ついに本日、正式発表を迎えましたね。
すでに巷に回っている情報とはいえ、正式発表は安心します。
ということで今回のブログは、9/3(火)、井上尚弥vs TJドヘニーの正式発表について。TJドヘニーとは何者か、そしてイズマエル・バロッソとは何者か。さらには武居vs比嘉について書いていきたいと思います。
9/3(火)有明アリーナ
世界スーパーバンタム級4団体統一タイトルマッチ
井上尚弥(大橋)27勝(24KO)無敗
vs
TJドヘニー(アイルランド)26勝(20KO)4敗
世界が注目する井上尚弥の対戦相手は、既報の通りテレンス・ジョン・ドヘニーです。
ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)との一戦は多くのところで切望されていますし、WBAの指名戦となるのですが、結局はタイミングの問題です。
すでにロートルと思われているTJドヘニーとの戦いに興味が湧かない、という海外ファンの気持ちはよくわかりますが、このTJドヘニーは日本でこそ強さを見せつけており、日本のボクシングファンから見れば怖い存在であることは疑いようがありません。
それこそ連打の中で倒すルイス・ネリと比べても、13kgにも及ぶリカバリーと1発のパンチングパワーの恐ろしさたるや、今やこの階級でナンバーワンの恐ろしさかもしれません。
つまりはTJドヘニーはアップセットの力を持っている、ということが恐ろしいのです。
TJドヘニーは国籍こそアイルランドですが、デビュー以来オーストラリアで戦ってきた、日本と同様に東洋・太平洋管内のボクサーです。
現在WBOアジアパシフィック・スーパーバンタム級王座を保持しています。
どこかのYoutube?だったかでアイルランド人がなぜアジアタイトルを?と疑問を呈していた人がいたような気がしますが(勘違いか?)彼は元々オーストラリアを拠点としており、当然このタイトルに縁があるボクサーだったわけです。これは実は私も勘違いしていましたが、最近拠点を移したとかではなく、デビュー以来オーストラリアで戦ってきたようですね。
日本でこれまで4戦して4勝(3KO)無敗、そのうち1戦はIBF世界スーパーバンタム級の指名挑戦者として岩佐亮佑に挑戦したもので、不利予想を覆して見事タイトルを獲得しています。そして残りの2戦は、年をとったこと、負けが込んできたことでアンダードッグとして呼ばれ、それを跳ね除けてKO勝利を得たというタフガイです。
アイルランドのニュースは、当時岩佐に勝利したドヘニーをして「ウェイン・マッカラーと同じくらい予想外だった」としており、いかにドヘニーが母国アイルランドメディアの目に留まっていなかったかがよくわかります。
この戦いは2018年8月16日に行われており、「ザ・パワー」のニックネームを持つドヘニーからそのパワーは感じず、どちらかというと試合巧者ぶりを感じた戦いでした。
初防衛戦はアメリカのニューヨーク、MSGで行われた一戦であり、挑戦者は当時横浜光ジムに所属していた髙橋竜平。日本では何かしらの地域タイトルを獲らなければ世界タイトルへの挑戦はできませんが、これが場所をアメリカに移すとなると話が別なのです。
この戦い、つまりは日本では「実績不足」として取り扱うことができないマッチメイクを11RTKOで勝利したドヘニーは、当時のWBA王者ダニエル・ローマン(アメリカ)との王座統一戦に臨むことになります。
これまた日本で久保隼と戦って王座を奪っていたローマンとの統一戦ではダウンを奪われての判定負け。この戦いも善戦とは言えましたが、ここからドヘニーはロードウォリアーとして比較的アンダードッグ的な扱いを受けることになります。
元々アイルランド国籍で、主戦場をオーストラリアとしていたことから、日本でいえば輸入ボクサー的な扱いであることから、「育てられる」対象ではなかったのでしょう。
このローマン戦での黒星の後、再起戦をシカゴで勝利すると、その後はドバイ、イギリス、ドバイで戦って1勝2敗。イオヌト・バルタ(ルーマニア)、マイケル・コンラン(アイルランド)らの踏み台となり、2023年3月にはオーストラリアでもサム・グッドマン(オーストラリア)に完敗してその踏み台となっています。
ここに目をつけたのが大橋プロモーションで、「元世界王者」という肩書きを持つドヘニーをWBOアジアパシフィック王座決定戦で日本に呼びつけ、初黒星から調子の上がってきた中嶋一輝(大橋)とぶつけます。
しかしこの戦いでドヘニーは奮起、なんと中嶋を4R TKOで粉砕。これは再浮上の足掛かりとなるアップセットでした。
おそらく思惑が外れる結果となった大橋プロモーションが次に用意したのは、井上尚弥のスパーリングパートナー、そして前戦で元世界王者岩佐亮佑に完勝していたジャフェスリー・ラミド(アメリカ)。パワーレスながらも技巧に秀でたボクサーであり、ドヘニーのパワーをまだ信じきれていないファンは間違いなくラミドの完勝を予想したはずです。
しかしドヘニーはこの試合を1RTKOでクリア、まさに衝撃的なノックアウト劇でした。
負けを期待されたボクサーが、敵地に呼ばれ、それを覆す。
こんなにも痛快なことはありません。
なので心情的に、今回のようにドヘニーが井上戦にたどり着いた、ということは、讃えるべきであり、文句のつけどころは一切ありません。少なくとも、日本のボクシングファンとしては。
ドヘニーはこのラミド戦の勝利の後、井上尚弥vsルイス・ネリの東京ドーム決戦において、リザーバーを務めています。ネリがウェイトオーバーした場合、井上尚弥vsドヘニーとなる予定だったわけですね。
この戦いを4RTKOでクリアしたドヘニー、いよいよ9月にPFPに挑戦です。
数々のアップセットを起こしてきたTJドヘニー。
岩佐戦よりも、今のドヘニーはとんでもなくでかく、このパワーを防ぎ切れるのであれば井上としてもまだ上の階級で戦えるという資金石にもなります。
なんだかんだ、ネリ戦よりも怖さはあると思います。
そして、ドヘニーには、ここ数戦姿を隠している巧さもあるのです。
決して侮れない、「ザ・パワー」ドヘニー。決戦は9月、楽しみに待ちましょう。
↓ドヘニーの日本での3連戦の観戦記
WBO世界バンタム級タイトルマッチ
武居由樹(大橋)9勝(8KO)無敗
vs
比嘉大吾(志成)21勝(19KO)2敗1分
この戦いはそもそも、日本中のボクシングファン、格闘技ファンが大いに湧き立つ試合でしょう。
武居由樹の人気ぶりは凄まじく、先日の東京ドーム興行でもユーリ阿久井vs桑原、井上拓真vs石田匠とは桁違いの大きな歓声が響いていました。
その相手に、あの比嘉大吾です。
ジェイソン・マロニーを相手に見事な大立ち回りを演じた武居由樹、ボクシングに転向してまだ9戦(当時は8戦)、未知の部分も多ければまだまだ穴も多いでしょう。
長いラウンドを戦うボクサーとして、遠距離から一瞬で距離を詰めての右フック、左のボディストレートは非常に脅威ではあるものの、まだ持っている武器は少ないと見えます。
マロニー戦では最終ラウンドに大失速、それまでも比較的自分のペースで戦えていたようには見えたので、やはりスタミナのペース配分難、というところはありそう。そしてこのことは、たかだか数ヶ月でクリアできる問題ではないようにも思います。
4人が並び立つ世界バンタム級王者において、最も伸び代のある王者ともいえ、優れたパワーとボクサーにはわかりづらいタイミングを併せ持つ未完の大器です。
そして挑戦者は、同じく「未完の大器」と呼ばれ続けた比嘉大吾。
元WBC世界フライ級王者の肩書きを持つ比嘉は、破竹の全勝全KOでタイトルを奪取、しかし3度目の防衛戦でウェイトオーバーによりタイトルを剥奪。再起の後はバンタム級でキャリアを築いてきました。
現IBF世界バンタム級王者、西田凌佑(六島)に敗れて2敗目を喫し、その後は4連勝。
フライ級時代と比べてパワーこそ目減りしていますが、常に攻める姿勢はかつての勢いを取り戻してきており、ここ2戦はKO勝利も復活。特に前戦ではナワポーン・カイカンハ(タイ)を4RKOで屠り、復活を印象付けています。
本来であれば7/7に井岡一翔vsフェルナンド・マルティネスのアンダーカードに登場予定でしたが、WBOのトップコンテンダーとなったことでそれを回避、おそらく決まっていたであろう試合を投げ打って今回のチャンスに乗ります。当然、これは正常な判断と言えるでしょう。
どちらかというと連打方のファイタータイプであり、近い距離での左右のアッパーはパワフルでアングルも素晴らしく、ヘッドムーブも良い。若干被弾は多いように思え、さらに打たれて強いかというとそうでもないように感じるので、武井のパワーに耐えつつどこまでプレッシャーをかけられるか、というところが比嘉大吾の勝ち筋のように思います。
この戦いは非常にシンプルで、中に入りたい比嘉、外から打ちたい武井という構図。
武居はボクサーのステップとはやや異なりますが、右に左によく動き、およそ届かない位置から一気に距離を詰めて強打を放ちます。その動きは非常に大きく、現在の動きだけ見るとフルラウンド戦うにはあまり向いていない動きです。
比嘉としては常にプレッシャーをかけて武居を動かし、疲れてきたところを攻め立てたいところ。武居としては、駆け引きして自らが動く時間を減らし、比嘉の入り際に、もしくは離れたところからの強打を当てたいところ。
両者の得意な距離は違う分、どちらがより自分の距離で、自分のペースで戦えるのかが鍵となるのではないでしょうか。
この戦いは50-50に思えますが、比嘉が近づいたところで武居のクリンチには警戒したい。武居はキック時代に培った強いフィジカルも武器の一つであり、この近い距離で比嘉が消耗させられたとするならば、後半にもチャンスはなくなります。
とまあ、勢い余って色々書いてしまいましたが、ともかくこの試合はファーストインプレッションとしては50-50の戦いです。どっちが勝っても驚かないですし、どっちを応援するかも今のところ50-50です。
↓マロニーvs武居の観戦記
↓比嘉大吾vsナワポーンの観戦記
WBA世界スーパーライト級挑戦者決定戦
イズマエル・バロッソ(ベネズエラ)25勝(23KO)4敗2分
vs
平岡アンディ(大橋)23勝(18KO)無敗
見た目はおじいちゃん、イズマエル・バロッソ41歳。
年齢、見た目は置いておいたとして、今こそが全盛期であろうバロッソは、2023年、彗星の如く現れたボクサーです。
突如としてロランド・ロメロ(アメリカ)の相手として抜擢したバロッソは、ロメロとのWBA世界スーパーライト級王座決定戦に出場。
この試合でロメロに対して8Rまでポイントリードしていたバロッソですが、9Rにロメロが猛攻をかけたところで突然レフェリーがストップ。この猛攻がほとんどヒットしていなかったことも含め、非常に議論をよぶレフェリングとなりました。
本来勝利していたところを負けにされた、と感じたのは本人、ファンだけではなかったでしょうが、こういうレフェリングというのは人がやることだけに起こること、とも思っています。決してトニー・ウィークスがロメロを勝たせようとしてやったことではない、と信じています。こんなことが罷りとってしまうのであればこの競技自体が危ういわけですからね。
ともあれ、ここで負けたバロッソですが大いに株を上げ、ロメロは株を下げました。いや、ロメロの株は元々高くなかったか。
ともあれ、この戦いはWBAも大いに疑問視、再戦のオーダーがあったと思います。
しかしロメロはこの再戦を蹴ってイサック・クルス(アメリカ)を迎えて防衛戦。本来であれば剥奪ものですが、これをWBAが許したのは結局カネなのでしょう、この戦いは北米Amazon Primeの初回配信興行として行われたので、おそらくWBAは黙認したのでしょう。確かに、ロメロvsバロッソ2はPPVファイトにはそぐわなかったかもしれません。
ともあれ、WBAはバロッソに暫定王座決定戦出場のチャンスを与えます。
ただし、これはBサイドでの出場であり、Aサイドはオハラ・デイビス(イギリス)、英国期待のスーパーライトであり、ゴールデンボーイ・プロモーションと契約後の初戦でした。
ロメロを苦しめたバロッソを圧倒的に降し、スーパーライト級戦線に名乗りを上げるオハラ・デイビス。このGBPが描いた青写真はたったの113秒で打ち砕かれます。
↓デイビスvsバロッソの観戦記
このデイビスはサウスポーであり、当時25勝(18KO)2敗という戦績でした。この2敗というのはジョシュ・テイラー、ジャック・カテラル(共にイギリス)というトップどころ。
デイビスの身長が173cmだというのに対して平岡は182cmと高身長ですが、その分やや線が細く見えることも事実であり、はっきり言えばこのバロッソの強打に耐えられるタフネスがあるか、というとかなり厳しいように思います。
とかく非常に不器用にみえ、上手くないようにみえるからこそタイミングが読みづらい風のあるイズマエル・バロッソ。こういったパワー系のボクサーは平岡の天敵のように思え、非常に素直でわかりやすい攻撃を仕掛けてきた佐々木尽(八王子中屋)とは同じハードパンチャーの部類でも全く異なります。
これはかなり危険と言えるマッチアップですが、そもそもこの階級で穴王者はいません。強いて言えばこのバロッソこそが最も与しやすいとも言えますし、最も日本に呼びやすい王者でもあります。
この勝者は、正規王者イサック・クルスへの挑戦権を獲得します。
バロッソに勝ったとしても次がクルス、というのはかなりのハード路線とも言えますが、間違いなく国内最強である平岡アンディ、その快挙に期待したいものです。
その他のアンダーカードとチケット
なお、チケット価格は以下。ちょっと値上がりしてる。。。
SRS席:275,000円(アリーナ1〜6列目)
SRS席:242,000円(アリーナ7列目以降)
RS席:181,500円
SS席:151,200円
S席:121,000円
A席:84,700円
B席:60,500円
C席:36,300円
D席:24,200円
E席:12,100円
その他のアンダーカードでは、OPBF東洋太平洋ウェルター級タイトルマッチ、佐々木尽(八王子中屋)がオーストラリア人との防衛戦。
そして日本スーパーバンタム級タイトルマッチとして下町俊貴(グリーンツダ)が挑戦者として日本スーパーバンタム級ユース王者の津川龍成(ミツキ)を迎えます。佐々木、下町はともにフェニックスバトルの常連であり、さらに津川も井上尚弥直々にスパーリングに呼んだハイレベルなボクサー。
これはまさにオールスター、まるでアマプラ興行を思わせるようなラインナップですね。
平岡vsバロッソも実質暫定タイトル戦なので、トリプルタイトルマッチと言って差し支えはないでしょう。
おそらく過去最強のラインナップのLeminoフェニックスバトル。これは見逃せませんね。
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