このブログがアップされる予定の8/22(木)という日は、鈴木稔弘vs渡邊海が行われているはずです。
しかし私はというと仕事によりこの興行を見れる状態になく、しかも視聴もしばらく先になりそうなのでおそらく情報を遮断中のはずです。
他にもジャレット・ハードvsジェイソン・ロサリオも見れないが、これは結果だけ知れば十分な戦いです。
その翌週には中嶋一輝vs和氣慎吾というこれまた興味深いマッチアップもあるのですが、その前にこの興行のプレビュー記事を書き始めないと最後までいきつかないので、先にこの試合に言及したいと思います。
その戦いは、武居由樹vs比嘉大吾。
9/3(火)の有明アリーナでの興行の中で、最も楽しみな試合です。
ということで今回のブログは、武居vs比嘉のプレビュー。
9/3(火)Lemino Boxing
WBO世界バンタム級タイトルマッチ
武居由樹(大橋)9勝(8KO)無敗
vs
比嘉大吾(志成)21勝(19KO)2敗1分
どっちが勝つと思うか、と問われれば武居由樹が勝利する確率の方が高いと思いますが、どっちを応援するか、と問われれば比嘉大吾を応援する。そんなボクシングファンは多いのではないでしょうか。
もちろん武居は大人気のボクサーだし、いつかはあい見えるであろう那須川天心とのメガマッチは両者が無敗であった時に最高潮に達するものだとはわかっています。そのボクシング界が最高潮に盛り上がる試合を最高の状態で迎えるためには、武居に無敗でいてもらいたい、という気持ちもあるのですが、それを差し置いても比嘉大吾というボクサーは魅力的です。
2014年6月にプロデビューした比嘉大吾は、もうデビューして10年が経ちました。
プロデビュー以来、アグレッシブなファイトスタイルとパワー、そして手数でKOの山を築いた比嘉大吾は、同郷のレジェンド、具志堅用高のもとでキャリアを紡いでいきました。
WBCのユースタイトル、OPBFタイトルとステップアップした比嘉は、2017年5月、当時の王者ファン・エルナンデス(メキシコ)を6RTKOで降してWBC世界フライ級王座を奪取しています。
村田諒太(帝拳)vsアッサン・エンダム(フランス)第1戦のアンダーカード、ボクシングフェスという2日間にわたる興行の初日でしたね。懐かしや。
その後2度の防衛を果たすも、3度目の防衛戦でウェイトオーバーという失態を犯し、タイトルは剥奪。試合も挑戦者、クリストファー・ロサレス(ニカラグア)に9RTKOで敗れ、初黒星を喫しています。
余力を残すことなくギリギリまで減量した上で、日本人世界王者としては初となるウェイトオーバー。これは非常に悲しい出来事でした。
元々減量が苦しかったということは周知の事実ではありましたが、試合間隔の短さということもあって比嘉は自分に負けたのです。これは比嘉の責任が最も大きいことではありますが、所属ジムの会長である具志堅にも責任がある、と言えます。
2年近くのレイオフ期間を過ごし、再起戦を6RTKOで飾るもそのパフォーマンスは冴えず。
その直後、日本は、いや世界はコロナショックという暗黒の時期に突入し、その最中で当時はまだ無名だった堤聖也(角海老宝石)とドロー。
その年末にはストロング小林佑樹(当時六島)を5RKOで破って復活を遂げた、と思ったら当時は伏兵と思われていた西田凌佑(六島)に完敗、2敗目を喫しています。
その後もフローイラン・サルダール(フィリピン)にダウンを奪われる苦戦、バンタムで戦うことに無理があるのではないか、と言われ続ける日々を過ごします。
前戦ではナワポーン・カイカンハ(タイ)を4RKOで退けて現在は2連続KO勝利中、「大復活」とは言えないまでもかつての勢いを取り戻しつつあるようにも思います。
好不調の波が激しい比嘉大吾の、そのメンタルは強くはないように感じます。
今回の試合に際してのいくつかの記事を読む限り、非常に順調そうで、好調をキープしているようです。もちろんマスコミ向けに「不調です」なんていうボクサーはいないので、真偽の程は定かではないのですが、それでもなんとなく期待ができるような気がしています。
王座陥落から6年と4ヶ月。
大きな挫折を経験し、想像する彼の性格からして辞めていてもおかしくはないはず。
それでもこの競技に賭けてくれた比嘉大吾、その集大成を見せてもらいたい。
対して王者、武居由樹は世界チャンピオンの肩書を持つもののまだまだ未知数なボクサーで、発展途上であると言えます。
元K-1王者、という肩書きがどれほどすごいものなのかは私にはピンとこないですが、今まで彼が見せてきたパフォーマンスは素晴らしく、兎角素晴らしいタイミングとパンチングパワーを持っています。
武居は2021年にプロデビューし、日本人を相手に4連続KO勝利。このことは武居を評価するのに大きい事柄で、たとえ強者であっても外国人相手だと相対的な実力は計りづらく、日本人相手だと評価がしやすい。
すでにこの日本人との4連戦で、ボクシングファンたちは武居を受け入れたことでしょう。
5戦目でOPBFタイトルを獲得した武居は、ブルーノ・タリモ(タンザニア)、ロニー・バルドナルド(フィリピン)を撃破。調整試合を1試合挟んで当時ジェイソン・マロニー(オーストラリア)の持っていたWBO世界バンタム級王座へアタック。
この試合が決まったのは奇跡に近いことであり、この頃はオーストラリアでワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)vsジョージ・カンボソスJr(オーストラリア)というメガマッチが同時期に被っており、マロニーはそこでレイマート・ガバリョ(フィリピン)を迎えての防衛戦がほぼ決定とされていました。(BoxRecには出ていたと思います)
この試合を締結したこと、そして日本に持ってきたことは勝負師・大橋会長のファインプレーであり、強者を恐れずチャンスを作る大橋イズムがあるからこそ実現した試合です。
そして武居はこの期待に応え、見事な王座奪取を果たしています。
そしてこの試合の後、比嘉大吾がWBOのトップコンテンダーとなったことでこの試合は噂されるようになり、7月7日に予定されていた比嘉の調整試合が無くなった、と報道されることで確定的となりました。
遠くで武居、近くで比嘉
高いKO率を誇る両者。
ただこの試合がKO決着となるか、というのは、互いにどのように戦うのかによって変わってくるものです。
武居は非常に遠い距離、それもおよそボクサーだと安心してしまう距離から飛び込んできます。その際の踏み込みのスピード、勢い、そしてパンチングパワーがあいまって軽量級としてはおよそ考えられないほどのノックダウンを幾度も演出してきています。それも、スーパーバンタム級でです。
そのパワーをそっくりバンタムに持ってくれば、それが活きることは明白であり、あのジェイソン・マロニーですらも近づけませんでした。厳密にいうと、近づくまでに12ラウンズかかりました。
そしてもう一つ、武居はステップワークがものすごく、良い。遠くから打てる大砲をチラつかせて、あそこまで大きく、速く動かれては本当にたまったものではないですね。ちょこまかと動くのではなく、大きく、速く動く。距離の遠さといい、このステップワークといい、これもキック時代の遺産なのでしょうか。
そして比嘉大吾はインサイドでショート、そのアングルと手数、そしてフライ級時代に比べて目減りしてしまうとはいえまだまだパワーも魅力的なボクサーです。
なので必然的に、武居は中に入らせたくないし、比嘉は中に入りたい。
ここで比嘉が中に入った時に、フィジカルが強い武居がクリンチにより比嘉に何もさせない、という展開もあり得るし、そもそも比嘉が中に入れない、という可能性もあります。
なので、武居にとってはいくつかの勝ちパターンがありますが、比嘉としてはインサイドに入り、ショートパンチの回転力で上回るという一点だけのように思います。
武居がマロニー戦と同様、後半に失速するなら比嘉のチャンスは広がりますが、比嘉が武居をそこまでに疲弊させられるか。常にプレッシャーをかけて武居を動かし、前半、中盤を捨てて後半に賭けるなら可能性はあるかもしれません。それには、前半、中盤は比嘉もスタミナを使っていかなければなりませんが。
ただし、おそらく武居がまだ経験していないのが、強いプレッシャーとヘッドムーブ、よくまとまったインファイトでコツコツ、それもしつこく前に出てくるファイター。
武居がこれで頭を下げてくれれば比嘉のアッパーも有効になるでしょう。
互いの手の内をよく知るもの同士が、どのような戦略をたて、どのように作戦を遂行するのか、また、できないのか。
比嘉大吾はここで勝てば大復活、そのストーリーに期待をしたい。
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