刻一刻と迫る、10月のボクシング・ウィークエンド。
10/12(金)〜10/14(月)に行われる興行は、あわせれば今年最大のビッグイベとともなるでしょう。もうちょっとずらせなかったのか?とか思うのは贅沢なのでしょうが、さすがに丸3日間ボクシングを見続けるというのはなかなかの苦行です。一つずつの試合に向かう情熱は、自ずと低くなってしまうでしょう。
このことが、おそらく国内興行ですら現地に足を運ばないという私の選択になっており、もはやボクシングファンとも言えない、ただのボクシング好きのおっさん程度の肩書きに成り下がってしまった原因です。
まあともあれ、この3日間はToo Much Boxing、全ての試合を見られるかは時間的にも体力的にも難しいかもしれません。
↓矢吹vsノンシンガのプレビュー
↓井上拓真vs堤聖也のプレビュー
そしてこの3日間の中で、世界が最も注目しているのがベテルビエフvsビボルという2024年最高のマッチアップの一つです。
ということで今回のブログは、アルツール・ベテルビエフvsドミトリー・ビボル、世界中が熱狂するリヤドシーズンのプレビューです。
10/12(日本時間10/13)サウジアラビア
世界ライトヘビー級4団体統一王座決定戦
アルツール・ベテルビエフ(カナダ)20勝(20KO)無敗
vs
ドミトリー・ビボル(ロシア)23勝(12KO)無敗
ボクシング界には「戦わざるライバル」と呼ばれる関係は非常に多い。
それが全盛期を過ぎてからぶつかる例も非常に多いですが、「ここぞ」というタイミングで実現することはなかなかに難しいことです。
それが崩れ始めたのはつい最近のことで、テレンス・クロフォードvsエロール・スペンスJrは良い例ですが、もっと早くても良かったとおも思います。ただし、これは戦った後だからこそ言えることでもあります。
このベテルビエフvsビボルというのも、そのように言われるかもしれません。
何せ、ベテルビエフはもう39歳という年齢だからです。
ただし、両ボクサーのパフォーマンスが衰えているとは言い難い状況下の中で、大規模興行で、それも4団体統一戦という大舞台。これは今年最大の戦いの一つで間違いありません。
アルツール・ベテルビエフは今をときめくカナダ・ケベック州に居を構えるボクサーで、出身はロシア。このロシア連邦にあって、戦闘民族が暮らす(言い過ぎ)ダゲスタン共和国の出身で、当然アマチュアボクシングでも世界選手権優勝等の好戦績を収めています。
ロンドン五輪にも出場しますが、オレクサンドル・ウシクに敗戦。
2013年のプロ転向とともにカナダに移り住み、2017年にIBF世界ライトヘビー級タイトルを獲得しています。現在はカナダ国籍です。
この世界タイトル戦は当初挑戦者決定戦であり、時の王者はアンドレ・ウォード。ここでウォードにベテルビエフが挑戦するという世界線があったならば、非常に見たいものですね。
この王座決定戦でエンリコ・コーリングを最終12RTKOで降したベテルビエフは、その後も強打を武器にノックアウトの山を築いていきます。
しかし強打に代償はつきもので、怪我も多く、世界タイトル獲得から7年が経過するも、次がようやく9度目の防衛戦ですね。
戦ってきた相手はライトヘビー級屈指のボクサーたちであり、その道程で二つのタイトルをコレクト。全勝王者同士の王座統一戦となったオレクサンドル・グヴォジク戦は本当に素晴らしいファイトでしたし、同じく統一戦となったジョー・スミスJr戦は素晴らしいパフォーマンスでした。
苦戦らしい苦戦はせずに、というのはちょっと言い過ぎで、近年でいえばアンソニー・ヤーデにはかなり苦しめられましたし、グヴォジク戦も途中までは明確に勝っていたわけではありませんでした。ただ、結局は相手を倒しているのですから、このボクサーはこの階級で飛び抜けた存在と言って良いでしょう。
元々スキルもあるこの戦闘民族(人かどうかは怪しい)は、12Rもあれば1発を当てることはできます。しかもこのベテルエビエフの強打は、思いっきりパワーパンチをかます、というものではなく、時には撫でるようなパンチでも相手を倒してきています。ちょうど、熊の一撃がか弱き獲物を捕獲するかのように。
さて、デビュー以来派手なノックアウトを次々と築き上げていったベテルビエフとは対照的に、ビボルは比較的地味なキャリアを歩みます。
同じロシアの出身ですが、カスピ海を隔てたキルギスの出身で、やや東欧よりのタジキスタンと比べると中国に近く、よりアジア人ぽさがその顔つきに出ています。(タジキスタンも中央アジアですが)あ、ちなみにサウジアラビアは西アジアらしい。
アマチュア時代はベテルビエフほどの目立った成績はないものの、ロシアのナショナルチャンピオン、世界選手権銅メダルという経歴を持っています。
プロデビューは2014年、ベテルビエフより1年ほど遅れてのプロデビューですが、2016年にはWBA世界ライトヘビー級暫定王座を獲得しています。
プロデビューからわずか1年半、7戦目。この重い階級において、かなりの衝撃です。しかも相手は、フェリックス・バレラという当時13勝(12KO)無敗という怪物候補の暫定王者でした。
その相手にダウンを奪い完璧な形で圧勝した美ぼるは、この虎の子のWBA王座をコツコツと守り続けてもう8年。防衛回数は、暫定王座時代から数えてもう14度にも及びます。
この14度の防衛戦の中でサリバン・バレラ、ジャン・パスカル、ジョー・スミスJr、クレイグ・リチャーズらを圧倒、2022年5月には下の階級のスーパースター、サウル「カネロ」アルバレスを破るという殊勲を挙げています。
それまでも強敵を降してきたビボルでしたが、このカネロを降した時から一気に評価は上昇。どうしても派手な倒しっぷりをするベテルビエフの後塵を拝していたイメージでしたが、この勝利により、ビボルが階級トップに躍り出たというイメージです。
その後もヒルベルト・ラミレスに初黒星をなすりつけるなどしたビボルは、ライトヘビー級の議論の余地なき王者を目指し、もう一人の最強と合い見えることになります。
完全なる50-50
最近50-50とばっかり言っているような気がします。私が50-50の戦いとか言っているものには先日のデュボアvsジョシュアとかも含まれるから、話半分、いや1/4くらいで聞いておいてもらって良いのですが、これこそは本当の50-50の戦いです。
オッズはビボルが若干優位ですが、ビボルが-130、ベテルビエフが+120とほとんど賭けが成立しない状態です。
さて、ここからは予想なのか期待なのか、本当にそうなのかはわからない戯言です。
まず、ベテルビエフが苦戦したボクサーといえばグヴォジクとヤーデ。どちらとも、素晴らしいテクニックとハードパンチを持ったボクサーです。
ビボルはハードパンチャーとは言えないですが、確実にテクニシャンであり、一発を思い切り打つタイプではないだけにヤーデよりも隙が少ない。
ベテルビエフにとって、テクニシャンというのはやりやすいボクサーではなく、前に出てきてくれるボクサーの方が明らかにやりやすい。単純に言えば、一度で踏み込むスピードはさほどではなく、強いプレスでジリジリといくイメージです。こういうボクサーは、とにかくスピードのあるボクサーが苦手な印象でもあります。
スピード、テクニックは申し分のないビボルですが、そもそも人外の力を持つベテルビエフの強打を12ラウンズに渡って1発ももらわない、というのは無理な話です。ここでビボルにとって非常に重要なことは、なるべくベテルビエフのパンチをもらわない、というのは当然のことながら、あとはビボルのタフネスがどれほどか、ということにもこの勝敗の行方は関わってきます。
ベテルビエフはその風貌とは異なり、技術レベルはめちゃくちゃ高い。ただフィジカルに任せて攻撃するだけでなく、駆け引きやカウンターも駆使して試合を決めます。
ビボルはパンチがないというよりは無理をしないイメージで、パンチをもらわない距離、ポジショニング、ダメージを受けない術を知っています。ビボルのKO率がさほど高くないのは、倒せないのではなくて倒しに行かないからだと思っています。
それでもポイントを取りに行くならば、やはり攻めなければならず、そうなると危険な位置まで踏み込まなければなりません。そこに、ベテルビエフの強打が襲ってきます。
それを躱す準備をして、そこからビボルはリターンを狙うのでしょう。
まるで将棋のように、何手も先まで読んでからのボクシング。
表面上は「究極のホコタテ対決」ながらも、水面下では極上の技術戦が繰り広げられている、そんな戦いになるのではないでしょうか。
そしてもう一つ重要なことは、ベテルビエフは意外と打たれて強いボクサーではない、ということです。39歳になり、その辺りは顕著になるのではないでしょうか。
ビボルが、カネロ戦で見せたようなストレートコンビネーションでベテルビエフを討ち取ってしまう姿も想像できなくはありません。いずれにしろ、それが訪れるとすれば後半です。
そしてドミトリー・ビボルというマスタークラスのボクサーが前半に捕まるようなことはないでしょう。それはたとえ、相手が世界随一の攻撃力を誇るアルツール・ベテルビエフというボクサーであったとしても。
ベテルビエフがビボルを捕まえられるとするならば、後半に一発を当てられるかというところであり、その時、前半から強いプレスでベテルビエフがポイントを奪っていればその場面は訪れる可能性があります。
勝負は前半から中盤、ビボルがしっかりとアウトボックスできるのか、それともベテルビエフがプレスをかけて優位に立つのか。
見どころは後半から終盤にかけて、ビボルがポイントを取られていることを察知して前にでてくればベテルビエフとしてはしめたもの、ビボルが前半からアウトボックスで優位に立っているようなら、野獣のようなベテルビエフが襲いかかってくるかもしれません。
この一瞬も気の抜けなそうな12ラウンズだけではっきり言って十分なこの興行は、アンダーカードも盛りだくさんです。
ただ、他にもお腹いっぱいになるぐらいボクシングの試合があるので、そこまで見れるかどうか。。。
配信情報
この興行は、おそらく日本ではDAZN PPVで配信されます。これまで通りであれば、3,000円でしょう。
この試合がたった3,000円で見られるとは、お釣りが来ますね。嘘です。物理的にお釣りは出ません。
この興行でハッピーなのはアメリカ人たちであり、このリヤドシーズンの興行はESPN +でライブ配信、なんとPPVではなく無料放送の範疇です。トップランク、なかなかやりますね。
DAZNもPPVじゃなくて無料にすれば良いのに。
このESPNのファイトは、アメリカの東部標準時間で19:30頃、とのことなので、日本では10/13(日)の9:30頃ということになります。この頃がリングウォーク。
ただ、こういう情報って結構間違っていることが多いので責任は持ちません。
ということで、この世紀の戦いを楽しみましょう!
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