフォード。スペンスのどこにそんな隙があったのかはわかりませんが、こんなことをされると無理ゲーです。ジャブすら打てなくなってしまいます。
これはキツいぞスペンス、思い切って距離を詰めていきますが、これではクロフォードの思う壺。ダウンもペースも取られたことが影響してか、やや焦りの見えるスペンス。このようなスペンスを見るのは勿論初めて。
6R、ここまでのパンチスタッツはスペンス54/265、クロフォード88/200。スペンスに逆転の芽はあるのか。
クロフォードは流れるようなコンビネーションそのままに、徐々に力強さを増していきます。ご存知、テレンス・クロフォードというボクサーは中盤以降に本領を発揮するボクサー、つまりはこれからです。
なので既に絶望的な状況とも言えるスペンスですが、なにか策はあるのでしょうか。
プレスをかけるクロフォード、スペンスがちょっと下がる展開で、中盤にクロフォードのジャブで顔を跳ね上げられ、飛び込めば左ストレートを打ち下ろされてしまいます。
スペンスはゼロ距離での接近戦を仕掛けたいということなのでしょう、身体をくっつけてフィジカルで押していこう、とします。が、クロフォードはこのクロスレンジでのボクシングも非常に上手く、終盤には後ろ手のアッパーをヒット。
7R、力強く攻め入るスペンス、しかしクロフォードは引きながらの右フックカウンター、からのコンビネーション。ほぼ完璧な、いつも通りともいえる冷静さを持って戦うクロフォードに対して、スペンスは焦りからか熱くなり、力強さこそあるもののどんどん雑になっていく印象。
当然、そこを見逃すクロフォードではなく、1分がすぎる頃、強く攻め入ったスペンスにクロフォードのカウンター!これでスペンスがダウン!!!!全然見えませんでしたが、のちほどのスロー再生を見るとスペンスの大きな左に対しての右アッパーカウンター。。。これはありえません。。
立ち上がったスペンス、クロフォードの攻めに対してリターンしてこの場をしのぎますが、焦らないクロフォードはカウンター。ここでボディカウンターでスペンスを下がらせ、右フックのダブルをヒット!!スペンスはこのラウンド2度目のダウン!!
通算3度のダウン。。。展開というのもある(と信じたい)のしょうが、ここまで差があるとは。
8R、身体を小刻みに振り、プレスをかけるテレンス・クロフォード。スペンスの抵抗はスッと距離で外し、攻めればとにかく空いているところに着弾させます。
スペンスはちょっとできることが亡くなってきて、八方塞がりか。それでも鋭い左オーバーハンド、これは当たりませんがもし当たれば、というパンチです。
9R、スペンスは距離を詰めてチャージ。しかしスペンスは序盤よりも明らかな反応の鈍さ、そしてとりわけ下半身にパワー不足が見て取れます。
クロフォードのジャブを浴びて顔面を跳ね上げられ、ボディを打たれてはその対策ができていません。
唯一ボラードのように放つ左はスピードもパワーもありますが、これがクロフォードに到底当たるとは思えず、果てはこの左をミスしたところにクロフォードの右カウンターを被弾。そこからクロフォードにまとめられたスペンスを、レフェリーが救い出し、試合がストップ!!
テレンス・クロフォード、9RTKO勝利!!
クロフォードの方がきっと技術が上なのだろう、という漠然とした思いは、きっと多くの人が持っていたはずです。クロフォードの方が戦いづらさもあり、要所要所でパンチをまとめてダメージを与えていくのでは、と。
その中でスペンスがパワーで対抗する、ともすれば一発が当たることもあるのでは?ということでスペンス優位を推す声も多くあった、ということなのだと思います。
ところが蓋を空けてみれば、テレンス・クロフォードの完勝。
この戦いは、クロフォードが終始「やりたいこと」を出来た試合ではありましたし、スペンスは「想像以上に崩された」試合だったのだと思います。
この勝ち方で言うと、やはりPFPキングは井上尚弥ではなく、テレンス・クロフォード。
ここまで強いのか、というのを示した試合としても、井上よりもクロフォードは上ではなかったか。
群雄割拠のウェルター級の中で、更に一つ抜きん出た存在となったテレンス・クロフォード。
恵まれない時期を経験しつつも、この試合を経て間違いなくボクシング史上最高のボクサーの一人に数えられるのだと思います。
このように圧倒的な差を見せつけた試合だったとしても、このふたりは再戦するのでしょう。
そうなると、今度はスペンスがどこまでクロフォードに食い下がれるか、少しでも差を縮められるか、が焦点となってきます。スペンスの勝ち筋は、非常に薄い。
ということはもう、クロフォードvsイノウエが待ったなしですね(笑)。
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