疲労がすごい。
現在、JSPO(日本スポーツ協会)が主催している公認コーチというものの講習を受けにきているのですが、朝から夜までしっかりと時間を取られ、これがなかなかハードです。
内容的にもほとんどの時間がワークショップのため、気を抜く暇もなく、頭を使うことに慣れていない私にとっては苦行です。
せっかく東京に来たので、ジムでトレーニングを、と思い、シューズくらいは持ってきては見たものの、その気力と時間を捻出することも難しい。
とりあえず見たい試合はあるし、ずっとワークショップで携帯をいじる時間もほぼないおかげで情報遮断に悠々と成功できるところだけは良いところ。
ということで今回は、日本時間10/8(日)に行われたイギリス、アメリカの注目試合の観戦記。
10/7(日本時間10/8)イギリス・シェフィールド
WBA世界フェザー級タイトルマッチ
リー・ウッド(イギリス)27勝(16KO)3敗
vs
ジョシュ・ウォーリントン(イギリス)31勝(8KO)2敗1分
↓プレビュー記事
さて、猛烈ファイトになりそうなウッドvsウォーリントン。イギリス、それもイングランドのライバル対決というのは盛り上がりそうです。
苦労人であり、さらに私の応援しているイギリスボクシングブランド、FLYとサプライヤー契約を結んでいるウッドを応援です。
第0ラウンド、選手コール時の歓声の大きさは、ドローか。ここはシェフィールド、ともにホームとも言える場所です。
チラリとエディ・ハーンが映りますが、この試合の一番の勝者は、エディ・ハーンかもしれません。どちらが勝利したとしても、結局ハーンは王者を抱えていることに変わりありません。
注目の12R、開始のゴング!
から早々に低く入っていくのはウォーリントン。ウッドは下がりつつジャブを突いて対応しますが、こちらもコンビネーションで反撃。ウォーリントンはもちろんですが、ウッドも近い距離で戦おうとしているようです。あまりウォーリントンを調子づかせないために、まずは足を使うことなく真っ向勝負のようで、強い右を打ち込んでいきます。
必然的にクリンチの場面は増えます。頭もかなり危ない。
しかし後半、ウッドはいつの間にやらサウスポーにスイッチ、まっすぐのストレートを撃ち放ちます。これによりクリンチは激減も、現段階でこれが良いのか悪いのかは不明です。
2R、引き続きサウスポースタートのウッド、ウォーリントンは戸惑いがあるのか、ハイガードを保ちつつも踏み込みますが、これが全然ウッドに届かず。
もしかしてウォーリントンはサウスポーが苦手なのか、それともまだこのスイッチに対応できていないだけなのか。
いずれにしろ一気にウォーリントンは怖さを失い、初回の序盤と比べて面白いくらい距離が空きます。
3R、ウッドはやりやすさを感じているか、そのままサウスポー。しかし一念発起したウォーリントンは強引に攻め、左右のフックをウッドに叩きつけます。このウォーリントンの攻めに下がってしまったウッドはウォーリントンの攻撃をロープ際で受けてしまいます。
その後もウォーリントンの攻撃を真っ向から受け止めてしまうウッド、やはり近い距離での戦いはウォーリントンに分があり、早くもウッドは危うし。
4R、オーソドックスに戻したウッド、そうするとまたクリンチが多くなります。こうなるとまたウッドはサウスポーにスイッチ、しかしこのタミイミングでのスイッチは時すでに遅し、ウッドはウォーリントンの対応に追われているようで、後手に回ってしまいます。
後半にはオーソドックスに戻したウッド、ちょっと迷っているのか。
5R、カール・フロッチによる非公開採点が出ますが、3R、4Rはウォーリントン。これは当然、現在はウォーリントンの攻撃が奏功しています。このままではまずいウッド、アグレッシブに攻め入ります。
しかし今日のウォーリントンは非常にパワフルであり、手数もよく出てジャブ主体のウッドをよく押し返しています。頭、肩の使い方も上手く、ウッドの軸はウォーリントンの攻撃によりかなりブラされています。
6R、ウッドはちょっと集中力も切れ始めているのか、ラビットパンチのアピール。その隙にウォーリントンのパンチを浴びてしまう場面もあり、非常によくありません。
後半に入ろうかという頃、右と右のカウンター、ダメージを受けたのはリー・ウッドの方。
これはウッドに厳しい結果が待っていそうな流れです。。。
7R、劣勢のウッドはジャブを主体にアグレッシブに攻めます。しかしウォーリントンの反撃は鋭く、バランスを崩されるのはウッドの方。
1分が経とうかというところで、ウォーリントンは度重なるラビットパンチにより減点。それでもまだ、ウッドが劣勢であることには変わりありません。
激しいアクションが繰り広げられるリング、あ、いつの間にかウッドはまたサウスポーにスイッチしていますね。しかしこのことはウォーリントンがやや攻めにくくなる、というだけであり、ウッドも攻める意識が強いことから接近戦になればさほど変わらず、近い距離ではウォーリントンが優勢をキープ。
と思った終盤、ウッドの右フックがカウンターとなってウォーリントンにヒット、これでぐらついたウォーリントンはそのままダウン!!!
終了ゴングが鳴る中、カウントが継続し、そしてそのままなんとレフェリーが試合をストップ、リー・ウッド、奇跡的な超大逆転KO勝利!!!!
なんという幕切れ!!これはなかなか見ることができない大逆転KO勝利です!
勝利のその瞬間まで、全くこの結果は予想できませんでした。
どちらかというとウォーリントンの倒す力のなさに救われていた、とも言えるリー・ウッド、完全に負け試合のペースでした。その前にはおそらくボディを効かされて下がったウッドでしたが、一つの右フックカウンターをヒットしてからの左右の的中率は素晴らしく、スローで見ると4発目にヒットした最後の右フックはウォーリントンの顎を完璧に捉えています。
ウッドを応援している身としては、最上級のKO勝利を見せてくれたと思います。
しかし心臓がもたないほどの大激闘ファイト、負けたウォーリントンの体はもとより、勝ったウッドの体も心配になるほどでしたね。
これは今からでもDAZNに契約してみたほうが良いレベルです。訂正、この試合の一番の勝者は、エディ・ハーンでなくリー・ウッドのファンでした。
ちなみにこの試合の後、スタジオトークでサニー・エドワーズ(イギリス)がめっちゃしゃべくる。。。人の発言を遮ってまで喋るその姿は、やっぱり面白い王者w
トータルのパンチスタッツは、勝ったウッドが54/224、負けたウォーリントンが104/300と圧倒的にウォーリントン。ウォーリントンとしては納得できないかもしれませんが、とにかくあのたった一つのチャンスに本当に見事な的中率で左右フックを叩き込んだウッド、ストップのタイミングとしては適切とみます。
10/7(日本時間10/8)アメリカ・ラスベガス
ヒルベルト・ラミレス(メキシコ)44勝(30KO)1敗
vs
ジョー・スミスJr(アメリカ)28勝(22KO)4敗
イギリスでは衝撃のKO決着があったその日、アメリカ、ラスベガスでも大注目ファイトが。
ヒルベルト・ラミレスはドミトリー・ビボル(ロシア)に初黒星を喫してからの再帰戦、ジョー・スミスJr.も怪物アルツール・ベテルビエフ(ロシア)に痛烈に倒されてからの復帰戦。
ある種のサバイバル戦、ともいえますが、これは非常に興味深い戦いです。
↓プレビュー記事
さて、大注目のゴング。
初回、プレスをかけていくのはスミス。「スルド」(サウスポー)ラミレスは下がりつつもスミスの出てくるところにワンツーをヒット。
その後もスミスの右に左ボディを合わせるスルド、しかしスミスは構わず前進します。
良いストッピングジャブ、ワンツーをヒットするタイミングを持っているスルド、後半にも良いワンツーをヒットしていますし、やはりこのジャブでやや攻めづらそうなスミス。
スミスのキーパンチは右ボディストレートと見ますが、これもスルドはステップワークで外します。
2R、引き続き前進するスミス、ジャブとストレートを繰り出すスルド。このスルドのストレート系のパンチにより、スミスは俄然攻めあぐね、前進するも手は出ず。
スルドはステップワークを使って素早くサイドに回り込み、余裕が出てきたか自らプレスをかける場面も。スミスはまずこのステップを封じるためにも、軽くても良いのでパンチを打って前進し、しっかりと詰めていきたいところ。
3R、ある程度は打たれる前提か、スミスはパンチを打ちながら、ではなく、ガードを絞って距離を詰めにいきます。スルドはパワーパンチを打たないので、ストレートをブロッキングして対処しよう、というものでしょう。
これは一つの良い作戦かもしれません。
徐々に距離を詰められるようになってきているように見えるスミスですが、スルドは良いタイミングでコンビネーションを出し、それに相対するようにスミスは一発のビッグパンチ。こういう構図では、比較的コンビネーションパンチャーに分があるのが常です。さらに、するどのコンビネーションは一見ウェイトが載っていないように見えてその実、強い。はず。
4R、一体メキシカンはどっちなんだ、というほど、真っ直ぐな左ストレートとジャブでコントロールするスルド・ラミレスと右スイングを力強く放つジョー・スミスJr。
中盤、スミスのしつこいほどの右スイングはガードの上からでもスルドにヒット、これでスルドを下がらせます。後半にもスミスはいくつかの右をスルドに届かせていますが、果たしてそれ以上にもらっている気もします。
5R、おそらく劣勢はスミス、ですがそれを気にするボクサーでもありません。期待しましょう。
する度のジャブ、左ストレートをなかなか外せないスミスですが、被弾しつつも前進、とにかく強い右を放ってスルドに食いつきます。スルドは右ボディをヒットしたりアッパーで顔をかちあげたりと随所に技術を見せ、スミスを痛めつけていきます。続いてノーモーションの左もヒット、それでも動じないスミスは異常であり、こういう時優勢のボクサーであっても不安にはなるはず。
6R、とにかく前進し続けるスミス。ヘッドムーブも含めてスルドに向かっていきますが、とにかくスルドに逃げ場がある場所では全く捕まえられません。
近い距離、打撃戦の展開にならなければ勝機を掴めなさそうなスミスですが、これまでのダメージの蓄積か、それとも疲労か、ちょっと動きが鈍ってきたようにも見えます。
7R、スルドはもうスミスに随分慣れてしまったか、思い通りに、しかも無理せずに戦っているように見えます。
スミスはここにきて細かなパンチを放って前進、届くところで強いパンチを放つスタイルとなり、やはりこの戦い方の方が良いように感じますね。これまでよりも比較的スルドを詰めることができているように感じます。
そして終盤、ビッグチャンス!スミスの右スイングがヒット、一瞬動きが止まったスルド!ここでスミスはチャージも、まもなく終了のゴング!!これは残念!!イギリスでの試合の再来もあろうかと思う、右オーバーハンドでした。
8R、ポイント劣勢のスミスは行かなければいけません。細かなジャブをついて、プレス。やはり何もせずにガードを固めてプレスをかけるよりも、幾分も良いプレスだと思います。
しかしポイント遊星だと思われるスルドは早くもポイントアウトモードか、丁寧なジャブでエスケープモードに突入しています。これを捕まえるのは至難。
スミスもちょっと大きなパンチを狙いすぎですが、迫力があり、まだまだ試合を捨てません。
9R、完全にエスケープモードのスルド!ここで一気に出るスミス!
スルドをロープに詰めてとにかく強い一発を当てようとするスミス、ですがスルドはタフネスも保持している分、逆転の芽は小さい。
その後もスミスは強い右を幾度も振るうも、スルドはボディワークでこれを回避、アングルのついたパンチで反撃し、逆にスミスにダメージを与えます。
ラストラウンド、ここでも当然前に出るスミス、下がりながら戦うスルド。全体を通して変わらないこの構図ですが、このラウンドはスルドもポイントを取ろうと前に出てくる場面もあります。ここで雑にでもなればスミスにも大きなチャンスが訪れますが、スルドはパンチのアングル、そしてポジショニングと非常に丁寧で、およそ隙を作ることが少ない。
終盤はスミスの右がヒット、ここはムキにならずに距離を取るスルド。この構図が全てです。
規定の10ラウンズを終え、判定は99-91×3でヒルベルト・ラミレス。
終始的確なタイミングでジャブ、ストレートをヒットしたラミレスが大差の判定勝利。ただ、このポイント差以上に苦しんだ試合であったことは事実でしょう。
ラミレスにとっては逆転KO負け、という状況を常にはらんでいた、ともいえ、気の抜けるところはなかったと思いますが、そのことが10ラウンズにわたり集中力をキープできた秘訣とも言えます。
ハードパンチと諦めないハートを持つジョー・スミスだからこそ、良いパフォーマンスができたとも言えるスルド・ラミレス。この勝利者インタビューには、若干のブーイングも混じっていたように思います。
この勝利により、ファンの評価を獲得したか、は置いておいて、見事復活を果たしたラミレス。今後のライトヘビー級は、まだまだ2強が猛威を振るうのでしょうが、果たしてラミレスはベテルビエフに挑戦する勇気があるのか、それとも待つのか。
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