さて、トップランクのラスベガス興行。
ジャニベック・アリムハヌリvsアンドレイ・ミハイロビッチによる世界ミドル級統一タイトルマッチは、ファイナルプレスカンファレンスの後にアリムハヌリが救急搬送、試合が中止となってしまいました。
ミハイロビッチは不憫であるし、アリムハヌリは心配です。
これでアリムハヌリは王座を返上して転級、そしてミハイロビッチが空いた王座のいずれかの王座決定戦に出場する、というのであればいくらかは報われるでしょう。
さて、そんな穴の空いてしまったメインイベントを埋めるのがco-mainにセットされていたレイモンド・ムラタヤvsテビン・ファーマーです。
もともとさして集客力のないアリムハヌリよりも、こちらの方が集客の上では重要だった戦いであったはず。
ということで今回のブログは、繰り上がりのメインイベントとなったムラタヤvsファーマーの観戦記。
7/13(日本時間7/14)アメリカ・ラスベガス
レイモンド・ムラタヤ(アメリカ)20勝(16KO)無敗
vs
テビン・ファーマー(アメリカ)33勝(8KO)5敗1分
コンビネーションパンチャーでありながら、しっかりと打ち込むパワーもある、と思われるレイモンド・ムラタヤ。ここ最近のアメリカン・プロスペクトたちは、ジャロン・エニス(は、もうプロスペクトとは言わないのでしょうが)結構しっかりと打ち込み、KOを狙うスタイルが増えてきているように思います。
そんな倒し屋としての矜持を持つ(と思われる)レイモンド・ムラタヤは個人的に非常に楽しみにしているボクサーであり、すでにWBCで2位、IBF4位、WBO2位というタイトルショットをほぼ確約されたコンテンダー。ここで元王者、しかも非常に倒しづらいアメリカンアイドル、テビン・ファーマーというのはなかなかに難しいマッチメイクであり、ともすれば評価を下げかねない戦いでもあります。
そしてファーマーとしても再浮上の大チャンス、今回の戦いに関してモチベーションは高いでしょう。
しかし、やはりここで期待するのはムラタヤがこのファーマーを倒して勝利する、そしてライト級のトップ戦線に殴り込みをかける、というそういう画です。
ファーマーに恨みはありませんが、頑張れ「デンジャー」ムラタヤ。
初回、まずは互いにジャブを飛ばしての様子見。中盤に入ると徐々にムラタヤがプレッシャーをかけていきます。
ムラタヤは惜しげもなく右のストレートも使っていきますが、ファーマーは右ジャブから左ボディストレートをうまく使い、ムタタヤの出鼻を挫きます。この辺のタイミングは流石のものです。
2R、ファーマーのジャブはよく、反応も非常に良い。年を経て衰えているかとも思いましたが、そんな風は全くないですね。
下がりながらのファーマーですが長いボディへの攻撃とカウンターを準備していることでムラタヤはなかなか攻め入ることができず、ちょっとやり込められているイメージ。ムラタヤが攻め込もうとすればファーマーが出てくるという状況になっており、このペースはムラタヤとしてありがたくないですね。
3R、ムラタヤはちょっと強引さを出してきたか。そうでなければ今のペースではファーマーに近づけませんから、良い判断だと思います。
鋭い踏み込みが出てき始めて、右ストレートの使い方も対サウスポーっぽくなってきました。ただ、ファーマーの左は顔面へもボディへも良い。
4R、ファーマーはポイントになるパンチをヒットする術に長けています。特にこの試合ではボディストレートです。
ムラタヤも右を軽く打ってサイドに回る、という攻撃は良いのですが、近づいたところでファーマーのクリンチによりコンビネーションを打たせてはもらえず。もう一工夫欲しいところ。
攻勢点、と考えればムラタヤで良いのですが、ファーマーはムラタヤの打ち終わりに右のフックをヒットしてムラタヤがバランスを崩しています。ダメージはないと思いますが、ポイントには影響するかもしれません。
5R、ムラタヤの右ストレートが当たり始めます。ちょっとファーマーの足が止まってきたようなイメージで、フォローの左フックもヒット。
強いプレスのムラタヤ、ファーマーは容易にロープに詰められてしまいますが、ここでムラタヤの攻撃に対してはしっかりとリターン、このしぶとさもさすがです。
6R、早々にムラタヤがコンビネーション。ファーマーもリターンをヒットするものの、パワー差は見た目にもありますね。
すでに落ち着いてプレスをかけることができているムラタヤ、そのプレッシャーに苛まれながらも忙しく動き回り、パンチを返すファーマー。このラウンドは結構ヒットしていますが、余裕があるのはムラタヤに見えます。
7R、ファーマーの左オーバーハンドを躱して右を打つムラタヤ。ファーマーは非常に柔らかいディフェンスで致命打とはならないものの、ちょっとダメージを溜めてきているようにも感じます。
クロスゲームですが、そろそろムラタヤが上回ってきたように感じます。
8R、左を打った後に若干体が流れることが出てきたファーマー。このプレッシャーにさらされ、疲労もかなりきてるのかもしれません。
中間距離でパンチを出し合えば、押されて下がるのはファーマー。そして流れとして良くないことに、このラウンド中盤にファーマーはホールディングで減点。
これはかなり大きいことで、近い距離でのクリンチが使いづらくなります。
そうなるとチャンスなのはムラタヤ、強いプレスをかけてファーマーを追い詰めていきます。ホールディングを封じられたファーマーですが、近い距離では体を完全に寄せて対応、こういう技術にも長けています。
9R、強いプレスからコンビネーションのムラタヤ。このコンビネーションの出し始め、出し終わりというのがファーマーが攻められるタイミングですが、これは警戒されています。
かなりしんどそうなファーマーですが、とにかくこのリターンだけは出し続け、ムラタヤから警戒させることだけは継続できています。
ラストラウンド。
ESPNの非公式採点では今のところ86-84でムラタヤ、かなり競ってはいるものの妥当なように思えます。
前半、揉み合いの近い距離でムラタヤの左フックがヒット。ファーマーも最後まで諦めずに左を振るいます。
しかし2分が過ぎようという頃、ムラタヤの右スイングがファーマーにヒット!この試合で初めて、明らかなダメージングブローです!
ぐらりときたファーマー、ここはクリンチでエスケープ!
この後は近い距離、ファーマーもちょっと逃げ切る足は残っていなさそうで、逆に近い距離で誤魔化そうということなのでしょう。とはいえこのラウンドも最後まで手を出し続けたテビン・ファーマーは流石のもので、しっかりと10ラウンズを戦い抜きました。
序盤、そのスキルに誤魔化されかけたムラタヤでしたが、中盤以降にしっかりと修正、強いプレスで自分の戦いを取り戻しました。もう2ラウンズあれば、フィニッシュシーンもあったのかもしれません。
判定は、97-92、96-93、95-94、3-0でレイモンド・ムラタヤ。
ジャッジの見方は様々、ではありますが、個人的にはムラタヤの勝利は動かないところかな、と思います。難敵を退け、いよいよタイトルショットか。
ライト級という激アツの階級での戦い、やはり一番の近道はデニス・ベリンチクでしょう。
ムラタヤ自身もWBOで2位というランキングに入っており、さらにベリンチクはK2プロモーション、ESPN系列といって良い。
大人の事情もクリアできそうなので、ぜひ年内にやって欲しいですね。タンクvsロマとのダブルヘッダーもアリではないでしょうか。
明日はPrize Fighter
さて、週末の興行が終わり、と思っていましたが、そういえば明日7/15(祝)はマッチルームが主催する「Prize Fighter」、日本で初開催の興行ですね。
一体「Prize Fighter」とはなんなのか。
7/15(祝)、大阪で行われるこの大会は、優勝賞金100万ドル(約1.6億円)とのことですが、どうにも参加するファイターたち、開催場所、そして話題性を考えると不思議なことです。
決勝くらいは盛り上がるのでしょうか。そして、このトーナメントは今回の準々決勝の先も日本でやるのでしょうか。だとしたら、興行としては壊滅的なものになりそうです。
国本vs可兒の再戦をする必要はあまり感じないし、強いて言えば竹迫の登場は嬉しいものでしたが、その竹迫も日本、東アジアなら無敗でしたが、そこに中央アジア、オセアニアが入ってくるとうまくはいきません。
さらに日本ではDAZNで見れない、というのもまた意味不明。
マッチルーム主催の興行だけに、DAZNで観れると思っていましたが、表記的には「アジアを除く」と書かれており、VPNを使って見れないこともないのですが、あまり興味はわかないし意味不明すぎて視聴はしません。果たしてこの興行を盛り上げようという気はあるのでしょうか。現地に来れる人たちが盛り上がる必要があると思うのですが。
楽天チケットもNSNという会社もよくわからないし、マッチルームが変に騙されていないことだけを祈ります。
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