34歳、カネロ・アルバレス。
メキシカンの次期スター候補でもあるハイメ・ムンギア、プエルトリコの次期スター候補であるエドガー・ベルランガを寄せ付けることはなく、衰えてはいるのでしょうがいまだ盤石で健在です。
キャリアで喫した唯2つの敗北は、若き日に挑んだフロイド・メイウェザーJr(アメリカ)戦であり、階級を超えてのファイトとなったドミトリー・ビボル(ロシア)戦のみ。
フリオ・セサール・チャベス(Sr)は、34歳となる直前にオスカー・デ・ラ・ホーヤに敗れ、世界タイトルを失うとその後タイトルに縁がありませんでした。
そのオスカー・デ・ラ・ホーヤは34歳の時、フロイド・メイウェザーJrに敗れ、翌年にマニー・パッキャオに敗れて引退しています。
メキシカンスーパースターにとって鬼門となり得る34歳という年を、2人の若きボクサーを退けて乗り切ったカネロ。次戦はエディ・レイノソ曰く「シンコ・デ・マヨ」。まあ、何の意外性もありません。
さて、今回のブログは、このあと、カネロが挑戦する戦いの選択肢について。
カネロに衰えはあるのか
ボクサー全盛期は一体いつなのか、いつから衰えているのか、というのは非常に難しい問題です。ボクサーのパフォーマンスは相対的なものであり、はっきりとはわからないものだからです。
確かに、カネロは今回KO勝ちを逃したことで、3年以上に渡りKO勝利を得ていないことになります。しかし、それが衰えと捉えて良いものかどうかはわかりません。
それは一つ、キャリアというものがもたらす効果を我々が知っているからで、今回のPBC興行でベルランガに足りなかったもの、そしてアンダーカードでケイレブ・プラントを大いに苦しめたトレバー・マッカンビーに足りなかったもの、もしかするとカルロス・カストロにも足りなかったものはキャリアであった可能性が高いからです。
ガードした腕をへし折ったり、フルラウンド通じてパワーパンチを繰り出せたり、というパワーやスタミナは衰えているのかもしれませんが、勝利するために最善を尽くすというその一点において、もしかすると30歳の時のカネロと34歳のカネロが戦った場合、34歳のカネロが勝利する可能性は大いにある、と言えるのです。
それでもやはり、今のようなカネロの圧巻のパフォーマンスを見れる期間は、さほど多くは残っていない、ということも現実として受け入れなければなりません。来年、カネロはプロ転向20年という節目を迎えます。
カネロのファイト
15歳でのプロデビュー以来、当確を表し、期待され、いく人もの強敵と拳を交えてきたカネロ・アルバレス。
いつしかスーパースターの地位を手に入れ、多くのマネーを稼ぎ、ボクシングの顔となったカネロは、その人気とともにたくさんのアンチファンも抱えています。その(日本にもいる)アンチファンの多くはカネロのグレンブテロール接種疑惑(汚染牛によるもので、WBCからはシロと判定)、そしてカネロには関係がないことながら、カネロ贔屓の判定結果によるものが大きいのでしょう。あとは戦うタイミングか。
PEDというのは論外のことですが、公的にはシロであり、もう追求ができないこと。少なくともボクシングについては非常に献身的であるカネロの薬物接種疑惑というのは否定したい気持ちが個人的には大きい。カネロ判定については好きにはなれないですが、これはジャッジの仕業であり、個人を優遇することは気に食わないことではありますが、カネロに責任のないことです。
そんな色々がありつつも、振り返ってみればカネロのマッチアップは素晴らしいものだと認めざるを得ません。
2013年9月、メキシコの独立記念日興行において、フロイド・メイウェザーJrに対してチャレンジマッチを仕掛けたカネロは、完全なベビーフェイスでした。その後、名を挙げたカネロはミドル級とスーパーミドル級でタイトルを獲得、その途中でライトヘビー級のタイトルまで獲得したのち、スーパーミドル級に戻って4団体制覇を成し遂げています。
2022年5月、シンコ・デ・マヨ興行でライトヘビー級最強の一角、ドミトリー・ビボルに挑戦して敗北を喫しますが、その伝説が陰ることはありませんでした。
その2つの敗戦の間に、ミゲール・コット(プエルトリコ)、ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)といった殿堂入り確実なボクサーたちを降し、エリスランディ・ララ(アメリカ)、アミール・カーン(イギリス)、ダニエル・ジェイコブス(アメリカ)、セルゲイ・コバレフ(ロシア)、カラム・スミス(イギリス)、ビリー・ジョー・サンダース(イギリス)、ケイレブ・プラント(アメリカ)、ジャーメル・チャーロ(アメリカ)、そしてハイメ・ムンギアといった元世界王者、またはのちに世界王者となるボクサーを倒し続けています。
全くもって誰も文句のつけようがないキャリアだと思います。
さらなる高みへ昇るためのファイト
もしかすると、もうカネロのキャリアは十分過ぎるほどなのかもしれません。カネロにとってはもはや誰が相手であろうともモチベーションが変わらない、ということであれば、今後も「ちょうど良い相手」をピックアップし続けて、カネロ優位と言われる試合を組み、もしそこで負けたならばダイレクトリマッチをして、2戦続けて負けたら引退、これがもう相応しいところまで来ているのかもしれません。
この流れに乗るのであれば、PPVの売り上げは徐々に下がり、それでも負けた後のダイレクトリマッチだけは少々上がり、カネロのキャリアは終焉となるでしょう。
ただし、コアなボクシングファンからは見放されてしまうのは確実です。
その部分はカネロにとって必要な部分ではないかもしれませんが、折角ならばまだまだ伝説と呼ばれるファイトを期待したいものです。
そしてその相手は、今現在カネロが若いファイターたちを相手にしているからこそ、デビッド・ベナビデス(アメリカ)こそが最も相応しい相手であると世界中の誰しもが思っています。
「メキシカンモンスター」デビッド・ベナビデスは、すでにライトヘビー級も制し、もし戦わばという話でいけばもうカネロよりも優位なオッズが出そうなボクサーです。
ただ、スーパーミドル級では幾度かのウェイトオーバーも起こしている点、すでにライトヘビー級に一度は上がってしまった点を考慮すると、いささかこのマッチアップに不安が残ることもまた事実。このデビッド・ベナビデスは、カネロほど競技に対するリスペクトを持っていないであろうボクサーで、おそらくカネロが嫌うタイプの「規律的ではない」(おおらかなメキシコ人寄りの)メキシコ系のアメリカ人です。
もしこの戦いがいつか実現するのであれば、カネロにとっては早いほう良い。一戦ずつ評価を高めるベナビデスに対して、2試合空くと1歳歳を取るカネロだと、どうしても後になれば後になるほどベナビデスの優位性が際立っていきます。タイムリミットは来年くらいでしょうか。
例えばこの戦いが決まり、カネロが勝利するようなことがあれば、例えばホプキンスがデ・ラ・ホーヤやトリニダードを降した時のような、歴史に名を残す勝利となります。
そしてもう一つ、カネロが「挑む」とされる戦いがあるとするならば、やはりアルツール・ベテルビエフ(ロシア)vsドミトリー・ビボル(ロシア)の勝者への挑戦でしょう。
カネロが2度目のライトヘビー級進出の際に選んだのは、ベテルビエフではなくビボルでした。それは、KO率100%の人間離れした強打を誇るベテルビエフを恐れたから、なのかもしれません。ビボルはパワーパンチャーではありませんでしたが、しっかりとジャブでカネロを止められており、階級の壁を感じざるを得ない戦いでもありました。(コバレフ戦は、コバレフがどうかしていた、ということとしておく)
なので、ベテルビエフ戦にしろ、ビボル戦にしろ、カネロは劣勢を強いられる戦いです。だからこそ、伝説の勝利となり得るファイトであり、全くもって「挑戦」というフェーズになると思われます。
そして最後のカネロのチャレンジングマッチは、ライトヘビー級の上、クルーザー級まで上げた時でしょう。
もはや冗談めいた話に聞こえますが、過去、カネロはクルーザー級でイルンガ・マカブ(コンゴ共和国)への挑戦を画策していました。これをマカブは受けたように記憶しています。
結果、その試合は実現しませんでしたが、もしもまだカネロに5階級制覇の意志があるならば、現状を鑑みるとその挑戦すること自体は十分に可能な範疇にあります。
IBF王者のジャイ・オペタイア(オーストラリア)は10月、ベテルビエフvsビボルのアンダーカードで防衛戦の予定で、WBA王者のヒルベルト・ラミレス(メキシコ)はWBO王者のクリス・ビラム-スミス(イギリス)との王座統一戦が11月に行われる予定です。
WBC王者のノエル・ミカエリアン(アルメニア)は9月28日にライアン・ロジッキ(カナダ)を迎えての防衛戦の予定です。
仮に2025年のシンコ・デ・マヨで戦おう、といえば、今から十分に予定を空けておけます。問題は、狙い目の王者がおらず、いずれにしろカネロがかなり厳しい戦いを強いられることになるであろう、ということですね。だからこそ、カネロにとっては挑戦であり、また、伝説を作ることが可能となるのですが。
決定はしばらく先
今後、カネロのチームがどのような道を歩むのか、決定はしばらく先でしょう。すでに次の戦いは5月、と定めているカネロとしては、トレーニングの始動は早くても年明け以降であり、そう考えると交渉はそれまでにある程度詰めておくとしてもまだ時間があります。
まずはゆっくりして、というのがカネロのスタイルでしょうから、どのような道に進むのかはおそらく年内には発表されないことでしょう。
蓋を開けてみれば、テレンス・クロフォードの可能性だってありますし、ジャモール・チャーロかもしれません。スーパーミドル級の中ではクリスチャン・ムビリ(フランス)が最有力かもしれませんし、失ったIBF王座を手に入れるためにIBFの新王者、ウィリアム・スカル(キューバ)vsウラディミール・シシュキン(ロシア)の勝者と戦うかもしれません。
ムビリは危険なパンチャーであることから、今戦同様に若干の危険性が伴う(と、戦前には言われる)かもしれませんが、果たしてスカルvsシシュキンの勝者という一般層に全くといって良いほど名の知れ渡っていないボクサーとの4団体統一戦というのは、カネロにとってもある意味リスクが大きい(PPVが全く売れない、万が一負けてしまった場合等)。
いずれにしろ、自分の進む道を自ら決めることができるボクサーはそう多くはありません。カネロ、そしてチームレイノソの決断を楽しみに待ちましょう。
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