6月末の週末、スターボクサーと言えるテオフィモ・ロペスがマイアミに登場しますが、何と言っても世界的に最も注目されているのは、アリゾナで行われる軽量級のスーパーファイト。
長くトップを直走ってきた「ガジョ」エストラーダに、若き2階級制覇王者、「バム」ロドリゲスが挑む一戦。
かつてHBO末期、「SUPERFLY」と銘打たれた興行で大きな盛り上がりを見せたこの階級は、それからもずっと注目された階級ではありましたが、今回の戦いを皮切りにまた「SUPERFLY」再燃ともなりそうです。
ということで今回のブログは、ファン・フランシス・エストラーダvsジェシー・ロドリゲス、世界が注目する軽量級ファイトの観戦記です。
↓プレビュー記事
6/29(日本時間6/30)アメリカ・アリゾナ
サニー・エドワーズ(イギリス)20勝(4KO)1敗
vs
アドリアン・クリエル(メキシコ)24勝(5KO)5敗1分
メインイベントは非常に注目ですが、こちらも注目です。
元王者同士のサバイバルマッチとも言える戦いは、両者ともにKO率は低いもののその戦い方は真逆であり、とにかく徹底してのアウトボックスで「魅せる」サニー「Showtime」エドワーズ、このKO率が信じられないほどパワフルなファイタータイプ、アドリアン・クリエル。
ここはサニーの大復活を見たいところですが、このクリエルは侮れません。クリエルとしてもただの1度シベナチ・ノンシンガを倒した一発屋で終わるのか、それともここから再浮上するのか、今後のキャリアに関わる試合。
初回、エドワーズがサークリング、クリエルがプレスというスタート。エドワーズはコンビネーションを放ち、単発で打ってすぐ離れる、サウスポーへのスイッチと調子は良さそうです。
クリエルは上体の動きがない分、ちょっと的にされやすいイメージで、時折強引に入っていくのは良いですがうまくいなされています。
2R、大きな動きでエスケープしつつ、タイミングで軽いパンチを放つエドワーズ。クリエルはこれを気にせずに打たなければいけませんが、なかなか手が出せない現状です。
「頭を振れ」「被弾覚悟で同時に打て」で良いのでしょうが、動き回るエドワーズに対してこれがなかなかできないですね。
クリエルがなかなか手を出せない&出してもうまく当たらない、ということで、エドワーズはどんどん調子が出てきています。
3Rも展開は変わらず。エドワーズが左で押すとクリエルは尻餅、これはスリップダウンですが押されただけで尻餅はいかがなものか。クリエルはしっかり腰を据わらせてもっと強くいくべきかもしれません。前に出るクリエルに対して、おそらくエドワーズは怖さを感じておらず、クリエルはまずそこを何とかしないといけません。
4R、エドワーズはジャブ、ジャブ、ジャブ、時に左フックでジャブ。あとはステップワークとピボットターン、プロボクシングにおいてタッチゲームをしようという振り切ったボクシング。
クリエルはなかなか近づくことすらままならず、前進するときにやはりちょっと腰高ということもあり、フィジカルで攻めることもできず、足ではもちろんついていけず。
5R、クリエルのパンチはより力強さを増し、強い前進。その分隙も大きくなることで、エドワーズのコンビネーションを浴びてしまう場面も。
6R、クリエルも手が出るようになってはきているものの、クリエルが攻めようとすればエドワーズのジャブ、または軽いストレートが先に届き、すでにクリエルが反撃する時にはエドワーズがその場にいません。
クリエルがプレスを強めた後半、揉み合いの中でエドワーズが右眉付近をカット、かなり大量の血が流れています。バッティングのようです。
この血が目に入ることで見えづらくなり、エドワーズの動きが落ちるという可能性がありますが、残り時間は少なく、このラウンドは終了。
7R、かなり大量の出血でしたが、エドワーズの出血は止まっています。素晴らしいカットマンがいるようですね。
これを契機により大きな動きのエドワーズ、クリエルは全くと言って良いほどついていけません。傷の位置的には、ギリギリ目に入らないところか。
8R、ガードを固めて前進するクリエル、相変わらずなかなかインサイドで戦える時間は少ないままですが、こうラウンドには中盤にエドワーズのボディを乱打する場面。ただ、如何せん的中率は悪く、その時間は非常に短い。その中でも、接近さえすれば揉み合いの中でエドワーズの顔面を擦り出血を促すことができるので、やはり諦めずにとにかく近づくべきところでしょう。
9R、開始直後にドクターチェック。かなり深く、広い傷ですね。
このドクターチェックで試合が終了。負傷判定となります。
判定は、90-82、88-84、87-85の3-0の判定でサニー・エドワーズ。
会場はブーイング。それでもフルマークで然るべき判定のように思います。エドワーズの勝利者インタビューの間も大きなブーイング。これは判定への不満というよりも試合内容への不満なのでしょうか。いずれにしろサニー・エドワーズは自分のボクシングを貫き通しての勝利、元王者に対して格が違うほどでしたね。
WBC世界スーパーフライ級タイトルマッチ
ファン・フランシス・エストラーダ(メキシコ)44勝(28KO)3敗
vs
ジェシー・ロドリゲス(アメリカ)19勝(12KO)無敗
そしていよいよメインイベント。負傷判定という望まれない結末でセミファイナルが終了しましたが、このメインイベントはそうはならないはず。
両者とも好戦的ではあるが故に、おそらく近い距離でのボクシングとなり、片方が大きく踏み込んで頭をぶつける、については想像しづらい。
近い距離だから頭が当たりやすい、というのはありますが、やはり技術のあるボクサー同士ではバッティングも起こりづらいはず。オーソドックスvsサウスポーという、バッティングが起こりやすい組み合わせでも、この二人ならきっと大丈夫でしょう。
当然、この日一番の盛り上がりを見せたリングコール。そしてゴングです。
初回、リング中央でまずは探り合い。エストラーダの方が若干手数を出しての様子見、ロドリゲスはバックステップでの対応です。
中盤に入るとロドリゲスも攻め入る場面が出てきており、ジャブを打った後にすぐ動く準備をしてい流のが分かりますね。
後半、エストラーダの攻撃に対してロドリゲスのリターンが速い。ここにきてやはりロドリゲスは前戦よりもキレがさらに増しているように思います。
コンビネーション、左ストレートをヒットしたロドリゲスが優位でしょうか。
その後エストラーダも右をヒット、両者譲らない初回は今後の戦いに期待を抱かせるオープニングラウンドです。
2R、会場はガジョコール。ただ、若干このガジョ・エストラーダには遠い距離か、バム・ロドリゲスにとって良い距離での戦いに見えます。
バムはワンツーからのサイドステップ・コンビネーションで攻め入るとやはりエストラーダはこの動きを追いきれていないイメージ。
エストラーダも近い距離では右をヒットしてバムの顔を跳ね上げますが、遠い距離ではバムの踏み込みにちょっと防戦に入ってしまうイメージです。
3R、変わらずバムの動きがキレています。
右ボディを叩いてエストラーダに外側を意識させた後、左を伸ばしてから左側へのサイドステップ、で右のスリークォーターブローをインサイドから叩き込みます。
これが効いたか、エストラーダは後退!一気に攻め入るバム!エストラーダも反撃も、あまり距離がよくありません。コーナー際にエストラーダを追い詰めるバム、しかしここは決して焦ることなく強いジャブを突き、左ストレートを突き、エストラーダの反撃はしっかりとブロッキングで対応しています。
4R、ここまでは若干押され気味のエストラーダでしたが、ここは手数を増やしてバムに迫ります。遠い距離から踏み込んでこられる分には若干分が悪いエストラーダですが、近い距離でのその回転力は流石のもの。
この接近戦にこそ活路を見出したいエストラーダ、被弾を恐れず近い距離で戦うその姿は、まさにメキシコの戦士。
しかし後半、バムがジャブから左アッパーをヒット、それで体が浮いてしまったエストラーダに左ストレートをヒット!これでエストラーダはダウン!!!
立ち上がったエストラーダに対してバムはじっくりとコンビネーションで攻め立て、エストラーダがスリップダウンを喫したところでゴング。
またも「利き腕のアッパーからストレート」でのダウン。最近多い。
5R、ここは待たずに狙うジェシー・ロドリゲス。丁寧に強いジャブから左ストレートを返していきます。しかしエストラーダもここを勝負所とわかっており、しっかりと打ち返して譲りません。
近い距離、からエストラーダが若干バックステップしたところでバムの左ストレートがヒット。その後もアッパーをヒットしたバム・ロドリゲス、下がる絵ストラーダを追いかけに追いかけて的確にパワーパンチをヒットしていきます。
これはすごい。
前半良い攻撃を見せたエストラーダでしたが、結局ポイントとしてはジェシー・ロドリゲスに持っていかれているかもしれません。
6R、流れは完全にバムか、決着も近いか。
と思っていたこのラウンド、なんとエストラーダのワンツーがヒットして今度はバムがダウン!!!
意地を見せたエストラーダ、ヒット数としてはおそらくバムが上回る中でも決して諦めることなく、強打を決めて見せました。
ここでエストラーダもより攻撃的になり、勝負に出ますが、明らかにバムの的中率の方が良い。とはいえ、ポイント的にはここはダウンを奪ったエストラーダのラウンド。
それでももしかすると10-8じゃなくて10-9ぐらいつけるジャッジがいてもおかしくないくらいのラウンドですね。
7R、バムがスピードとステップで波状攻撃。それが収まるとエストラーダが旺盛な手数で攻め立てます。
エストラーダも距離をしっかりと把握できている状況であり、その攻撃は力強い。それでもやはりバムの距離感は優れており、このエストラーダの抜群の攻撃を距離で外すこともしばしば。
このラウンドの終盤、残り10秒の拍子木が鳴った後。
攻め込んだエストラーダの右、に合わせたバムの左ボディショットがカウンターとなってヒット!!悶絶して倒れたファン・フランシス・エストラーダ!!!
このダウンでレフェリーはカウントを10まで数え、ジェシー・ロドリゲスの7RKO勝利が確定!!
なんという勝利、ジェシー・ロドリゲス!!
過去最高、とも言えるパフォーマンスだったサニー・エドワーズ戦を超えるパフォーマンスでフランシス・エストラーダをノックアウト!!
当然、エストラーダがKO負けしたことはありません。長らくこのスーパーフライ級を盛り上げてきたスーパースターは、見事、新旧交代という一大イベントを終え、次の世代に軽量級のボクシングを託すという役目を終えました。
このセンセーショナルなノックアウト勝利を得、スーパーフライ級の真のニュースターとなったのはジェシー「バム」ロドリゲス。この勝ち方は、P4Pリストをよりアップさせるのでしょう。
まだ24歳、ということ考えると、1戦1戦どんどん強くなっても不思議はありません。
まだしばらくこの階級で戦い、田中恒成、そして井岡一翔かフェルナンド・マルティネスとの王座統一戦を期待したいところですね。
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