さあ、ゴールデンウィークに突入です。
カレンダー通りだと3連休→3連勤→4連休だから、なんだかゴールデン感がないとお嘆きの方も多いかもしれませんが。
ともあれ、このゴールデンウィークはボクシング三昧です、特に後半の4連休は。
そんなわけでもう眼前に迫ってきた感じのある東京ドーム興行、今回のブログはいよいよセミファイナル、ジェイソン・マロニーvs武居由樹のプレビューです。
5/6(月)東京ドーム
WBO世界バンタム級タイトルマッチ
ジェイソン・マロニー(オーストラリア)27勝(19KO)2敗
vs
武居由樹(大橋)8勝(8KO)無敗
2021年にプロデビューした武居由樹は、たった3年で世界タイトルへの初挑戦。
元K-1王者という肩書きをひっさげて鳴物入りでのプロデビューのあとは、変則的な強く大きい踏み込みととんでもないハードパンチを見せつけて連戦連勝、パーフェクトレコードを保持しています。
苦戦すらすることなく駆け上がってきたこのボクサーは、その倒しっぷりや謙虚な言動から今やボクシングファンの支持をしっかりと得ており、(誰と比べるわけでもないが)ボクシングファンの誰もが好意的な眼差しを向けているようにも感じます。
ただ、世界ランカーと戦うことなく挑戦権を手に入れた部分に関して言えば、何事かと思っているファンもいるのかもしれません。
武居の挑む王者は、ジェイソン・マロニー。
日本のボクシングファンにもお馴染みのナイスガイは、遠くオーストラリアからチャンピオンベルトを運んできてくれます。
しかも、自国でのスーパーファイトのアンダーカード、という名誉を蹴ってまで。
2014年にプロデビューしたジェイソン・マロニーは、今年デケイドの年。
自国オーストラリアでキャリアを積んでいたマロニーを我々日本のボクシングファンが知ったのは2018年のことで、元世界王者で井上尚弥への挑戦も経験していた河野公平(当時ワタナベ)との一戦。
タフでハートの強い河野をストップ、これは裂傷によるRTDで、当時は映像も出回って無かったように記憶していますが、とにかくこのストップ負けにより河野は引退。前戦でもレックス・ツォ(中国)との戦いでの負傷判定負けに続いての2連敗、河野はグローブの吊るしどきだったこともあり、この時はまだ名前を知っている程度のボクサーでしたね。
そういやツォ戦、マロニー戦と日本国外で戦った河野、元世界王者にこのようなロードウォリアー的な戦いをさせるワタナベジムを不審に思ったものですが、もはやこの頃から選手をプロモートしようという気はワタナベジムには無かったのかもしれませんね。
さて、この河野戦での勝利でWBSS出場の権利を勝ち取った結果となったマロニーは、初戦で当時のIBF王者、エマニュエル・ロドリゲス(プエルトリコ)にアタック。
ロドリゲスはWBSSの優勝候補まではいかないが準優勝候補であり、その実力はすでに高く評価されている時でしたね。当然、オッズはロドリゲス優位。
しかしマロニーは強敵ロドリゲスを相手に12ラウンズを戦い抜き、スプリットの判定負け。この試合はロドリゲス勝利で何ら問題ないものの、その力をしっかりと見せつけました。が、当時の私はマロニーも良い選手ですが、ロドリゲスが調子悪かったのかぐらいに思っていましたね。
初黒星を喫したマロニーは再起後、連戦連勝でタイトルチャレンジャーの位置まで戻るも、2度目の王座挑戦は「モンスター」井上尚弥。
この時は完膚なきまでに叩きのめされたマロニーでしたが、健闘が光ったのもまた事実で、のちのPFPキングに恐れず自分のボクシングを敢行しようとした姿はとても印象的。だからこそ、日本のボクシングファンはこのマロニーを応援したい、となったのでしょう。
この2敗目の後のマロニーのキャリアは、特筆しなければならないほどキツいマッチアップ。
まずはプロスペクト、ジョシュア・グリア(アメリカ)とのサバイバル戦で生き残り、元タイトルチャレンジャー、アストン・パリクテ(フィリピン)を3RTKO。そして長く世界のトップに居続けたナワポン・カイカンハ(タイ)を破って指名挑戦権を手にすると、井上尚弥後のWBO王座決定戦でリゴンドーを破ったビンセント・アストロラビオ(フィリピン)を撃破。
そして初防衛戦ではサウル・サンチェス(アメリカ)を破り、初防衛をクリアしています。
ロドリゲス戦以降は自国オーストラリアを飛び出してキャリアを積んだマロニーは、以前に比べて逞しさを身につけ、そのキレイなボクシングと相まって非常に穴の少ないボクサーに昇華されたようなイメージ。
もともと基本技術、リングIQが高いタイプだと思いますし、タフネスもハートも有している、チャートで表すと綺麗な五角形を形作れるようなボクサー。ハイガードスタイルで基本に忠実、お手本にしたいボクサーの一人ですね。
対して武居由樹は基本とはほぼ無縁と言える、無手勝流のようなボクシングを敢行するハードパンチャー。
とにかく驚くのはリングの1/4位飛び越えてくるんじゃないかと思うくらいの強い踏み込みからの前手(右)のフック。さらに、前戦だったかサウスポースタンスから大きく左ボディフックを振るい、相手のレバーに突き刺したパンチには本当に驚きます。
リーチがめちゃくちゃあル、というわけではないのでしょうが、体の回転が良く、ものすごく遠くまでパンチが届いているようなイメージです。その踏み込みの強さというだけでなく、間合いや攻めるタイミングも非常に独特のものがあり、あまり基本のボクシングをしてしまうとその良さが損なわれてしまう、絶妙なバランスで成り立っているボクシングのようにも思えます。
武居の特徴を挙げるとすれば、変則、独創的でハードパンチ。
マロニーの特徴を挙げるとすれば、基本に忠実でハイガード、ステップワーク。
真逆とも言えるボクシングを展開する二人のボクサー。
いつだって変則スタイルを攻略するのは基本に忠実なボクシングであり、基本に忠実な格上ボクサーを倒すのは変則です。
両者にとって相手が相性が良いのか悪いのか、この辺りで試合の展開は変わってきそうです。
武居由樹の勝ち筋とは
普通に考えれば、圧倒的大差でマロニー優位で問題ありません。
もし昔のように映像が出回っておらず、単にそのレジュメだけでそのボクサーを見たとすれば、武居由樹が甘く見られる分には仕方がないと思っています。
なぜなら武居はまだ世界ランカーとすら戦っておらず、その実力は世界的に見れば未知数の中の未知数。
それでも今のようにいくらでも映像が出回る時代においては、その変則スタイルを警戒されて然るべきボクサーです。
もっともっと研究されていけばわかりませんが、今のところ、あのスタイルに面食らわない「ボクサー」はいないと思われます。だからこそ、そこが武居のアドバンテージであり、勝負をかけるのであればやはり前半ということになってきはしないか。
後半に行けば行くほどマロニーのリングIQ、対応力は発揮されていくのではないかと思っています。
そして武居はまだ12ラウンズの経験はなく、最長ではブルーノ・タリモ戦の11R。ただ、この11R戦えた経験は武居にとっても大きなもののはず。
ただ、「メイヘム」(=混乱)と呼ばれるマロニーは運動量が非常に多く、多角的に攻撃を仕掛けてくるボクサー。あまりその動きを追いすぎると、思った以上にスタミナを消費してしまう可能性もあります。
複雑に考えてくるマロニーに対し、武居はいつも通りかなり長い距離をとって、一発で踏み込んでいくということが必要で、それが勝つための最善策のように思います。ジャブを突いてボクシングをしようとすればするほど、勝ち目が薄くなっていくようにすら思います。
武居としては勝負が序盤、どれだけ序盤に思い切れるか、というところが勝敗に直結するのではないかと思います。
マロニー優位の理由
初の世界戦、東京ドーム。
この重圧を感じながらも、一か八かの前半勝負を敢行することは非常に難しいことだと思います。
傍目に見ればおそらく通用しないであろう武居の「ボクシング」は、本人や陣営からすると「通用するかもしれない」と思ってしまうからです。そこに対して次善の策を考えておく、というふうにするのでしょうが、個人的には勝つためには最初から行ったほうが良いと思っています。
グローブタッチからいきなり左フック振るう、くらいの荒々しさで良い。たとえそれで玉砕したとしても。
これまでのキャリアを見ると、ジェイソン・マロニーをトラブルに陥らせるためには、はっきり言ってエマニュエル・ロドリゲス以上のパンチを決める必要があります。では果たして武居がマロニーからカウンターを取れるか、というとそうは思えず、武居はどちらかというと自ら攻めて隙をつくり、そこにマロニーが想像し得ないパンチをヒットしなければなりません。
変則的でアングルが自由自在、ボクシングとしてのセオリーにない動きができる、これこそが武居がマロニーに勝利できる唯一のことであり、武居にはそれが「できるかもしれない」ということが期待を抱かせる点です。
なのでこの部分以外、マロニーに分がある、という話になってくるわけですね。
ジェイソン・マロニーvs武居由樹、武井がマロニーに勝つにはビッグパンチを入れるしかありません。それができるのが武居由樹。それをさせないのがジェイソン・マロニー。
おそらく大方の予想はマロニー優位ながらも、期待を抱かせるという武居由樹。
これは非常に楽しみですし、正直どちらも応援したい。
どっちが勝っても楽しいし嬉しいですが、どっちが負けても悔しいし悲しい。
これがセミファイナル。。。果たしてこの東京ドーム決戦、情緒は持つのか。
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