今月、フェザー級に動きがありました。
階級最強とも目され、井上尚弥最大のライバルかと思われていたルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)がまさかのTKO負け、混沌としたフェザー級はより混迷。
さてさて、果たして現在のフェザー級というのはどういう状況なのか。
今回のブログは、フェザー級の現在を見ていきましょう。
WBA王者
ニック・ボール(イギリス)20勝(11KO)無敗1分
157cmという低身長がそうさせていることは明白ですが、とにかくこのボクサーはインサイドに入らなければいけないボクサーです。イギリスにたまに現れるノンストップアクションの持ち主は、その多くがそうであるようにハードパンチャーとは言い難いものの、連打で幾度もストップ勝ちをしてきているファイターでもあります。
2022年にアイザック・ロウ(イギリス)を破ってメジャーシーンに躍り出たボールは、2023年11月、WBCの挑戦者決定戦でアイザック・ドグボエ(イギリス)にも勝利。そのまま規定通りWBC王者、レイ・バルガス(メキシコ)に挑戦しました。
ボールは2度のダウンを奪うものの、なんとドローでバルガスが防衛に成功、ボールはタイトル奪取に失敗しました。
しかしこの後、再起戦でWBA王者レイモンド・フォード(アメリカ)に挑戦してスプリットの判定で勝利、王座を掴み取っています。ちなみに、このフォード戦はドローもあり得るぐらいの接戦で、対バルガスの方が明確に勝利だったのではないかと個人的には思っています。
この戦いは2024年6月1日に行われており、このタイトルの初防衛戦は10月5日という話が出ています。場所はビートルズの故郷で有名な港町リバプール、ボールはこの街の出身なので凱旋防衛戦となります。
対戦相手は、ロニー・リオス(アメリカ)。過去、レイ・バルガスとムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)に挑戦経験のあるボクサーで、強敵ですね。
この2つのタイトル戦はいずれもスーパーバンタム級でしたが、MJ戦での敗北を経てフェザー級で再起、前戦ではニコラス・ポランコ(ドミニカ共和国)を5RKOで退けて再起に成功しています。
クイーンズベリー・プロモーションがプロモートするボールの試合は、ProboxTVで配信予定だそうなので、これは非常に楽しみですね。
WBC王者
レイ・バルガス(メキシコ)36勝(22KO)1敗1分
さて、そんなボールに薄氷の勝利で防衛を果たしたレイ・バルガス、当然そのボール戦から戦ってはいません。リングの登場は1年に1度が関の山であり、2023年なんかはスーパーフェザー急に挑戦したことでフェザー級の防衛戦を行っておらず、なぜ彼がまだタイトルを保持しているのかは不明です。
改めてスコアカードを見ると、このボール戦、一人のジャッジは116-110でバルガスとしています。こうなるとダウンを奪われた8Rと11R以外は全て取っている、という計算になりますが、本当にそれで大丈夫なのか?と思ってしまいますね。
ともあれ、タイトルの動きも少なければ、試合のアクションも少ないというないないづくしの王者、レイ・バルガス。個人的な感情で言えば、1日も早い陥落を望みます。
WBC暫定王者
ブランドン・フィゲロア(アメリカ)25勝(19KO)1敗1分
そんなわけでさっさとバルガスには陥落してもらい、こちらを正規王者として迎えてもらいたい、と思っているのが暫定王者のブランドン・フィゲロア。
「ハートブレイカー」フィゲロアは2023年3月、マーク・マグサヨ(フィリピン)との暫定王座決定戦を経てスーパーバンタム級に続きフェザー級タイトルを獲得、2階級制覇に成功しています。
その後は14ヶ月のレイオフ期間を過ごし、今年5月にジェシー・マグダレノ(アメリカ)を9RKOで屠って初防衛に成功しています。こちらもリングの活動としてはここのところ1年に1度ではあるものの、試合としてはアクションが多く、いや、もたれるくらい多すぎて、試合は非常に面白いから許せます。
で、普通に考えれば正規王者であるバルガスとさっさと統一戦をすべきなのですが、結局獲得から1年半ほどが経過するもまだ決まらず。というか一回は確か2023年の終わり頃に決まったのですが、それは結局流れ、今に至る。
ちょっとリサーチをしてみると、どうやら今年の6月、WBCが二人の王座統一戦をオーダーした、とあります。この記事が本当なら、流石にそろそろ発表があるか、もしくは噂レベルの日程が出てもおかしくはないのではないでしょうか。
ともあれ、今年中の王座統一戦を期待し、フィゲロアがバルガスをノックアウトしてくれることを期待しています。
IBF王者
アンジェロ・レオ(アメリカ)25勝(12KO)1敗
8月10日までは、多くの人がルイス・アルベルト・ロペスを階級最強の一角として推し、アンジェロ・レオは明らかなアンダードッグだったはずです。
ロペスのボクシングは打ち込む時などにガードが開く、等の穴も多いですが非常にパワフルで見栄えが良く、パワー、迫力、勢いにより、その「穴」をつけるボクサーは少ないのではないか、ということが仮説でした。
しかし、ロペスは後半、集中力的にもスタミナ的にも大きく落ちる、という爆弾を抱えており、結局フィジカルでも負けず、リングIQもあるアンジェロ・レオにまさかのKO負け。
一躍時の人となったアンジェロ・レオは、2階級制覇王者です。
2020年、トラメイン・ウィリアムス(アメリカ)と王座決定戦を制してスーパーバンタム級王座を獲得するも、この王座は初防衛戦でスティーブン・フルトン(アメリカ)に奪われており、短命に終わっています。
その頃と比べるともちろん強くなっているのでしょう。
ロペス戦で見せたボクシングは、ウィリアムス戦、フルトン戦で見せたボクシングとは全く別物で、ただ前に出るだけのガムシャラファイターはその引き出しを増やし、リングIQを高め、そして作戦遂行能力とフィジカルに成長が見られる、と思います。
もちろん怪物的王者ではないし、未だ怖さとしてはロペスの方があるのでしょうが、対戦相手により戦い方を大きく変えられるというのは大きな強みとなりそうで、今後も油断なく防衛を重ねてくれることを祈ります。
WBO王者
ラファエル・エスピノサ(メキシコ)26勝(22KO)無敗
個人的には、ブランドン・フィゲロアと同様に推したいのがこのラファエル・エスピノサ。
まだまだ未知数すぎるし、意外ともう30歳という年齢はピークなのでしょうが、この特異なボクサーには活躍してほしいですね。
フェザー級としては破格の身長185cm、その身長的なアドバンテージを持つボクサーが繰り出す両の拳は、とにかく止まりません。
2023年12月にロベイシー・ラミレス(キューバ)の相手に抜擢されるまで、このボクサーがいることさえ知りませんでしたし、事実、このラミレス戦までに戦った相手で骨のありそうな戦績を持つボクサーは片手で十二分に数えられるほど。
そんなエスピノサが、圧倒的な不利予想を覆し、五輪2連覇の世界王者に勝ってしまうのだからボクシングは本当に面白い。
ラミレスが敗れた時はショックもありましたが、とにかくこのエスピノサはボクシングに生真面目さが出ており、旺盛な練習に裏打ちされたボクシング、非常に応援したいボクサーです。
初防衛戦は今年6月に行われており、4RTKOで勝利。
そしてその翌週、ロベイシー・ラミレスも無事にTKOで再起戦を勝利しており、お互いの次の試合は再戦となるか。
このラファエル・エスピノサvsロベイシー・ラミレス2というのはおそらく既定路線であり、ラミレスは再起後、WBOランキング1位に浮上しています。
特にニュースや噂は出ていませんが、再戦の時期としては11月か12月あたりが適当かと思われ、そうなると約1年ぶりの再戦となりますね。
前戦で、おそらくラミレスは当初エスピノサを舐めていたはずです。次は間違いなく油断はないでしょう。
しかしエスピノサも前戦の良いイメージを持っており、さらに王者となってから自信をつけているでしょうから、この勝負は分かりません。
ぜひ今年中に決まってもらいたいですね。
リングマガジン・フェザー級ランキング
さてさて、思いっきり違和感のあるリングマガジン・フェザー級ランキングです。
1位はなんとリー・ウッド(イギリス)です。それはまあ好きなファイターですし、残してきた実績もそのファイトも素晴らしいものだらけなのですが、もう1年近く試合をしていない上、スーパーフェザー級への転級も表明済み。
ウッドと10位のジョシュ・ウォーリントン(イギリス)はそのうちにこのランキングからいなくなるボクサーだと思いますが、そこに入ってくるのはスティーブン・フルトン(アメリカ)、ブルース・カリントン(アメリカ)あたりでしょうか。
井上尚弥がフェザー級に上がるのが2026年頃とするならば、それまでにある程度のタイトルがまとまっているのか、否か。
今後もフェザー級から目が離せませんね。
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