今最もトップ界隈が実力伯仲であり、誰もがチャンスのある階級というのがフェザー級。
スーパーバンタム級で統一王者に輝いたスティーブン・フルトン(アメリカ)もトップよりも若干劣ると思われるカルロス・カストロ(アメリカ)に大苦戦、前途多難なフェザー級デビューを果たしています。
WBA王者のニック・ボール(イギリス)はWBC王者のレイ・バルガス(メキシコ)とドロー(とはいえ、ボールが僅差で上回った試合に見えました)、王座戴冠戦となったレイモンド・フォード(アメリカ)戦もどちらに転んでもおかしくない試合内容。
IBF王者のアンジェロ・レオ(アメリカ)は素晴らしいファイトでルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)を倒して戴冠も、スーパーバンタム級時代にフルトンに敗れている試合は尾を引きます。
WBO王者のラファエル・エスピノサ(メキシコ)には個人的に大いに期待していますが、ロベイシー・ラミレス(キューバ)との再戦を控えています。初防衛戦は4RTKOでクリアしていますが、対戦相手の質的に、まだラミレス初戦での勝利がフロックでなかったことは証明できていないのではないでしょうか。
さて、そんなフェザー級において、次期王者と囁かれるのがブルース・カリントン(アメリカ)。
WBAで1位、WBCとWBOで2位、IBFで8位と全団体で一桁にランクインしており、WBAではトップコンテンダーの位置にいます。
そのカリントンのプロ13戦目がサンディ・ライアンvsミカエラ・メイヤーのアンダーカードで行われています。ということで今回のブログは、9/27(日本時間9/28)に行われた、ブルース・カリントンvsスライマン・セガワの観戦記。
9/27(日本時間9/28)アメリカ・ニューヨーク
ブルース・カリントン(アメリカ)12勝(8KO)無敗
vs
スライマン・セガワ(ウガンダ)17勝(6KO)4敗1分
さて、上記のように世界上位ランカーであるブルース・カリントン。ここ最近は「井上尚弥」の名前を幾度も出しているし、前戦(6月)は井上も現地で観戦しています。
2021年にプロデビューしたばかりですが、豊富なアマチュア実績を持っており、デビュー以来は連戦連勝。キャリア形成はそこそこに、早々に好戦績のボクサーたちと当たり始め、2024年に入ってからは地域タイトルをコレクト。
IBFインターナショナル、NABFタイトル、WBOインターコンチネンタル、そして今回の戦いにはWBCシルバーもかかります。全団体の下部タイトル獲得に向けて動いている、ともいえ、どこでも挑戦できるように地を固めるのが陣営の狙いだったのかもしれません。
それはもちろん成功し、この地域タイトルを巡った戦いを含めて現在3連続KO勝利中と勢いに乗っています。
しかし、それにしたってスライマン・セガワは強敵です。
12戦しているカリントンの倍近くのキャリアを誇るセガワは、2013年にウガンダでプロデビュー。多分、キャリア初期にはBoxRecには載ってませんがもっと戦っているんじゃないかと思っています。
ウガンダを飛び出てオランダで2戦、その後アメリカで戦い始めます。
このアメリカでの戦いは当然の如く全てBサイド、対戦相手を見れば相手のほとんどが無敗のプロスペクト、または1敗ぐらいしかしていないボクサーです。その中で時に勝ち、時に負けているのですが、負けている相手もウィリアム・フォスター3、エイブラハム・ノバ、ジャーメイン・オルティス。最近ではミルコ・クエリョ。
このパンチャー、クエリョですら8Rをフルに戦っており、セガワは身体能力が高くディフェンス勘に優れたボクサーですね。ちなみに、KO負けといえばジャーメイン・オルティス戦で7RKO負けを喫していますが、これはライト級で行われた試合であり、ちょっと無謀だったと思われます。
オッズはカリントンがかなり優位と出ているようですが、おそらくこれはアメリカでの知名度と期待によるものであり、両者の間にそんなに差はありません。そもそもセガワはWBC3位、WBOで6位という上位ランカーであり、ともすればこの試合がWBCの挑戦者決定戦になったとしても、何の違和感もない戦いです。
さて、前置きが長くなりましたがゴング。
初回、ともにフェイントをかけつつ相手の出方を伺うスタート、より慎重なのはカリントンです。比較的ガードをしっかりと上げ相手に打たせてリターンを狙おうというところです。セガワのパワーを図る狙いもあるのでしょう。
セガワはプレスをかけ気味、打ち込んだ後のことをしっかりと考えているボクサーです。揉み合いからカリントンがショートのコンビネーション、これは良い。
2R、カリントンがちょっとセガワの攻撃を見切ってきたのか。サウスポーセガワの右ジャブを左にサイドステップしてかわしてリターン、スピードはカリントンに分がありそうです。
しかしその後、セガワが左右の強く振るう攻撃、これをカリントンはブロッキングで受け止めますが、この打ち終わりが良いセガワに大きなヒットを生めません。
セガワもカリントンも非常に好戦的。どちらもディフェンスがよく、攻撃技術も高く、カウンターにカウンターを合わせ合うという展開です。
3R、グッとガードをあげたカリントン、セガワに攻めさせてのリターンを狙っています。しかしセガワもそれには乗らず、ジャブを打っては距離を取る、という状況。
中盤にはカリントンがブロッキングで距離を詰め右をヒット、しかしセガワも怯まず左をリターンしています。セガワとしても不用意に攻められない展開ですが、カリントンも1発当てても安心できない状態です。ここまでアクションは比較的多かったですが、ここから少し停滞しそうなイメージ。
4R、中間距離のヒリヒリとしたやり取りから、このラウンドは中盤にカリントンがチャンスを作ります。
セガワの左を外しての右ボディをヒットするとセガワは若干動きをとめ、その後もカリントンはフックからのチャージ。しかしここはセガワも流石のキャリア、なんとか誤魔化してこのラウンドをサバイブしています。
中間距離でのカウンターのやり取りという面においてはカリントンが優位に立ちそうで、セガワとしてはカリントンに先に攻めさせるとよくなさそう。
5R、このことはカリントンとしても気づいているか、先に仕掛けることが多くなっているカリントン。セガワはなかなか左に繋げられない時間が過ぎますが、カリントンが比較的ガードを高く掲げてパンチを出しにくい状態でもあるので、攻めやすさはあるかもしれません。
セガワはフィジカルを活かして体を預けるようにしてステップイン、ここからの接近戦では両者ともにクリーンヒットなヒットは無し。ただ、このラウンドはセガワの手数が上回るか。
6R、フィリーシェルの後ろ荷重のスタイルに変化したカリントン、その状態でプレスをかけていきます。
そこでカウンターを狙うも、やはりこのセガワの打ち終わりのケアはよく、反応も良い。セガワは思いっきり攻め込むことがないからKO勝利も少ないのかもしれません。ちゃんと自分の安全圏を確保しながら戦うイメージで、無理はせず、いく時はゼロ距離まで潰して相手の攻撃を無効化しています。
なのでこのセガワが出てくる時だけがカリントンにとってのチャンスです。
7R、今度はガードを固めて頭を振ってプレスのカリントン。ボクシングの幅は非常に広いですね。ただ、このスタイルに対してセガワはカウンター狙いにチェンジ、このカリントンのうち終わりを狙うリターンのスタイルであれば連打が出ています。
対セガワとして、どっちが良いかは分かりませんが、カリントンがしつこくコンビネーションを放っていくとこれはセガワが動いている途中に浅くながらもヒットしています。
リスクはありますが、こちらの方がダメージは与えていけそうなイメージ。
8R、互いに様々な工夫をしながら攻め手を探しますが、なかなか効果的なものは見つかりません。もう8Rに入り、ポイントは微妙なラウンドも多い中で行くと、ここからは一つも落としたくないところですね。
後半にカリントンが激しく攻め込む場面を作りますが、セガワはステップワークと上体の動きを使ってエスケープ。互いに距離がよく、なかなかヒットにつながりません。
9R、大きく振ってきたセガワに対して、カリントンがカウンター。これもクリーンヒットとは言えないか。中盤にも同様のタイミングがあり、浅くは当たっているがダメージになりそうなものではありません。
中盤以降、カリントンは明らかに手数を増やしており、鋭い攻撃を見せますが、セガワはステップで逃れます。これはジャッジ泣かせの試合すぎますね。
ラストラウンド、プレスをかけたカリントン、耐えかねて中途半端な攻撃を仕掛けたセガワにカリントンはバックステップしながらの左右のフック。非常に高いレベルのものを見せてくれていますが、セガワのディフェンス力も素晴らしく、これもクリーンなヒットとはいきません。
ただ、このラウンドは中盤にもカリントンが強いステップインを見せて浅い右をヒット、セガワは比較的下がる場面が多く、さらに良い攻撃を出すことができていません。(もしくは勝利を確信してしていないのか)
最後までカリントンがプレスをかけて試合が終了、両者共に顔は綺麗なままです。
判定は、95-95、97-93×2、ブルース「シュシュ」カリントン。
これは大苦戦、見方、そして戦う場所によっては逆の結果が出ていてもおかしくはありませんでしたね。ただ、見せ場を作ったのはカリントンの方が多く(片手で数えられるほどですが)、カリントン勝利が順当なのだと思います。
いずれにしろ、世界ランカー上位者同士の潰し合いはプロスペクト、ブルース・カリントンに凱歌。この試合だけではありませんが、プロスペクトとしてはかなり骨太の相手と戦ってきています。次はいよいよ世界戦でしょうか。
ニック・ボールvsロニー・リオスの勝者に挑むのがランキング的には簡単ですが、WBAがたとえ指名戦をオーダーしたとしてもその効力はさほどでもありません。
ラファエル・エスピノサvsロベイシー・ラミレスであれば、同じトップランクのグループ内の戦いのため、決まるとすればすんなり決まるでしょう。
アンジェロ・レオ戦もなんだかんだでいけそうな気がしますね。(レオのプラットフォームはProBoxTV、こちらは大手とは言えません。)
WBCはさすがにそろそろバルガスvsフィゲロアをお願いしたい。
さてさて、今後のフェザー級戦線は一体どうなっていくのか。非常に楽しみですね。
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